空と風と星と詩 尹東柱詩集 (岩波文庫 赤75-1)

  • 岩波書店 (2012年10月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784003207512

感想・レビュー・書評

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  • 尹東柱の詩に魅了されると必然的に原詩を読んで(見て)みたいとの思いに駆られるはず。
    金時鐘 編訳『尹東柱詩集 空と風と星と詩』(岩波文庫)には原詩が付されているのがうれしい。わたしは読めないのを残念に思いつつじっくり眺める。
    それだけでなく、kuma0504さんから訳者の詳細な解説がついているとお勧めしていただいたおかげで、詩人である訳者の解説「解説に代えて ──尹東柱・生と詩の光芒」を読むことができた。この解説が本当に素晴らしくて。kuma0504さん、ありがとうございました。

    今までわたしは尹東柱の詩を読みながら日本での彼の足跡を辿ってきたけれど、やっぱり行き着く先、いや、帰るべき場所は、彼の描く詩の世界だった。
    その世界を知るためにも「尹東柱の詩の理解のために」書かれた金時鐘氏の解説は、彼の詩に出合ったばかりのわたしにもわかりやすく様々なことを教えてくれる。
    民族詩人としての追慕と尊敬を集めていながら、尹東柱の存在性とその詩の解釈については、相対する二つの意見が平行していること。尹東柱の詩には聖書からの採用が予定調和の暗喩となっているところがかなりあること。尹東柱の詩がかかえもっている方法意識と、その詩がにじませている抒情の質の問題など、同じ詩人としての視点は冷静な分析をしながらもどこまでも温かい。
    また尹東柱へ向ける優しい眼差しは、そのまま彼の詩に登場する「いたいたしいまでにつつましく、胸に沁みるほどいとおしい人々」にも向けられていたと思う。

    「有無を言わせず、日本人への皇民化が苛烈に進められていた植民地朝鮮で、ただ勉学にいそしむしかない安穏な自分と、学徒として、キリスト教徒として、何ひとつ成すことを成しえないでいる無力な自分。それでも信仰には自己救済を求めずに、どうすればキリスト教徒たりうるのかと自問する、暗がりの中の自分。この誠実な問い返しに貫かれているのが、私には『空と風と星と詩』というただ一冊の尹東柱の詩集です。」と訳者は綴っている。 
    この解説を足掛かりとして、これからも何度でも尹東柱の詩を読んでいきたい。


    「たやすく書かれた詩」

    窓の外で夜の雨がささやき
    六畳の部屋は よその国、

    詩人とは悲しい天命だと知りつつも
    一行の詩でも記してみるか、

    汗の匂いと 愛の香りが ほのぬくく漂う
    送ってくださった学費封筒を受け取り

    大学ノートを小脇にかかえて
    老いた教授の講義を聴きにゆく。

    思い返せば 幼い日の友ら
    ひとり、ふたり、みな失くしてしまい

    私はなにを望んで
    私はただ、ひとり澱のように沈んでいるのだろうか?

    人生は生きがたいものだというのに
    詩がこれほどもたやすく書けるのは
    恥ずかしいことだ。

    六畳の部屋は よその国
    窓の外で 夜の雨がささやいているが、

    灯りをつよめて 暗がりを少し押しやり、
    時代のようにくるであろう朝を待つ 最後の私、

    私は私に小さな手を差し出し
    涙と慰めを込めて握る 最初の握手。
                (1942.6.3)

  • 茨木のり子のまっすぐな背骨と
    金子光晴の深い迷いに触れたあとでは
    尹東柱の詩はひときわ哀しく沈む想念に
    「強さ」を持たない詩だと感じられた
    ただひとつ「帰ってきて見る夜」の終わりの
    「いま思想がリンゴのように 
      ひとりでに熟れていっておりまする」が
    心に残ったのみ

    しかし金時鐘の解説を読んで自分の誤りを知った
    尹東柱が
    「軍国主義、戦争賛美の時代に
    同調する気配の微塵もない詩を
    差し止められている言葉でこつこつと書いた」ことは
    反皇国臣民的行為であると
    植民地とされ、言葉まで奪われながら書いた
    時節と無縁の心やさしい詩さえもが
    治安維持法に抵触するとし、いのちを絶ったことの
    非道をしっかり見なければならない

    明日、治安維持法国賠同盟岡山支部主催の映画会
    「空と風と星の詩人 尹東柱の生涯」を見に行く!

