茨木のり子詩集 (岩波文庫)

制作 : 谷川 俊太郎 
  • 岩波書店
4.13
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本棚登録 : 313
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003119518

作品紹介・あらすじ

青春を戦争の渦中に過ごした若い女性の、くやしさと未来への夢。スパッと歯切れのいい言葉が断言的に出てくる、主張のある詩、論理の詩。素直な表現で、人を励まし奮い立たせてくれる、"現代詩の長女"茨木のり子のエッセンス。

感想・レビュー・書評

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  • 茨木のり子さんの詩を読むとき、私は自分の祖母のことを思い出す。茨木さんと私の祖母は大正15年、同じ年の生まれだ。亡くなったのは茨木さんが平成18年、祖母が平成20年だから、二人とも同じ時代に生きたと言っていい。

    日本の戦後詩を牽引した大詩人の茨木さんと、専業主婦だった私の祖母との間に、もちろん個人的な繋がりはない。茨木さんは、帝国女子医学専門学校(現・東邦大学)を卒業後、医師と結婚し、自身も文筆家として優れた業績を残した。いっぽう私の祖母は、尋常小学校を卒業後すぐ奉公に出され、工場労働者と結婚し、4人の子の育児と義理の両親の介護で一生を終えた。二人の人生には、悲しいほど交わるところがない。文芸に親しむどころか、祖母は文盲とは言わないまでも、日常生活をかろうじて送れる程度の識字能力しか持ち合わせていなかった。「新しい女」とは縁遠い人生を送った女性だった。

    にもかかわらず、茨木さんの詩の中に、私はしばしば祖母の姿を見いだす。人妻の肩の匂いに憧れた少女の中に(小さな娘が思ったこと)。爆撃によって破壊された町で、ひとり空を見上げた女性の中に(わたしが一番きれいだったころ)。進学をあきらめて家庭に入り、泣きながら男衆の宴会の世話をする主婦の中に(大学を出た奥さん)。夫に先立たれた妻の中に(その時)。生前多くを語らなかった祖母の、心の奥に封印された喜びと悲しみを、私はこれらの詩の中に見る。昔から何度も繰り返され、これからも何度も繰り返されるであろう、女の人生の希望と失望を見る。

    「自分の感受性くらい自分で守れ」という激しい詩で知られる茨木さんだが、決してタフなだけの人ではなかったことが、この詩集を読むとわかる。戦争を挟んで急激に変化する社会と、情けないほど変化しない女性の立場とのはざまで、力強い言葉を書き連ねつつも、物言わぬ女性への共感を忘れなかった人だったのだと思う。

    祖母は毎朝30分かけて新聞を読むことを自らに課していた。彼女の読解力では書いていることの半分も理解できなかったが、勉強をやり直そうとするかのように、晩年までその習慣を変えることはなかった。祖母を突き動かしていたものは、茨木さんに詩を書き続けさせたものと、たぶん同じだったと思う。その一点において、二人は同じ時代を生きた同志だったのだ。

    • nejidonさん
      佐藤史緒さん、こんばんは(^^♪
      一冊の本から思い起こすのがお祖母さまというのが、なんとも素敵です。

      教科書に載ることはないのですが...
      佐藤史緒さん、こんばんは(^^♪
      一冊の本から思い起こすのがお祖母さまというのが、なんとも素敵です。

      教科書に載ることはないのですが、茨木のり子さんの詩では「さくら」が殊に好きです。
      毎年さくらの季節になると思い出して、「行かねば」とせっせと足を向けます。
      クラッと陶酔するような詩です。
      まぁ私の感じ方かもしれませんんが。
      佐藤史緒さんは、特にお好きな詩はありますか?
      2018/07/18
    • 佐藤史緒さん
      nejidonさん、いらっしゃいませ
      (*´∀`*)
      「さくら」、ちょっと怖いような、美しい詩ですよね。なんとなく西行の歌や、坂口安吾の...
      nejidonさん、いらっしゃいませ
      (*´∀`*)
      「さくら」、ちょっと怖いような、美しい詩ですよね。なんとなく西行の歌や、坂口安吾の「桜の森の満開の下」みたいな世界を思い浮かべます。「死こそ常態 生はいとしき蜃気楼」のくだりは、「うつし世は夢 夜の夢こそまこと」と言った江戸川乱歩に通じるものも感じます。

