鏡花随筆集 (岩波文庫)

制作 : 吉田 昌志 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 146
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003127179

作品紹介・あらすじ

「四時とも、私は雨が大好き…」(「雨のゆうべ」)。自然に風土に、生活に食に芸能に、そして思い出に-生活に根ざした随筆にこそあらわれる、もうひとつの鏡花の世界。多彩な題材の五十五篇を精選、現代の読者のために詳細な注を付す。

感想・レビュー・書評

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  • 私にとっては怪談作家である泉鏡花の随筆集。現実世界が対象の文章をあの流麗でみずみずしい文体で読めてうれしい。明治生まれの鏡花だけれど、線が細くて控えめなドジっ子の印象で、特に草花に関する文章などはガーリーと言ってもいいくらい。おじさん臭が全然ない。鏡花の小説をあまり読んでいない私には鏡花への興味をかきたてる本であり、怪談、出身地、当時の文筆家の思い出話などが特に面白かった。

    「入子話」で、鏡花が尾崎紅葉に向島の百花園に連れて行ってもらったエピソードがほぼ恋の話でどきどき。「先生の姿に見惚れながら、園をめぐった」なんてなかなか書けるものじゃないと思うのだけれど、あんまり紅葉先生が好きなせいで、自分が飛ばしすぎなことに気が付かなかったんだろうか。

  • 鏡花さんの、凛々しい文章から可愛いのから、お茶目なのから、――全部随筆で。その中でもおおざっぱに分けるとすると、草花や虫の音などに関する自然のこと、文壇や出版の人間模様、役者評、序や讃、思い出、といったところか。
    文章は口語体の物が多いが、序や讃については凛々しい文語体。全体に短い物が多く、読みやすい。

    「番茶話」が好みであった。蜻蛉の話が良い。「煙管を持たしても短刀くらいに」「火の用心の事」も良い。

  • これらの随筆が書かれた時代には、いわゆる「随筆」なるものがどのように書かれるものなのかということも定まってなかったのではあるまいか。そう思えるほど、あまりに直感的な表現で書かれたこれらの随筆集は、個人的にその内容を理解するのにひどく困難を伴うものばかりであった。

  • 日常、震災などの非日常、人、自然、故郷…。

    関わる、あらゆるものをとらえる作家独自の目と焼き出し方があるのを感じさせられ、それらに接している鏡花の姿が見えてくる。

    梅を干す時の、蠅避けのために吊るした団扇の舞がまばゆく、それを眺める鏡花のすごく楽し気なのがいいなあ。
    本当に清々しい光景。

    昔こっそり熱中して本を読んだエピソードも、少年時代あるあるのようで面白かった。

    感慨深いものから、どたばたや笑える話も多く、交友関係なども興味深い。

  • 夏に鏡花を読むと涼しい。ましてや随筆は。頰を撫でる薫風にも似た凛として歯切れの良い文章が心地よい。流れゆく季節への想い友人達との交流、食についてなどなど鏡花の美意識とエッセンスが濃縮された一冊。師匠の紅葉譲りの擬古文の随筆もあるが王朝時代の古典よりはつっかえずに読み進めることができた。口語体の鏡花に触れることができる貴重な機会な気もする。友人を記した随筆で「煙管を持たせても短刀くらいに女が殺せるほどいなせな切れがないといけない(大意)」という表現には痺れた。関東大震災の随筆が鏡花らしからぬリアリズム。

  • 本文は泉鏡花の随筆を集めたものながら文章世界の源泉、創作への姿勢が伺え、また小説と変わらぬ美しい言葉。聞き書きらしきものには周囲の人が伝えた語りの上手が特に感じられる。巻末の解説は勿論、人物索引が嬉しい。解説は随筆と小説の繋がり、発表の時期からの考察は分かりやすく、また様々な人々の文章からの引用で収録されている鏡花の随筆の魅力が広がる。表紙の露草は鏡花の短くも愛らしい随筆に寄り添う。本文以外も嬉しい一冊。

  • 泉鏡花の随筆を纏めたもので、内容は多岐にわたっている。
    草花や自然の描写が生き生きとしている。鏡花得意の怪異譚もある。しかし一番素晴らしいのは、矢張り女性の描写だと思う。
    しかし、新字新かなで読む泉鏡花ってのも味気ないもんだなぁ……。芥川龍之介や太宰治はそこまで気にならないが、鏡花と鷗外の新字新かなは読みにくくてかなわない。

  • 平凡社ライブラリー「おばけずき」と被っているのはあるかな?

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    「自然に風土に、生活に食に芸能に、そして思い出に。鏡花のまなざしの光源・感性の閃きの精華は、意識に直接根ざした随筆にこそあらわれる。「何日の何時頃、此処で見たから、もう一度見たいといっても、そうは行かぬ」(「一寸怪」)――題材と執筆時期を網羅した全55篇を収録。現代の読者のために詳細な注を付す。 」

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