  • 尹東柱(ユン・ドンジュ)は、大日本帝国占領時代の朝鮮出身の詩人である。現在の韓国、延世大学を卒業した後、1942年に日本に留学、立教大学・同志社大学で学んだ。1944年2月に治安維持法で起訴され、3月に有罪となり、福岡刑務所に収監された。その後、1945年2月、終戦の6ヶ月前に、原因不明の獄死を遂げた。27歳の若さであった。
    延世大学を卒業し、日本に留学に来る前に、彼は「空と風と星と詩」と名付けた詩集を自分で発行しようとしたが、かなわず、3冊だけを自筆で作り上げた。戦後、その中の詩が新聞で紹介され反響を呼ぶ。その後、彼の詩は中学校・高校の教科書に取り上げられるなど、尹東柱は死後、とても有名な詩人となった。
    日本で勉強しようと、終戦間際のあの時代に留学してきた将来のある若者を、訳の分からない理由で、結局は死に至らしめてしまう(要するに殺してしまう)、当時の日本という国のどうしようもなさと、本人・親御さん・知人の無念さを思うと、何とも言えない気持ちになる。
    尹東柱について調べる必要があり、岩波文庫を手にとってみたが、とても厳粛、かつ、やり切れない気持ちになった。

  • 「空と風と星と詩」尹東柱 金時鐘 編訳 岩波文庫

    「弟の肖像画」
    ほのあかい額に冷たい月が沈み
    弟の顔はかなしい絵だ。

    歩みをとめて
    そっと 小さい手を握りながら
    「大きくなったらなんになる?」
    「人になるよ」
    弟の説はまこと 未熟な答えだ。

    何食わぬ顔で手を放し
    弟の顔をまた覗いて見る。

    冷たい月が ほのあかい額に濡れ
    弟の顔はかなしい絵だ。
    (1938.9.15)

    「아우의 印象画」

    붉은 이마에 싸늘한 달이 서리아
    아우의 얼굴은 슬픈 그림이나.

    발걸음을 멈추어
    살그머니 애딘 손을 잡으며
    「늬는 자라 무엇이 되려니」
    「사람이 되지」
    아우의 설은 진정코 설은 対答이다.

    슬며시 잡았든 손을 놓고
    아우의 얼굴을 다시 들여다 본다.

    싸늘한 달이 붉은 이마에 젖어
    아우의 얼굴은 슬픈 그림이다.

    尹東柱(ユントンジュ)の詩集岩波文庫版が21世紀のこの時に至って、やっと出版された。韓国における詩の位置付けは、本屋に行けば圧倒的に高いということがわかる。一番いい場所をいつも陣とっているのである。その一番人気が未だに出ていなかったことが不思議でならない。

    「死ぬ日まで天を仰ぎ、一点の恥じ入ることもないことを」という有名な詩句を聞いたことはあっても、その詩業の全容を知っている人はほとんどいない。私も知らなかった。

    リリカルな優しい心と、キリスト教に支えられた強い精神、中国に国境を接する場所を故郷とする心像風景、時代が常に死と接することを強要した覚悟、若くして才能を花開かせ散らしていった運命、平易な言葉で豊かな内容を表した表現力、それらは、ここに収められている66編を読むことで納得するだろう。

