オセロウ (岩波文庫 赤 205-0)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003220504

作品紹介・あらすじ

ヴェニスの将軍オセロウは、美しい新妻デズデモウナとの愛に自らの情熱・信仰・理想のすべてを見いだすはずであった。だが、奸悪な旗手イアーゴウが単純で信じやすいオセロウの胸のうちに点じた嫉妬の念は憎悪の炎となって燃えあがり、ついにデズデモウナを亡ぼさずにはやまない。シェイクスピア(1564‐1616)四大悲劇のひとつ。

感想・レビュー・書評

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  • シェイクスピアの四大悲劇の一つ。昨年から今年にかけて読んだ本やドラマの中で、オセロウが比喩として使われることが多かったため、読んでみようと思い立った。

    ものすごく簡単に概略を示すと、この話は、オセロウが根も葉もない告げ口を部下のイアーゴウから吹き込まれ、愛する妻を失ってしまうというストーリーである。
    読んで最初に感じたのは、なぜオセロウはこんなにも簡単に部下の告げ口を信じてしまったのだろう、という違和感だった。純粋で人を信じやすい性格のようだが、信じるのはイアーゴウではなく妻のデズデモウナの方ではないか。
    でも、読んでいくうちに、この悲劇はオセロウのコンプレックスが原因なのかもしれない、と思えてきた。オセロウは勇猛で人徳があり、地位も名誉も持っているが、ムーア人で黒人である。この戯曲が初めて公演された1604年現在、ヨーロッパでどのくらい人種差別があったのかはわからないが、劇中でオセロウはしばしば名前ではなく「ムーア」と呼ばれる。私が「日本人」とか「東洋人」と呼ばれるようなもので、いやがおうにも自分がベニスの白人たちとは違う人種だと日々つきつけられる状況だったのではないだろうか。
    また、オセロウはデズデモウナの白い肌をことさらほめたたえる。ここにオセロウのコンプレックスが見え隠れしているように感じる。
    さらに、オセロウは若くはない年で、デズデモウナと年の差婚であった。体力も知力もまだまだ衰えはないだろうが、副官の優男キャシオウに対する態度から、オセロウの若さへの羨望が感じられる。
    もし彼がそんなことを気にしなかったら、イアーゴウの嘘を笑って過ごしただろう。でも、隠れたコンプレックスをつつくような嘘は、一滴でも心の中に入ると、どす黒い疑惑と嫉妬に増殖してしまう。
    イアーゴウも謎の多い人物である。彼がなぜオセロウをそんなに貶めようとしたのか、劇中でははっきり明かされない。独白でただただむき出しの憎しみと嫉妬が吐き出されるのである。

    女性の嫉妬やコンプレックスについては古今東西さまざまな作家たちによって描かれてきたが、特に現代作家で男性の醜い感情を描く人はあまりいないように感じる。どちらかというと、反目しあっていたけどやっぱり俺たち仲間だ、というような、きれいなストーリーにまとめられることの方が多いのではないだろうか。
    シェイクスピアは、避けられがちな男性の醜さをちょっとデフォルメしながらもリアルに描いている。その正直で潔い描き方が新鮮に感じられた。

  • 世界最高峰悲劇作家シェイクスピアの四大悲劇の一つ「オセロウ」。

    男女の間の愛の悲劇の物語。

    今から約400年前に上演されて今尚残り続けている物語だ。

    トリスタン・イズー物語を連想させる魔女の薬の話が盛り込んである。
    シェイクスピアももちろんのことながら、世界最古の恋愛小説と言われるそれを読んだのだろう。

    素晴らしい名著。

  • いわゆるシェイクスピア4大悲劇の1つ。

    シェイクスピアの悲劇の中でも、とりわけ主人公が悲劇的な作品である。というのも、主人公オセロウの言動に何ら起因することなく、純粋に外的な悪意――ここでは、彼の旗手(部下)の策略のことであるが――によって、彼は疑心暗鬼に陥り、最愛の妻をその手で殺害することになってしまう。

    間違いなく旗手がキーパーソン。同時に作中で最も謎の多い人物でもある。上司であるオセロウを罠に嵌めようと暗躍し、他人を利用して切り捨てるなど手段も選ばないものの、彼をそこまで駆り立てる動機については不明。彼の口から言及はされるものの、彼の煙に巻くような話術のせいもあり、本心だとはとても思えないのだ。
    演劇には疎いが、きっと旗手をどう演じるかは一つのポイントなのであろう。ぜひ演劇でも見てみたい。

  • シェイクスピアの四大悲劇の一つ。かわいそうなデズデモウナ!劇中の言葉にもありましたが、人間の嫉妬って疑いから生じるのですね。人を愛するがゆえの嫉妬が生む悲劇は、誰も幸せにしないのであるなあ。

  • オセロウが抱いた嫉妬の念は自分の身にも覚えがあるものだった。我が身を振り返らずに読んだならば、オセロウは愚かな人物として自分の目に映ったのかもしれない。しかし、もし自分がオセロウだったならばと考えた時、恐怖に似た感情が心の内に湧き上がってきた。
    シェイクスピアは人の繊細な心を完璧に描き出すことができていた。感服である。

