若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2018年11月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784003121924

感想・レビュー・書評

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  • ずっと読みたかった、三島由紀夫の戯曲『黒蜥蜴』です。
    ブク友さんも仰ってた通り、三島由紀夫の文章は美しいです。まるで真っ赤な薔薇の花束を貰ったかのよう。まるで恋文を貰ったかのよう。(どちらも貰ったことありませんが……)そんな煌びやかで華やかな台詞の応酬に胸が高鳴ります。

    舞台の場所が大阪から東京へと原作とは変更になり、主要な人物でもある雨宮と早苗のエピソードもかなり手を加えられています。更にミステリの様相はぐっと抑えられ、逆に原作よりも前面に押し出されたのは、黒蜥蜴と明智小五郎の恋愛模様でした。
    でも、ストーリー的には原作と変わっていないし、三島がこの『黒蜥蜴』をとても大切にしているのが文章から伝わってきて、乱歩ファンも満足出来る戯曲だと思います。

    とにかく、緑川夫人としての黒蜥蜴と明智が、宝石と探偵という職業を賭けてトランプをするシーン。ここでの2人の台詞の掛け合いに、心を鷲掴みにされます。

    “・・・要するにあなたは報いられない恋をしてらっしゃる。犯罪に対する恋を。そうじゃなくて?

    でも己惚れかもしれないが、僕はこう思うこともありますよ。僕は犯罪から恋されているんだと。犯罪のほうでも僕に対して、報いられない恋心を隠しているんだと。”

    お互いに相手を仕留めるかのようなシーンです。スリルとサスペンスなシーンです。
    三島の描く2人の会話によって、ここで黒蜥蜴が明智に対して恋に落ちたのが、よくわかります。
    もし舞台を観られたら、この恋に落ちた瞬間を黒蜥蜴と共有出来たんじゃないかと思っちゃいます。

    そして、私が原作で印象的だった場面に、黒蜥蜴だからこそ、愛する明智を殺すシーンがありました(詳しく書くとネタバレになるので、あえて“殺す”としました)。
    原作でも彼女が涙を流すのですが、この戯曲での彼女の明智に対しての長い独白は、とてもロマンチックでした。
    実は、この悲恋に対して、切なさで胸が締め付けられる自分と、そう、そうなのよ、黒蜥蜴はそうじゃないといけないのよと、ちょっぴり残酷になっている自分がいました。ほんと舞台でこの場面を観ることが出来たら、ぞくぞくしただろうな。

    「・・・あなたがこれ以上生きていたら、私が私でなくなるのが怖いの。そのためにあなたを殺すの。……好きだから殺すの。好きだから……。」

  • 以前から読みたいなぁと思っていた『黒蜥蜴』。
    ブクログでフォロワーさんにぜひと勧められたことをきっかけに購入しました。
    かの有名な江戸川乱歩×三島由紀夫!
    もう面白くないわけがない!!と思っていましたが、やはり予想は的中。
    ストーリーの流れ、随所のト書きから想像できる演出の数々、最後の終わり方…全ての歯車がカチカチと合わさって作品の美しさが極まって行くような感覚が心地良かったです。
    そして、私の中では三島由紀夫の戯曲といえば言葉の美しさがあります。
    今回も一切の無駄が省かれ、洗練された台詞がテンポ良く流れる展開でその魅力に浸ることが出来ました。

  • 岩波文庫から三島の戯曲3本立て、なんと黒蜥蜴収録!表紙も岩波文庫らしからぬ、映画版の美輪様黒蜥蜴と生人形三島。乱歩本人のお墨付きだけあってやはりこの戯曲は素晴らしい。

    大筋は原作通りだけど、推理ものというよりは大人の恋愛ものの印象を受ける。それでも原作の良さを損なうどころか黒蜥蜴も明智探偵も一層魅力的な人物になっていて、原作よりむしろこの戯曲のほうがある意味完成度は高いと言えるかも。セリフはほとんど三島の創作にも関わらず、原作から汲み取った黒蜥蜴の美学や犯罪哲学を、三島がよりいっそう耽美にあますところなく語ってくれた感じ。

