海神別荘・他二篇 (岩波文庫)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003127155

感想・レビュー・書評

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  • 夜叉が池等と比べると小粒感が免れない。
    ただ戯曲は劇場で見た時はまた違う感想が生まれるものなので、こちらの舞台を見て見たいとも思う。

  • 泉鏡花に初めて触れた作品。坂東玉三郎と市川海老蔵の歌舞伎の鑑賞後に読んだところ、イメージ相俟ってとても美しかったので、星4つ。

  • 泉鏡花 戯曲3編
    設定が面白い〜浦島太郎の竜宮城みたいな海底の国とか、マゾヒズムとか、丑の刻参りとか



    表題「海神別荘」は 美意識高い名言が多い
    *貴く、美しいものは亡びない
    *女の行く極楽に男はいない〜男の行く極楽に女はいない
    *誰も知らない命は生命ではない


    「山吹」は 不倫やアブノーマルな関係から、生きる意味(生きるとは 自分の行きどころを見着けること)を問うている。山吹の意味は 新たな発見、原初的な美しさ。末文の意味は 苦悶自体が生の意味と捉えた








  • 人の娘が海の神に嫁いだり、人形使いが道行く女性を倒錯した世界に引きずり込んだり、男性を呪い殺そうとする女性が女の神に助けられたり...
    何と言うか、妖艶だけでは語りきれない世界観。
    非現実的なストーリーの中でも人間くさい、そんな感じです。
    やっぱり泉鏡花は面白いです。
    ぜひ。

  • 表題作が1番好みだった。

    2作目の雰囲気も好きだな。

  • 表題の「海神別荘」。海の宝を得るかわりに生贄として海に沈められた美しい娘。小舟が沈むが死ぬことはなく遥か深海の海神の殿に迎えられる。そこは素晴らしい夢のような場所であった。そんな素晴らしい現状を、両親に見せたいと願い人間界に赴くが娘の姿は人間の目には大蛇にしか見えない。ぼろぼろになって再び海の底の殿に戻るが嘆き悲しむことを嫌う海神は娘を殺せと命ずる。しかしあわやのところで娘は心変わりし己の幸福に気づく。処刑は取り消され娘と海神は結ばれる。艶のある表現であでやかな海神の世界を堪能できました。

  • 漁師の娘が人身御供として公子の元へやって来る話だが、公子から見た人間の業や見栄、虚栄心の描かれ方が面白い。
    公子が漁師の娘に言うことが正論ばかりで、逆にそれによって漁師の業の深さが浮き彫りになり、読んでいくほど何という父親だという思いが大きくなるが、これほど酷くはなくても誰しも似たような部分があるかもしれないと気づかされた。

    娘が公子に刀を突き付けられて、人間から転生する際の台詞がとても良かった。

  • 表題作の『海神別荘』は、二つの世界を分ける水、垂直構造の舞台設定、「美しい人間」の通過儀礼→転生などが『天守物語』『夜叉ヶ池』と共通している。流れるような文体は勿論のこと、醜い人間の魂が海月になったり、宮殿の侍女の化粧の泡が貝になったりする鏡花の比喩や連想は本当に美しい。「世間」を捨て去ることのできない美女が公子によってたちまち浄化されてしまうのはロマンチシズムの極致と言える。

    『山吹』は幕切れで仕事を選択する画家が地味に強烈。非人情な画家の視点から美を追求する小説は『地獄変』『草枕』等この時代結構多い。

    『多神教』はオノマトペが印象的だった。泉鏡花の描く神や妖怪は残酷だけど、考え方が首尾一貫していてこっちのほうが正しいんじゃないかとか思ってしまう。

  • 『海神別荘』

    『山吹』

    『多神教』

  • 再読。幻想的な怪異の登場する戯曲集。

    「多神教」は、これぞ「ザ・鏡花」なカッコイイ媛神様登場。丑の刻参りがバレて神主らに追いつめられた娘を媛神様が救ってくれて女性読者はスカッと爽快。

    「海神別荘」は海の底の竜宮城のようなところで、珍しく女性ではなく若い男性の海神(乙姫様の弟)が登場。美しい人間の娘を海底に迎えるけれど、この娘の発言が、まあ人間らしいっちゃらしいけど、かなり俗っぽい。それを逐一論破する公子の凛々しさよ。

    「山吹」は少し趣向が違って、怪異そのものではなく、むしろ鏡花の怪異ものに出てくる義理人情のわかる女性妖怪たちの出自が、元は人柱にされた娘だったりする由来譚のようなもの。こういう娘が、眷属を引き連れて、やがて女妖怪になるのだろうなと匂わせる。

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著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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