聊斎志異〈上〉 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 立間 祥介 
  • 岩波書店
3.89
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本棚登録 : 295
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003204016

作品紹介・あらすじ

全篇ことごとく神仙、狐、鬼、化け物、不思議な人間に関する話。中国・清初の作家蒲松齢(1640‐1715)が民間伝承から取材、豊かな空想力と古典籍の教養を駆使した巧みな構成で、怪異の世界と人間の世界を交錯させながら写実的な小説にまさる「人間性」を見事に表現した中国怪異小説の傑作。今回、92篇を精選して新訳。

感想・レビュー・書評

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  • 450ページを超す分厚さであり、多くの話は男が怪異に出会って恋に落ちたり成功したりのワンパターン。なのにおもしろくて、すいすい読んでしまった。グリム童話が面白いのと同じで、無意識がよろこぶ物語の原型があるのかもしれない。

    たいてい主人公は生員(科挙の予備試験に受かった人)で、将来は開かれているけれどまだ何も成し遂げていない。そんなからっぽな彼がいっさいの紆余曲折を経ず絶世の美女といい中になったり、離れ離れになっても伏して泣いていると戻ってきてくれたり、まあ都合がいいんだけど楽しい。当時の人たち(いや蒲松齢がか)はこういう展開が気持ち良かったんだろうな、と思うとのんびりした気持ちになった。

    今回いくつかの話は既読だったけれど、初読のときと同じように面白かった。昼寝を何回しても楽しいように、たぶん『聊斎志異』は何回読んでも楽しい。いろいろな編訳で出版されているので、そのときちょうどいい厚さの本を選んで読んだらいいと思う。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「無意識がよろこぶ物語の原型が」
      話の原型とも言える昔話って、願望と戒め、それから驚き等が絡み合ってると思うのですが、それらが巧くブレドされ...
      「無意識がよろこぶ物語の原型が」
      話の原型とも言える昔話って、願望と戒め、それから驚き等が絡み合ってると思うのですが、それらが巧くブレドされていますよね「聊斎志異」って、、、
      誰の訳だったか忘れてしまいましたが、私が読んだのは角川文庫版で、井上洋介のイラストに惹かれて購入しました。
      2013/04/01
    • なつめさん
      岩波文庫は純中国風の挿絵でした。いろんなバージョンで楽しめるのがいいですよね。
      岩波文庫は純中国風の挿絵でした。いろんなバージョンで楽しめるのがいいですよね。
      2013/04/01
  • 今ある中華ファンタジーやラノベのエッセンスはもとをたどればここにある。と言ってしまいそうになるほどエンターテイメントな世界。まず美女が多いんですよね。それが死人だったり狐で押しかけ女房でハーレムルート上等ですからね。友人は死んだらあの世のいい役職についてたり。カッコいい義侠の士がどっからともなく現れてなんか退治して「これっきりだ」みたいなこと言って立ち去ったりね。でも怖い話は本当に怖い。「噴水」は何度読んでもゾゾゾとくる。これが私が口で説明してもお笑いになってしまう。訳はさっぱりしつつ面白がらせるのがうまくて味がある。たまに血生臭いけど聊斎志異の世界は異界の住人たちとなんとも和やかに近づけることが多い。そこが桃源郷を生んだお国柄かしらと思う。

  • 夏なので怪談。中国の怪異譚を17~18世紀に蒲松齢(1645~1715)が編纂したもの。基本怪談とはいえこういうのはそんなにリアリティないから怖くない。作中の人々も相手が幽霊だろうが狐だろうが基本美女なら結婚してしまうし(笑)

    とりあえず狐登場率が異常に高いのが特徴的。上巻51話、半分くらい狐の話だった気がする。だいたい美女に化けてて、しかも良い奥さん。子供も作るし、つまり「母が狐で」という登場人物も多い。この調子だと今の中国の人口も半分くらいは実は狐、もしくは狐とのハーフの子孫かもしれない。

