竹久夢二詩画集 (岩波文庫 緑208-1)

  • 岩波書店 (2016年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784003120811

みんなの感想まとめ

詩と絵が一体となった独自の世界を展開する作品は、竹久夢二の魅力を存分に引き出しています。夢二の詩は、甘酸っぱさや切ないノスタルジーを感じさせるリリシズムにあふれ、彼の美人画と同様に独特の雰囲気を醸し出...

感想・レビュー・書評

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  • 夢二ファンで、かつ岩波文庫ファンの私にとっては、まさに待望の一冊です。

    常々、夢二の詩集が岩波文庫に収められていないことを、もどかしく思っておりました。確かに、夢二の作品は正統派の近代詩とは違います。島崎藤村の格調高さも、中原中也の慟哭も、茨木のり子の野生の生命力も、夢二にはありません。代わりにあるのは、甘酸っぱさを感じさせるほどのリリシズムと、切ないまでのノスタルジーです。先に挙げた詩人よりも、北原白秋や野口雨情のような童謡作家に近い印象です。もっとも、童謡作家と同列に並べるには、夢二の詩は彼の美人画と同様、少々なまめかしすぎるわけですが…。

    「黒船屋」という絵を、誰もが一度は目にしたことがあるでしょう。日本髪に和服の美女が黒猫を抱いて座っている絵で、夢二の画家としての代表作です。画家として、夢二は生前から既に名声を得ていました。しかし、詩人として評価されるには、それがかえって妨げになっているようにも見えます。じっさい夢二の詩は、彼自身による挿絵と分かちがたく結びついて独自の世界を形成しているため、「詩人は言葉だけで勝負すべきだ」と考える人には、夢二の表現形式は邪道に見えるのかもしれません。

    「夢二の詩は文学か否か」という議論は岩波書店の編集部でも一度は為されたのではないでしょうか。その問いに対し、本書の出版という形で肯定的な答えが出されたことは、快挙だと私は思います。折しも今年、ロック歌手のボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞しました。「ディランの歌詞は文学か否か」という議論が、今や世界のいたるところで進行中だと聞きます。どのような意見がでるにせよ、これらの問いはやがて、「そもそも文学とは何か」という次数の繰り上がった問いへと昇華され、人間の知性を深化させてゆくことでしょう。

    …話が脱線してしまいました。およそ分析的な態度ほど、夢二の詩にふさわしくないものはありません。解説など読まずに、ただゆっくりとページを繰り、大正ロマンの香りに酔いしれるのが良いのです。古い映画音楽などを聞きながら、深煎りの珈琲を片手に、ぱらぱらと読んでいきたい詩集です。

  • 夢二 幻の油彩画・アマリリス入手 岡山の郷土美術館 24年巡回公開:山陽新聞デジタル|さんデジ
    https://www.sanyonews.jp/article/1491406

    竹久夢二詩画集 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b266321.html

  • 画家で詩人の竹久夢二(1884-1934)による、詩、エッセイ、日記、そして絵画。

    当時の日本社会は、第一次大戦を経て一気に近代化が進み、ちょうどモダニズム文化が都市部の中産階級を中心に浸透していた時期だろう。現代的な文化の源流としての都市文化、大衆文化、消費文化が出現した頃である。そのような時代状況のなかで夢二は、少女雑誌に詩や挿絵を発表したり美人画や書籍の装丁に広告デザインさらには童謡を手掛けたりと、当時勃興しつつあった新たなメディアを舞台に多方面の活躍をしており、いまでいうマルチクリエイターのような存在だったのかもしれない。

    少女の恋の物悲しさ、わけもなく漂う憂愁や寂しさ。そこには現実の生々しさや泥臭さはほとんど感じられず、少女期の内面に独特の透明で消え入りそうな浮遊感がある。短い詩句は不必要に多くのことを語らず、その余韻が詩集に特有のページの余白に広がっていくようで、すると、人間というのは、一切に先立って、ただ哀しみのうちにあるような気がしてくる。

    詩では「けふ」「終」「こころ」「風の散歩」「捨身」がいい。挿絵では冒頭「(波は)」のものが好きだ。「けふ」(p107)を引いておく。

     きのふのための悲しみか
     明日の日ゆゑの侘しさか
     きのうもあすもおもはぬに
     この寂しさはなにならむ。

    「清く悲しくあるべし。悲哀を謀殺してはならない。孤独を暗殺[かえりう]ちにしてはならぬ。聖なる神に裏ぎってはならぬ」(1915年9月21日の日記、p290)。



    「私の画は決して人に見せる為のものではなかった。ただ自分の感興を記録するために、あらゆる形式の中からこれを択んだのである。それでただ描いておればいい、それが総[オール]であった」(『中学世界』1910年6月10日、p216)。

