倫敦塔・幻影(まぼろし)の盾 他5篇 (岩波文庫)

著者 : 夏目漱石
  • 岩波書店 (1990年4月16日発売)
3.41
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003190012

作品紹介

留学体験に取材した『倫敦塔』、アーサー王時代の物語『幻影の盾』など7つの短篇。同時期の『猫』と全く異質なこれらの作品の世界はユーモアや諷刺の裏側にひそむ漱石の「低音部」であり、やがてそれは彼の全作品に拡大されてゆく。

倫敦塔・幻影(まぼろし)の盾 他5篇 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 漱石のロンドン留学時代。

    これがあの『吾輩は猫である』と同じ人が同じ年に書いた作品とは到底思えない。ユーモアなし、風刺なし。幻想的な小品群である。評伝によればこの頃の漱石は神経衰弱に悩まされていたとのことなので、そういった精神状態も作風に影響を与えたのかもしれない。

    いつかこの本を手にロンドン塔に行ってみたいものだ。ジェーン・グレーは現れるだろうか。

  • 僕はこれまで、漱石の本は『坊っちゃん』と『吾輩は猫である』しか読んだことがなかった。どちらも名作の誉れが高く、広く長く親しまれてきた本だ。それだけの人気を獲得するだけあって、とてもおもしろく、漱石のファンになりつつあった僕は、三冊目として、以前から所有するだけはしていた『倫敦塔・幻影の盾』を手に取った。
    ところが、読みやすかった前の二冊に比べ、表題の「倫敦塔」と「幻影の盾」は、はっきり言って取っつきにくい文章である。文体が難しい、ということもないわけではないが、僕は割と平気だ。じゃあ何が難しいかと言えば、漱石が描いたファンタジックなイメージを文章から再構築するのが難しいのだ。自分でも不思議だが、『指輪物語』よりも難しかった。
    そんなわけで、なかなか読み進められずに苦労していたのだが、第四篇、「琴のそら音」に至って、この本の評価が大逆転した。自分の無知を省みずに敢えて言うならば、この一篇には漱石のエッセンスが凝縮されている。‥たぶん。
    例えば、冒頭の「津田君」と「余」の会話には、あたかも迷亭と苦沙弥のやり取りを思い出させるものがある。もちろん、「余」はまだ独身であるから、苦沙弥よりは若いようだし、「津田君」も迷亭ほど極端ではない。「琴のそら音」の二人は、『吾輩は~』の人物たちほど浮世離れしてはいないが、「学生気分を残したままの中年男性のつきあい」という共通点があるようだ。
    それから、帰宅した「余」と「婆さん」の会話もおもしろい。僕はまた、『坊っちゃん』の坊っちゃんと清との関係を思い出した。もっとも、『坊っちゃん』を原作にしたドラマ「坊っちゃんちゃん」における郷ひろみと樹木希林の印象もだいぶ強いんだけども。
    こんなことを書くと、マニア方は「その登場人物にはちゃんとモデルがいて云々」と歯がゆく思うかも知れない。でもそんなこととは無関係に、僕はこういう愉快なやり取りのパターンを擁する作者に魅力を感じる。

    追記:『こころ』を読んだことをすっかり忘れていた。

  • 2016/12/18

  • 夏目漱石 X イギリス = ミステリー!?!?
    夏目漱石がイギリス留学中の経験をもとに書いた短編創作小説集。
    あの名作「坊っちゃん」と同時期の作品なのに、全く異質な幻想的雰囲気を持つ。夏目漱石の意外な一面です!!!(医学部2年)

  •  漱石の初期短篇集。「倫敦塔」「カーライル博物館」「幻影の楯」「琴のそら音」「一夜」「薤露行」「趣味の遺伝」の7篇を収める。
     漱石らしい衒学趣味だけでなく、『文学論』(や、その他の漱石による文学理論的なエッセイ)の実作化という側面もうかがえる。

     この時期の漱石は、「た」止めを極力排することで、〈いま・ここ〉に〈かつて・そこ〉が溶け込んでくるような場面や物語を好んで書いている。その際、媒介として《鏡》(や、それに類する記号性を担うもの=「水」「楯」)が重要なアイテムとして、頻繁に活用されることになる。
     一方で漱石は、「時間を止める」=「絵画化する」ことにも、強い関心を寄せているように見える。社会的な諸関係や内面にかかわる記述を排し、この場所・この時間のみに関心を集中させよう、という考え方は、『一夜』だけではく、『草枕』『虞美人草』にもうかがえるように思う。

     とするなら、漱石のテクストについて考える際、アメのように伸び縮みする時間の表象をどのように構築しているか、という論点が浮上するように思う。それにしても、『趣味の遺伝』とは、物語の内容が物語の語り手の主張をこころよく裏切っていくような、何とも奇妙な話だ。

  • 表題作はさておき「琴のそら音」「趣味の遺伝」が面白かった。

  •  図書館で借りたら昭和5年に刊行したものだった。旧漢字が多すぎてなかなか読み進められない。
    電車で本を読んでいるのに立って寝てた。。。
    「幻影の盾」「薤露行」はなんだか不思議な気持ちで読む。
    こういうのも書いているんだなあ。本当にイギリスに留学していて、西洋文学にも造詣が深いんだ。
    面倒くさい気もするけど、ロマンチックな物語。
    「趣味の遺伝」もよかった。
    「外の人なら兎に角浩さんだから、その位の事は必ずあるに極つて居る。」
    どんだけ?浩一さん!
    そんな浩一さんを失った悔しさをたんたんと綴る。
    戦争って虚しい。
    ブツブツしてるところは「吾輩は猫」を思わせる。できすぎな気もするけど最後が素敵。

  • アーサー王伝説。

  • 倫敦塔 1905
    幻影の盾 1905

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