デイヴィッド・コパフィールド 1 (岩波文庫 赤 228-1)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003222812

作品紹介・あらすじ

本書は、モームが世界の十大小説の一つに選び、ディケンズ(一八一二‐一八七〇)自身も「自分の全著作の中で、一番気に入っている」と語っている自伝的作品である。個性的な登場人物が多数登場し、ユーモアとペーソスが全篇にわたって満ちあふれている。新訳。

感想・レビュー・書評

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  • モームの「世界十大小説」の一つになった本作は、チャールズ・ディケンズ(1812~1870年)の「自伝的作品」で、とぉ~ても読みやすいです。全5巻と少し長めですが、さほど読者を選ばないのです。

    『大いなる遺産』や『オリバー・ツイスト』などといった彼の作品はどれも物語性に富んで、作者の温かい人間性が滲み出ているせいか、学生のころから親しんでいる作家の一人。時々むしょうに読みたくなるのは私だけかな? 

    ちょうど先日、彼の初期作品『ピクイック・クラブ』を読みながら本作をぺらぺら眺めだすと、いつのまにか本格的な併読になってしまいました。数奇な運命に翻弄される、よるべないコパくんの健気さは泣けちゃいます。ちょっと風変わりな叔母との交流は愛らしくて読みはじめると止まらなくなるおもしろさ。

    ディケンズといえば、彼の個人的体験からえられたイギリスの階級社会、とりわけ貧困階級の世界をみごとに描いた作品が多く、当時のロンドンの状況や人々の生活や金銭感覚も興味ぶかい。金や遺産や生活感やら即物的な話がごまんとでてきて、なかなかシビアで現実的なのもいいですね~。

    でもこの作品の人物描写はさほど難しくありません。善(人)と悪(人)の切り分けがわりと明快でぶれないので安定していて、ストーリーに入りやすい。それこそヘンリー・ジェイムズのように奇怪かつ細かな人物描写で、ぎりぎりネジでつめられるような悩ましさはまったくありません(笑)。勧善懲悪とまではいわなくても、どこか時代劇のようなほのぼのとした安心感も漂っています。

    もっとも後半になればなるほど重要人物の死が多くなってきて、物語の展開としては少し強引な感じもしますけど、きっとこれが酸いも甘いも嚙み分けたディケンズの世界観だったのかも。中期ころの作品ですから、人生経験を経ればへるほどそういうことはいくらでも起こりえますものね。事実は小説より奇なり、なんだかポール・オースターの口癖ではありませんが、一見偶然に見える事柄もじつはその人の人生に強く結びついているのかもしれません。

    コパ君の可愛らしさをながめていると、あしたからまた楽しく頑張るか~なんて元気になる不思議なこのごろ。しばらく私のディケンズブームが続きそうな予感です。ディケンズと長年タッグを組んだフィズの挿画も繊細なタッチで素敵ですよ(^^♪

  • (2024/01/28 4.5h)

    前情報にて、コメディ調のクスリと笑える話なんて聞いていたが全然そんなことはなく…。
    第一巻は胸が痛くなるような悲劇。続きが気になる。

  • ディケンズ作。1850年代に書かれた19世紀小説。
    ディケンズの自伝的小説といわれている。

    デイヴィッド・コパフィールド少年の人生をたどってゆくものと思われる。(ネタバレに触れたくないので作品概要やあらましなど、事前情報を読んでいない…)。
    第1巻は、幼年時代から始まる。自伝的小説なのだが、デイヴィッドが生まれたときの経緯から始まるのがおもしろい。云わゆる神の目線での語り口である。一方で、自身の思い出をふりかえるまさに自伝的な語り口も。

    この小説、モームによる「世界十大小説」のひとつとしても知られている。その選に選ばれた理由をまだ読んでいないのだが、自伝的な語り口で書かれたことが、近代小説としても画期的だったのではないか、と想像している。
    自伝的な語り口と、現代の小説では普通になっている客観的な神目線の筆致、それが自然になじんでいる。
    そして、子ども目線であることに近代らしさを感じた。
    継父による「いじめ」や、寄宿学校での体罰が、子どもの主観で書かれることで初めて、前近代的な悪として描かれる結果となっているのだ。

