変身物語 下(オウィディウス) (岩波文庫 赤 120-2)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003212028

作品紹介・あらすじ

もの音ひとつしない静寂のなか、おぼろな靄に包まれた、嶮しい、暗い坂道を、ふたりはたどっていた。もう地表に近づいているあたりだったが、妻の力が尽きはしないかと、オルペウスは心配になった。そうなると、無性に見たくなる。愛がそうさせたということになるが、とうとう、うしろを振りかえった。と、たちまち…(「オルペウスとエウリュディケ」から)。

感想・レビュー・書評

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  • ギリシア神話熱の一環。

    上巻に引き続いてどっぷり浸かれる数珠繋ぎ。オルフェウスの楽の音に集まる植物達から、オルフェウスに戻ってきたところで、目の前で泡が弾けたような感じがした。溺れていたとわかる、この一瞬の嬉しさ。
    少年愛、性の変身、同性や兄妹の愛と苦悩など、『千夜一夜物語』にも通じる奔放さも目を惹く。同性愛は結局、変身を経て異性愛に落ち着くのがらしいと言えばらしいのか。ゼウスやアポロンの少年愛は同性間のまま、さらに神と人とのことだからか、人間性ないし肉体の死を経て永遠に少年愛のまま成立するのがある意味たいへんロマンティックで侵しがたい。女性間の同性愛は、片方は相手を異性のつもりで愛しているのだから、それがハッピーエンドではあるのだけど。変身のお話であるのは了解しつつ、ついもうひとつ奔放であってほしい気がしてしまった。これも面白かったけど。
    終わりに誇らかに謳う詩人の言葉までが雄大で美しい。アウグストゥスが去って、その後も続いた帝政ローマも永遠ではなく、その支配を受ける国はもうないけど、オウィディウスとその作品は今も生きている。詩人の予感は真実に違いない。

  • イピスとイアンテ、後天的男体化百合~男として育てられたけどきちんと心も男でよかったね~
    ミノス王が黄金の手とロバの耳とのもとなのか。随分欲張りな王様ですね。
    こういう、昔絵本で聞いたような話を読めて面白い。

    「だいいち、カエサルの幾多の功績のなかでも、彼がアウグストゥスの父親になったということにまさるものはないのだ。」笑った。

  • 再読了。人形愛の語源にもなったピグマリオンや、有名なオルフェウスのエピソードなどはこの巻に収録。後半はトロイア戦争の話になってしまったので、ちょっと毛色が変わる。次はオデュッセイアでも再読するか。

    下巻で印象的だったのは、両性具有ならぬトランスジェンダー系の挿話。イピスは女性なのに男として男装で育てられたので婚約者の女性を好きになり、神に願って本物の男性にしてもらう。カイニスは海神に無理やり乱暴され、引き換えに「二度とこんな目にあいたくありません。どうか、わたしを、女でなくしてください!」 と願って叶えてもらう。後者の切実さ、つらい。

    ざっくりとした印象として、変身の理由は、以下のパターン。
    (1)神をあざけって動物などに変身させられる。
    (2)神に強姦されそうになって逃げるために別の神様に頼んで植物などに変身させてもらう。
    (3)神に強姦されたあげく、その妻に嫉妬され恨まれ、あるいは妻の目をごまかすために変身させられる。
    (4)言い寄られたけど振った相手に、振られた腹いせに恨まれ、呪われ、変身させられる。

    (1)はまだしも、圧倒的に多い(2)以下の理由の理不尽さよ・・・(悲)

  • [ 内容 ]
    <上>
    古代ローマの天成の詩人オウィディウスが、ストーリーテラーとしての手腕を存分に発揮したこの作品には、「ナルキッソスとエコー」など変身を主要モチーフとする物語が大小あわせて250もふくまれている。
    さながらそれはギリシア・ローマの神話と伝説の一大集成である。
    ラテン語原典の語り口をみごとに移しえた散文訳。

    <下>
    もの音ひとつしない静寂のなか、おぼろな靄に包まれた、嶮しい、暗い坂道を、ふたりはたどっていた。
    もう地表に近づいているあたりだったが、妻の力が尽きはしないかと、オルペウスは心配になった。
    そうなると、無性に見たくなる。
    愛がそうさせたということになるが、とうとう、うしろを振りかえった。
    と、たちまち…(「オルペウスとエウリュディケ」から)。

    [ 目次 ]
    <上>
    世界の始まり
    人間の誕生
    四つの時代
    巨人族
    リュカオン
    大洪水
    デウカリオンとピュラ
    ピュトン
    ダプネ
    イオ〔ほか〕

    <下>
    アケロオスとヘラクレス
    ネッソスとデイアネイラ
    ヘラクレスと死の衣
    リカス
    ヘラクレスの神化
    アルクメネとガランティス
    ドリュオペとローティス
    イオラオスと若返りの恵み
    ビュブリスとカウノス
    イピネとイアンテ〔ほか〕

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(立花隆選)81
    世界文学
    まあ、最低こんなところを。

  • 宇宙の始まりからアウグゥストゥス帝まで変身譚をモチーフに切れ目なくつなぎ合わせている。恋や怒りの感情などの心理描写は近代文学を読んでいるかのようだ。

  • それにしてもケダモノ以上にスケベなユピテル。奥さんいるのに次々と若い娘を強姦していく。しかも、それを知った奥さんが嫉妬に狂って若い娘を殺してしまう。さからったのに力で負けてレイプされた挙げ句、ケダモノの奥さんに殺されるとは、あまりにもかわいそうな女性たち。
    下巻の後半はローマ建国をめぐる神話というか、伝説。デュメジルが参照していたのもこの本だったかな・・・

  • ギリシア神話のもとに。

  •  2003年4月17日読了

  • オウィディウスを挙げるに『愛の技法』だけでは足りないでしょう、翻訳で読めるものとして、この『変身物語』上下巻を。ギリシア・ローマ神話の集大成的な、巻の十五に及ぶ大小250もの物語。モティーフは、「変身」。ギリシア・ローマの神々は、いともたやすく様々な動物に「変身」していた。欲望の赴くままその場の都合で勝手気ままに、と言ってもいいほどに(天神ゼウスを筆頭に)。対して、自らの意志の否か応にかかわらず、神によって、あるいはその想いの(業の)深さによって、様々な動植物や星に「変えられた」人間たち。魂が易々と「他のもの」に飛び移る軽やかさと、二度と戻れない道程としての変化(へんげ)の重さ。水仙や月桂樹や蜘蛛や牛……それらが象徴するもの。(そのまま「古事記」に通じるものも)。詩人というよりは「物語る人」としてのオウィディウスを、存分に堪能できる。ギリシア・ローマ神話の概要や神々の呼び名(ギリシア語とラテン語と)に親しい方は、是非。

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