竹久夢二詩画集 (岩波文庫)

制作 : 石川 桂子 
  • 岩波書店 (2016年9月17日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003120811

竹久夢二詩画集 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 夢二ファンで、かつ岩波文庫ファンの私にとっては、まさに待望の一冊です。

    常々、夢二の詩集が岩波文庫に収められていないことを、もどかしく思っておりました。確かに、夢二の作品は正統派の近代詩とは違います。島崎藤村の格調高さも、中原中也の慟哭も、茨木のり子の野生の生命力も、夢二にはありません。代わりにあるのは、甘酸っぱさを感じさせるほどのリリシズムと、切ないまでのノスタルジーです。先に挙げた詩人よりも、北原白秋や野口雨情のような童謡作家に近い印象です。もっとも、童謡作家と同列に並べるには、夢二の詩は彼の美人画と同様、少々なまめかしすぎるわけですが…。

    「黒船屋」という絵を、誰もが一度は目にしたことがあるでしょう。日本髪に和服の美女が黒猫を抱いて座っている絵で、夢二の画家としての代表作です。画家として、夢二は生前から既に名声を得ていました。しかし、詩人として評価されるには、それがかえって妨げになっているようにも見えます。じっさい夢二の詩は、彼自身による挿絵と分かちがたく結びついて独自の世界を形成しているため、「詩人は言葉だけで勝負すべきだ」と考える人には、夢二の表現形式は邪道に見えるのかもしれません。

    「夢二の詩は文学か否か」という議論は岩波書店の編集部でも一度は為されたのではないでしょうか。その問いに対し、本書の出版という形で肯定的な答えが出されたことは、快挙だと私は思います。折しも今年、ロック歌手のボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞しました。「ディランの歌詞は文学か否か」という議論が、今や世界のいたるところで進行中だと聞きます。どのような意見がでるにせよ、これらの問いはやがて、「そもそも文学とは何か」という次数の繰り上がった問いへと昇華され、人間の知性を深化させてゆくことでしょう。

    …話が脱線してしまいました。およそ分析的な態度ほど、夢二の詩にふさわしくないものはありません。解説など読まずに、ただゆっくりとページを繰り、大正ロマンの香りに酔いしれるのが良いのです。古い映画音楽などを聞きながら、深煎りの珈琲を片手に、ぱらぱらと読んでいきたい詩集です。

  • 竹久夢二の詩やエッセイが収録されている1冊。なので、文庫の割に厚みがある。
    夢二といえば、美人画とかモガのイラスト、作詞もやってたっていう事くらいしか知らなかったけど、そもそもは書きものをして生きていこうとしていたらしい。自分の感覚や感情をイラストにするっていうのは、自分が創作する動機と似たものがある。似て非なるものかも知れないけど、太宰の言う自分の身から出たものだけを表現したいって感じ?

    エッセイでは色彩や被服、イラストレーションそのものについて、本当に真剣に考えてたんだなとか。印象深かったのが、関東大震災の後の話。東日本大地震の時も、直接被害に遭っているわけでは無かったけど、先の見えなさとか怖さで、自分の見えている色がモノクロだったな。色彩が輝き出すのは自分の身の安全、安心が見えた時。マズローの言う欲求の階層まさにそのものだ。
    それから、モデル娘の話も興味深かった。まー乙ゲーとかでよくありがちな設定だろうけど、現実の創作家は個の人間として見ちゃあいないんだなー。

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