鎖を解かれたプロメテウス (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2003年10月16日発売)
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  • 本 ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003223017

感想・レビュー・書評

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  • ギリシャ神話のプロメテウス、
    アイキュロスのプロメテウス、
    本書はシェリーのプロメテウス。

    久々に戯曲を読んだ。予習しとかないとギリシャ神話初心者にはちょっと難しいかな。

    ギリシャ神話の概要
    プロメテウスは人間を哀れに思って火を与えるようジュピターに頼む。ところがジュピターは人間が力を持つと神を苦しめるようになるといい、プロメテウスの要求を拒否する。プロメテウスはそれに反し、天から火を盗んで人間に与える。怒ったジュピターはプロメテウスを鎖で繋げてしまう。

    アイキュロス
    ジュピターが滅びるのを待つプロメテウス。(中略)鎖から解き放たれるが、ジュピターに秘密を伝えてしまう。

    シェリー
    アイキュロスのプロメテウスは権力に屈してしまったとみなしたシェリーは、真の自由とは、権力に屈せず、敵を憎悪せず、愛、希望に生きること、ということを『鎖を解かれたプロメテウス』で書いた。

    どういう理由で推薦図書に入っていたのか知らなかったけど、きっと真の自由とは、という精神を考えるきっかけになる良書ということだったんだろうな。

  • たぶん昔『縛めを解かれたプロメシュース』かな?微妙に違うタイトルのバージョンで読んだことがあったんだけど、どうやら本棚に見当たらないのと、改訳されたのを岩波が再版してくれたので、結局読み直しました。シェリーに対する個人的な思い入れというのは、作品そのものよりその周辺のドラマというか映画とか小説になったエピソードや、理想主義でロマンティストな彼のイメージに対してのものなのですが、この戯曲には彼のそういう側面がすごい滲みでてるなあと思います。

  • イギリス・ロマン派詩人、パーシー・シェリーによる詩劇。

    プロメテウスはギリシャ神話の登場人物である。巨人族の1人で、人間の作り主でもある。人間に火を与えたことで、主神ゼウスの怒りを買い、恐ろしい罰を与えられる。山に鎖で縛り付けられ、生きながらワシに臓腑を食い破られるのだ。その傷は夜の間に癒え、昼になるとまたワシが襲い掛かる。不死の存在であるがゆえの、終わることのない責め苦である。

    この説話自体はギリシャ先史時代から知られているものであるが、ギリシャ悲劇の父とも呼ばれるアイスキュロスが「縛られたプロメテウス(Prometheus bound)」という戯曲を残している。三部作の1つであったといわれ、「解放されたプロメテウス」と「火を運ぶプロメテウス」がこれに続く形であったようだが、現存しているのは「縛られた・・・」のみである。
    シェリーの詩劇はアイスキュロスの作品を受けて書かれたものである。
    但し、その意図するところはアイスキュロスとは幾分異なるようである。

    説話では、そしてアイスキュロスの戯曲では、ゼウスが女神テティスと結婚すると、その息子がゼウスを脅かすようになると予言されており、そのことをプロメテウスは知っている。その情報をゼウスに教え、ゼウスがテティスを娶らずに破滅を逃れるのと引き換えに、プロメテウスも自らの身を解放してもらうという筋書きを取る。
    しかし、シェリーはそれをよしとしない。シェリー版では、プロメテウスは交換条件を提示しない。
    姑息な取引を行うことなく、自らの信念に従い、毅然と責め苦を受ける。一方でゼウスはその傲岸さゆえに自ら破滅を呼び寄せ、奈落へと落ちていく。プロメテウスは高潔な魂のまま解き放たれる、というのがシェリーの筋立てである。

    原題では本作は"Prometheus Unbound"である。もちろん、鎖を解かれたことを意味するわけだが、少し深読みしてみると、プロメテウスはそもそも自らの信念に疑念を抱くことはなかったわけで、身体は束縛され、痛みに苦しんでいたとしても、魂まで屈服したわけではなかった。その意味で、初めから「縛られていないプロメテウス」だったと読むこともできる。

    シェリーは序文で、絶対的なる存在への叛逆という点で、プロメテウスを『失楽園』(ミルトン)のサタンと並べている。そのうえで、プロメテウスはサタンが持つような野心や復讐、羨望を持たなかったため、なお一層、最高最善のものとして描く余地があるという。

    シェリーは18世紀末から19世紀前半を生きている。
    詩文の中には、フランス革命が影響しているようにも見える人間同士の争いの傷痕が描かれているような箇所もあり、また一方で、新たに発展しつつある科学的視点からの自然界の解釈も散りばめられているようでもある。

    プロメテウスは人間に火をもたらした。その結果、人は武器を作り、そのために戦争も起こった。ゼウスはそれを怒ったのだともいう。「プロメテウスの火」は、ヒトには制御できない力の喩えとしても用いられ、原子力を指すこともある。
    急激に「何ものか」が発展しつつある時代の中で、シェリーがプロメテウスの物語に込めたものは、意外に多様な色合いを帯びているのかもしれない。

    惜しむらくは、本作が詩劇であるため、著者の華麗な詩文を、意図されたようには読み取れないことだ。詩を読むこと自体が自分には困難だが、英詩となってはさらにお手上げだ。
    解説によれば非常に技巧の凝らされた、多くの詩型が使われているという。
    詩人シェリーはその詩才のすべてを本作につぎ込んでいたようだ。


    *とはいうものの、パーシー・シェリーは実生活ではなかなかに困った人だったようで(^^;)。少年の頃から当時の最先端の天文学や物理学、化学に興味を示し、電気やエネルギーを扱う実験にも傾倒しました。一方で語学の才能も飛び抜けており、6歳の頃からラテン語を学んでいます。才気走っていたのは確かですが、規則を守らず、「気違いシェリー」とも呼ばれます。駆け落ちまでした身重の妻ハリエットがいたにもかかわらず、社会主義思想家ウィリアム・ゴドウィンの年若き娘メアリー(のちのメアリー・シェリー(『フランケンシュタイン』の著者))と恋に落ちてしまいます。メアリーを妻とし、ハリエットを「霊の妹」として3人で仲良く暮らしたいと大真面目にハリエットに提案したものですから、ハリエットは強いショックを受けます(そりゃそうですよね・・・)。すったもんだの末に、パーシーはメアリーと駆け落ち、ハリエットは自殺、パーシーとメアリーは結婚するのですが、その6年後、海難事故によりパーシーは命を落とします。無残な遺体のポケットには、ソフォクレスの戯曲集とキーツの詩集が残されていたといいます。30歳を目前にしてのことでした。

  • 途中。

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