辰巳巷談・通夜物語 (岩波文庫)

著者 : 泉鏡花
  • 岩波書店 (1954年12月25日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003127131

辰巳巷談・通夜物語 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 再読。「辰巳巷談」は、ひらたく言えば四角関係。両想いの若い男女お君と鼎、しかしお君のほうには落籍したときの借金を負ってくれた宗平という男がおり、鼎には母のように(実際母だったのか?)溺愛してくる沖津という女がいる。正直みながそれぞれに身勝手で、あまり誰にも同情できない。もっと長編になりそうな物語を端折って詰め込んだ感もあってイマイチ。

    「通夜物語」も、なんだか微妙だった。売れない絵描きでチンピラみたいな色男の清さんとその愛人の遊女・丁山、金に困って清の伯父の家に強請タカリに出かけるも、失敗。かつて清を慕っていた従妹のお澄のピュアさの前に清はくじけ、そのお澄の夫や母に嘲られて丁山は逆上。血でもって襖に絵を描くというラストシーンは凄絶だけど、正直同情の余地があまりない。そもそも強請に出かけているので、正義がどっちにあるのかよくわからないんだよなあ。モヤモヤ。

  • 2編収録。
    どちらもさほど長い話ではないが、濃厚な鏡花の世界を堪能した。
    個人的には『通夜物語』の方が好きかな。

  •  「辰巳巷談」(『新小説』1899.2)は、元遊女・お君と色の白くて華奢な少年・鼎との悲しいすれ違いを描く物語。「三尺角」同様深川を舞台とするが、ここでは〈奇蹟〉は起こらない。むしろ、利に敏い新造・お重の策略と、妻と子を病の中に置き去りにしてもなおお君を妾につなぎとめたい宗平の妄執と、鼎を自分の我が子のように庇おうと決めた女行商人・沖津の願いとの三者が三すくみとなって生まれてしまった悲劇が、淡々とした筆致で語られる。

     「通夜物語」(『大阪毎日新聞』1898.5-)は、なかなか世界観が理解しにくい作品。半ば勘当同様に家を飛び出し、遊女上がりの丁山と一緒になった絵師の清が、親類中で唯一可愛がってくれた叔父の死によっていよいよ行きづまり、通夜に立ち会う喪服さえない中で金策に奔ろうと、かつて自らに思いを寄せていた従妹・お澄の嫁ぎ先で、丁山のかつての馴染み客だった陸軍大佐・篠山六平太の家に強請りに出かける、というストーリー。歌舞伎には何が問題でどんな義理のために人物たちが行動するのかよくわからない作品があるが、読後の印象は、それに通じるものがある。会話の場面、口説きの場面、強請りの場面、ラスト・シーンの血で絵を描く場面など、いかにも上演性を強く意識した構成・展開となっていて、ストーリーの一貫性というよりは、場面ごとの楽しみが追求されている。

  • どちらも花街のもと花魁が物語の重要人物として登場する、鏡花らしい小説。花街といってもいわゆる素人、身請けされたあとの女性で、苦界を抜けてもなお苦しい生活に苛まれる美しい女性達の描写はさすが鏡花といったところ。「辰巳巷談」でお君が花街を出ていく時の文章がとても精巧で、華やかな街の裏に隠された(というかそれが本来の顔であろう)切なさや悲哀がひしひし伝わってきた。それでも花街憧れるなあ。タイムスリップして一度吉原や島原や新町を体験してみたい…いや、私は女子だけど、花魁や太夫じゃなくて、遊ぶ方で^^;
    鏡花らしいと言えるもう一つの側面は相変わらずとんでもない血みどろな展開で物語を占めること。そのこと自体がすでに作品をホラーに絞り上げてるw 学校であった怖い話とかに出てきそうじゃんwとか思ってしまうw 辰巳巷談も通夜物語もあらあれあらと言ううちに登場人物が死んだり胸を突き刺したりして話が終わります。通夜物語は胸を刺した丁山の血で襖に絵を描くっていうんだからもうね…どうしてこうなった!どうしてこうなった! 鏡花はやっぱり過激だなあと思うのです。普段の人柄(というか癖とか)を思うにつけても。
    今更何を言う感じだけど、鏡花の小説の魅力の一つに会話文があると思う。ものすごく正確に描いているから、日本語学の資料にもなりえるんじゃないかってくらい、会話がリアル。言葉の何気ない合間とか、チョッ、とかいう音とか。んー落語に通じるところがあるな…とも思った。
    相変わらずわけのわからない展開でもうどうにでもしてくれって言いたいところですがまだまだ読んでない作品は沢山あります。卒論は終わったけれども、一生付き合いたい作家としてこれからも読んでいければと思います。

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