ディケンズ短篇集 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1986年4月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784003222874

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

多様なテーマと深い心理描写が魅力の短編集で、特にダークで奇妙な物語が多数収められています。幽霊や魔物が登場する作品が多く、読者を引き込む独特の雰囲気が漂っています。お気に入りの一つ「信号手」は、緊迫感...

感想・レビュー・書評

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  • 短編を読もう!第4弾はディケンズ。

    11話の短編集。悪魔、幽霊、魔物、鬼などが登場するところはちょっと『クリスマス・キャロル』を思い出す。全体的に暗めの奇妙な話が多かった。

    お気に入りの話を2つ。
    「グロッグツヴィッヒの男爵」は、財源の建て直しが厳しくなり、命を断とうとしている男爵の前に魔物が出てきて、あれこれ話しているうちに…という話。
    この短編集の中では珍しく、ほっこり系?ではないか。男爵の決断にちょっと笑みが溢れる感じで終わった。

    そして何といっても「信号手」。
    「おうい!そこの下の人!」から始まり、最後の「気をつけろ!気をつけろ!危ないっ、どいてくれ!」での伏線回収は見事でゾワゾワした。

    ダークなディケンズも魅力たっぷりだった。


    読んだディケンズ
    『二都物語』『クリスマス・キャロル』
    読みたいディケンズ
    『大いなる遺産』

  • ディケンズ短篇集。
    ディケンズといえば長編作が多い。でも短篇も秀作が多く楽しめる。
    注目したものをいくつか。

    「墓掘り男をさらった鬼の話」。クリスマスに墓掘りをする意地悪男の前に鬼が現れて説教垂れるお話。やや教訓的な作りで子どもが読むといいだろう。

    「奇妙な依頼人の話」。貧困のため妻と子どもを失った男が、一家を不幸に追い込んだ妻の父に復讐するストーリー。借金が返済できないと債務者監獄に収監されるという当時の習わしもわかるが、男の執着心がもはやホラー。

    「狂人の手記」。一族の血に流れる狂気を自覚した男が妻を殺害する。独白体で綴られた露悪的な内容だが、どこか男自身が誰かに助けを求めている。

    「グロッグツヴィッヒの男爵」。放蕩の末に結婚した男爵。子宝に恵まれつつも妻の尻に敷かれ、自由が失われたことを嘆き自殺を企てる。死のうとした瞬間、目の前に死神が現れる。死神と言葉を交わすうち男爵は死ぬのを思い止まる。ホラーコミックで楽観的な教訓話のように読めるが、生と死の境界線は案外あやふやであるという深い真理が含まれていて考えることが多い。

    「追いつめられて」。素晴らしい。保険金殺人を捜査する保険会社の調査員のストーリー。二転三転する展開と伏線を回収するプロットの巧さは全く無駄がない。エラリー・クイーンが20世紀に本作を発掘し、本格的推理小説の傑作と絶賛し紹介した理由もよくわかる。これが19世紀の半ばに(日本はまだ幕末の頃に)書かれたことを考えると唸るしかない。

    「信号手」。一番のお気に入り。幽霊が発する警告に怯える鉄道員のお話。これも無駄がない構成と伏線で一気に読んでしまう。ホラーでもあるが、読み方を変えれば精神異常をきたした心理小説とも読める。なにより語り手は一体何者なのかと考えれば怖さ倍増。様々な解釈と読みができる秀逸な作品。

    「ジョージ・シルヴァーマンの釈明」。孤独で内気な宗教家の男性の告白記。教え子との秘めた恋。失恋と宗教家としてのキャリアの挫折が綴られているが、果たしてどこまでが真実なのか。書かれなかったことを想像するとさらにこの短篇の良さが増す。独白体を巧みに使って孤独な男の感情の襞と機微を描いた小品。

