中世騎士物語 (岩波文庫 赤 225-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003222522

作品紹介・あらすじ

アーサー王、トリスタンとイゾルデ、パーシヴァル等々、伝説やオペラの主人公として活躍する王や騎士、貴婦人たち。彼らは騎士道の典型-力、勇気、謙譲、忠誠、憐憫、貞淑など諸徳を具備した人間として登場する。『ギリシア・ローマ神話』で神々の世界をいきいきと伝えたブルフィンチ(1796‐1867)は、本書で中世の人々をも鮮やかに現出させている。

感想・レビュー・書評

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  • 『ドン・キホーテ』を読んだことから巡り始めた中世騎士道物語の読書旅。
    本書はpinoko003さんにご紹介いただきました(^O^)/

    アーサー王のことは、マロリー『アーサー王の死』に続いて2冊目。
    (アーサー王の死はこちら https://booklog.jp/item/1/4480020756
    本書には、ブルフィンチによる『アーサー王とその騎士たち』、ウェイルズの散文物語『マビノジョン』、そして『英国民族の英雄伝説』が収録されている。

    騎士道がなぜの成り立ったのか、騎士たちの教義、「想い姫」システムとその姫にもらった物を身につける風習のことなど、歴代の騎士や彼らた生まれた歴史や地理の背景を通して、ヨーロッパの歴史や地政学、、民族の移動やそれに伴う原語や宗教の交わり、戦争の歴史が分かる。

    ローマ帝国が滅亡した西暦五世紀ごろ、北部ヨーロッパは領主たちの勢力戦争にさらされていた。住民たちは戦争になれば抵抗の手段もない。そんな時代でも、力だけが物を言う無法時代にならなかったのは、人間としての正義感や抑制力、弱いものを守ろうとする気持ちがあったからだ(と思いたいですね)。
    その中で騎士道が起きた。勇気、正義、忠誠、礼節、憐憫、節度、献身…などを掲げ戦争のときには大いに戦い、平穏時には宮廷での試合や恋愛、宗教や正義のための諸国漫遊などを行っていた。

    物語が語りで伝えられていたころ、そんな冒険や騎士道物語を語ったのはフランス北方のトルーヴェールと呼ばれる詩人たちだった。英雄的性格を持つことを理想としたのだ。

    しかしこの正義が悪用されることもある。人間の権利よりも正義のもとの力がものを言ってしまう。
    やがて法律が強くなると、文官が騎士に取って代わるのだ。

    本書ではイングランドの歴史と代々の王のことが書かれている。ここで現代の地名の由来や、言葉や民族の入り混じりが書かれていく。イギリス人の歴史をざーーっと学ぶには良さそう。

    ❐諸王
    ・ブリテンと呼ばれる前でアルビオンと呼ばれていた島に都を創ったブルータスは、都をトロヤノヴァ(新しいトロヤ)と名付けた。そこが後のロンドン。
    ・リア王:末娘コーディーラとその夫は姉二人を追い出して父を王座に復職させるが、リアの死後姉たちの遺児たちに殺されたらしい。シェイクスピア『リア王』は悲劇だが、現実はもっと容赦ないね(-_-;)

