漱石書簡集 (岩波文庫 緑 11-13)

著者 :
制作 : 三好行雄 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 376
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003190036

作品紹介・あらすじ

漱石の手紙を読むと、この類まれな人物のあらゆる心の動きがその温もりとともに伝わってくるように感ずる。友人の正岡子規、妻の鏡子、弟子の寺田寅彦・小宮豊隆などに苑てた手紙156通。漱石を知るための基本資料であるばかりか、それ自身が見事な作品なのだ。

感想・レビュー・書評

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  • 森見登美彦の作品を濫読する中で、「漱石の書簡は面白い」と紹介されてたのがきっかけで、この本を手に取った。
    夏目漱石といえば国語の教科書で触れた程度で、作品も人柄もほぼ知らないと言っていい自分が、いきなり書簡集なんぞ読めるものかという恐れもあった。
    事実、開いて暫くは、自分の知識の乏しさから候文のような文語体や独特の漢字使いをろくに理解できず、内容を理解できている自信のないままページを捲っているような状態だった。
    しかしそれでも、なんとなくではあるが、漱石の喜怒哀楽であったり主義主張が薫ってくる気がして、読み進めるに連れてそれは顕著になっていった。
    言文一致になってからはより確かなものとなった。
    これも偏に漱石の書簡が、文学的で多彩な表現はありつつも、その心情をとても素直にしたためていたからこそだろう。
    なるほど確かに漱石の書簡はそれだけで文学作品足り得る、等と生意気にも心地良く腹落ちした
    ところで読了となった。
    こうして漱石の人となりに触れて、小説にも手を出せそうな気がしてきたのが、錯覚ではない事を祈る。

  • 他の書簡も見てみたくなった。

  • 1

  • 某文学館で「夏目漱石の手紙」の展示をやっていて、見に入ったら思いのほか面白く、ミュージアムショップで買ってしまった本。

    手紙が好きでものすごくたくさん書いた漱石。
    友人の正岡子規。妻の鏡子。後進の芥川龍之介――そのほかたくさんの人々に、実にいろいろな手紙を書いています。
    手紙というのは書き手の人となりが如実に表れるもの。
    漱石の手紙には、意外にも、正直さと、相手を思う気持ちと、何よりもユーモアがあふれています。
    自虐的であったり、シニカルであったりしても、常にサービス精神が見え隠れしているところが魅力。
    妻への小言とか友への愚痴とか、若者への羨望とか、いろいろありながら、そこには漱石の相手を思う気持ち、がきちんとある。

    文学館の人は言っていました。
    手紙をもらった人たちが、漱石から手紙をもらったことが嬉しくて大切にとっておいたから(あるいは、なんだか捨てられなかったから)こそ、こうして100年後の私達が読むことが出来るのだ、と。

    いろいろいい言葉がちりばめられているので、これからも時々読み返す本になりそうです。

  • 底本:「漱石全集」(岩波書店)14、15巻

  • 昔の文体で、初めは読みづらく感じましたが読み進めるにつれ漱石の個性がわかってきました。
    極貧で奥様にも苦労をかけつつ、自分のやりたいことを探し続け、返事も書きなさい、みたいな寂しがりの一面も見え、人間らしさをかんじます。
    お金のないことは問題でなく、正岡子規への手紙など、当時の手紙は単なる近況報告ではなく、想いを届ける大切なコミュニケーションだったことが伝わってきます
    こういう手紙もらったり、書いてみたいなあ。

  • 「人に手紙を書く事と、人から手紙をもらふ事が大すき」だった漱石の、小説では見れぬ横顔が見える158通からなる書簡集。
    真面目とユーモアのハイブリッド。
    心を壊すぐらい真面目を課すくせに、時々、少し不真面目で、無礼講、無遠慮。だからこそ、真面目の真価が光って。

    隻語からも拾える、とてもいい意味での自己本位を漱石は持ってて、やから、たくさんの人に慕われたと思われる。
    正直なことを言わないではおられない性質、野暮な心意気もあり、純粋、くそ真面目。
    信頼度の高さから、言葉やと伝わるのは35%ほどという言葉の限界を超えた情がある。
    人に対して、こうありたいなと憧れる、そうではないから。

    漱石、金之助。名前の書き分けも興味深い。2つの名を持つのって、どんな気持ちなんやろう。

    子規は漱石とのやり取りを全て書いて記録していたらしい、対し、偶々、知ったのだが、漱石は燃やす人だったそう。
    私も、どんな手紙も海で燃やしてた。
    今は海の近くにも居ないしな、書くことも、もらう事も、すっかり無くなってしまったな手紙。

  • 夏目漱石。1867年2月29日(慶応3年1月5日)〜1916(大正5)年12月9日。明治22年22歳から、満49歳の没年までに書かれた書簡集。

    古い文章はさすがに難しくきちんと理解して読めなかったと思うけど、友人知人、門下生、家族、いろんな人たちへの心配りや暖かさが感じられる書簡が158通。

    目を引いたのは家族、妻の鏡子宛、娘の筆子、恒子、えい子宛。友人や門下生では、正岡子規、高浜虚子、他に、寺田寅彦、鈴木三重吉、津田青楓、中勘助、徳田秋声、武者小路実篤、芥川龍之介宛。


    「書簡ほど漱石を、漱石のままに表現しているものはない(中略)単独に書簡だけを読んで、其所から一貫した漱石を発見するのも、また興味深い仕事たることを失わない。(中略)此処にこそ最も自然な、また最も自由な漱石があるからである。」(解説より抜粋。小宮豊隆『漱石全集』解説)

  • 夏目漱石の自筆の書簡公開 NHKニュース
    http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130705/t10015842601000.html
    夏目漱石:“幻の書簡”発見…熊本近代文学館- 毎日jp(毎日新聞)
    http://mainichi.jp/select/news/20130706k0000m040014000c.html

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    「漱石の手紙を読むとこの類まれな人物のあらゆる心の動きがその温もりとともに伝わって来るように感ずる。全集版におさめられた二二五六通の手紙から友人の正岡子規、妻の鏡子、弟子の寺田寅彦・小宮豊隆などに宛てた一五八通を選んで注解を付した。漱石を知るための基本資料であるばかりか、それ自身が見事な作品である。」
    岩波文庫 漱石書簡集moreinfo
    http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/3190030/top.html

  • 約15ヶ月かけて、ちまちま読了。漱石が22歳~没年の間にしたためた158通の書簡。
    興味深かったのは英国留学中の書簡。異国の描写に漱石の思いが見え隠れして楽しい。
    芥川龍之介らに向けた「ただ牛のように図々しく進んで行くのが大事です」は秀逸。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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