カンタベリー物語 中(完訳) (岩波文庫 赤 203-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003220320

作品紹介・あらすじ

五度結婚したバースの女房が明かす女心の本音。互いにけなし合う托鉢僧と召喚吏。学僧が語る貞女グリゼルダの受難。さらに貿易商人、近習、郷土、医者、免罪符売り、船長、尼僧院長が話した後、作者チョーサーも一枚加わり物語を披露する。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻に続き中巻ではバース女房の話、托鉢僧の話、召喚吏の話、学僧の話、貿易商人の話、近習の物語、郷士の物語、医者の物語、免罪符売りの話、船長の話、尼僧院長の物語、トパス卿の話、メリベウスの物語の計13話を収録。

    ・・・
    デカメロンもそうでしたが、収録される話が多いと、個々の印象はどうしても薄れます。

    妙な譬えですが、私、結構韓国ドラマが好きで、ネトフリで1.5倍速で『チンチャすごい』『チンチャあり得ない』等と嫁と騒ぎながら視聴するのが最近の趣味です。で、数か月後どうなるかというと、面白かった、イマイチだったという印象が残るくらいでストーリーも大体忘れる。時間をかければ思い出すけど、タイトル見ただけだと思い出せないものも多数。因みに昔はGoogle Chromeの設定で3倍くらいで見ていたが今は何ゆえかブラウザのプラグインで操作できなくなってしまった。

    …何が言いたいかというと、カンタベリー物語も中巻読了後内容をいまち覚えていられないという話。
    そういう時どうなるかというと最後に読んだものが一番印象が強くなります。中巻の最後はメリベウスの物語。でも、確かにこれは印象的な話でした。

    メリベウスの物語。内容は、ある貴族の領主の家に強盗が入り、妻がケガを負い、娘が瀕死の大怪我をする中、この領主が復讐をといきり立つ中、傷つけられた妻が夫を諫めるという話です。この夫婦漫才的なやり取りが70ページもの長きにわたって繰り返されるという笑

    傷つけられたにもかかわらず強盗と和解をするべしという奥様なのですが、当時の身分制故か、表立った反論をせず、先ずはご主人の言うことをきちんと受け止めます。ただ、そのあとじわじわ反論するので、鳥瞰すれば「Yes, but」「Yes, but」が続き、ご主人は逃げ道がなくなる?というか、奥さんの言う通りにしない訳にいかない形に追い込まれます。妙にいたたまれなくなります。

    他方ご主人も、加害者に対し娘が受けたのと同じ程度の害を加えたいといきり立つ中、奥さんから散々反論・駄目だしされ、挙句の果てに「君の忠告に従う心づもりはできている」、って聞くんかい!って突っ込んでしまうくらいな従順さ。その素直さが広まれば世界中の夫婦喧嘩は絶滅しますよ。私にも分けてほしい…。

    まあでも、確かに奥様の意見はご尤もで、「人を裁くのは神と裁判官(法)のみ」なんて語っているのを見るとマグナ・カルタとキリスト教の伝統のベースを強く感じます。

    ・・・
    その他、結婚5回し性生活を謳歌したというバース女房の話などは、ルネサンスの影響を見て取れる内容でした。そうした中世文化史に興味の有る方にはおすすめできる作品かと思います。

  • 英文学における中世最大の物語集。『デカメロン』の影響を受けたとのことだが、まるまる同じ話がいくつもある。

    <学僧の話> は物議を醸すような内容だったデカメロン最終話と同じストーリー。インパクトはあるが、現代人の感覚ではこれを感動物語として素直に受けとることはできないのではないか。

    <郷士の物語> は自分がデカメロンで最も好きだった清々しい話だ。その前の <貿易商人の話> と良いコントラストをなしている。似たような状況でも……女によって行動は異なるのだ。

    <船長の話> もデカメロンにあった話なのだが、内容がわかりにくく最初それとは気づかなかった。この話に限らず本書は全体的に読みにくい。これは原文のせいなのか翻訳のせいなのか。

    <バースの女房の話> も本体はどこかで読んだことのある話。調べるとアーサー王関連だった。五度結婚したバースの女房に語らせることで独自性を出している。

    ラストにチョーサー自らが作中人物として語る <メリベウスの物語> がくせ者。なんだこれは。偉人たちの言葉を次々に引用しては、観念的な理屈を息も切らさず並べ立てて、夫を言いくるめてしまう妻の話。本巻で一番長いくらいの話なのに、物語がなくほとんどはこの屁理屈?の文章が延々と続いていく。とうとう根負けする夫にワラタ。確かに賢妻とはいえるけど……可愛くないなぁ。

    全体的に夫と妻にまつわる、ネトラレ系の話が多い。内容は良いが、デカメロンと共通の話が多いのと、文章が入ってきづらいので少し評価を下げた。

  • レヴュは下巻にて。

  • バースの女房の話
    托鉢僧の話
    召喚吏の話
    学僧の物語
    貿易商人の話
    近習の物語
    郷士の物語
    医者の物語
    免罪符売りの話
    船長の話
    尼僧院長の物語
    トパス郷の話
    メリベウスの物語