    ❐アーサー王
    アーサー王に関しては『アーサー王の死』で読んだのだが、そちらでは不倫話メインだったので、こちらには聖杯伝説などもあってよかったです。
    ・都の「カメロット」は、現在でのウィンチェスター。
    ・エクスカリバーって結局どれなんだーー。
     『アーサー王の死』では湖の乙女から与えられた剣となっているが、本書では岩に刺さってアーサーが抜いた剣に「我はいやたかきエスカリボー ふさわしき王の佩刀(はかせ)とならん」(P50)の文字が刻まれていたらしい。
    ・「円卓」とは、国中の貴族を集めて座らせるためものだった。他の本で円卓の騎士が150人くらいいて「そんなに多いのか!」と思ったんだが、「円卓の騎士」って「国中の騎士」だったのか、それなら大勢いるよね。
    ・一般的に「円卓の騎士」と言ったら、アーサー王の騎士たちのなかでも最も名誉があると認められた騎士が座る十三人のものかなと思う。キリスト十三使徒を真似て十三席にしたんだそうだ。その座席が相応しい騎士を認めて、そうでない者が座ると大地に飲み込まれる(地獄に落ちる?)らしい。こわいーー。
    ・魔法使いのマーリンていつの間にかいなくなってるよな、と思っていたんだが、どうやら愛人の湖の妖精ヴィヴィアンに騙され?閉じ込められて人の目には見えない存在になってしまったらしい。あほーーー(☓。☓)
    ・そのヴィヴィアンは、アーサー王も誑かして記憶を奪ったらしい。
    ・アーサー王は魔法使いから「婦人が最も望むものはなにか」という謎掛けを出される。この謎掛けの正解は、醜い女がアーサー王に言った「あらゆる婦人の切望は、すべての女が自分の意思を持つこと」というものだった。婦人(女性)は自分の意思を通すことは難しかっただろうけれど、意思を持つこと自体が難しかったのかな。まあ男性であっても意思を通すことは難しそうだが。
    ・アーサー王は高名だし人々の崇拝も受けて入るが、絶対的な権力があるわけではないようだ。円卓の騎士たちも巡礼などでアーサー王の英国から離れて別の地で王になったり僧になったりもする。アーサー王も戦争のため英国を離れたら、留守を務めていた甥のモウドレットに英国を奪われるし他の王や騎士たちもアーサー王よりもモウドレットを支持する。群雄割拠の欧州の王は位も安定していない。

    ❐アーサー王の聖杯探索
    ・聖盃とはイエスが最後の晩餐で使った盃のこと。この聖盃と、十字架でイエスを突き殺したやりとが聖遺物。
     「聖杯」って十字架で槍に疲れて流した血を受け止めた坏という説もありますよね!?
    (※確認したら、最後の晩餐で使った盃で、キリストの血を受け止めた、ということのようだ)
    ・その聖盃は行方不明となっていた。そこでアーサーの円卓の騎士たちが各地に探しに行った。色々な騎士の旅が語られ、多くの騎士たちが命を落とした。結局聖盃は、天から延びてきた手により天に昇り、人の世の中からは去った。

    ❐騎士
    ・騎士は「騎士の誓い」をたてたら必ず守らなければいけない。そのため「あなたの奥さんが欲しいです」と言ったら渡さなければいけない。そこで騎士が誓いをたてるときは慎重に!(←実用的で切実なアドバイスだ^^;)
    ・アーサー王の甥ガウェイン
    普段も強いし、午前は三倍の力が出せるという魔法ドーピングもある 笑。
    強いし誠実なんだが、決闘に負けたり、捕まったり、魔法にかけられたり、他の人から恨まれたり、彼のせいで戦争が長引いたり、ところどころドジ踏んでいる印象だ。
    面白かったのが結婚エピソード。ある時醜い女を妻にしなければいけなくなった。しかし妻が醜いのは魔法の呪いだったので、結婚したことにより半分だけ魔法が解けることになった。妻は「私が、昼間美しく夜醜いのと、昼間醜く夜美しいのとどちらが良いですか?」ガウェインは「自分だけが見る夜に美しい方が良いなあ」というが、妻は「あらー、私は貴婦人や騎士たちがいる昼間に美しくなりたいわ」と言う。このやり取りが、男女心理としてちょっと面白い。なお、ガウェインはこの妻の願いを受け入れたので結局呪いは全て解けてずっと美女のままでした★というオチになる。こういうとことはいいヤツぽいんだけどなあ。
    ・湖の騎士ラーンスロット
     私は先にマロリー『アーサー王の死』を読んだので「お騒がせ不倫・下半身丸出し放浪」のイメージを持っちゃっているんだが、本書ではギネヴィア王妃とは肉体関係までは明記されていないので、そこまで迷惑なヤツではないようだ。
     「湖の騎士」の通り名は、父の王を亡くした幼いラーンスロットが湖の妖精ヴィヴィアンに、湖の只中の秘密の宮廷で養育されたからということだった。
     そして妖精ヴィヴィアンは、恋人マーリンを閉じ込め、アーサー王も閉じ込めた人(妖精)ですね。遣り手だなあ。
    ・トリストラムとイゾーテ
     トリストラムはコーンウォル出身でフランス王宮で教育を受けて騎士になった。その頃円卓の騎士十三番目が空いていたのだが、トリストラムが円卓に選ばれた。
     ロミジュリの元ネタになった悲恋という程度の知識だったのをここで流れを知ることができた。もっと単純に「叶わぬ相手と出会って恋して死んだ」かと思っていたが、思ったより長かった。二人きりになった日々もあるし、イゾーテが夫に幽閉状態のときにトリストラムは「騎士の巡礼の旅に行って来ますね」と側を離れたりもするし、同じイゾーテの名前を持つ別の女性と結婚もする。しかし大怪我した時に妻のイゾーテの看病では治らないと想い姫イゾーテを呼び寄せるという女心のわからんことをしたために結局死ぬことに。「想い姫」と「妻」は違うんだよ、と言われても人の心はそんなに単純じゃないという結末はなんか面白い。
     