      私が好きなのは「大学を出た奥さん」ですね。レビューで取り上げた部分だけみると悲惨な感じですが、全体としてはユーモラスな作品なんですよ。大学出の奥さん(当時はパンダ並みに珍しい)が、旧家に嫁入りして女の苦労を味わいながらも、逞しく地域に根をはって生きてく様子が描かれてます
      ٩( 'ω' )و
      2018/07/19
  • 文庫になったら、ポケットに忍ばせておくことが出来るからイイね。。。

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    「青春を戦争の渦中に過ごした若い女性の、くやしさと、それゆえの、未来への夢。スパッと歯切れのいい言葉が断言的に出てくる、主張のある詩、論理の詩。ときには初々しく震え、またときには凛として顔を上げる。素直な表現で、人を励まし奮い立たせてくれる、「現代詩の長女」茨木のり子のエッセンス。(対談=大岡信、解説=小池昌代)」

  • 茨木さんの詩を読むとなんて人間ってちっぽけなんだろう、自分は何を小さなことにこだわってるんだろうってつくづく感じる。
    茨木さんの領域には到底達することはできないけど、勇気と強い気持ちを少しもらえる。
    やりたいことをやろう。
    人じゃない、自分の考えで進もう。
    若い時やるだけやってみよう。
    足腰が弱ってきたら心を強くしよう。

    茨木さんの詩は、強くやさしく僕の心に響く。
    限りない想像力を与えてもらえる。

    茨木のり子さん、ありがとう。

    茨木さんを教えてくれてありがとう。

    • 9nanokaさん
      自分の考えで進もう、足腰が弱ってきたら心を強くしようっていいですね(^^)ナイスアイディアです。
      まさしく「全集」に見えましたが、お気に入...
      自分の考えで進もう、足腰が弱ってきたら心を強くしようっていいですね(^^)ナイスアイディアです。
      まさしく「全集」に見えましたが、お気に入りがありましたでしょうか?
      私は、自分の感受性くらい、木の実、汲む、知名、さくら…あたりが好みでした。
      2015/02/25
    • komoroさん
      自分の感受性くらい。は不動の1位です。
      山小屋のスタンプ、もっと強く、さくら、いいですね。
      自分の感受性くらい。は不動の1位です。
      山小屋のスタンプ、もっと強く、さくら、いいですね。
      2015/02/25
  • 言葉は美しいと心から思った。
    こんな言葉を持ちたいと思った。

    詩人はまるで音楽家のようだ。言葉で平和の歌を歌っている。

  • 現代詩の精華。

  • 先日読んだ ウドウロク で、「自分の感受性くらい」が紹介されていて、ああまた読みたいと自分の書棚を探したが、手持ちのものが見つからず。
    手元に置きたいと探してこの本を見つけた。いままで発表されたなかから、谷川俊太郎氏が選び、発表された書籍の順に紹介されている。

    自分に厳しい印象が強かったが、その繊細な感受性で紡ぎ出されたことばにしばしばはっとする。
    作者が重ねた年月を追いながら、少しずつ読んでいる。

  • 茨木のり子詩集。谷川俊太郎先生が選んだ茨木のり子先生の詩集。心が打たれる素敵な詩がたくさん詰まった一冊。この本を読めば詩の素晴らしさに気付く方も多いと思います。

  • 茨木のり子さんの詩集は何冊か書棚に並んでいるが、文庫本で手軽に繙けるのが便利そう。これは買って手許に置いておきたい。

  • 分かりやすい言葉で普遍的な思いが書かれている……のだと思う。「歳月」とそれ以外で全く違っている。父子家庭の娘によくある夫の愛し方をしているんじゃなかろうか。戦争の影響も時折垣間見えるがそれも時代、とさらっと流してしまう<公>の部分で詩が形作られている。父の死も夫の死も戦争に青春時代を潰されたのも彼女の<私>の中には多大にあったろうに、それが霞みがかってるのは、それこそ彼女が他者に倚りかからないからなんだろう。

  • 偶然どこかで見かけた「自分の感受性くらい」を探して、ようやく手にすることができました。
    谷川俊太郎さんが選ばれていて、解説にかえて、まで最後までじっくり楽しめました。

    「自分の感受性くらい」を読むと、毎回涙が出てきます。
    2016.03.13

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