イノック・アーデン (岩波文庫 赤 226-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003222614

感想・レビュー・書評

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  • 男が妻子の幸福のために航海に出て、十年後に帰還してみると、妻子は別の男と幸せに暮らしている。そして、男は…。わずか90ページ余りの、この「物語詩」が、世界中で長く読み継がれています。
    それは、一般的に言われているテニスンの詩が持つ牧歌性やイギリスの国民性のあらわれのためだけではなく、その悲劇的なテーマを通じて、人間存在のせつなさ、いとおしさ、そして誇らしさを私たちに伝えるからです。読後の何とも言えない質感がそのことを証明していると思います。
    現代語の訳では、原田宗典訳もあります。また、この詩の朗読に、リヒャルト・シュトラウスが音楽を付けたものがあります。CDでは、名バリトン歌手、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウのものが最新のものです。(K)
    紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2006年11月号掲載

  • ひとり絶海の孤島に置き去りにされても男たちは、孤独にも、絶望にも、過酷な環境にも果敢に立ち向かえる。かのひとの面影がその胸の中を温めるかぎりは……。

    ■『イノック・アーデン』(テニスン)
    イノック・アーデンの漂流期間はおよそ12年。
    漂流の原因は船の難破。
    物語の見どころは、帰郷後あえて家族に名乗り出ないイノック・アーデンの秘めた思い。そして彼の感動的な最期。
    ■「帰郷」(モーパッサン)
    マルタンの漂流期間は12年。
    漂流の原因は船の難破。
    物語の見どころは、帰郷後の家族とのファースト・コンタクト。マルタンはなんだかもじもじしながら名乗り出て、一方家族は唖然、茫然、くちあんぐりで……。でも絶対に死んだと思ってた人が12年ぶりに現れたとしたら、実際はこんな感じになるんだろうなぁ。
    ■『キャスト・アウェイ』(ゼメキス)
    トム・ハンクスの漂流期間は4年。
    漂流の原因は飛行機の墜落。
    物語の見どころは孤島でのサバイバルと、帰郷後の婚約者との再会。映画を観おわっても決して物語が閉じた感じがしなくて、トム・ハンクスはまだあの孤島にひとり取り残されているみたいな切ない気持ちになる。
    ■『オデッセイ』(リドリー・スコット)
    マーク・ワトリーが火星でひとり生き延びる期間は1年半。
    火星に取り残された原因は、事故で死んだと思われて見捨てられたから。
    物語の見どころは、ひとり火星で(!)生き延びようと全知全能を傾け奮闘努力するところ。マーク・ワトリーはどんな悲惨な時も前しか向いていないのだ。
    ■『ロビンソン・クルーソー』(デフォー)
    ロビンソン・クルーソーの漂流期間は28年(!)。
    漂流の原因は船の難破。
    物語の見どころは孤島でのサバイバル。とはいっても島には人食い人種がいっぱいいるし、フライデーという手下ができるしで、ロビンソンは寂しいわけでは全然ない。で、もうこんだけ長いあいだ住んでたら、この島は立派なふるさとでもう良くナイ?
    ■「白い幻影」(手塚)
    則夫の漂流期間および救出の詳細は不明。
    漂流の原因は船の難破。
    物語りの見どころは、同船していた恋人のマッチャンの網膜に、則夫の最後の姿が稲光の閃光とともに焼き付いてしまうというもの。彼女は結婚をあきらめ、四六時中つきまとう則夫の幻と一生添い遂げることを誓う。……海難事故から数十年後ふたりは偶然再会する。しかしマッチャンは相手が則夫だとわかったものの、則夫の方は事故の影響で記憶を失い、マッチャンに気づくことはない。ふたりは二度目の永遠の別れを経験する。

  • 普段読む機会が少ないと思われる、150年前に書かれたイギリスの詩です。漂流中に妻が再婚してしまったことに気付いた主人公イノックの決断とは。恋愛や思いやりは古今東西を通じて不変のものなのかもしれません。
    (機械科学科 B2)

  • イノックは愛する家族のために航海に出るが船は難破し、10年もの月日が流れた。命からがら故郷に戻ってきたが、彼が目にしたのは幼なじみのフィリップと幸せに暮らす妻と子どもたちの姿だった。英詩、またその翻訳はとっつきにくいイメージだが、日本の若者にはかなり馴染みやすいストーリーだろう。登場人物が皆純粋だからこそ切ない。時折挟まれる伏線やイノックとアニイのリンクが綺麗で美しい。

  • リヒャルト・シュトラウスの作品を見る(聞く?)ために、大昔少年少女版で読んだ記憶を辿りながら再読。
    ところがシュトラウス版がフルテキストではなく、役者と演出家が音に合わせて要所をつまんでいく感じだったので、逆に冗長さが無くなって却って面白く感じた。皮肉なものだ。

  • 読了後、暫く”イノック・アーデン”という響きが頭から離れなかった。祈りのシーンには脱帽。こういう美しい本の存在はうれしい。いつか原書で…。

  • これは「詩」なのだろうか。
    話の筋や人物の心情を追うと、「はぁ」「ふむふむ」「あ、やっぱり」ってな感じで現代を生きる僕らには然程どうってことない物語なのだと思う。

    しかしこの本は、人物の動作、広がるイギリスの田園風景、漂浪する海の暗さに置かれる言葉がこの上なく美しく、季節や生活の色の情景がはっきりと頭に浮かび、とても豊かな気分になるのである。
    そして、美しいだけではなく、訳語にも所々小気味良いリズムがある。
    そういうのひっくるめて心地よいし、いい旅が出来たと思う。

  • 人の世はすべて定めなく、やがて思いがけぬことが起こってきた。
    行く末の希望を語り続ける言葉を聞いて、どうやらアニイも希望の沸くような気持ちになっていた。
    もし気がかりになるなら、すっかり神様にお預けするがよい、神様こそは頼みの錨だ、朝日の昇る東の果に行ったと手、やはり神様はいらっしゃる。

  • シンプルなメロドラマ?もう一回(といわず)読み返します。

  • するすると読め、グイグイと引き込まれる作品。
    イノック・アーデンの諦めの良さと展開がこんな上手くいくはずないだろう、とは思いますが、名作だと思います。

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