    ❐マビノジョン
    魔法が出てきたり、大戦があったり、血気盛んなお話集。
    ・騎士ジョレイントと妻のエニド:夫から不貞を疑われてしまった妻の名誉が取り戻されるまで。「一章愛するから想い姫になってください」と言っておいて、ありもしない不貞の疑いかけて、めんどくさーー(==)
    ・騎士キリッチの結婚物語:騎士が求婚する乙女の父親から無理難題押し付けられるけど倍返しする話。

    ❐英国民族の英雄伝説
    ・ベイオウルフ:英雄の中でも高名で、怪物と戦ったり王になって国を栄えさせたりした生涯。
    ・ロビン・フッド:陽気な不法者。ある時名前を代え宮廷試合に出て、颯爽と優勝して森に帰っていきましたとさ。

  • 「アーサー王物語」と「マビノギオン」の概略から、広大な伝説の世界へと我々を導く、中世騎士物語の入門書。

    岩波文庫の初版が1942年、以降長く読み継がれている名翻訳。トマス・マロリー『アーサー王の死』からの抜粋かと思われる前半と、『マビノギオン(マビノジョン)』というウェールズ民話の抄訳である後半からなる。巻末にわずかだが、ロビン・フッドやベーオウルフなど英国の伝承も収録。

    こういった中世ヨーロッパにおける伝説・伝承の物語は、おそらく今日のファンタジーというジャンルの源流の一つなのだろうが、ここに描かれるアーサー王と円卓の騎士たちの世界は、日本で異世界(転生?)ファンタジーなどと呼ばれているものとは精神性がまったく違う。そこにあるのは騎士道の精神であり、彼らは「主君への忠誠・名誉と礼節・貴婦人への愛」(Wikipedia)を備える高潔な人物たちである。……はずなのだが……。

    実際に読んでみると、ツッコミどころが多数。もちろんこれは、物語として面白いという意味で。不倫や横恋慕、略奪に裏切り、何かあればすぐに決闘で決着をつける武闘派っぷり。ちょっと何かのネジがはずれているんでない?と思わせる話が多くて笑う。もちろん美しい純愛を感じる話もあり、とにかく恋愛要素に欠かない物語群は楽しい。

    円卓の騎士たちのキャラクターがすごく立っており、それぞれの冒険とロマンスが素直に面白い。彼らの個々のエピソードのあとに、最後のミッション的な聖杯(聖盃)探索へ続き、そこから思わぬ展開に続いていく流れは中々に読み応えがある。
    ファンタジー好きとしては、魔術師マーリンの活躍をもっと見たいのだが、そういう話も探せばあるのだろうか。

    後半のマビノジョンの方は、アーサー王たちの話もあるが、どことなくアラビアン・ナイト風なファンタジー短篇集といった感じ。こちらも、趣は異なるが濃密な物語群で楽しめた。

    前作『ギリシャ・ローマ神話』と同様、本書はこれら中世騎士の世界に飛び込んでいくきっかけとなる入門書として優れたものだと思われる。なお本訳は名文ではあるが、やはり訳が古くてわかりにくい部分がある。特に人物名などの固有名詞は今日親しまれているものと異なるものがあるので、ここから他の関連作品に手を付けるときには注意が必要かも。

