聊斎志異 (下) (岩波文庫 赤 40-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003204023

作品紹介・あらすじ

本書には、長短とりまぜて41篇の怪異譚を収める。わずか2ページ足らずの簡単な異聞の記録もあるが、筆者の手にかかると、現実にはありえない話も、一読、目に見えるような精彩を放つ。

感想・レビュー・書評

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  • 下巻でも狐と死人(幽霊)の美女のオンパレードだけど、狐だけでなく鹿(麝香の香り)鰐(竜王の娘)蜂(緑衣の人)なども美女になって恩返ししてくれる。あと美女ではないけどスッポンの恩返しとか(笑)牡丹、菊などの美しい花の精も登場。本の中から美女が出てくるとかも夢があっていいな(書中の美女)・・・ってこうやって書き出して見ると、怪異譚というよりむしろ「こんな美女が突然現れて尽くしてくれたらいいな」という男性のドリームのバリエーションのような気がしないでもない。

    いちばん怖かったのは「悍婦」のシリーズ。シリーズといっても別の話なんだけど、日本語でイメージタイトルつけるならこれ「実録!恐怖の鬼嫁!」みたいな内容で、とにかく嫁が凶悪で恐ろしい。ちょっと書くのを憚るような恐ろしい暴力を夫、舅姑、妾、夫の兄弟にまでふるい、残虐極まりない。どんな妖怪より鬼嫁がいちばん怖いって・・・(苦笑)こんな鬼嫁と結婚するくらいなら、正体が狐だろうが幽霊だろうが人外だろうが、優しくて美人の嫁を貰ったほうがそりゃマシなわけだ。

    編纂者の趣味もあるのかもしれないけれど、同時代の日本(江戸時代)の怪談に出てくる女性の幽霊はだいたい自分を裏切った男性への恨みをはらすために出てくるのに対し、本書に出てくる中国の幽霊は前世の縁ですとか言って男性に尽くしてくれる美女で夜の営みもたいへん積極的、あげく子供も産めたりするので、その差がどこからくるのだろうと考えるのも面白い。

    ※下巻収録
    狐妻の苦心/夜毎の美女/狐の子/酒の精/木彫りの美人/狐の仲人/麝香の香り/竜王の娘/冥土の殺人/緑衣の人/悍婦/二人の幽鬼/悍婦(その二)/すっぽん大王/仙女/月下老人/甄夫人と劉楨/二人の阿繍/玉帝の娘/月宮の人/盗人という戸籍/金持ち狐/愛奴の死/賢妻と狐妻/天上の宮/冥土の冤罪訴訟/底なしの米倉/痣の下の美玉/地中の世界/蘇州の邪神/蘇州の邪神(その二)/黍畑/亭主操縦術/牡丹の姉妹/菊の姉弟/書中の美女/竜宮の恋/漢水の妻/牡丹と耐冬/命拾い/雲の湧く石

  • ろくでもない男ばかりだなあ

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18357

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BN15753835

  •  主に17世紀後半に書かれたもののようだ。清に生きた作者蒲松齢(ほ しょうれい 1640-1715)が昔の書物からネタを取ったり、人づてに聞いた話を集めるなどして書き溜めた全491編がこの『聊斎志異』。この岩波文庫上下2冊にはそのうち92編が収録されているに過ぎない。
     幽霊(幽鬼と書かれている)が出てきたりと怪異な話ばかりだが、全体としては民話・寓話のような類が多い。はっきりとホラー的な感触があったのは上巻P82の「12 犬神」。これはちょっと衝撃的な図像が描写されている。
     幽霊の他に頻繁に出てくるのは人間に化ける狐。そういえば、日本の昔話・民話に出てくる「化ける狐」のモティーフは、中国から輸入されたものだったか。
     登場する幽霊や狐はみんな「仙女のような」美女ばかりで、主人公の男性たちは幽鬼・狐と知りつつも関係を結んだりする。あまつさえ結婚し、子を産みもするのだが、その子は普通の人間だったりする。そんな神話的なシーンが多彩に繰り広げられ、恐怖というよりもおおらかな物語集という感じだ。
     読んでいて実に楽しく、昔話集なんかを読むのよりも遥かに面白い。語り口が上手いのだろう。もちろん、フローベールなどのような西洋近代小説とは非常に異なる書き方で、細かいディテールの書き込みは少なく、やはり神話的な梗概に近い場合が多い。本書を楽しく読みながら、やがては「物語」なるものの祖型を探るべく考えこんだ。
     それにしても、本書に登場する男性主人公たちはそのほとんどが公務員志望で、みんなして公務員採用試験・昇進試験にあくせくしており、彼らにとっての人生の目標はそれらの試験を制覇し高い地位の公務員になることなのだ。当時の清の人びとはこんなにまで一律に公務員志望だったのだろうか。公務員になり昇進することでしか、経済的な豊かさを求める術はなかったのだろうか。実は作者蒲松齢じしんが、生涯をかけてこの公務員試験に邁進した人だったようで、ただ単にその人生観がこれらの作品の世界を限定したのだったかもしれない。
     下巻にふたつ入っている「悍婦」ものは、壮絶に暴力的な奥さんたちの猛烈さと、彼女に全く逆らえない男性たちの弱さに、苦笑してしまった。
     これまで中国の小説類は(長いのが多くて)敬遠してきたのだが、本書を読んで、そこにはやはり日本文化の源泉も明らかに窺えるし、読んでみて素朴に面白いので、これまで読まなかった有名な本も読んでいきたいと思っている。

  • 2007-2-25

  •  上巻に続いて下巻をほぼ一気の読み終わる。
     感想等は上巻とほぼ変わらず。
     追記するとすれば「なんで登場する男は揃いもそろって女と判れる時に泣き崩れるのだろう」ってところか。
     あとはそうだなぁ……「亭主操縦術」なんて男性にとってはホラー以上に怖い話が収録されていたりする(苦笑)。
     この岩波文庫上下巻で「聊斎志異」全体の約3分の1を読むことが出来る。
     ということは残り3分の2はまだ未読な状態な訳で、機会があればぜひとも読んでみたいと思っている。

  • 中国のこの手の話は艶やかで大人向けの話が多い。似たような内容を少しずつ違えているような感じもしなくもない。
    それにしても狐が登場する話が多い。日本の昔話にも狐の話は多いが、人間と同一視されるような存在として登場するのは何故だろう。

  • 上巻と同じ内容であったが、残酷さや猥雑さが若干減ったようなきがする。

  • 読了すると寂しく感じる。長い付きあいだった。
    蒲松齢の序文に(上巻解説から)
    「酒を友に筆を執り、ようやくにして成ったのがこの『孤憤』の書だが、我が心を託すよすががこのようなものかと思えば、悲しみもまたひとしおである。」とある。
    科挙の試験に落第し続けた蒲松齢が心のよすがとして成したのが本書であり、書かれた時代やら読み継がれたことやら美女の幽鬼・狐ばかり登場する内容やらで、何とも言えない気持ちになる。
    折に触れて読み返したい。

  • 自由自在、ですね。
    (2013年9月8日)

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