    原詩を巻末に載せているのも嬉しい。尹東柱の人生を紹介した訳者の解説も力がこもっていた。
    2012年12月14日読了

  • 一冊の本との出会いにも色々と在る。今般、少し不思議な経過で、日頃は余り着目しないような内容の一冊に出会うことが叶ったように思う。
    少し前にネット上のニュースを見ていて「同志社大学」という文字が眼に留まった。別段に同志社大学に個人的な縁が在るというのでもない。少し前、京都を何度も訪ねた中、同志社大学の傍を歩き廻ったということを思い出し、勝手に親近感を覚えていたことを思い出し、ニュースを詳しく読んでみた。
    ニュースの中には古い青年の肖像の写真が掲げられていた。写真の人物が尹東柱(ユン ドンジュ)という詩人であると判った。1945(昭和20)年2月16日に福岡刑務所で獄死してしまったとのことだが、同志社大学に在学していた経過が在り、同志社大学では没後80年ということで名誉文化博士の学位を贈ったのだそうだ。
    その尹東柱(ユン ドンジュ)の作品を文庫本で読むことが出来ると知り、文庫本を入手してみたのだった。
    作品は朝鮮語で詠まれた詩で、その本来の詩も収録されているが、それの翻訳が本書の内容で、巻末に解説が在るという体裁だ。
    自身は朝鮮語は全く知らない。その部分は読んでいない。日本語に翻訳の作品を読み、そして解説も読んだ。それ程に分量が多いのでもないので、素早く読了に至ったという感じになった。
    尹東柱(ユン ドンジュ)(1917‐1945)は、現在では中国の一部になっている朝鮮語を話す人達が住む地方に産れている。その地方というのは、朝鮮半島の人達が移り住んだというような経過が在って、尹東柱(ユン ドンジュ)はそういう人達の後裔ということになる。やがて日本統治下の朝鮮半島に移る。そうやって成長して行った。そこから日本留学を志す。当初は東京の立教大学に学ぶことにしたが、従兄が京都に在ったことから京都に移ることを希望し、改めて同志社大学で学ぶこととしたのだ。その同志社大学に在った中で、朝鮮独立を企てる運動に関与という治安維持法に纏わる嫌疑で逮捕され有罪となって、収監された福岡刑務所で獄死してしまったのだった。
    尹東柱(ユン ドンジュ)は少年期から詩を詠んでいた。長じて青年となっても詩作は続けていた。日本へ留学する直前、尹東柱(ユン ドンジュ)は自作詩による詩集を編んだ。可能であれば出版をすることを希望したが叶わず、3部の写しを用意し、恩師と友人に贈った。尹東柱(ユン ドンジュ)が獄死して10年を経て、友人が大切に持っていた詩集『空と風と星と詩』が韓国で出版された。そして大いに評価された。国語の教科書にも作品が掲載されているのだという。
    本書にはその詩集『空と風と星と詩』に在る作品に加え、色々な形で伝えられていた尹東柱(ユン ドンジュ)の作品が集められている。御自身で編んだ詩集の作も、それ以外の作も、特段に区別なく興味深く触れることが出来た。
    「戦時中に同志社大学で学んでいて、母語の朝鮮語で詩作もしていた青年が獄死という運命を辿ったが、その作品が伝わっている」という事だけで予備知識が無い状態、強いて加えると「学生を護る、援けることが叶わなかった」と大学がこの青年の件を記憶に留めていて伝え続けようとしていて、没後80年に改めて顕彰したという報に触れたというだけの状態で、「外国語から翻訳された詩に触れてみる」という以上でも以下でもない感じで本書を紐解いたのだった。
    『序詩』と題された、自ら編んだ詩集の冒頭に掲げられた詩である。これは人生の最後の時迄、信じる道を歩み続け、詩作も続け、詩が風に乗って星のように高い天に至って遍く拡がるようにというような感じなのだと思った。青年詩人の、詩作への熱い想いを吐露したような内容であろう。
    こうした「志」を掲げているが、各作品は穏やかで、宵や早朝の静寂を見詰めて綴られたような感じの作が多いような気がした。更にキリスト教や欧州諸国の様々な文学作品や哲学に通じていると伺わせるような内容も含んでいたと思う。「政治犯」というようなことで投獄されてしまったという経過が在る詩人だが、その作品は「若く瑞々しい感覚で、夢中で詩作に勤しんだ結果」という様子で、何等の政治的な内容も感じられない。何処かに社会の様子を見詰めての想いが滲んでいるのかもしれないが、「政治」という感は伝わらない。
    尹東柱(ユン ドンジュ)は朝鮮語が母語だ。母語で詩を詠んでいて、それを愛していて、作品を書き留めていたというだけだ。そして真摯に文学を学ぼうとしていただけだ。本書を読むとそういうことが強く伝わる。調べて公正に観るというのではなく、「こうだ!」と勝手に決めて、決めた方向性「ということに」するという方式で、色々とやってしまうというような様子の中で、尹東柱(ユン ドンジュ)はよく判らない罪を負わされてしまったということになるのであろう。
    尹東柱(ユン ドンジュ)は「異郷に移り住んで暮らす道を択んだ先祖」を持って、自身も朝鮮半島に移り、更に日本へ留学と「異郷に遷る」ということをしている。何かそういう「“異邦”を見詰める目線」を自ずと備えているかのような様子が、各作品から滲み出ているような気もした。先祖以来、物理的に幾つかの地域を移動しているということに加えて、その精神が何時も旅しているかのような様子が何となく思い浮かぶ。例えば『また別の故郷』というような作品に触れてそんなことを思った。そういった感じが、年月を経て如何なって行ったのかは、誰にも判らないというような経過になってしまったのだが。
    詩集というようなモノ、それも外国語の翻訳というモノは殆ど読まないと思うのだが、今般は偶々見たニュースが契機で興味深い人物と作品に出会うことになった。非常に好い経験が出来たと思う。