  • 東洋の歴史物もいいけど、たまには、西洋のもいいかと思い読んだ。アーサー王や有名な円卓の騎士などの話。伝説化されていて、脚色多いようだけど、結構面白い。

  • アーサー王とその騎士たち、は、まだ理解できる。と言うか、それぞれの登場人物が、それなりに人間らしい。いや、兜を突き破るほどの斬撃で、剣が頭蓋骨まで達しても、命乞いして、助かったとか言ってて、マジでタフだなおい、くらいの荒くれっぷりはあるけど。
    にしてもマビノジョンはヤバい。いきなり相手の城に押しかけて、突然皆殺しにして宝物を奪ったり、その他残虐非道っぷりが、相手が悪者かどうかの説明もないまま行われるもんだから、もう。そういうの気にしないタイプなん?
    あまりの酷さに読んでて笑ってしまって、B級ホラーの趣さえある。肉食人種怖い。

  • アーサー王伝説の翻訳は今では多数あるが、中世ヨーロッパ風のファンタジイや騎士物語風の物語を書きたい人、あるいはその手のTRPGをする人にとって大変貴重な資料が含まれているということだ。
    まあ、中世の騎士や中世の暮らしについても今は色々と資料が翻訳されたり、まとめられたりしているけれども、それでも、どのようにして騎士になるか、騎士の武装とはどのようなものであったのかなどについて知るには、非常にわかりやすく述べられているし、まとめられてもいる。
    また、本書の特徴の第二は、アーサー王伝説としてアーサー王、ランスロット、トリストラム、パーシヴァル、ガラハッドそして聖杯探索について述べられているだけでなく、マビノギオンからも幾つかの物語が採られている事だと思う。

    そのわりに本書でもガレスの物語は省かれているのだよなあ……面白いんですけどね。

  • やっぱり円卓の騎士たちの物語は純粋に楽しい。トリスタンとイゾルデなんかは、小説のほうでもお馴染みだし、絵画の世界でもラファエル前派がモチーフにしたロマンティックなシーンがいくつもあるし。

    ただ聖杯伝説になると、いささか宗教臭が鼻につくというか…実はちょっと苦手だったりします。アーサー王の伝説自体は民族の中に土着した素朴な伝説だったと思うんですけど、そこにキリスト教が参入したことで、民間信仰や伝説をキリスト教の伝説に摺り替えたり混淆したりしていくっていう、あの宗教特有の非常に質の悪い遣り口で取り込んでいった過程がみえみえなので…。一神教と騎士道って明らかに矛盾する部分があるので、無理がある。ゆえにちょっと聖杯のエピソードだけは苦々しく読んでしまいます。

    • 淳水堂さん
      yamaitsuさんがいたーー笑

      『ドン・キホーテ』からの騎士道物語読書旅続いています。
      『アーサー王の死』には出ていなかったトリス...
      yamaitsuさんがいたーー笑

      『ドン・キホーテ』からの騎士道物語読書旅続いています。
      『アーサー王の死』には出ていなかったトリストラムとイゾルデの物語、聖杯探索も出ていてだんだん流れが読めてきました。

      たしかにケルト神話に当時のキリスト教価値観を入れたから変な事になっていますよね。
      そのうえ騎士たちの「力に物を言わせる正義」の怖さもよく感じられました^^;
      2023/10/21
    • yamaitsuさん
      淳水堂さんが来られたー!(笑)

      私は、以前一時期アーサー王にはまっていたので、この手の本で入手しやすい文庫は一通り(?)読んだのです。...
      淳水堂さんが来られたー!(笑)

      私は、以前一時期アーサー王にはまっていたので、この手の本で入手しやすい文庫は一通り(?)読んだのです。すっかり内容忘れてしまってるので、私も「ドン・キホーテ」読み終わったら久しぶりに再読してみようかしら。

      お次はペディエの『トリスタン・イズー物語』あたりですかね?きっとそこにも私がいます(笑)
      2023/10/21
  •  岩波文庫「ドン・キホーテ・前篇1」を読んで風刺している中世の騎士物語を読みたくなり手に取った。「アーサー王伝説」は現代でも色々な作品でモチーフになっているので本家を読んでいるとちょっと自慢できるかも(直ぐ思いつくのはFF、コードギアス、スマホのソシャゲ?、サブカルばかりだけど…)。
     前書きでアーサー王伝説の最も優れた作品はトマス・マロリの「アーサー王の死」とある。時間があればそれも読んでみたいがこの本で十分かもしれない。
     とにかく人物が多く描写は抽象的なのでビジュアルのイメージが描けないのが辛い。絶世の美女何人出てきたか分からないし。地名もどこに当たるのか分から無いまま読んだ。冒頭に地図が欲しい。城がいくつあるんだってほど出てきたり、やたらに宴をしたりと理想化されているところは多い。
     騎士道が全体を貫いているが正しい、かっこいいと素直には受け入れられなかった。宴をするということは農民が苦しませるということだろうし。その辺りは前書きでも述べられている。「ドン・キホーテ」の風刺もより理解できるようになった。
     マビノジョンはアーサー王伝説に内包されるのかな?アーサー王伝説の区分が終わったと思ったらまた時間軸が戻って混乱した。
     

