公女マーラヴィカーとアグニミトラ王 他一篇 (岩波文庫)

制作 : 大地原 豊 
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003206423

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  • 『公女マーラヴィカーとアグニミトラ王』
    『武勲(王)に契られし天女ウルヴァシー』

  • かなり以前読んだ『シャクンタラー姫』の作者である、インド4世紀頃の詩人カーリダーサの、のこり二つの戯曲『公女マーラーヴィカーとアグニミトラ王』『武勲王に契られし天女ウルヴァシー』が収められている。
    カーリダーサについてとサンスクリット劇に関しては、『シャクンタラー姫』の巻末に辻直四郎氏による詳しい解説が載っているので、そちらも再読した。
    古代ギリシャ劇によく似た「演劇」であるが、どうやら古代インドにおいても独自に生成・発展したものであると考えるべきらしい。「演劇」は世界各地の様々な文化において、「音楽」「詩」とともに発現しているので、人間にとって基本的で普遍的な文化現象であると言えそうだ。
    カーリダーサの3つの戯曲(というか、演劇の台本)はいずれも王を主人公とする宮廷恋愛物語で、観客は民衆層であったと思われる。どの程度の民衆なのかはわからないが。
    これらを読むと、王室には「正妃」が確かに存在して、王の妻として揺るぎない地位をもっているようだが、一方で、王の愛人として「女御」と訳されている女性たちの存在が認められていたようだ。正妻の地位は低くないため、彼女が嫉妬すれば王としても配慮せざるを得なかったらしい。
    この本に出てくる王はある意味「スケベオヤジ」で、若い娘にたちまち一目惚れしてしまうが、その相手のほうも(偶然にも)王に対し一目惚れしてしまう。
    あまりにも都合の良い恋愛であるが、「千夜一夜物語」も結構そんな話が多かった。「片思いからいかに相手の愛を獲得するか」ではなく、「両思いのふたりがいかに円満に結ばれるか」という方に興味があり、古代-中世にかけての「物語」というのは、人びとの「理想」としてかたられなければならないもので、理想的でないものはかたれる価値もなかったのかもしれない。だからこそ、「王の物語」なのかもしれない。
    また、興味深いことに、これらの王の傍らには「道化」が寄り添っている。シェイクスピア劇のあれと非常によく似たポジションを持っていて、王の分身として活躍し、物語を結末へと向けて推進する。
    言葉をつくして褒め讃えられ、好きなときに好きなように恋愛し、分身である「道化」を従え、民衆の「物語」に献身するこの「王」とは、社会にとって一体なんなのだろうか。「王権」とはいったいいかなるものだろうか。
    そうしたとりとめもない思考に、読んでいて誘われていった。

  • 表題作は、正妃の侍女にしてすぐれた踊り手マーラヴィカーに一目ぼれしたアグニミトラ王と、正妃、寵妃、マーラヴィカーの四者入り乱れた恋の駆け引きを描く恋愛コメディ。ラストは見事に古典的な大団円。「武勲(王)に契られし天女ウルヴァシー」は、去った妻を求めてさまよう王の狂乱の場が見事。

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