  • 何回読んでも、イアーゴウは頭が切れて、嫌なヤツだなって思う。そしてロダリーゴウはあまりにも愚かで、オセロウは素直すぎる。

  • 初シェイクスピア日本語訳。
    ストーリーは言わずもがなだが、菅さんの注釈/解釈がとてもおもしろい。
    人の感情コントロールって何世紀も進歩してないんだなあと思うと絶望的。抗わず、自由奔放に生きるのも今なら許されるか。

  • シェイクスピアのすごいところは、主人公以外のただの悪役とか脇役さえも、活き活きとした魅力的なキャラクターにしてしまうところ。それでいて、ストーリーはしっかり進んで、最後のカタルシスまで持っていく。消化不良なところがない。天才だなあと思う。

    この作品は、とにかく悪役イアーゴウの魅力につきる。彼の嫉妬を動機とした企みは、鮮やかな立ち回りによって、オセロウの恐ろしい嫉妬心を呼び起こす。嫉妬が生み出す悲劇。イアーゴウは、だけど憎めない人物だ。罪悪感など全く感じずに、周りの人間を話術で自分のコマのように動かす。気持ち良いくらいに。

  • 4003220501  232p ?

  • 資料ID:C0030164

    配架場所:本館2F文庫書架

  • 栄誉ある人間も人を見る目がなければ、その地位も失墜する。

  • 初めから最期まで嫌な感じ。
    イアーゴーと比べたらマクベスの魔女たちだって可憐な乙女に思える。

    差別は未来に対する犯罪。
    差別による犯罪は許してはいけない。

    「悲劇作品傍注」コールリッジ
    心に決めた信念や強さがない(個性に欠け、感情が激しい――ちょうど空き家に吹く風が最も騒々しいのと同じように) 無節操

    イアーゴーの本当の気持ち――他人を軽蔑する気持ちを心の中に掻き立て、それを感じたり表したりすることに無上の喜びを味わう人々によくある心理、すなわち自分自身が軽蔑されるのを怖れる気持ち

    オセローは無知を理由に自分を弁護したいのである。しかもただ弁護するのではない――自分を責める事によって、弁護しているのである。

    憎しみに心を支配されている人に、成長し変わってゆくことを期待するのは時間の無駄だ。黙って立ち去るのがよい。

    シェイクスピアの四大悲劇のうち、『ハムレット』、『マクベス』、『リア王』は素晴らしい。ただ『オセロウ』は我慢できない。イアーゴーの台詞は一文字も読みたくない。間抜けな軍人が嫉妬に駆られて健気な妻を殺すなんて。

  • シェイクスピア4大悲劇(?)

    なが~~~~いお話でしたが、結局のところ、

    軍人で黒人のオセロウが不釣合いな美人・デズデモウナと恋をして結婚をした。
    親がどんな手を使ったんだと嘆いたが、二人は本当に愛し合っていた。
    イアーゴウはせんだっての戦で同輩のキャシオーが自分より昇進したのをねたみ、お酒に弱いキャシオウに酒を勧め、けしかけて騒ぎを起こさせた。
    オセロウはキャシオウを副官から降ろした。
    それをとりなしてもらうようにデズデモウナにお願いしてもらえとイアーゴウはキャシオウに口添えする。
    そして、イアーゴウはオセロウにデズデモウナがキャシオウと深い仲だと語って聞かせ、巧妙に仕組み、思い込ませた。

    イアーゴウを信じきったオセロウはイアーゴウにキャシオウを殺すように言って、本人はデズデモウナに手をかけた。しかし、デズデモウナが潔白であることをイアーゴウの妻が暴露する。イアーゴウの裏工作をすべて知り、オセロウはデズデモウナに口付けながら自殺する。

    と言う。これだけの話ですた。長かった。

  • 愛と嫉妬についての作品。人を描いているなあと思いました。
    オセロウを陥れるイアーゴウにしても、嫉妬狂いの権力を憎む奴。
    オセロウはばか正直にまっすぐな「坊ちゃん」みたいな人で突っ走っちゃう。悪を憎むのに自分がだまされてるのに気付かない。
    これまで読んだシェイクスピアよりも、テーマが分かりやすくて読みやすい作品でした。

  • 他の四大悲劇も読んでいても思ったのだが、まるで小説の教科書を読んでいるようだ。でもなんつうか、流れとかそう言うのがキレイすぎて、読後あんまり印象に残らない。でも、ラストとか当時からしたらやっぱ衝撃だったんだろうと思う。でも、どれも劇のための本って言うこともあって、結構展開が急だったりする。

  • 大学のゼミで読んだ一冊。

  • デズデモーナが切ない…。オセロウ、このわからずやめ! とふつうに怒ってみる。

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著者プロフィール

1564-1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ36編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている。

「2019年 『ヘンリー五世 シェイクスピア全集30巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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