  • 尹東柱(윤동주)は、太平洋戦争中に日本の立教大学に留学し、その後京都の同志社大学に転学し、そこで朝鮮独立運動に関わると疑われ治安維持法違反の容疑で逮捕され、福岡刑務所にて収監されている間にわずか27歳で獄死した。その残された詩は、学校での朝鮮語教育も制限された時代に、全編朝鮮語で書かれていた。有名な「序詩」、
    死ぬ日まで天を仰ぎ
    一転の恥じ入ることもないことを
    葉あいにおきる風にさえ
    私は思い煩った。
    星を歌う心で
    すべての絶え入るものをいとおしまねば
    そして私に与えられた道を
    歩いていかねば。

    今夜も星が 風にかすれて泣いている。
    その他、特に、「星をかぞえる夜」、「たやすく書かれた詩」などが心に残る。

  • 象徴的な表現の詩が多かったので、理解しきれていないものも多々ありました。

    戦時中の支配下にあった満州の記憶と、社会や人生に対する思い、またはキリスト教的な思想と、宇宙的な自然讃歌の詩が美しいです。

    とても20代前半で書かれたとは思えない鋭敏な知性を感じる。

  • 第二次大戦の時代、日本で過ごした朝鮮人が苦しみと哀しみの中で、澄んだ目で見つめて紡いだ言葉たち。歴史として学んだだけでは見えてこない心のひだが、少しずつ浮かび上がってくるような詩。邦訳を読み終えたら、後半の原詩を勉強がてら読みたいと思っていたが、力不足と、図書館の貸し出し期限切れ。もう一度借り出したいと思う。

  • “思い返せば 幼い日の友ら
    ひとり、ふたり、みな失くしてしまい
    私はなにを望んで
    私はただ、ひとり澱のように沈んでいるのだろうか?”
    (p.43『たやすく書かれた詩』)



    “新しい日を求めていた私は
    眠りから醒めて見回すと
    その時はもう明日ではなく
    今日であった。”
    (p.89『明日はない―幼な心の問い』)