  • 一部説教臭い話もあったけど、全体としてはそれなりに楽しめた。しかし、上巻のあの充実した訳注はなんだったのかと思ってしまうほど、訳注は質も量も物足りない。(上巻出した時点でメインの方が亡くなっているのがやはり大きいのか)

  • 長い。

  • 13篇の話を収めている。「バースの女房」の話は序の方が面白いパタンで5回の結婚を繰り返した女による亭主の攻撃方法、話の方はアーサー王伝説のガヴェインの話である。不器量な女と結婚した男が誠実によって魔法を解く内容である。「托鉢僧の話」は召還吏が悪魔といっしょに老婆に財産をたかりにいくが自分も悪魔のものになってしまう話、「召還吏の話」は托鉢僧への当てつけで、修道院への寄進をたかりにきた托鉢僧が屁を寄進される話である。「学僧の話」はロンバルディアのワルテルという伯爵が器量のいい貧民の娘グリセルダと結婚し、彼女の貞淑を試し、二人の子供を取り上げ殺したように見せ、最後に祝福する話である。「貿易商人の話」は年をとって若々しい妻を娶った騎士が青春を取り戻すが、盲目となり、妻に浮気される話である。「近習の物語」はモンゴルが舞台で、謎の使者が、ジンギス・カーンに真鍮製のどこにでもいける馬や、未来がみえる鏡、鳥の話がわかる指輪などを贈る話だが未完である。「郷士の話」は人妻に恋した騎士が自然魔術師に頼み、海にみえる岩礁を消すのだが、結局、人妻をあきらめる話である。当時の天文学や地球が丸いことなどが書かれていて興味深い。また、中国の二十八宿の記述もでてくる。「医者の話」は裁判官に恋慕された美しい娘が手籠めにされる前に父に斬り殺される話である。「免罪符売りの話」は序で彼の商売のいろいろな手口が書いてあるが、話は金をとりあった三人の男が互いを殺し合い、全滅する話である。「船長の話」は商人が僧に金を貸し、女房も寝取られる話である。「尼僧院長の話」はユダヤ人街でマリアの賛美歌を歌った少年が殺され、厠に捨てられるが、奇跡が起きて、捜索者に賛美歌が聞こえた話である。最後の二つは宿の主人からチョーサーに話をするように勧めがきて、まず話だすのが騎士の叙事詩である「トバス卿」の話、巨人と戦うためにいざ出陣というところで、宿の主人に面白くないからやめろといわれ、終わりになる。かわって話したのが「メリベウスの話」で、妻と娘を襲撃され、一族郎党をあつめ、復讐をちかった騎士が妻から復讐を断念するように説得される話である。助言や友情などについて、ソロモン、キケロ、ペトルス・アルフォンス、イノケンティウス教皇などの言葉が50ページくらい延々引用される。

  • 登場人物の中で、一番キャラが立っているのはバースの女房だろう。「バースの女房の話」では本題前の「序」で結婚観に長広舌をふるい、34ページも費やしている有様。そのうえで披露する話が20ページなのだから、どっちが本題なんだと思わず笑ってしまった。
    過去に5人の夫と結婚し、そして今後もチャンスがあれば新たな男性と床を共にする、と言い切る彼女。身勝手な主張なのに一方で真実を言い当ててる部分もあって、見ていて何だか爽快になった。本題で出てくる騎士にはちょっと腹が立ったけどね。
    しかしそれ以上に腹立たしかったのは「学僧の物語」。読んでいて渋面を作らないようにするのに苦労した。現代の感覚で読んではいけないと思いつつ、それでもワルテルの振る舞いはないだろう。最後、「妻の愛を試したりしてはいけない」と結んではいるが、これはワルテルの振る舞いを非難するというよりも、グリセルダほど素晴らしい妻が現実にはいないから、という皮肉の意味だろうなあ。
    それにしても話の内容もそうだが、語り手同士の関係も面白い。上巻の粉屋と家扶がお互いいがみ合って相手を中傷するような話をするし、この巻だと托鉢僧と召喚吏が同様の流れで話す。一方で話の合間に聞き手が茶々を入れることもある。
    個人的には近習の話の続きが気になる。馬と鏡がこれからどんな役割を果たすのか楽しみにしていたのに、郷士が話を遮ったせいで結末が分からない。まあでもその郷士の話もなかなか面白かったのでよかったけどね。
    気に入ったのは「郷士の物語」「近習の物語」「免罪符売りの話」。

  • なんと結婚、恋愛の人間学の宝庫ではないか!

  • ひとりの人の人生はそれだけで物語になるのならば29人もいればとてもおもしろい物語集になるはずだ。

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