失楽園 下 (岩波文庫 赤206-3)

  • 岩波書店 (1981年2月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784003220634

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

禁断の果実を巡る物語が描かれる中で、サタンに騙された二人の悲嘆と、ミカエルの救いの提案が心に響きます。アダムの子孫たちの未来を示し、イエスの出現による救いが語られることで、神の愛が感じられるストーリー...

感想・レビュー・書評

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  • 旧約聖書「創世記」中、禁断の木の実を食べたアダムとイヴが楽園を追われるエピソードを元にした、ジョン・ミルトンによる一大叙事詩『失楽園』。
    全12巻からなり、岩波文庫版では1~6巻を「上」、7~12巻を「下」としている。
    「上」では、イヴを誘惑した蛇がそもそも何者であったか、なぜ彼は人間が神に背くよう唆したか、その前段が語られる。
    「下」では、いよいよ人間が罪を犯し、楽園を追われるまでが描かれる。

    この物語詩では、天使と人間、神と人間、人間同士など、会話で語られる部分が多い。
    7~8巻では、天使ラファエルがアダムに、神による天地創造がどのようなものであったかを語っている。おもしろいのは8巻で、当時の、そしてミルトン自身の宇宙観が滲む部分である。上巻でも少し触れたが、ミルトンはガリレオとも面識があった。時代的には天動説から地動説、プトレマイオス的天文学からコペルニクス・ガリレオ的天文学への過渡期であった。そのようなときに、全知全能の神がどのように世界を作ったかを述べることはなかなか野心的ともいってよい試みだったのではないだろうか。ただ、ミルトンは、新しい学説も取り入れつつも、それに固執しているようにも感じられない。新しいものを頑迷に拒否するわけではないが、それに熱中するわけでもない姿勢がほの見える。結局のところ、ミルトン自身の主軸は天文学そのものにはなく、神と人との関わりを詩人として考えることだったのだろう。

    神の偉大さ・世界の壮大さを語る7・8巻から急転直下、9巻は本作のクライマックス、人の裏切りに場面が移る。サタンの目論見が功を奏し、人は許されぬ罪を犯す。それまでの完全な幸福は影を潜め、アダムとイヴの間には不信感が生まれ、互いになじり合い、諍うようになる。そして彼らは、「死すべきもの」となり、楽園を追われることになる。
    己の愚行を後悔しつつも、アダムは歎く。
    おお、創造主よ、土塊から人間に造っていただきたいと、私が
    あなたに頼んだことがあったでしょうか? 暗闇の世界から私を
    導き出していただきたい、この楽しい園に住まわせて
    いただきたいと、懇願したことが果たしてあったでしょうか?

    「塵から出たものが塵に帰る」ことが当然と思いつつ、死がいつ訪れるかわからぬことに彼は苦悶する。いっそのこと、直ちに破滅が訪れればよいとさえ思う。

    ではこれは絶望の物語か。
    いや、少なくともミルトンは人間がただの悪しき者として追われたとは書いていない。
    12巻で、神は、「未来には救いがある」ことを人間に伝えた上で、楽園を去らせるよう、天使に命じる。
    天使はアダムにこれ以後人間に起こるであろうことを幻として見せる。旧約聖書のダイジェストのように、バベルの塔やノアの箱舟のシーンが繰り広げられる。神の教えに背を背け、病に苦しむもの、闘い殺し合うもの、淫蕩に耽るものもいる。自らの子孫が経験するあまりの悲惨さ、あまりの困難に絶望するアダムだが、天使は優しく教え諭す。
    取りなすものである神の御子(=キリスト)を通じて、いずれは救いが訪れる。人間を陥れたサタンにもいつか復讐が果たされる。
    「いつか」を胸に、アダムとイヴは互いに手を取り、楽園を後にする。
    人は罪を犯した。けれども直ちに滅せられはしなかった。
    物語の顛末に完全に納得するかと問われると、信仰を持たないものとしては答えに窮するところがあるのだが、本作の読後感は意外に明るい。
    困難を抱えつつ、なお、生きることには希望がある。
    生きた環境と時代を超えて、不思議に響く明るさの源はどこにあるのか、もう少し考えてみたいと思っている。

  • 蛇に化けたサタンに騙され、禁断の果実を悲嘆にくれる2人にミカエルが救われる方法を提示する。

    アダムの子孫たちの未来を示し、イエスの出現によって救われる未来を伝える。

    楽園追放されたされても、なお神は2人を愛していたのだということが示されていて、素敵だった。

  • 上巻が自意識過剰なサタンの視点で語られた部分が多かったのに対して、下巻ではとうとう禁断の木の実を食べ、楽園を追われるアダムとイーヴの話が主となる。
    まあ、当然ですが。