    腹を括った当事者だけが到り着く、この潔さがいい。



    「おれはとてもだめだ。もっとフレッシュな新しい生々しい感覚が感じられないものかしら、これでは 今、筆をとって絵を描いたとて、当今の日本の画工諸君以上の見方も描方も出来はしないだろう、もっと驚きたい、もっと痛感したい、[略]。恋人があった頃には月はもっと美しかった、もっと絶対だった、私はそれが悲しい、恋人がないのよりは、月に狎れたのが悲しい、おれの芸術はどこにあるのだろう」(1910年8月21日の日記、p286-287)。

    「善いことを望んでいながら、なんにもしない。ただその日その日のために日を暮している。そして望んでいることの果されない不安と悔とに責められる良心の反逆を晦ますためにいろいろな刺激を求める。[略]。しかしやはり退屈だ。酒をのんでもすっかり酔うことは出来ない。一杯声をあげて唄うことも出来ない、女に溺れることも出来ない。やはり善良で弱い自分の心へかえってくる。そして善良さに徹底することの出来ない自分を見る。強く生きてゆく自分を見出すことも出来ない。さりとて弱く溺れてゆくことも出来ない、中途半端な所にいる。毎日こうした倦怠をつづけている」(1917年5月21日の日記、p291)。

    いま以てこれは自分の姿。

  • 雑司ヶ谷霊園に眠る竹久夢二の詩をいつか読んでみたいと思っていたが、ついに読んだ。非常に優しい詩と絵が魅力的だった。

  • 竹久夢二の詩やエッセイが収録されている1冊。なので、文庫の割に厚みがある。
    夢二といえば、美人画とかモガのイラスト、作詞もやってたっていう事くらいしか知らなかったけど、そもそもは書きものをして生きていこうとしていたらしい。自分の感覚や感情をイラストにするっていうのは、自分が創作する動機と似たものがある。似て非なるものかも知れないけど、太宰の言う自分の身から出たものだけを表現したいって感じ?

    エッセイでは色彩や被服、イラストレーションそのものについて、本当に真剣に考えてたんだなとか。印象深かったのが、関東大震災の後の話。東日本大地震の時も、直接被害に遭っているわけでは無かったけど、先の見えなさとか怖さで、自分の見えている色がモノクロだったな。色彩が輝き出すのは自分の身の安全、安心が見えた時。マズローの言う欲求の階層まさにそのものだ。
    それから、モデル娘の話も興味深かった。まー乙ゲーとかでよくありがちな設定だろうけど、現実の創作家は個の人間として見ちゃあいないんだなー。

  • 「大正ロマンを象徴する画家《解説》」竹久夢二の詩画集。「詩画集」なので絵は詩に添えられた挿画のみだが、明治の終わりから昭和初期までの詩が少しづつ採られ、夢二の詩業のおおよそを振り返ることができる。

    おや、これは?と思う詩があり、解説で夢二が明治にはすでにマザーグースを紹介していたと知った。北原白秋「まざあ・ぐうす」が大正11年であるから随分と早い。

    後半にエッセイが収められていて、夢二のストーキング写生ライフが明らかに。詩人になりたかったと言っていますが、これは絵描きの業ではないかなあ。

    「婦人のあとをつけて、電信柱に頭をぶっつけることは稀ではなかった。」

  • 『竹久夢二詩画集』
    親しみやすくて染み込む言葉。
    綺麗な絵。
    美しい物への執念。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/701196

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著者プロフィール

(たけひさ・ゆめじ)画家・詩人・デザイナー・作家。1884年岡山県生まれ(本名・茂次郎)。1901年に上京し、翌年、早稲田実業学校に入学。1905年、平民社の機関誌「直言」にコマ絵を発表、その後「平民新聞」にも絵や文章を発表する。翌年には「東京日日新聞」、「女学世界」、「文章世界」などからも依頼を受けるようになり、早稲田実業学校を中退。1909年に初の画集『夢二画集 春の巻』(洛陽堂)を刊行。1914年、日本橋に自身がデザインした小物などを売る「港屋」を開業。以降、画家、詩人、グラフィックデザイナー、翻訳家、小説家として幅広い活躍を続ける。1931年から33年にかけて欧米各国を訪問。1934年、49 歳で逝去。小説作品に、「岬」(1923)、「秘薬紫雪」(1924)、「風のように」(同)、「出帆」(1927)などがある。

「2022年 『秘薬紫雪/風のように』 で使われていた紹介文から引用しています。」

竹久夢二の作品

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