    と、いうわけで、ディケンズ。長編もいいが短篇も優れものが多いのでお薦めです。

  • やっぱり『信号手』は名品だ。

  • 短編「信号手」読みたさで手にした『ディケンズ短編集』。

    全編とも、あまりの読みやすさ故か、読んだそばから話の内容が記憶から抜け落ちてしまうのだが、本命「信号手」は評判に違わぬ素晴らしさ。

    たった20ページで、オカルトあり、心理の迷路あり、不条理あり、トッピング全部盛り的な幸福感。

    この一遍を再読するために、『ディケンズ短編集』は手元に置いておこうと決めた。

  • 面白おかしくて、悲しくて、狂っていて、ウィットに富んでて、奇妙な気味悪さが最高です。短編ならではの切れの良さを堪能させて頂きました。

    特に心に残ったのは以下の作品。

    ・グロッグツヴィッヒの男爵
    尻に敷かれる貧乏男爵のお話。すかんぴんになってからの不死鳥っぷりが素晴らしい。自害寸前のところで、死神的な幽霊との対話の中で「やっぱやーめた」となる鋼メンタルから学ぶ点は現代に通じると思います。

    ・追いつめられて
    あっと驚く保険金殺人事件(未遂も含まれる)のお話。要旨が掴めないまま霧の中を歩くように読み進めていくと、ぱっと視界が開けるようにお話の全貌が見えてくる、素晴らしいミステリーです。

    ・信号手
    こちらも驚きのホラーミステリー。少しの無駄もない筆致がとても心地良いです。短いお話の中で、勤勉で実直、かつ知的な信号手への好感度と好奇心がどんどん上がると同時に、破滅の予感が高まっていき、最後にスッと冒頭の伏線が回収されるのが最高の読書体験。

  • 狂人の手記

  • 「グロッグツヴィッヒの男爵」は、初めて読んだ。
    結局、奥さんのケツにしかれてしまうのが、笑える。
    本当の幸せとは、派手なものではないのかもしれないね。
    解説より、ニコラス・ニクルビーに挿入されているお話。
    リンカーン羅紗は in clothes of Lincoln green となっている(と、調べた)。それ以上のことは分からなかった。

    「ある自虐者の物語」は、多かれ少なかれ人間が持っている主観について考えさせられた。
    自分の感情を通してしか世の中を見ることができないから、良いものを取りこぼして拒絶してしまう。
    確かに、あわれみや優越感などによる優しさも、世の中にはたくさんあるだろう。
    でも、それだけではない。
    結局、自分と同じ相手としか付き合っていくことができない、ということか。
    解説より、リトル・ドリットの中のお話。

    「子守り女の話」も、今回初めて読んだ。
    小さい子どもをからかうのは面白いから、この子守り女の気持ちもわからなくはない。
    まあ、ほどほどにしてあげてください。
    そして、あたたかく優しい良いお話もきかせてやってください。


    「ジョージ・シルヴァーマンの釈明」も、初めてだった。
    欲や嘘や見栄にまみれた世界で、彼の心は陰鬱で弱く優しい。
    最後にたどり着いた場所はとてもささやかで、心は苦しみ続けているのだろうけれど、彼を認めて支えてくれる人たちがいることが、何よりもの財産なのだと思う。
    解説を読んでの感想。
    なるほど、確かに、彼が語って「いない」部分に思いを巡らせると、また違った彼の姿が見えてくる。面白い。

  • 『墓掘りをさらった鬼の話』『奇妙な依頼人の話』『信号手』『追いつめられて』が良かったかな。しかしやはりディケンズとは相性が悪いのかコリンズよりもかなり読むのに苦労した感じがする。色んな雰囲気の話があって楽しめる短編集だとは思いましたが。

  • ディケンズは今回初めて読んだけど面白かった。
    中でも好みだったものについて以下に。

    「狂人の手記」
    自らの血に流れる狂気を自覚している夫が妻を殺害するに至る話。異常心理の話でもあり、倒叙ミステリーとも言える作品。

    「グロッグツヴィッヒの男爵」
    ラストあたりにある『たとえ似たり寄ったりの原因でふさぎこんで憂鬱になったって、今一度ものごとの裏と表とを見て、一番いいほうに虫めがねをあてがってみたらいい』という言葉がよかった。

