日本近代短篇小説選 明治篇 1 (岩波文庫 緑191-1)

  • 岩波書店 (2012年12月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784003119112

みんなの感想まとめ

多様なテーマと独自の視点が光る短篇小説集で、明治時代の文豪たちによる作品が収められています。家族やプライド、背徳といった人間の深層に迫る内容から、結婚やすれ違いの悲喜劇、さらには幻想美や社会問題にまで...

感想・レビュー・書評

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    https://opac.nara-ni.ac.jp/opac/volume/113400

  • 坪内逍遙「細君」1889年………家族・プライド・奉公人
    嵯峨の屋おむろ「くされたまご」1889年……美女・背徳・キリスト教
    山田美妙「この子」1889年………結婚・謎解き・女友達
    森鴎外「舞姫」1890年………仕事の重圧・生活・家族・後悔
    尾崎紅葉「拈華微笑」1890年………すれちがいの悲喜劇
    幸田露伴「対髑髏」1890年………美しい・おかしい話から凄惨に反転
    清水紫琴「こわれ指輪」1891年………女権運動、考えさせられる
    斎藤緑雨「かくれんぼ」1891年………花街もの、人間の弱さ
    樋口一葉「わかれ道」1896年………ふしぎな関係の男女、悲哀
    泉鏡花「龍潭譚」1896年………幻想美・母性・物狂い
    国木田独歩「武蔵野」1898年………文学によって開眼する自然美の鑑賞
    広津柳浪「雨」1902年…………貧困・愛情・痛切

  • 小説の黎明期である明治22年~35年に発表された短篇小説12篇を収録。
    逍遥、鴎外、紅葉、一葉、美妙など有名な文豪達の作品を近い発表年で並べて読んで行くと、雅文体、雅俗折衷体、言文一致体と入り乱れ(特に明治20年代の作品達)、各作家達が「文章」の書き方についてそれぞれの方向に工夫している様がくみ取れて面白いです。

    以下、収録作の中からお気に入りの感想など。
    逍遥の「細君」はこれを最後に小説から戯曲の方へ移ってしまった作品。当時の女性の置かれたままならない立場を描く。
    山田美妙「この子」は婚約者の素行調査を新郎自身が行うというシチュエーションが面白く、ちょっと探偵趣味的一篇で言文一致の文章ともあわさって今も読みやすい。
    尾崎紅葉「拈華微笑」はヒネリの効いたユーモア小説といった体で、美人に微笑みかけられてのぼせ上がってく様の描き方などニヤニヤさせてくれますね。
    幸田露伴「対髑髏」は怪奇譚じみた一篇。美人に迫られても頑として断る堅物露伴先生が面白かった。

    どの作品も冒頭に1ページ使って作者紹介とざっくりあらすじ説明が入っているので、とっかかりやすくて良かったです。

  • 泉鏡花『龍潭譚』を読んで

    淵に立つ 海軍少尉 候補生
    粛然として 夢みる乳房

  • 緑雨とかかなり苦手なんですが(って言うか、理解するためのリテラシーがこちらに全く身についていない)、時代的には規範化された小説文体が確立される前までの、多様な表現が楽しめました。

    その上で、それぞれの作品において現代とリンクするところもたくさん見えるというのが興味深い。水の主題、母恋い、姉に萌える(笑)という設定を投入しながらファンタジック世界を形づくる鏡花の構成力、一葉の「わかれ道」の吉ちゃんのやさぐれた感じ、それと吉ちゃんとお京さんとの会話は映画のように活き活きしているし、柳浪の「雨」における貧しい若夫婦の会話も、泣かせる芝居のよう。このシリーズ、未読はあと一つ「昭和篇3」のみ!

