破れた繭 耳の物語1

  • 岩波書店 (2019年4月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (226ページ) / ISBN・EAN: 9784003122129

作品紹介・あらすじ

甲高い少女の叫び声、ネズミ花火の炸裂音、空襲警報、戦争が終わったあとの、静穏と澄明――。耳底に刻まれた〈音〉の記憶をたよりに、人生の来し方を一人称〈私〉ぬきの文体で描く自伝的長篇『耳の物語』二部作の前篇。繊細な主人公が繭の中でふるえながら成年に達するまでの青春時代を、隠喩に満ちた彫心鏤骨の文章で綴る。

みんなの感想まとめ

音の記憶を頼りに過去を掘り起こす自伝的長篇は、主人公の幼少期から大学時代までの成長を描いています。耳にまつわる比喩が多用される序盤は、やや退屈に感じる読者もいるかもしれませんが、中盤からはパン焼き見習...

感想・レビュー・書評

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  • 『耳の物語』とは、昔の香水瓶の匂いから過去をとりだしたボードレールに触発されて、自分は耳の記憶を頼りに過去をとりだしてみようと思いあたり、自伝を書き始めたもの。『破れた繭』『夜と陽炎』の全二冊。本作は、幼少期から大学時代まで。

    序盤は”耳”にこだわるあまり、主語の無い、比喩を多用したダラダラとした文章が続きます。正直言って、あまりに退屈極まり、読むのをやめようかと思いました。中盤以降は、パン焼き見習工として働き始めたあたりから面白くなっていき、終盤の谷沢永一や向井敏との出会いから、ラストでの”女”との間のアレコレまで、とても面白く読むことができました。

    結局、中盤以降の”耳”にこだわらない文章の方が面白くなっていったのは、何とも…おそらく、働くようになってからの記憶の方が、終戦後の食糧難の記憶と相まって、確かなためかもしれない。

    なお、作中で語られる本や映画の話しが興味深かった。以下、作品覚え書き。

    小説『西部戦線異状なし』『十八史略』『モンテクリスト伯』梶井基次郎『檸檬』中島敦『文字禍』『悟浄出世』(傑作と評している。自分も賛同)『カルメン』『ゴッサムの賢人』

    作家の佐藤春夫、魯迅、サルトル、チャールズ・ラムの随想集。他に蘇東坡、ルイ・アラゴン、アンリ・ミショー、ジャック・プレヴェールなどの詩人。

    映画『パリ祭』『モダン・タイムス』『スミス都へ行く』『大いなる幻影』『哀愁』シャーロック・ホームズなど。俳優のイングリッド・バーグマン、ゲイリー・クーパー。

    ところで、タイトル頁をめくった直後のエピグラフに、ジョージ・オーウェル『一九八四年』から、「最高の書物とは、読者にわかりきっていることを語ったものだと、彼は悟ったのである。」の言葉が引用されています。
    ちなみに、ハヤカワ文庫では、「最上の書物とは、読者のすでに知っていることを教えてくれるものなのだ、と彼は悟った。」となっています。微妙なニュアンスの違いですが、本書の内容のように「わかっていてもどうにもならないこと」が書かれている『耳の物語』には、岩波文庫のエピグラフに使われている訳文の方が、言い得て妙だと思いました。

  • 倦怠、憂愁、果てしない様々な不安と共にある姿は、読む側に希望とも言える生きる上でのしたたかさを感じさせてもらえる。

  • 開高健の耳の記憶による自伝。地元が殆ど同じであるため、大阪市の戦中から戦後の雰囲気に触れられるだけでも十分に読む価値あり。天王寺駅に遺体が転がっていた情景などは、いくら良く知った街と言っても想像することはできない。等身大の自伝であるため、きれいとは言えない描写ばかりで読む人によっては苦手かもしれない。自分は良くも悪くも人間らしい作品に惹かれるため、○

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729219

  • 文学の味わい。

  • 著者:開高健(1930-1878、大阪市天王寺区、小説家)

  • 表現力の凄さに感動。

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著者プロフィール

開高 健(かいこう・たけし):1930年、大阪生まれ。大阪市立大学を卒業後、壽屋宣伝部(現サントリー)にてコピーライターとして活躍。同時に創作を続け、57年『パニック』でデビュー。58年『裸の王様』で芥川賞、ベトナム戦争現地へ赴いた経験に基づく『輝ける闇』で68年に毎日出版文化賞、79年『玉、砕ける』で川端康成文学賞、81年に一連のルポルタージュ文学について菊池寛賞を受賞。ほか『日本三文オペラ』『ロビンソンの末裔』『オーパ!』『最後の晩餐』など、代表作・受賞歴多数。89年逝去。

「2024年 『新しい天体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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