    狐に次いで多いのが実はすでに死んでる人たち。美人の幽霊と結婚して子供作ったり、死んでも蘇ったり転生したり、死んでるのに受験にいったり、結構普通に生活しちゃうところがびっくり。でもこういうの好き。

    あと昔の中国は一夫多妻制だったのか(日本も似たようなもんだけど)当たり前のように二号さんを作る男性が多く、しかも正妻は幽霊、二号は狐、など無茶な三角関係もある(笑)

    個人的に好きなのは、死人の恩返し系(義侠の亡者)と、絵の中に入っちゃう系(壁画の天女)それから中国にもいた小さいおっさん系(耳の中の小人、かわいい猟犬)など。

    ※上巻収録
    冥界の登用試験/耳の中の小人/宿屋の怪/妖婆/壁画の天女/義侠の亡者/桃盗人/道士と梨の木/仙術修行/狐の嫁入り/美女と丸薬/犬神/怨念の受験/消えた花婿/亡者の金儲け/こそ泥退治/拾った釵/青鳳という女/化けの皮/女妖と二人の男/美女の首/笑う娘/甦った美女/大地震/冥土行きの軍/侠女/飲み仲間/二人妻/こけの一念/老狐の復讐/狐の告発/兄弟再会/幽鬼の子/七色の声/義士/古戦場の怪/若返った婿殿/道士のお返し/夜毎の女/夜叉の母子/命をかけた恋/若妻の復讐/九官鳥/山中の佳人/鬼の国/幽鬼の村/蟋蟀/洞穴の奥/姉と妹/かわいい猟犬/碁に狂った男

  •  中国の作家「蒲松齢」が書いた幻想的な話を集めた短編集。
     清の時代、1640年~1715年の間にかなり長いスパンをかけて執筆されたらしい。
     映画好きな人にとっては「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の原作となった短編が収録されていることでも有名なのかもしれない。
    ちなみに「聊斎志異」は「りょうさいしい」、「蒲松齢」は「ほしょうれい」と読む。
     ネットで色々と検索していると、梨木果歩の「家守奇譚」が好きな人であれば「聊斎志異」も好きになれる、という書き込みを読み、興味を持った。
     さて、その「家守奇譚」と似ているか、と言えば、似ているとも言えるし、全然違うとも言えるかと思う。
     日本と中国という国家や民族の違い、書かれた時代の違いなどもあるのだろうが、「家守奇譚」はきちんとした作品の体を成しているのに対し、「聊斎志異」はどちらかというと、様々な話を書きとめておこう、という一種メモ的な感触を受けた。
     だからといってダメだとか、つまらないとかいうことではないのだが。
     良くいえば非常にスピーディに、悪くいえばディティールを全く無視して物語は進む。
     とにかく物語の進み具合が早いのだ。
     ちょっと1行読み飛ばしただけで前後の内容が繋がらなくなる、ってのは少し言い過ぎかもしれないが、トントントンと進んでいる。
     つまりトントントンと人が死に、人が生き返り、キツネが化け、幽鬼が闊歩し、現実とあの世が交差する。
     その現実とあの世の交差が当たり前に展開されていくのが心地よい。
     この点などは「家守奇譚」や川上弘美作品にも通じるものがあるように思える。
     というよりも、もしかしたら多くの不思議な作品の原典として位置している作品なのかも知れない。
     不思議な話だけではなく、中には寓話的なもの、現実をそのまま描写したものもある。
     また、短いもので2ページ、長いものだと数十ページにわたる作品もある。
     魑魅魍魎や幽鬼だけでなく、人間そのものの怖さや可笑しさ、不思議さを語ってもいる。
     因果の強い話もあれば、因果の全くないのにどうして? と思える作品もある。
     泣ける作品もあれば、心底怖い作品もある。
     とにかく色々な作品が収められているが、バラバラな印象はなく、きちんと一本の線、一つの色で整えられている。
     それにしても、いとも簡単に男と女が夜を共にするなぁ……。
     男なんか奥さんがいても、相手が狐が化けた女だとしても、「美人であればまぁいいか」ってな感じで夜を共にする。
     当時の中国ってそんな感じだったのだろうか。
     まぁいいけど……。
     上巻を読み終わって、いま下巻を読んでいる途中だが、たぶん感想はそれほどには変わらないと思う。
     現在の人にとっては、少し素朴すぎて刺激が足りないと思われるかも知れないが、一読してみる価値はあると思う。
     450頁程のちょっと厚めの本ながら、夢中になって一気に読み終えてしまった。