    前半は頭がキーンとなりそうなくらい美々しく麗々しく甘々な愛の言葉を交わすアダムとイーヴですが、でも、二人は対等なわけではありません。
    あくまでもアダムが主で、イーヴは彼の言うことを聞いていればいいのだよ、という、優しい拘束が隷属が二人の間にあります。

    だからイーヴは、二人別々の時間を過ごしましょうと提案するのです。
    どうせ夜は一緒に過ごすのだから、昼間はそれぞれに自分の仕事をしましょう、と。

    当然アダムは反対します。
    サタンが二人を堕落させるために楽園を目指していることを天使から聞いて知っていたアダムは、イーヴが一人でいたら、絶対にサタンに狙われるだろうから、自分のそばを離れないほうがいい、と。

    イーヴは、サタンともあろう人(?)が、神に反乱するために自分ごときを狙いますか。あなたを倒してこその反乱になるのではないでしょうかと反論し、さらに、常に一緒にいなくてはならないのであれば、私はあばら骨のままでいればよかったのではないでしょうかとまで言い切ります。
    アダムのあばら骨から作られたというイーヴ。
    その言い分に全く落ち度はないと私は思いますが、さすがにサタンは正々堂々とした手段をとらないのでね。
    イーヴから狙うわけです。

    イーヴが禁断の木の実を食べてしまったことを知ったアダムは、共に神の罰を受けようと木の実を食べるのですが、その直後から襲い来る後悔。
    見苦しいほどに互いを責め合うアダムとイーヴ。
    まさに人間の祖。

    最終的にアダムはミカエルにこの先の人類の姿をみせられ、ある種納得して楽園を去ります。
    この先の人類、カインとアベルとか、バベルの塔とか、ノアの箱舟とか、ダビデ、ソロモン、モーセ、そしてイエス。
    もうそこまで先が決まっているなら、私たちはアダムのあばら骨のままでよかったのでは?
    っていうか、そこまで先が決まっているのなら、何のために最後の審判をするの?
    もう結果はわかっているのでは?
    と、無神論者の私は思ってしまうので、一度キリスト教の人に解説してもらいたいものです。

    ところで、上手いことイーヴをだまくらかしたサタンは、意気揚々と地獄に帰っていくのです。
    さぞ仲間たちから称賛の声で迎えられるだろうと。
    サタン…やっぱり中二だな。
    で、地獄の方たちはみんな蛇に姿を変えられて、「ぎゃ~!」ならぬ「シャーッ」ってなります。
    なんか最後の小物感がハンパなくて笑っちゃう。

    これ、愛すべきサタンの物語じゃないよね。

  • 下巻はアダムとイーヴが物語の中心です。
    『旧約聖書・創世記』にある「禁断の木の実」を口にして神に背く短い記述が、ミルトンの筆によって壮大な叙事詩として見事に甦っています。

    あたかもサタンの罪と苦悩を受け継いだかのような、アダムの苦悩と絶望の心理描写が秀逸です。
    ミルトンによる『失楽園』の最大の魅力の一つは、このサタンやアダムを通して表現される、苦しみの内面描写だと思います。
    このような苦悩や絶望を踏まえた上でどう生きてゆくか、それを考える事にこそ『失楽園』を紐解く意義があると思うのです。

    単なる娯楽よりも深い目的で『失楽園』を読もうとすれば、どうしてもある種の苦しみを感じてしまうかもしれません。
    サタンやアダムに感情移入して、その苦悩を疑似体験するような形で。
    しかし、苦しみ以上の喜びや楽しみも又『失楽園』には含まれていると思うのです。

    結末の、失われた幸福と一縷の望みとを思って楽園を旅立ってゆくアダムとイーヴの姿は、幸福とも不幸とも解釈出来るような、出来ないような。
    言わば、等身大の人間の姿が描かれています。
    結びのアダムとイーヴについて、平井正穂氏の訳注から一部抜粋。

    「漂泊者(或いは旅人)としての人間の道を二人は辿ろうとする。しかし、それはあてのない漂泊ではない。楽園喪失の人間的な悲しみ、寂しさはあるかもしれないが、同時に摂理を信ずる者の喜び(というより希望)もひめられていたはずである。」
    (『失楽園』(下) 訳注P.419)

