怪談―不思議なことの物語と研究 (岩波文庫)

制作 : Lafcadio Hearn  平井 呈一 
  • 岩波書店 (1965年1月1日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003224410

作品紹介

日本を終生愛してやまなかったハーン(一八五〇‐一九〇四)が我が国古来の文献や民間伝承に取材して創作した短篇集。有名な「耳なし芳一のはなし」など、奇怪な話の中に寂しい美しさを湛えた作品は単なる怪奇小説の域をこえて、人間性に対する深い洞察に満ちている。

怪談―不思議なことの物語と研究 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 毎年お盆の時期になると、怪談が読みたくなる。

    どこからともなく聞こえてくる祭囃子。
    参道に連なる提灯。
    神社の境内に並ぶ石灯籠。
    迎え火のゆらめき。すすの匂い。……
    日本の夏の風物詩とともに、怪談はあるように思う。
    怪談を愛でることは、季節を愛でることでもあるのだ。

    世に怪談は数あれど、どうせ読むなら極上の一冊がいい。
    上田秋成『雨月物語』や柳田國男『遠野物語』。泉鏡花に内田百閒。
    杉浦日向子や森見登美彦、夢枕獏も捨てがたい。

    今年は八雲の『怪談』を読むことにした。
    ちょっと風変わりな一冊だ。
    『怪談』は1904年、ギリシャ出身のイギリス人、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが、日本の民話をもとに創作した怪奇小説の短編集である。
    「耳なし芳一」「雪女」「むじな」「ろくろ首」など、日本人に馴染みの深い話のルーツがここにある。
    しかし八雲は終生、日本語の読み書きができなかった。
    作品は英語で書かれ、初版はアメリカの出版社から発行されたのだ。
    ゆえに『怪談』は岩波文庫の赤、すなわち海外文学として登録されている。

    しかし『怪談』は紛れもなく日本の物語である。
    そう感じる理由は、物語の内容もさることながら、その世界観のためだ。
    いたずらに読者の恐怖を煽るタイプのホラー小説とは違い、抑制的で淡々とした八雲の語り口は、むしろ読者に静謐と向き合うことを要求する。
    生への執着と未練。愛する者との別れと悲しみ。
    ヒトではないモノの存在を通して描かれるのは、他ならぬヒトの姿である。

    魔と呼ばれるものは、日本にあっては、我々の外部からやってくるものではなく、我々の内部にもとから内包されているものだ。
    魔を語ることは、すなわち人間を語ることである。
    しかし、この感覚がどこからくるものなのか、私には説明することができない。
    仏教か、神道か、それとももっと太古の世界に由来するものなのか。
    いずれにせよ、この説明しがたい日本的霊性が、西欧人である八雲の筆によって見事に表現され、それを日本人の私が「日本的だ」と感心して読んでいるという事実に、私は興味をそそられるのだ。

    8月16日の送り火が済んだら、私の住む北日本では、もうまもなく秋である。
    9月を待たずして、すでに半袖では肌寒く感じるほどだ。
    夏に跋扈していた魑魅魍魎も、きっと根城に帰ったことだろう。
    北国の夏は、かくも短い。

  • 日本の怪談をあつめてある。外国人の仕事という感じは受けない。呪いや風習、言い伝え、迷信など息づいている。かと思えば巻末の虫に関する文化や社会に対する文章なんかもとても面白かった。。

  • ユルスナール「老絵師の行方」絡みで「果心居士」を探してて。

    平井呈一がハーンの怪談集からセレクトしたジュブナイル版ですが、セレクトがいいのか元がいいのか出所がいいのか。下手な今時のホラーより怖い怖い
     ^^;; 

    『骨董』からの2話。

    ■「幽霊滝の伝説」(出所は「諸国奇談」)
    ラストシーンの陰惨なこと。うぎゃっ。子どもは泣くぞ。

    ■「おかめの話」(出所は「新選百物語」)
    タイトルはイマイチですが・・・
    この場面を敢えて挿絵にするか、みたいな。
    エーヴェルス「スターニスラワ・ダスプの遺言」のあの状況です、ほら、お棺あけたら生前のままの妻が・・・っ 
     。><。。

  • 怖い妖怪ではなく、人間の香りがする怪奇小説

    詩を読んでいる気になる

  • こういうシンプルなホラーって良いよね。
    小泉八雲って名前から女性だと思い込んでいました。ラフカディオ・ハーンと聞くと男性のイメージだったのに、2つの名前がちゃんと繋がっていませんでした

  • 雪おんながかなしい。

  • 有名な怪談がまとめられた本。

    曖昧にしか知らない話も、これを読めば正確に分かる。

  • 日本文化の価値観をよくぞ見出してくれました。ありがとう。
    やっぱ外人だから日本の自然観に違和感を覚えたんだろうな。

    __

    この本に載せられている怪談はハーンがきちんと選んでるってよくわかるね。
    怪談ってようは怖い話である。だからより怖いものを創作しようとする。そうすると、路線はグロテスクや怨念にシフトしてしまう。

    しかし、ハーンはそういう路線とはちょっと違う日本の怪談をチョイスしていると思う。
    それらは日本の自然と融合した「不思議」な話である。

    「青柳」「十六桜」「安芸之介の夢」なんか怖いというよりは、蜃気楼のような、不思議なものに出会ったというようなお話である。

    でも、そういうお話こそ、日本らしいんだろうな。

  • 単純に怖い話と思ったが、そうでもなく面白かった。日本のこと、日本の言い伝えなどを知るのは面白い。

  • ラフカディオ・ハーンのことは知っていたし、
    出雲市の小泉八雲記念館にも行ったことはあったが、
    作品を読むのは初めてであった。

    怪談と聞くと「怖い話」のイメージがハッと浮かぶが、
    その概念をいい意味で打ち砕いてくれる作品。

    ハーンの書く文体が誠実というか中立的というか、
    あった(聴いた)できごとを、それこそ忠実に再現したかのような、
    読んでいて読み心地のよい文章で、
    それが本当の意味での「怪談」なのだと実感することができた。

    印象に残ったフレーズはを挙げると、

    「世に、怒り死ををした人、あるいは憤りのためにみずから命を断った人、
    こういう人たちのいまわのきわの念願や誓言は、
    なんらかの超自然な力をもっていると考えられている。」
    (「鏡と鐘」)

    「『なぞらえる』という―この動詞ではじゅうぶんに説明がつかないけれども、
    ともあれ、それにいくらか意味の近い、
    一種の精神作用による妙な力をもったものがある。」
    (「鏡と鐘」)

    「蝶」「蚊」「蟻」の研究も興味深く読むことができた。
    単にそれだけでもじゅうぶんに緻密で深く語っているが、
    それが、怪談にうまくシンクロしているようすが、
    じんわりと広まっていくように感じることができた。

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