ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)

著者 :
制作 : Jonathan Swift  平井 正穂 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003220931

感想・レビュー・書評

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  • 「 奇書 」である。
    森友・加計問題に重なる部分も。官僚や首相の取巻きは必ず腐敗するものと断じる一節があるのだ。

    * * * * *
    後半、最終章「 フウイヌム国渡航記 」から、筆者の人間批判が顕在化する。筆者ガリヴァーは馬人族フウイヌムの高潔な精神に心酔。故国英国の人間と社会の低劣さ愚かさ、嘘と欺瞞を嘆く。此の国では、人間はヤフーと呼ばれる、醜悪な家畜として蔑まれている。ガリヴァーも“同族である”ヤフーを“同族嫌悪”する。ガリヴァーはもはや人間社会への復帰を求めず、数年ぶりに再会した家族すら忌み嫌い、自室に隠棲する。

    前述の如く、当時の英国政治・社会への批判・嫌悪が、随所に織り込まれる。
    フウイヌム国の第六章で、筆者は英国及び欧州の宮廷や政治の現状を説く。(p360〜)
    曰く、
    『 …きまって主君の意向や欲望に唯々諾々として従う連中だ/ 己の権力の保持に汲々とする。そして/後日罪を糾弾される憂いを断っておいて、国民から掠めとった財産をしこたま抱え込んだまま、見事に公職から退くというわけである。』
    さらに 「 首相官邸 」( 本文ママ )の人間達を以下の如く論ずる。
    『 …こういった連中は、首相が他の人々に恩恵を施す際のトンネルの役目も果たしている。/この連中こそわが王国の支配者といっても間違いではない。 』
    我国の首相秘書官や理財局長の嘘と隠蔽、保身を思わせる。

    また「 グラブダブドリップ渡航記 」の第八章 「 古代史と近代史の訂正 」もショッキングである。グラブダブドリップというのは此の国の言葉で妖術者や魔法使いの意。この国の族長は降霊術を使える。そこでガリヴァーは、族長に依頼し歴史的人物達の霊を次々に降霊。近代以降の各国君主を招き彼らの実像を暴く。曰く、多くの権力者達は、その人格や勇気、智慧によってその地位を得たのではない。密告、裏切り、偽証、腐敗と買収、悪意と陰謀などの策を巧みとする者達が地位を騙し取った、それが真実と断じる。そして彼ら君主の権威や品格を伝える史書は改竄された偽の史料だとする。
    歴史の真実は闇の中だが、そうした側面も大いにありうる、と思い、背筋が寒くなる思いがした。

    表紙カバーの解説文曰く、
    「 人間そのものに対する 戦慄すべき呪詛 」。

  • スウィフトがこの作品を記してから狂死していたとは。4篇から成る航海記を読破し、「成る程」と妙に納得してしまった。

  • 小さい頃に読んだ絵本だが、覚えているのは小人に縛られて解放された後に、嵐の中で難破しそうな船を助けて感謝されるというもの。大きくなったらガリバーみたいになりたいと思っていたが、原作を読むと結末は全く異なる。ガリバーは小人の国だけでなく、巨人の国、科学者(宇宙人?)の国、馬の国にも流れ着いていて、その国の王や神官、政治家のような人たちと交わす会話には、人間の国に対する鋭い批判や自己嫌悪に満ちている。別の国の彼らから見て、人間はなぜ戦争を起こし、飽食と飢餓、嫉妬、差別、詐欺、殺人、浮気、子殺しなどを行うのかという指摘に答えに窮するところは、単なる絵本の原作にとどまらない書と感じた。

  • ヤフーとフウイヌムの対比が面白い。ラピュータの叩き役に関しては、コンピュータについての批評のように感じる。バッファーとCPUの関係性を先見していたように思う。

  • 大人国と小人国で巻き起こる物語が、子供たちの胸を躍らせ、冒険心をくすぐる名作です。
    原作は風刺と皮肉にあふれた続編が、子供の心も大人の心も抉ります。
    (情報通信系ライフエンジニアリングコース M1)

  • ガリヴァー旅行記といえば、小人の国・巨人の国がまず思い浮かぶところだけれど、それは前半の約1/2に過ぎない。 ガリヴァーはさらに空飛ぶ島ラピュータや、馬が知性をもつフウイヌム国をも訪れる。
    人間というものは素晴らしい生き物である反面、愚かな部分も大いに持ち合わせていることが、フウイヌム国に行けば誰もが痛感させられるに違いない。スウィフトの人間世界への嫌悪感が、存分に描かれている。
    フウイヌム国渡航記は、この作品の神髄であるといってもいいと思う。

  • PSYCHO-PASSで槇島が引き合いに出していたから気になって読んでみた。絵本で楽しく読んだ子どもが、大人になってから全部を読んだらあまりの違いに驚くのではないだろうか…。

    あとがきでスウィフトがデフォーのロビンソン・クルーソーに触発されてこの本を書き上げたというのが興味深い情報だった。

  • 上司に勧められて軽い気持ちで読んでみたが、子供の時に読んだガリバー旅行記とのギャップにびっくり。童話というよりは哲学を語っている本。これを読むと人間が如何に愚かで傲慢であるかを感じてしまう。。。

  • 再読。当時の社会風刺や世相を皮肉ったかなり辛辣な側面もあるけれど、時代背景を知らなくても普遍的に当てはまるので充分伝わるし、そういう部分を無視して単純に架空の国の旅行記・冒険談として読んでも楽しい。

    ざっくり分けると旅は4度。小人の国リリパット、巨人の国ブロブディンナグ、空飛ぶ島ラピュータとその属国、最後が馬の国フウイヌム。

    途中、日本に少しだけ寄る部分があるんですが、江戸時代の日本に対する西洋人の認識ってこんな感じだったのかーと、不思議だったり笑えたり。

    あまりメインではない部分で印象に残ったのは、不死者の生まれる国。ただこの不死者たち、不老ではないため、ただただ死なないだけで老いてはいくので、長生きすればするほど地獄。うわー・・・。

    子供むけの童話としてクローズアップされるので有名なのは小人のリリパット国だけど、それ以降の、とくに馬の国あたりのグロテスクさはなかなか強烈。「家畜人ヤプー」の元ネタになった「ヤフー」という劣化版人類がとにかくえげつない。

    無事イギリスに戻ってきたガリヴァーが、馬を崇拝し人間を見下すようになっているのも、理屈はわかるけどちょっと怖い。人間の愚劣さを描くためにここまでするスウィフトに、若干の狂気を感じます。

  • 今回初めて原作を読んでみました。
    人間社会に対しての皮肉や風刺がたくさん込められている内容に、絵本で読んだ時と印象が全く違うので驚きました。
    訪れる国々でその地を統治する王様などとの会話の中から、ガリヴァーが自分の国のことを話せば話すほど人間の悪徳や社会の矛盾が浮かび上がってくるためにとても暗い気持になります。
    小人、巨人、馬人等が暮らす不思議な世界での体験を通じて、更に不思議なことばかりの人間社会における人間の美徳や理想の社会についていろいろと考えさせられる作品でした。

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