  • ブルフィンチが1858年に書いたものを小説家でもある野上弥生子が訳したもの。訳文も古いが古風な所に味わいがある。内容は騎士をめぐる習俗(鎧や兜、修行期間)、英国の古伝説、アーサー王の伝説、古ウェール語の物語「マノビジョン」、英国に渡る前の古伝説を残す「ベイオウルフ」、「アイヴァンホー」にみえるロビンフットなどの伝説を数頁、収めている。もっとも読み応えがあるのがマロリー『アーサー王の死』をもとに構成されたアーサー王の話である。魔法使いマーリンとその愛人湖の妖精ヴィヴィアン、エクスカリバーの話、午前と午後の三時間だけ力が三倍になるガヴェイン、湖の騎士ランスロット、王妃ギニヴィアとランスロットの愛、シャルロット姫(ランスロットにふられて自殺する)、愛の薬を誤って飲んだため悲劇に導かれるトリスタンとイゾルデ、どれもなかなかいい。アーサーの死は、王妃を愛したランスロットとの戦いの中、騎士モードレットが母国で即位、これを討つために急遽帰国するが、戦死したガヴェインの予言で休戦することになる。しかし、一人の騎士が蛇を切るために剣を抜いたことがきっかけで激戦となり、アーサーは戦死する。エクスカリバーを海に投げさせると、白い手が海からでて受けとったそうである。ランスロットはギニヴィアを修道院に訪ねるが、二人は神につかえることを誓い別れた。また、ランスロットがサングリアル(聖杯)探索の旅で神にめざめていく所や、ランスロットの息子ガラハドが聖杯を探しあてる所など、おもしろい。ただし、数々矛盾があって、疑問を禁じ得ないところもある。瓶とかガラス窓など15世紀のものがでてきたりする。アーサーはA.D.500年頃に活躍したといわれる。『マノビジョン』は雨が降ったら城が消えたとか、泉の妖精とか、歩くたびにシロツメクサの花が咲く乙女とか、底なしの袋とか、嫁取りの冒険とか、魔法的な色彩が強い。ブルフィンチは「まとめ」をした人なので、実際の騎士物語の文体はほかの書物を読まねばならない。

  •  神話などの研究・紹介などで知られる(1796年生まれと本人自体がもう歴史上の人物になっている)アメリカの作家トマス・ブルフィンチによる中世騎士物語集。大きく分けて3部からなり、最初はアーサー王物語(「アーサー王とその騎士たち」)、次に「マビノジョン」、最後にベイオウルフなどが入った(ちょっとした補足程度の分量の)「英国民族の英雄伝説」。「マビノジョン」はウェイルズの民話集のようなのだが、アーサー王物語の外伝のようなものも含まれるようなやや散漫なエピソード集で正直あまり集中できず(変装して宴会にしのびこむパターンが2度あるなど、似たようなエピソードも目立つ)。基本的に本書の中心は最初のアーサー王の部分だろう。これだけで全貌がとらえられるようなものではないが、ラーンスロットやトリストラム(トリスタン)とイゾルデなど主要なエピソードを把握することが出来た。ラーンスロットがやたらともてるヤツであることと、モンティ・パイソンそのままに神様の手がいきなり出てきて聖杯をとってっちゃうところが印象に残った。<そこかよ(笑)

  • アーサー王と円卓の騎士などと言われますけれど、その騎士たちの物語です。ランスロットやトリスタンなど、ヨーロッパなどでは多くの人が知っている話なのでしょうね。この騎士物語に一度触れておくと、のちに『ドン・キホーテ』を読んだら、何割増しかで楽しめると思います。

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