    「チャールズ二世の時代に獄中で発見された告白書」
    こちらも倒叙ミステリーとしてよかった。ポーの『黒猫』に似たところもあるかもしれない。

    「ある自虐者の物語」
    周りの人の親切なども全部捻くれた捉え方をしてしまう女性の話。同性愛も匂わされてるような気がする。

    「追いつめられて」
    保険金殺人の話。かのエラリー・クイーンも絶賛したらしい。二転三転や伏線回収もちゃんとされていて面白かった。

    「信号手」
    こちらはいろんなアンソロジーにも載っていたりする有名な作品らしいけど、やはりダントツで良かった。
    鉄道怪談としての要素が強いけど、異常心理やミステリとしても読めると思う。
    「おうい!そこの下の人!」の呼び声が頭の中で再生されてゾッとする。

  • ディケンズは長編のイメージが強いですが、この短篇集はミステリーあり、ホラーありとバラエティに富んでいてとても楽しめました。特に気に入ったのは「グロッグツヴィッヒの男爵」と「ある自虐者の物語」です。幸せについて考えさせられました。私たちは誰もが幸せになりたいと願いますが、幸せであるというのは心の状態ですから、手にとってつかめるものではないと思います。ディケンズが言うように、人生は辛くて苦しいものかも知れないけれど、ものごとの裏と表をよく見て、一番良いところに虫眼鏡を当てること。どこにあるんだかわからない幸せを探し求めるよりも、この方がずっと心が満たされると思いました。

    虫眼鏡で見ると何でも大きく見えます。小さなことでも何倍も喜べる心は幸せですよね。悪い方に虫眼鏡を当ててしまう人が多いのは、今も昔も変わらないのかも知れません。

  • あら、ディケンズさんてこんな重苦しい作品も描くのね、て感じ。
    ーーーーー
    ユーモアと明るい笑いの作家ディケンズ(1812―70)の世界も短篇に目を転ずると相貌を一変する。自らの血に流れる狂気を自覚した男が妻を殺害するに至る「狂人の手記」、実直な鉄道員が幽霊の発する警告に怯える「信号手」など、人間の暗い異常な心理を追究した作品を中心に、幻想的作風の短篇も加え11篇を収録する。

  • 「信号手」を読んだ
    いいゾワッと感

  • ディケンズといえば長篇小説のイメージがあるけれど、短篇小説もたくさん書いている。この短篇集の特徴としては、①超自然的で、ホラーとコミックが奇妙に混在している。②ミステリー的要素が強い。③人間の異常心理の追求の三つを中心に厳選されている。

    絶望と歓喜のあいだで振り子がゆれる人生。善人を騙す悪人。復讐を企てる善人。最後に笑うのはどっち?精神が崩壊している人、清い心の持ち主。ディケンズは、どんな人物を書かせても天才。

    『墓掘り男をさらった鬼の話』と『旅商人の話』は、ユーモアまじりの深いい話。既読の『信号手』は結末が分かっていても背筋が凍った。

    読み終えた後、ディケンズをより一層好きになっている自分がいた。

    p21
    一生懸命仕事をして、働きづめなのにごくわずかの食い扶持しか稼げないでいる人々がにこにこして仕合わせだったし、まったくの無学の人たちにとっては、自然の慈愛あふれる顔が必ずといっていいほど慰めと喜びの源になることが判った。こまやかな養育を受け、愛情深く育てあげられた人々は貧乏しても明るく、性質がもっと粗い人たちだったらとっくに打ちのめされていたはずの苦しみにも押しつぶされることはなかったが、それは幸福と満足と安らぎを胸のうちに貯えていたからであることも知った。

    p114
    「判らんのだよ」刀をいじくりながら男爵は言った。「本当にここがせちがらいところなのかどうかね。だけど、きみのところがここよりずっといいとも思えないね、だって格別、きみは安楽してるふうにゃ見えないもの。ひょいと思いついたんだけど-この世から消える方が身のためだ、なんて言ったけど、結局のところ、いったいどんな保証があるんだろうか、ってね」

    p299
    このようにしてディケンズは死ぬまでにかなりの数の短篇小説を発表したが、本書では独立した小説として集め、文学的価値の高いものを選んでみた。また内容的に統一をとるために、主として次の三つの特徴が際立っている作品を集めた。
    一、超自然的で、ホラーとコミックが奇妙に混在していること。
    二、ミステリー的要素が強いこと。
    三、人間の異常心理の追求。