    第1巻は、デイヴィッド少年、8~9歳の頃。英国の小さな町で、母と乳母と3人暮らし。父は、デイヴィッドが生まれる前に亡くなっていた。ほどなく母は再婚。継父とその姉がやって来てひとつの家に同居。だが、継父らは、母とデイヴィッドら苦しめる。ほぼイジメである。そしてデイヴィッドを追い出すように、ロンドンの寄宿学校「セーラム学園」に追いやる。ちなみに、あまり上品な寄宿学校ではなく、校長自ら鞭で子どもたちに体罰する。
    デイヴィッドは、母の体調が思わしくないと告げる手紙を受け取り帰郷。だが、母は亡くなっていた。幼い赤子(デイヴィッドの妹)も死去。継父兄妹は、デイヴィッドをネグレクト。デイヴィッドは、家から追いだされるようにしてロンドンへ。継父の知人の小さな会社で働き始めるのだが、ワインの空瓶を洗ったりする仕事で、丁稚奉公のような感じ。

    そして、デイヴィッドはある日決意。まだ見ぬ、ただひとりの肉親である父方の伯母に会うべく、旅立つことに。デイヴィッドは、勤め先をこっそり後にして、ロンドンから出発するのであった。これが第1巻のあらまし。
    巻末、旅立ちの日。デイヴィッドはわずかな旅費と鞄を奪われてしまうのであった。巧い。第1巻の終幕としては、なんともドラマチックな幕引きである。第2巻の道行が気になって仕方がない。

  • 時代なのか、児童虐待がすごい。
    話に引き込まれることはないけど、時代背景を考えながら読むと楽しい。
    ディヴィッドの誕生から母の再婚、初恋、学校、母の死、10歳での労働と脱走まで。

    モームの「世界十大小説」の一つ。

  • 主人公デイヴィッド・コパーフィールドの生誕からの西暦を追う。泣き虫の幼年期。親切な人たちが助けてくれる中、思いやりを育む。2023.2.26

  • 1850年の作品だが、貧しき人、孤立する人、学校の心理など今も色あせない。ストーリーもうまく、先が気になる。

  • 3.82/351
    『本書は,モームが世界の10大小説の1つに選び,ディケンズ(1812-1870)自身も「自分の作品中,最も好きなもの」と語っている作品.自伝的要素の濃い作品で,個性的な登場人物が多数登場し,ユーモアとペーソスが全篇にわたって満ちあふれている.物語は大らかにゆったりと展開し,読書の醍醐味が存分に味わえる.新訳.(全5冊)』(「岩波書店」サイトより▽)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b247277.html

    原書名:『David Copperfield』
    著者:チャールズ・ディケンズ (Charles Dickens)
    訳者:石塚 裕子
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎446ページ(第一巻) 全五巻

    メモ:
    ・『世界の十大小説』サマセット・モーム
    ・松岡正剛の千夜千冊 407 夜
    ・英語で書かれた小説ベスト100(The Guardian)「the 100 best novels written in english」

  • 面白くて、ぐいぐい引き込まれる。
    笑いと涙、切なさにあふれている。
    それぞれの人物の個性がはっきりとしていて、愚かさも愛すべき点も、ずるさも、滑稽さも、次々に繰り広げられる。
    子どもだから騙されたり、力に負けたりしてしまう。
    読んでいて、デイヴィッドに寄り添わずにはいられない、そんな気持ちになる。

  • 2021年1月映画化
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB00037421

  • 意外に面白い。読みやすいです。
    継父姉弟、うざい〜〜〜

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著者プロフィール

Charles Dickens 1812-70
イギリスの国民的作家。24歳のときに書いた最初の長編小説『ピクウィック・クラブ』が大成功を収め、一躍流行作家になる。月刊分冊または月刊誌・週刊誌への連載で15編の長編小説を執筆する傍ら、雑誌の経営・編集、慈善事業への参加、アマチュア演劇の上演、自作の公開朗読など多面的・精力的に活動した。代表作に『オリヴァー・トゥイスト』、『クリスマス・キャロル』、『デイヴィッド・コパフィールド』、『荒涼館』、『二都物語』、『大いなる遺産』など。

「2019年 『ドクター・マリゴールド 朗読小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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