虚栄の市〈四〉 (岩波文庫)

  • 岩波書店
3.78
  • (5)
  • (11)
  • (11)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 125
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003222744

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 正反対の性格である二人の女性を対立軸に進んでいく物語。一方は苦境に立たせれる道を歩むもどんでん返しが二重に起きたて幸せな人生を送ることになりそうな半面、もう一方はらしい道を歩んで一見幸せそうな人生を送ることになりそう。どちらが真に幸福と言えるのかを読者に問うているのだろう。そしてその問いの制約条件として、この作品の見事としか言いようのないタイトル(他からの引用であるらしい)の含むところは、終始作品の舞台は「虚栄」さを交換している「市」だとしている点である。思うに、人生は本質を追求するための舞台というよりも馬鹿々々しくも空虚なことを出し惜しみすることなく提示し続けることの方が重きをなす場合の方が多いと作者はこの作品で意図している。その「市」はmarket(制度としての「市」)ではなくfair(刹那的な「市」)とタイトルで示している点も人生の儚さを暗示しているように思われる。そして、そのような人生という場でどちらの幸福を望むのか。愚かにも真っ正直にいきながらも苦境に耐えて最後には真の幸福をつかもうを希望を持って人生を送るのか。それとも、周りに蔑まれながらも小利口に立ち回って見せかけの幸福な人生をおくるのか。人生はこの二者択一ではないかもしれないけど。

  • 機会を最大限に利用する才覚はベッキーが長けているが、悪女としての素養はむしろ無垢なアミーリアの方が上。自覚の有無の問題なのだ。
    長い年月を踏みつけにされながらも献身的に尽くしてきたドビンだが、どうしても譲れない一点において自己を主張し、アミーリアに最後通牒を突き付ける。いい人をやめていい男になったら、欲しかったものが手に入る。でもアミーリアにそんな価値ないと思うけど。無意識とはいえ簡単に落とせないということだけで自分の価値を高めてるような、まごころもわからない鈍感女なんだから。

  • 「虚栄の市(四)」サッカリー著・中島賢二訳、岩波文庫、2004.03.16
    411p ¥840 C0197 (2017.11.06読了)(2017.07.02購入)

    【目次】
    第五十四章 戦い済んで日曜日
    第五十五章 前章の続き
    第五十六章 ジョージー、紳士となる
    第五十七章 東方紀行
    第五十八章 われらが友、ドビン少佐
    第六十章  再び上流社会へ
    第六十一章 二つの灯が消える
    第六十二章 ラインの畔
    第六十三章 旧友との再会
    第六十四章 さすらい人
    第六十五章 忙しいやら嬉しいやら
    第六十六章 恋人同士の喧嘩
    第六十七章 出生、結婚、そして死
    地図
    解説  中島賢二

    ☆関連図書(既読)
    「虚栄の市(一)」サッカリー著・中島賢二訳、岩波文庫、2003.09.17
    「虚栄の市(二)」サッカリー著・中島賢二訳、岩波文庫、2003.11.14
    「虚栄の市(三)」サッカリー著・中島賢二訳、岩波文庫、2004.01.16
    (「BOOK」データベースより)amazon
    賭博場をさすらうベッキーとの予期せぬ再会。亡夫を追慕するアミーリアに旧友は15年前の手紙を突きつけ迷妄を醒ましてやる。しかし、ああ、空の空―虚栄の社会はなおも続き…人間絵巻ついに完結。“悪女”最後の疑惑を読者にのこして。新訳。

  • レベッカが醜聞により社交界から総スカンをくらい、反対にジョスの帰国によりアミーリアが社交界に復帰。なんだかこのあたりから因果応報感が漂ってきてつまらなくなってしまったのだが、そのままでは終わらなかった。
    第66章「恋人同士の喧嘩」でドビンとレベッカがアミーリアにそれぞれの言葉で「いい加減目を覚ませバカ女」と言うところ、まさしくその一言待ってましたー!!ここまで読む間、ドビン君の愛情にあぐらをかいたアミーリアにどれだけいらついたことか。いやーこの小説間違いなくドビン君がヒーローですよ。レベッカはレベッカで最後まで自分を貫いていて、あっぱれ。そういう生き方もありだと思う。何が正しい、何が正しくない、なんて相対的なものでしかないのだから、みんな自分らしく生きればいいのだ。他人と比べて幸せを測るなんて馬鹿らしい、とサッカリーは言っている気がする。
    そんな感じで読後はスッキリした気分。これも大団円と言えるかな!

  • 稀代の悪女とか書かれているベッキーだが、ちっともそうとは思えない。この時代に金も後ろ盾も無く、自分の力だけでここまで伸し上がれたのは素晴らしい。

  • ドビンが一瞬「おれ実はベッキーの方が人間としては好きだな」と思ってしまうところがよい。

  • 全4巻読了。北村薫のベッキーさんシリーズから興味を持って読んだけど、予想外に面白かった。2004年の新訳だけあって、訳が古臭くなくて読みやすいのも◎
    善良で凡庸なヒロインアミーリアに対して才知に溢れる「悪女」ベッキー。でもこのベッキーがとても魅力的。自分に正直で目的のためには手段を選ばず、だけど根っからの悪人ではなくて、自分に正面から敵対する人にかえって好意を感じたり、困難を笑い飛ばすことのできるベッキーは、今でも通用するキャラクターだと思う。

全8件中 1 - 8件を表示

サッカリーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×