  • 平明な言葉でここまで細かい心の襞を描き出すことができるのかと思った。

    透き通った詩たち。

    素朴で若干幼稚とも思える表現が、複雑さを讚美するような風潮に逆に鋭く問いかけてくるようです。

  •  「星を歌う心で/すべての絶え入るものをいとおしまねば/そして私に与えられた道を/歩いていかねば」。このような「序詩」の印象的な一節が象徴するように、尹東柱の詩は、無数の星々を一つひとつ数え上げるかのように、小さきものたち、儚きものたちの一つひとつに細やかな眼差しを注ぐ。そのことが、孤独のなかに吹き溜まった心情を研ぎ澄ますことと一体になっているのだが、そのことが時に、例えば「こおろぎと ぼくと」に見られるように、童謡のように口ずさみたくなるような素朴さにまで純化されているのには、逆に胸を衝かれる。しかも、そのなかで詩の独特の形式感が損なわれることはない。さらに、詩作をつうじて自分自身の心情を突き詰めていくことが、聖書を読み抜き、みずからの信仰の揺れを跡づけることと結びついているのも、尹東柱の特徴と言えるかもしれない。そのことが、パウル・ツェランの「テネブレ」を思わせるほどに、神と厳しく対峙する地点にまで立ち至っていることにも瞠目させられる。おそらくはこうした葛藤のなかから生まれた作品である「夜が明ける時までに」のなかで、「すべての絶え入るもの」への眼差しは、極限まで純化されているのではないだろうか。死にゆく者と生き続けようとする者が分け隔てられることなく休息の場を得るなかで、生の営みが静かに続くことへの研ぎ澄まされた祈り。それを言葉にした詩人は、帝国日本が敗亡する半年前に、福岡で獄死させられた。彼の詩のなかには、その危険に曝されながら、また友人が捕らえられていくなかで詩を書きえている自分への恥じらいと、呼び出されることへの怖れの両方も刻まれている。本書は、そのような「非命の」詩人の遺稿による詩集『空と風と星と詩』に収められた詩と、それ以外の詩、合わせて66篇を集めて、在日の詩人金時鐘が日本語に翻訳して編まれたものである。ある朝鮮語の言葉を「すべての絶え入るもの」と訳した訳者の金時鐘による解説が、一つの詩学とも呼ぶべき次元に達していることも特筆されるべきであろう。その末尾には、今あらためて銘記されるべき思想が刻まれている。

  • 朝鮮の代表的な詩人の作品である。日本での獄中死した詩人の詩集である。戦争中であり、今の若者にとってははるか昔である。原文もあるので韓国語学習中の学生は使えば学習になるのかもしれない。

  • 平明に聞こえるけれど、聖書のモチーフが散りばめられているようで、読みきれていないと感じる。

  • なんと澄んでいるのでしょう

  •  演劇の会場で購入。劇中ではとても美しい詩だと感動したのですが、訳者が違うからか、それほど心に刺さりませんでした。でもきっと本当に優しい純粋な人だったのでしょうね。

     戦争の一番の恐ろしさはこうした純粋な若者を簡単に踏みにじってしまうということだと思います。理性を奪われることの怖さを伝えていかなくてはなりませんね。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/707553

    戦争末期に留学先の日本で獄死した27歳の詩人。
    遺された詩集は若者たちを魅了し、韓国では知らない人はいないほどの国民的詩人となったそうです。

  • ハングルへの旅 新装版 (朝日文庫)/茨木のり子を読み、尹東柱の詩に興味を持ち、さらには映画でカンハヌルが演じていると知り、手に取りました。

    なんというか、強くあれ(ここでいう強さはマチズム的な)と強く望まれそうであることが当然の世の中で、弱いまま素朴な自分を貫くことの強さを感じる。そうやってしか振舞えない部分も自身の意思でそうしている部分もどちらもあると思うけど、弱さ(無力な自分を見せること)を通して感じる強靭さみたいなものを感じてしまう。

