ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)

  • 岩波書店
3.72
  • (82)
  • (92)
  • (151)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 1517
感想 : 132
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003220931

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「 奇書 」である。
    森友・加計問題に重なる部分も。官僚や首相の取巻きは必ず腐敗するものと断じる一節があるのだ。

    * * * * *
    後半、最終章「 フウイヌム国渡航記 」から、筆者の人間批判が顕在化する。筆者ガリヴァーは馬人族フウイヌムの高潔な精神に心酔。故国英国の人間と社会の低劣さ愚かさ、嘘と欺瞞を嘆く。此の国では、人間はヤフーと呼ばれる、醜悪な家畜として蔑まれている。ガリヴァーも“同族である”ヤフーを“同族嫌悪”する。ガリヴァーはもはや人間社会への復帰を求めず、数年ぶりに再会した家族すら忌み嫌い、自室に隠棲する。

    前述の如く、当時の英国政治・社会への批判・嫌悪が、随所に織り込まれる。
    フウイヌム国の第六章で、筆者は英国及び欧州の宮廷や政治の現状を説く。(p360〜)
    曰く、
    『 …きまって主君の意向や欲望に唯々諾々として従う連中だ/ 己の権力の保持に汲々とする。そして/後日罪を糾弾される憂いを断っておいて、国民から掠めとった財産をしこたま抱え込んだまま、見事に公職から退くというわけである。』
    さらに 「 首相官邸 」( 本文ママ )の人間達を以下の如く論ずる。
    『 …こういった連中は、首相が他の人々に恩恵を施す際のトンネルの役目も果たしている。/この連中こそわが王国の支配者といっても間違いではない。 』
    我国の首相秘書官や理財局長の嘘と隠蔽、保身を思わせる。

    また「 グラブダブドリップ渡航記 」の第八章 「 古代史と近代史の訂正 」もショッキングである。グラブダブドリップというのは此の国の言葉で妖術者や魔法使いの意。この国の族長は降霊術を使える。そこでガリヴァーは、族長に依頼し歴史的人物達の霊を次々に降霊。近代以降の各国君主を招き彼らの実像を暴く。曰く、多くの権力者達は、その人格や勇気、智慧によってその地位を得たのではない。密告、裏切り、偽証、腐敗と買収、悪意と陰謀などの策を巧みとする者達が地位を騙し取った、それが真実と断じる。そして彼ら君主の権威や品格を伝える史書は改竄された偽の史料だとする。
    歴史の真実は闇の中だが、そうした側面も大いにありうる、と思い、背筋が寒くなる思いがした。

    表紙カバーの解説文曰く、
    「 人間そのものに対する 戦慄すべき呪詛 」。

  • モーム十大小説 子供にだけ読ませるのはもったいないーーーーーー
    子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(1667‐1745)の筆鋒はほとんど諷刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。

  • 日本を含めた八つの国を巡る四つの航海記からなる。人間嫌いで知られ、政治活動を行っていたスウィフトによる皮肉や風刺はとても強烈。夏目漱石は『ガリヴァー旅行記』を称賛しており、その影響は『吾輩は猫である』にも見られます。

  • 小人→巨人→ラピュタ(浮島)と荒れた大陸(学士院)→幽霊▶︎埃を舐める国▶︎不死身の人間(不死は決していいものではない)→江戸の日本→馬の国

  • 3.7/1291
    内容(「BOOK」データベースより)
    『子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(1667‐1745)の筆鋒はほとんど諷刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。』

    原書名:『Gulliver's Travels』
    著者:ジョナサン・スウィフト (Jonathan Swift)
    訳者:平井 正穂
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎461ページ

    メモ:
    ・松岡正剛の千夜千冊 324 夜
    ・英語で書かれた小説ベスト100(The Guardian)「the 100 best novels written in english」
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」
    ・世界文学ベスト100冊(Norwegian Book Clubs)
    ・西洋文学この百冊

  • 特に、第三節のラピュタの話が面白いため再読。この章の後半には日本の江戸が出てくるのであるが丁度、江戸時代。踏み絵の話などがちょこっと出てくる。作者は無事にオランダ経由イギリスに帰るまでの冒険のお話。

  • 『ガリヴァー旅行記』(Gulliver's Travels)は,アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトにより仮名で執筆された風刺小説である。原版の内容が大衆の怒りを買うことを恐れた出版社により,大きな改変を加えられた初版が1726年に出版され,1735年に完全な版が出版された。

    突飛な発想よりも作者の性格の悪さが前面にでた作品,言ってしまえば「アンサイクロペディア」のようなものだと思う。時代性を加味すれば重要な作品であることはわかるが,全体的に冗長で無駄の多い記述が目立つ。「アンサイクロペディア」としての楽しさは,沼正三「家畜人ヤプー」がそれに勝る。

    フウイヌム国をはじめとした各国のモデルが気になるところではあるが,それこそまさに実在しない「ユートピア」を元としているのかもしれない。しかし,結局それは著者の思考に縛られた虚構に過ぎないのだろう。

    時代背景メモ:
    18世紀のイギリス(グレートブリテン王国)の政党,ブレフスキュ国にフランスを表現,ヘンリー8世の行った処刑や追放刑により始まったイングランド国教会とカトリック教徒の諍い,王立協会への風刺,啓蒙主義運動,種族的カースト制度

  • 子供の頃に絵本で読んだことがあったが、
    しっかり全編読んでみると本質は風刺文学だと言うことがわかった。

    とくに第4章については、人間全体に対する批評がなされている。

    とても面白かった。

  • 小人の話と巨人の話は有名で、皆さん子供の頃に読んだかもですよね。その後があるなんて知らず、アニメPsycho-passの槙島聖護がバルニバービの医者の話をした所で、ガリヴァー旅行記本来のユーモアの香りを感じ、自分の好みに合うかも、と思い読んでみました。
    実際バルニバービの医者の話を読みたくて読んだ人も少なからずいるのではないでしょうか?
    シニカルで皮肉の籠った物語で、現実の色んな場面で「ラピュータの数学者達は、自分が精通してないが故に政治に対して好き放題、熱心に文句を言ってたみたいだね」とか「リリパット国の、王子は体裁と自分の思想のどちらもを取って靴底の高さが違う靴を片足ずつ履いて、歩き方が不自然だったんだよ」とか、そういうことを考えるようになって、何となく他人に優しくなれた気がします。
    あと、noteで政治家や転売虫を描写する時など、自身の怒りが文にこもってしまう事があるのですが、その時はところどころガリヴァー旅行記で随所に見られる表現をするようになってしまいました。悪辣とか醜悪とか、犀利とか敬虔とかやたらと使いたがるようになってしまった読者の方も多いのでは?
    変なツボを押され、自分はこういうユーモアが好きなんだと気付かされました。笑 とても面白かったです

  • 小人の国と巨人の国は有名。あとはラピュタと馬の国って感じで、有名じゃない方の方が好き。

全132件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)(1667 - 1745)
アイルランド生まれの英国十八世紀を代表する作家。『控えめな提案』『書物合戦』『桶物語』などの作品がある。

「2021年 『ガリヴァー旅行記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョナサン・スウィフトの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ミヒャエル・エン...
ヘミングウェイ
スペンサー ジョ...
ドストエフスキー
三島由紀夫
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×