  •  下巻ではサタンがイヴを騙して、知恵の実を食べさせる。イヴが一人で行動したいと駄々をこねて、失敗したらしたでアダムを責めるシーンが、嫌な女すぎて笑ってしまった。現代でもこういう喧嘩しているカップルはいる。昔も今も、あまり変わらない。アダムは喧嘩の後にこう思う。「女というものは、制約されることに我慢できない。そして自由気ままに振る舞い、もしその結果禍が生じると、忽ち、自分を大目に見てくれた男の気の弱さを非難する」。なかなかに言い得て妙だ。イヴが知恵の実を食べて、アダムも一緒に食べて、SEXして寝て起きて自己嫌悪に陥るところは、薬物をやった後みたいで、その後の人類の堕落を予期しているようで、気をつけようと思う。
     サタンは人間を堕落させて、意気揚々と地獄へ帰る。皆の前で大演説をかまそうとしていたのに、神の力で、その場にいる全てが蛇に変えられてしまう。サタンは偉いからか、ドラゴンだった。このシーンを持ってサタンは登場しない。以外と呆気なくて残念だ。サタンを目的に見るのはミルトンは予想していないだろうが、上巻の時の方が活躍していた。罪と死は地球に行き、その後に人間にずっと寄り添う。迷惑な話だ。
     アダムは天使から、その後の人間たちを見せられる。それは聖書で語られる歴史だ。全てが確定しているというのは、神としてはどういう立場で見ているのか不思議だ。そういう考えは、真面目にキリスト教に精通していないと分からないのだろう。
     アダムとイヴが知恵の実を食べなければ、労働しなくても良いし、楽しくいられたのだろうが、食べることは決まっていたというので、あまり責められもしないし、気持ちの拠り所が分からない。
     

  • イーヴがそそのかされて知恵の実を食べ、アダムと痴話げんかし、ミカエルが現れ、追放だけれども神を信仰していれば良いことあるよ!て未来をちらっと見せる(ノアとかモーゼとか)、そんな展開。
    自分全知全能!とかいいながら、自分の思い通りにならないと、自由意志(今でいう自己責任?)とかいって怒る(笑)あと平等の意識は無いみたいね。

  • 1
    どのようにしてアダムとイヴがエデンを追われるのかと、そこから旧約聖書を絡めて少し希望のある終わり方でした。もしかしたら、ゲームに登場するドラゴンは悪魔がもとになっているのかとか、女性の陣痛の苦しみはそういうところから来ているのかみたいな感じで、想像力がかきたてられて面白かったです。

  • 新書文庫

  • 再読。あれだけラファエルから色々忠告されたにも関わらず、ついにイヴはサタンの甘言に乗せられて禁断の実を食べてしまう。蛇はサタンに乗っ取られただけなのに、悪者扱いされてちょっと可哀想・・・。

    楽園を追われる前に人類の未来をアダムに語って聞かせるミカエル。カインとアベル、ノアの方舟、モーゼ、そしてキリストの出現まで・・・そこまで御見通しなら、どっかの時点でなんとかしろよというツッコミは入れてはだめですか。もはや予言の必要性が謎。予言をなぞるだけの現実なら、見届ける時間が無駄。

    あといつものことだけど、神の傲慢さにイラッ。お前いったい何様だよ!(あ、神様か)だから一神教はキライなんだよーと勝手に憤る。

    ところで寡聞にしてフェミニスト団体が聖書にケチをつけたという話は聞いたことないですけど、改めて男尊女卑ひどいなーとも思いました。そもそも父(神)が一人で創った子(イエス)は息子な時点で完全に男性上位、アダムによると天使の性別も男だそうで(これは諸説ありそうですが)イブがサタンに騙されたのは女がアホだから!罰として出産の痛みを味わえって・・・おいおいちょっと待て(怒)

    まあこういう不満点は別問題で、ミルトンに対しての怒りではありません。物語としては文句なしに面白い!それに尽きます。

  • ★★★★☆

    上巻の感想に「神よりも、悪役であるサタンに感情移入してしまう」と書いた。

    どうしても、圧倒的な力でサタンをねじ伏せる神にはこちらの感情を投影することができず、敗れゆくサタンのあがきの中にこそーー判官びいきと言われればそれまでだがーー人生の何たるかを感じてしまう。

    下巻ではサタンが神への復讐のため、神が自らの姿に似せて創った人間アダムとイブを騙して禁忌を犯させる。

    上巻であれだけ感情移入したので下巻でもサタンの気持ちになって読むことになるかと思いきや、アダムとイブに大いに惹かれることとなった。

    それもサタンに騙され、禁断の木の実を食べてからがイイ。

    楽園を出て行かざるを得なくなったことについてアダムがイブをぐちぐち責めたかと思えば、イブはイブで「あんたこそ、あたしのこと本気で止めなかったじゃない」と言い返す。

