ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

制作 : 平井正穂 
  • 岩波書店
3.57
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本棚登録 : 727
レビュー : 68
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003220214

作品紹介・あらすじ

表題の「ユートピア」とは「どこにも無い」という意味のトマス・モア(1478‐1535)の造語である。モアが描き出したこの理想国は自由と規律をかねそなえた共和国で、国民は人間の自然な姿を愛し「戦争でえられた名誉ほど不名誉なものはない」と考えている。社会思想史の第一級の古典であるだけでなく、読みものとしても十分に面白い。

感想・レビュー・書評

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  • 「ユートピア」という語は、その語が示す世界が非常にあいまいにもかかわらず、広く一般に用いられている。あいまいだからこそ常用されるのか?ひとつだけたしかなのは、人がこの語を持ち出すとき、社会に対してなにがしかの不満や逃避願望が見え隠れするということだ。

    16世紀、「ユートピア」なる語を生み出した男は、明らかに社会に不満を抱いていた。彼は架空国家を活字で創造し、それを現実社会と比較することで、それの異常さを告発しようとした。彼は登場人物の口を借りてこう言う。

    「・・・正義の行われている国とは一切のものがことごとく悪人の手中に帰している国のことであり、繁栄している国とは一切のものが少数派の独占に委ねられており・・・、他の残りの者は悲惨な、乞食のような生活をしている国のことである・・・」

    言いえて妙である。権力によって捻じ曲げられた「正常」を隠れ蓑にして「異常」が行われていることを暴くのに、これほど的をえた文句もない。

    「ユートピア」と聞いて、同書が理想郷を称揚する作品だと思うのは勘違いだ。断言できる。これはディストピア作品である、と。彼が批判対象としたのは、権力者のみにとっての「ユートピア」であった同時代なのである。

    同書は16世紀に書かれたわけであるが、16世紀という時代がいかなる様子であったのかを想像するのにも役立つであろうし、まだ現代にも同じ文句が通用することから言って、過去の遺物でもないだろう。そしてなにより、「社会思想史上の第1級の古典」ではあっても、読みものとして単純におもしろい。

    著者によって開かれた批判の目は、彼の肉体が処刑台に消えたとしても、「ユートピア」が現出しないかぎり閉じることはないだろう。

  • (1973.05.07読了)(1973.01.27購入)
    (「BOOK」データベースより)
    表題の「ユートピア」とは「どこにも無い」という意味のトマス・モア(1478‐1535)の造語である。モアが描き出したこの理想国は自由と規律をかねそなえた共和国で、国民は人間の自然な姿を愛し「戦争でえられた名誉ほど不名誉なものはない」と考えている。社会思想史の第一級の古典であるだけでなく、読みものとしても十分に面白い。

    • fujinokoichiさん
      レヴューとても参考になりました。
      早速読んでみたいと思います
      レヴューとても参考になりました。
      早速読んでみたいと思います
      2013/03/26
  • 理想のかたまりだし、厳格だけどそれぞれ理由に説得力があるし、文章や言葉遣いも後押ししてる。ただのユーモアにしちゃって感じ。
    「老齢それ自体がいわば一種の病気」とか、わかってるんだけど、当たり前すぎて、疎かにしてしまうことだとかしっかり再認識させてくれて、わかりやすいしおもしろかった。
    やっと読み終わったわー。
    トマス・モアの生涯をふりかえってくれる解説も秀逸〜。

  • まず502年前のイギリス人が書いた理想が、現在にも共通する点がいくつかあり、またそれを日本語(英語)で読めるというところに感激した。
    ディストピア作品を読んだ後のユートピアだったが、ユートピアを作るには幼い頃からの教育(別名マインドコントロール)が必要になる。
    一人の人間の理想は他の一人の地獄にもなる。どうすれば全員のユートピア共和国が作れるのか、考えるのが面白い。

    https://goo.gl/kCv16K(ブログでの感想)

  • 学生時代に読んだ本。この方の娘たちが勇敢であることに感銘をうけた。

  • 中世からルネサンス・宗教改革の過渡期を生きたトマスの ・モアが残した著名な社会思想上の古典。この歳になるまで読まずに来てしまったが、もっと早く読んでいれば受け止め方も違ったなもしれない。

  • 【印象】
    どこにもないありえない明るい国。
    具体的な市街や気候、文化、歴史についてはあまり述べられず、宗教や戦争、気質、慣習を曖昧に描写する部分が大きいです。
    とりわけ経済に関しあまりにも楽観していますので、現実的な考えを読みとりたい人にはお薦めしない作品です。

    【類別】
    小説の形をしています。
    ユートピア/ディストピア。実話的虚構。作中作の要素も。

    【脚本構成】
    概観すると三部構成であり、理想郷に行ってきたと語る人に会って話すまでがひとつ、その社会文化その他を語りつづけるのがひとつ、最後にちょっとしたものがひとつ。
    筆者が作中に登場します。

    【表現】
    語る一人称視点と聞く一人称視点。

  • 実現可能性は抜きにして、500年前から原始社会主義的な国家とその営みを書き記している想像力に感激した

  • 正義、平和など考えさせられる。

  • ユートピア(どこにも存在しない、という意味)という名前の国家に滞在した人物からその国家の全貌が語られる物語。全体的に、国家としての特徴・社会について纏められた本となっているので、物語性を求める人には向いていないかも。
    ただし、所謂ディストピア小説を好む方には一度は読んでもらいたい内容となっている。
    理想郷=汚れ(戦争・奴隷)が無い世界?
    財産(金銀財宝)についての価値観はどうなる??
    など、疑問を抱きながらページをめくれる一冊となっている。

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