    あと、日本で拘束中に亡くなったこともあり、何も知らないと抗日運動に励んだようなイメージがあるが、実際には、ハングル(確かに当時は使用禁止だった訳だけど)で日常にそりそう詩を書いていただけである。そして、その素朴さ、自分の無力さを貫く姿勢はその時代においては、朝鮮においても是とされるものではなく、きっと生きながらえても、厳しい道が待っていただろうという解説を読んで、単純なものではないと思った。と同時に、単純に時の時勢、権力になびかないなんらかの強さを持った人を、権力は恐れるのかもしれない。反抗的だからとかではなく、そのコントロール下に置ききれないつかめなさを無意識のうちに恐れるのかもしれないな、なんて考えも浮かんだ。

  • 全編を覆う抑圧への身悶え。

  • 4.25/209
    『禁じられた母語で,身もだえるように清冽な言葉を紡ぎ,福岡刑務所で27歳で獄死した詩人の詩集決定版.
    「死ぬ日まで天をあおぎ/一点の恥じ入ることもないことを」――戦争末期,留学先の日本で27歳の若さで獄死した詩人,尹東柱.解放後,友人たちが遺された詩集を刊行すると,その清冽な言葉が若者たちを魅了し,韓国では知らぬ者のない「国民的詩人」となった.詩集「空と風と星と詩」とそれ以外の詩あわせて66篇を在日の詩人・金時鐘が選び,訳出.ハングルの原詩を付した.

    ■編集部からのメッセージ
    「死ぬ日まで天をあおぎ
    一点の恥じ入ることもないことを
    葉あいにおきる風にすら
    私は思いわずらった」
     このあまりにも有名な序詩で始まる詩集「空と風と星と詩」は,1948年,韓国で出版されるや,たちまちベストセラーとなりました.その純真な生き方,清冽な言葉が多くの人々を魅了したのです.
     いまや韓国では,教科書にも載せられ,誰でも知っている「国民的な詩人」「民族詩人」ですが,本人は,1945年2月,福岡の刑務所で27歳という若さで獄死し,自らの詩集を見ることさえできなかったのでした.
     そして京都の下宿先で逮捕された際,その後書きためてあった詩やノートはすべて押収され,その後どこからも見つかっていません.
     さらに,彼の最後に叫んだ言葉(朝鮮語)を,聞いた看守たちは意味を解しなかったといいます.
     彼の詩をひもとくときに,植民地支配をした側の私たちは,常にこうした事実を記憶しておく必要があります.
     彼は当初,そのなよやかな言葉のゆえに,抒情詩人として捉えられていました.しかし,訳者の金時鐘氏は,こう言います.
     「アジア侵略の「聖戦」完遂に故国朝鮮もが植民地の枷のなかでなだれているとき,ひとり使ってはならない言葉,母語の朝鮮語に執着し,時節にも時局にも関わりのない詩を自己への問いのように身もだえながら書きためていた学徒の詩人」である,と.
     日本の多くの若い人たちに,ぜひ手に取っていただきたい詩集です.』(「岩波書店」サイトより▽)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b248425.html


    『尹東柱詩集 空と風と星と詩』
    著者:尹 東柱(ユン・ドンジュ 윤동주)
    訳者:金 時鐘
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎192ページ
    刊行日:2012/10/16
    ISBN‏ : ‎9784003207512


    メモ:
    (抜粋)

    序詩

    死ぬ日まで天を仰ぎ
    一点の恥じ入ることもないことを、
    葉あいにおきる風にさえ
    私は思い煩った。
    星を歌う心で
    すべての絶え入るものをいとおしまねば
    そして私に与えられた道を
    歩いていかねば。

    今宵も星が 風にかすれて泣いている。

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著者プロフィール

1929年朝鮮・元山市生まれ。著書に「猪飼野詩集」「光州詩片」「原野の詩」(小熊秀雄賞第一回特別賞受賞)、評論集「『在日』のはざまで」(毎日出版文化賞受賞)他

「年 『草むらの時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金時鐘の作品

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