テス 下 (岩波文庫 赤 240-2)

制作 : 井上 宗次  石田 英二 
  • 岩波書店
3.61
  • (10)
  • (15)
  • (27)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 171
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003224021

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ほぼ全編を通してアレクとエンジェルに対する怒りに支配されつつ読んだ。先日読んだアーヴィングとえらい対照的。時代と文化を感じさせられた。
    エンジェルが、大切なのは「なされたこと」ではなく「これからなそうとすること」なのだと気がつくところで、やっとほっとした。牧師さんの家で育ったのだかやもう少し早くに気づきそうなものだけど、だいぶ時間がかかってしまう。
    終盤まで結末が読めなくてやきもきした。テスの行動が完全に予想外で、突然別の小説になったかのよう。ダーバヴィル家の馬車の話でほのめかされてはいたけれど、まさかこんなことになるなんて。
    農作業の情景描写が美しく、イギリスの田園風景を思い描きながら読んだ。

  • 新書文庫

  • 彼女の過去を知って動揺するエンジェルや、必死に頑張ってきたのに過酷な運命に半ば壊れてしまうテスの心理描写は秀逸。
    とはいえ、この作者はものの見方が悲観的で現実離れしている。テスとエンジェルの婚礼のあと、仲の良かった同じようにエンジェルに惹かれていた友人達が堕落していく。1人は自殺を図り、1人は酒に溺れる。つきあっていた恋人にふられるのならともかく、片思いの相手で、しかも彼が選んだのが自分の中のいい友人であるなら、それほど失恋のショックはないであろう。娘心とはもっと陽気で自分勝手。どんなに好きでも自分の方を見ない男はそのうち興味が失せ、自分のことを好きな男のほうを向くもの。

    テスの過去についても、この時代強姦された女はたくさんいたであろう。気ついたとは思うが未来に向かって前向きに生きた女だっていたのではないかと思う。

    ただ、自分の過失ではないのに、強姦された女はふしだらな女として蔑まれてきた。加害者である男は何の咎めもない。そういった現実がそう古くない時代まであったことも事実、国によっては今でもそういった差別が存在している。

    テスが働いたのは、ダーバヴィル家の鶏番、牧場の乳しぼり、荒れ地の野良仕事、そこにいる人間によって社会は大きく異なる。ダーバヴィル家の使用人達は主人に似てか不埒な者ばかりだったが、牧場ではオーナー夫妻も同僚達も悪い人間がいない平穏な環境だった。もしもテスが最初に勤めたのがエンジェルのいた牧場であったなら、人生が大きく変わっていたであろうに。皮肉なものだ。

  • なんかさ~、もう処女性にこだわりすぎる昔の男ってほんと、やだ。それと伝道者になっていたアレック。そして再度の変節。作者ハーディはキリスト教に対して近代批判的だったのかなぁ。テスを異教徒のごとく描いて、巨大で偏屈なキリスト教の世界で処刑してしまったような感じがする。もちろん古臭い設定ではあるけどさ、女の人生を描いたものとして、とても面白い小説でした。ナスターシャ・キンスキーの映画が見てみたいと思ったよ

  • 悲劇は好きじゃなかったけど、最後まで読んだら好きな作品になりました。

  •  テスがエンジェルに過去の罪を告白するところから、二人の関係性が一気に変質して行く過程が戦慄する。
     後半の荒れ野フリントコム・アッシュの厳しい農業風景も、前半のみずみずしい生命に満ちた盆地の対比が実に鮮やかだ。
     そして、最後の逃避行が、行き場のない若者のロードムービーと同じで、静謐な美しさと悲しさに満ちている。ここは泣ける。
     全編を通じて、テスとエンジェルの、相互無理解に基づく悲劇だけど、どちらも悪人じゃないんだ。悪いことしていなくて純粋に生きようとしているのに、それがかなえられない。でも、救われないことを描くことが、自然主義の一つの成果ではあったのだと強く感じさせる。

  • (9/9)

全9件中 1 - 9件を表示

トマス・ハーディの作品

テス 下 (岩波文庫 赤 240-2)を本棚に登録しているひと

ツイートする