  • 言文一致体が出現する前後の短篇小説のアンソロジー。二葉亭四迷の言文一致体がいかに偉大な発明だったかを、ここに収録されている雅俗折衷体の読みにくさを体験すると良く理解できる。二葉亭四迷の作品が収められていないが、短篇小説は無いのか。雅俗一致体の坪内逍遥の「細君」から、言文一致体の国木田独歩の「武蔵野」、広津柳浪「雨」まで様々な短篇小説を読んだが、言文一致体で無いと感情移入が出来ず楽しめないことを実感した。

  • 大正編の次は明治編に着手。大正編には訳註はなかったんですが、明治編になると途端に古い言い回しや当時の風俗についての注釈がたっぷりつくので、読破するのに結構時間がかかりました;いわゆる「言文一致体」の作品だと、まあまあスラスラ読めるんですが、さすがに「雅文体」だの「雅俗折衷体」だの(合ってますか?)には、慣れるまで手間取ります。それでも鏡花や鴎外はもとから好きでいくらか読みなれていたのでマシでしたが・・・。以下収録作。

    坪内逍遥「細君」
    嵯峨の屋おむろ「くされたまご」
    山田美妙「この子」
    森鴎外「舞姫」
    尾崎紅葉「拈華微笑」
    幸田露伴「対髑髏」
    清水紫琴「こわれ指環」
    斎藤緑雨「かくれんぼ」
    樋口一葉「わかれ道」
    泉鏡花「龍潭譚」
    国木田独歩「武蔵野」
    広津柳浪「雨」

    書かれた時代背景のせいか、どうも「女性が不幸」「貧乏で不幸」なテーマのものが多かった気がします。坪内逍遥の「細君」なんかはその典型で、なんで女性ばっかりこんな不幸に、と物悲しさを通り越して若干腹立たしい(苦笑)。広津柳浪「雨」、樋口一葉「わかれ道」なんかも、貧乏で女性が不幸になる系ですが、まだしも男女の間に愛情があるのが救い。

    作者名にもタイトルにもインパクト大な嵯峨の屋おむろ「くされたまご」は、ふしだらな女性教師が登場するんですが、これはこれで当時の、教育のある女は生意気、という女性蔑視の風潮が反映されているそうで、同じようにだらしなくても、悪いのは男ではなく女、という空気がちょっと感じられました。そんな男中心社会に対抗しているのが、樋口一葉以外では唯一女性の清水紫琴「こわれ指環」。離婚について女性側の視点で語られています。

    鴎外の「舞姫」はもはや説明不要でしょう。鏡花の「龍潭譚」も、いかにも鏡花な幻想譚で大好物。幸田露伴の「対髑髏」は、タイトルでオチがわかってしまうのがネックでしょうか(笑)。雨月物語や、それこそ鏡花の好きそうな題材なのに、露伴が書くとさほど幻想譚ぽく感じない不思議。

    比較的明るいなと感じたのは山田美妙の「この子」と尾崎紅葉の「拈華微笑」。前者は婚約者の浮気を疑う男の謎解き風の展開で、とりあえずラストがハッピーエンドなだけでも貴重。後者は、現代なら通勤電車での一目惚れみたいなノリでしょうか、名前も知らない男女の恋愛未満の関係がちょっとコミカルで、皮肉ながらもくすっと笑えました。

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著者プロフィール

1947年、宮城県に生まれ、横浜で育つ。早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士後期課程退学。山梨英和短期大学専任講師を経て、早稲田大学教育学部専任講師、助教授、教授(のち組織変更により教育・総合科学学術院教授)を歴任。現在、早稲田大学名誉教授。専門は日本近代文学、主に谷崎潤一郎を研究。著書に『物語の法則』『物語のモラル』『文学のなかの科学』『谷崎潤一郎 性慾と文学』などがあり、編著書には『地震雑感/津浪と人間 寺田寅彦随筆選集』『怪異考/化物の進化 寺田寅彦随筆選集』『寺田寅彦セレクションⅠ・Ⅱ』(いずれも細川光洋氏との共編)などがある。

「2020年 『寺田寅彦『物理学序説』を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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