  • ◆きっかけ
    lang8で荷蛋要加番茄酱さんが日本の神話や民話、怪談について、事実無根ではなく現実に基づいたもので、その点において本作と似ている、と書いていて存在を知った。2016/10/1

  • 怪奇小説集などで、取り扱われていることの多い『聊斎志異』。
    岩波文庫版は92編を選んで訳したもの。

    必ずと言っていいほど美人が登場し、主人公の男と仲良くなる。
    その相手がたいていの場合狐や幽鬼である。
    知らない場合もあるが、知ってもなお男の方から通じようとする。
    この世のものでないと知ったら避けるとか、そういう発想はないのか。
    子供向けの本に採られているものにはそういう話はないので、傾向に驚いた。
    そして大抵の主人公は失敗をしつつも、幽鬼の助けにより、本人や子孫が栄える場合が多い。
    痛い目を見て終わる話は少ないので、恐ろしさはあまりない。
    幽鬼にしても、死んでいるというだけで、おどろおどろしさがないのが面白い。

    中国のあの世観をいろいろと知ることが出来て興味深かった。
    車が迎えに来ていたり、現世にいながら冥界での仕事をする人いたり…。
    冥界にも官職があるのは聞いていたけれど、死んですぐに天帝に命じられたり…。
    主人公が鬼や夜叉の国に行く話もあるが、本当に鬼や夜叉というよりも生活習慣の違う蛮族のような印象。

    平凡社ライブラリーや角川文庫の旧版で全訳が読めるようなので、読んでみたい。
    445話を延々と読んでみたい。

    短編なので集中して読む気がなかなか起きなくて、2週間以上掛かってしまった。
    6月1日から読んでいる…。

  • 短編であるが、日本の話とかなりに通っているところはあるものの、大人の小説である。

  • 文章がとても上手い。すだく、という言葉をこの本で初めて知った。分からない言葉を調べ始めると遅遅として読書が進まないのが欠点。私の語彙が少ないせいだが。

    内容は美人といちゃいちゃするような話が多く流麗な文体で一種の願望充足にも似た下ネタ話を読む楽しさは何物にも代えがたい。

    あの世とこの世の境もなく命を尊ぶ気持ちもない潔さは、現代の個人主義の目から見ると奇異に映るが、自分の生に固執するよりも清々しく魅力あるように思えてくる。

  • グリム童話や日本の昔話などは小さい頃によく読んだけれど、中国のこういう話は初めて読んだ。
    人が死んだり生き返ったり、まるであの世とこの世に境などないような感覚の話が多い。
    そしてほとんどが美人に夢中になる話。
    これにはちょっと面食らったが、よく言えば人間味があるということなのかも。
    読みやすく、かつ都合のよい展開は現代のライトノベルに通じるものがあるような気もした。
    さえない男が美人にモテるっていう展開は現代のマンガ等にもあるけど、300年前の中国にも似たようなものがあるとは、と変なところで感心してしまった。

  • 諸界志異モノの元祖のような本です。これと酉陽雑俎、子不語、幽明録、遊仙窟、中国怪異譚閲微草堂筆記、捜神録を網羅すれば一応「志怪小説」のネタは網羅したようなものです。

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