    一番大きな改変は、場所かな。乱歩の原作では前半が東京のホテルで後半は大阪(取引場所は通天閣)だったけど、戯曲では逆。大阪のホテルで始まって、取引場所は東京タワー。ふと気になって調べてみたら、乱歩の原作発表は昭和9年(1934年)三島の戯曲発表は昭和36年(1961年)東京タワーの竣工は昭和33年(1958年)つまり乱歩の原作の時点では東京タワーはまだ存在していなかったんですね。対する通天閣(初代)は明治45年(1912年)の建設。なるほど(豆知識)

    「若人よ蘇れ」は昭和20年8月、肺病や喘息などの持病で徴兵を免れた東大学生寮の若者たちの群像劇。まだ戦争中の1幕目、若者たちは絶望と希望を語り、2幕目の終戦で開放的な気分を味わうも、敗戦に納得がいかない一部の過激な軍人たちのテロ計画に巻き込まれそうになる。3幕目では叛乱は事前に鎮圧され学生たちも寮を去ることになるが・・・。

    希望と絶望を行ったり来たりする当時の若者たちの心情がとてもよく描かれている。平和、平穏を願う気持ちと、劇的な死を求める気持ち。もう終わったんだよと急に言われても気持ちを切り替えられない者。明日をも知れない命だからこそ燃え上がった恋は戦争と共に終わってしまう。ラストはある意味とても前向きなので、自死した少尉を三島の死と重ねることはしたくない。けど、つい考えてしまう。

    「喜びの琴」は公安と左翼だの右翼だのの攻防を描いていて、この本の収録作の中ではやや理解に時間がかかりました。

    ※収録
    「若人よ蘇れ」「黒蜥蜴」「喜びの琴」

  • 貸出状況はこちらから確認してください↓
    https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00289654

  •  「黒蜥蜴」だけでいいのに、岩波文庫には「サロメ」だけの薄い本もあるじゃないか、と最初は思った。
     もったいないので、「若人よ蘇れ」「喜びの琴」「黒蜥蜴」の順に読む。
     自分としてベストは「喜びの琴」。三島由紀夫と演劇の関わりが語られる時、避けて通れない「喜びの琴」事件。ようやく問題作を読めた。北見治一「回想の文学座」を読み返したくなる。
     「黒蜥蜴」は乱歩による原作を先に読んでいるし、美輪明宏による映画版も観ているので、虚心坦懐に楽しめなかった。
     印象的な台詞「女でさえブルー・ジンズを穿く世の中に、彼女は犯罪だけはきらびやかな裳裾を5米も引きずっているべきだと信じている」。ドラァグ・クイーンのドラァグの意味は「引きずる」であるし。

  • 知名度の割に文庫版は入手困難だった『黒蜥蜴』が岩波文庫から刊行。やっぱり学研M文庫から出たっきりで、新潮文庫に収録されなかったのが原因だろう。
    同時収録作が『若人よ蘇れ』『喜びの琴』という辺りがマニアック過ぎて頭の中が『???』なのはご愛敬w
    乱歩の著作権も切れたことだし、三島の著作権もそろそろ切れることだし、原作と、戯曲版を合本にした、『黒蜥蜴スペシャル』みたいな文庫を出しても面白いんじゃないかと思うのだが、どうだろうか。

  • 図書館の本を読む▼
    https://kguopac.kanto-gakuin.ac.jp/webopac/BB00639011

    三島由紀夫は,小説,評論,戯曲の全分野で天才を発揮した.劇作にこそ三島文学の本質が表れている.「若人よ蘇れ」「黒蜥蜴」「喜びの琴」の3篇を収録.華麗,端正なる台詞の応酬,結末に至るまで緻密に構成された展開,時代状況と人間の内面を見事に表現した作品から,三島戯曲の多彩なる魅力が発散する.(解説=佐藤秀明)(出版社HPより)

  • なんと楽しい黒蜥蜴

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/720675

  • 三島由紀夫の戯曲集。『若人よ蘇れ』『黒蜥蜴』『喜びの琴』の3篇を収録。
    どの作品も洒落た台詞回しや、特徴的な登場人物が魅力的。
    『黒蜥蜴』は乱歩の原作を読んでから、こちらを読んでみたけれど、黒蜥蜴と明智の掛け合いが翻案によって増え、また洗練されていること、第一幕から第三幕までかけて、ふたりの心情の描写が丁寧に表出されていることで、双方の対照性と親和性がよりドラマチックに浮き上がって感じられた。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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