    『信号手』を元にした日本の作品
    『汽車を招く少女』
    『急行出雲』

    <目次>
    墓掘り男をさらった鬼の話
    旅商人の話
    奇妙な依頼人の話
    狂人の手記
    グロッグツヴィッヒの男爵
    チャールズ二世の時代に獄中で発見された告白書
    ある自虐者の物語
    追いつめられて
    子守女の話
    信号手
    ジョージ・シルヴァーマンの釈明

  • 青い鳥文庫の怪談アンソロジーから
    信号手。

    岡本綺堂の西瓜もあったとのこと

  • 『クリスマス・キャロル』で有名なイギリスの小説家ディケンズの短編集。主に人間の狂気を描いており、ドストエフスキーを彷彿させるように感じるが、調べてみるとドストエフスキーがディケンズの著作を好んで読んでいたような背景もあるような。ただ和訳のせいなのか、微妙に読みにくかったので★3つ。本当は原文で読解できるような英語力が欲しい。

  • 「グロッグツヴィッヒの男爵」に何度も出てくる

    ”リンカーンらしゃ”

    という言葉の意味がわからない。
    ネットで調べてもわからない。

    「リンカーングリーン」って色があるそうで、
    これは”リンカーンシャー”の羅紗織物の色に由来している
    らしいんですが、こりゃ関係なさそうだなあ。

    ”リンカーンらしゃ”の正体をご存知の方がいらしたら、
    ぜひ教えてください!

    • itsujiさん
      原文は in clothes of Lincoln green となっているので、リンカーンらしゃは、深緑色の布、のようですね。
      この作品は...
      原文は in clothes of Lincoln green となっているので、リンカーンらしゃは、深緑色の布、のようですね。
      この作品は
      Life And Adventures Of Nicholas Nickleby の第6章に挿入されていました。
      2022/01/20
  • 新書文庫

  • 狂人の手記が一番印象深かった。どの作品も深読みさせる何かを感じた。語られていることが、語り手にできる世界の見方で解釈されて述べられているにすぎない、ということを感じさせる点において一等すばらしい作品だった。

  • ・墓掘り男をさらった鬼の話
    ・旅商人の話
    ・奇妙な依頼人の話
    ・狂人の手記
    ・グロッグツヴィッヒの男爵
    ・チャールズ二世の時代に獄中で発見された報告書
    ・ある自虐者の物語
    ・追いつめられて
    ・子守り女の話
    ・信号手
    ・ジョージ・シルヴァーマンの釈明

  • 人間の暗い心理描写、ホラーやミステリー、教訓話など、様々な要素が詰め込まれた短篇小説。

    舞台背景などが分からなくても気軽に楽しめるのが魅力。今読んでも色褪せない面白さがある。

    全体としては暗い雰囲気が漂う物語が多く、簡潔で上手い具合に起承転結している。無駄がない印象の短篇集だった。

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著者プロフィール

Charles Dickens 1812-70
イギリスの国民的作家。24歳のときに書いた最初の長編小説『ピクウィック・クラブ』が大成功を収め、一躍流行作家になる。月刊分冊または月刊誌・週刊誌への連載で15編の長編小説を執筆する傍ら、雑誌の経営・編集、慈善事業への参加、アマチュア演劇の上演、自作の公開朗読など多面的・精力的に活動した。代表作に『オリヴァー・トゥイスト』、『クリスマス・キャロル』、『デイヴィッド・コパフィールド』、『荒涼館』、『二都物語』、『大いなる遺産』など。

「2019年 『ドクター・マリゴールド 朗読小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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