    痴話喧嘩である。それも人類最初の。

    こんなの面白くないわけがない。

    こういうギスギスした場面には遭遇したくないけれど、それだけに他人ごとなら面白いに決まってる。

    いやー、やっぱりサタンはいい仕事してくれはりますな。

  • サタンに唆されイブは神から禁じられた実を食べてしまい、その後でアダムも果実を食べてしまう。そこから醜い口論になるところは、いかにも醜くて人間らしい。

    叛逆者サタンが途中からほとんど出てこなくなるので、最後は神や天使のありがたい説法オンパレードになる。内容は男社会的な美徳に偏っている。

  • 最後説教臭いが、おもしろみはある。心の楽園を得る(求めようとする)までの過程が興味深い

  • 2012年11月4日読了
    下巻は有名なアダムとイブの楽園追放のエピソードが書かれます。
    りんごかじってしまった2人に、今後人類がどうなるか天使が語るのですが、こんなつらい目にあわせるのなら、人をつくらなきゃよかったのに、という悲痛な叫びが切なく、キリスト教うんぬん抜きで心にせまってきます。
    りんごをかじった後にアダムとイブがケンカするところは、人類初の夫婦げんか?口論の内容が人間臭く感じました。昔の作品とはいえ、女に責任のすべてを被せるのは勘弁してと思ってしまいますけど…
    口語訳なんで読みやすく、格調高い(と思う)文章をなんとなく楽しむことができる本でした。

  • 学生の頃、父親の本棚からこっそりと持ち出して読んでいた天使や悪魔に関する本。そういったものに興味がある年頃だったんだと思う。今も好きだけれど。
    それを思い出して数年前に購入。やっぱり魅力的な世界だなぁ、と思った。宗教が絡んでくると読みづらかったりするんだけど、無宗教が多い日本人が読むとファンタジックに感じるんだと思う。私もその一人。
    異世界(ファンタジーの世界)に迷い込んで、夢のキャラクターたちが繰り広げる言動を、こっそり覗いている。そんな感じがする。
    こんな考えは邪道なのかもしれない。信じている人にとっては許せないことなのかもしれない。けれど、ルシファーに魅力を感じる私としては、何度読んでも足りないくらいに面白く読めた。
    原本や他の翻訳本だと難しくて、理解するところまでいけないんだけど、これは訳注がついていて、分かりやすい文章で書かれている。

    悪魔って、どうしてこんなに魅力的に感じるんでしょうかね(笑)
    これを機に、いろいろ調べてみるのも面白いんじゃないかなぁ。

  • アツイですね!主人公が熱い!
    悪魔の首領ルシファーが堕天して、アダムとイヴの誘惑に成功する(その後罰を受ける)までが描かれてます。
    大筋は神の勝利と賛美なんだけども、あえて主人公がルシファーなこと、そして英雄のように描写されてるとこをみるとミルトンは悪魔びいきなのでは?なんて疑ってしまいますね~!
    悪魔がすごく人間的で、共感せずにいられない魅力をもって描かれています。

  • 天国であろうと楽園であろうとサタンの胸の中には神への復讐という天を焦がすが如く地獄の火が燃え上がる。蛇に乗り移りイーブに禁断の果実を食すよう悪魔の誘惑をほのめかし成功する。そしてこの一件でアダムとの人類最初の夫婦喧嘩が始まる。復讐を果たし地獄に生還したサタンに裁きが下りる。このepisodeは知っているようで内容は殆ど知らなかった。楽園追放となり永遠で優雅な生活から困難な道へと人類が進んで行くわけだが、だからこそ人は一日一日を大事に生きていくわけで。楽園とは何なのだろう。人生は諸行無常なり。

  •  基督教文学の古典ですけど、面白かったです。
     天使全体の三分の一がYHWHに反旗を翻して敗北し、地獄に堕とされて悪魔となり、それでもYHWHに一矢報いようと画策し、紆余曲折あってアダムとイヴを楽園から追放することに成功する、というのが概要なんですが、悪魔たちがいわゆる「絶対悪」というような存在ではなく、何とも感情豊かに描かれていて、憎めない存在となっていました。
     YHWHをゼウスと同一視させるような描写があったり、悪魔達を率いたルシフェルが、YHWHもその配下の天使達も自分達も神であり、戦いが神々の戦争であったということを暗示するような台詞を発したりと、口述するミルトンがギリシア・ローマ神話の影響を受けていることがよくわかります。
     岩波文庫版が読みやすい口語体なのでお薦めです。

  • 読んでいて、その絢爛豪華さ、かっこよさにしびれるね

  • 休み時間や下校中の電車の中でしか読まなかったので「とても長かった」という印象が一番

    変な感想だが、なにより神々しかった

    それにしてもこんなに訳注があると何が何やら分からなくなってくる

  • レヴューは上巻へ。

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