ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫 赤 247-1)

  • 岩波書店
3.70
  • (19)
  • (15)
  • (32)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 389
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003224717

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 若いときはいろいろ苦労した。特にお金はなかった。が、今、こうして思いがけず遺産が転がり込み、自然のなかで悠々自適の生活をおくっている。もう既に野心はない。自分の人生も既に終わっているのだと認識する。人生の秋から冬にかけて、読書と散歩の日々をおくる。安らかな死を願いつつ。

    といった本。

    本好きだったら、こういう生活、老後を送って見たいと誰もが思うだろう。まさに私の夢の生活そのものか。

    が、これもギッシングの夢想でしかなく、安らかな死の夢は叶わず、彼は異国で寂しく死んで行くのであった。

    現実は厳しい。

  • 英国の作家ギッシングが、20世紀初頭に、南イングランドの田園地帯で、散歩と読書に費やす1年間の日々を、ライクロフトという初老の男性の手記というかたちで著した自伝的著作。
    渡部昇一が1976年発刊の伝説のベストセラー『知的生活の方法』で、「知的生活とはどのようなものであるかを典雅な筆致で示したことによって、今日なお、多くの人につきることのない感興を与えている」と書き、書評家の岡崎武志が『読書の腕前』(2007年)で、「およそ読書人と呼ばれる人の本棚に、これがないことはありえない」という、日本の知的生活を求める本好きにも愛され続ける作品である。
    著者自身は平穏で幸せな一生を送ったとは言い難いが、最晩年に、自らの理想とした生活~自然の溢れる田園地帯で、季節の移り変わりを感じつつ、本を読み、思索に耽る生活~を著した本書は、発表から一世紀を経て、更なる物質社会で忙しない日常生活を余儀なくされる我々に、一時の安らぎを与えてくれると同時に、強い憧憬の思いを抱かせる。
    本好きにとって、晩年に送りたい生活のモデルのひとつである。
    (2007年11月了)

  • 主人公は非常な本好きで本にまつわるエピソードがけっこう出てきます。
    そんな場面では思わず「そうなんだよ、わかるよ」と主人公の肩を叩きたくなる事が何度もありました。
    さらには言葉や文字では表現できないけど確かに自分の中にあった気持ちを見事な表現で代弁してくれているような箇所も出てきました。
    そんな時は「君の言う通りなんだよ」と抱きつきたくなる衝動に駆られもしました。
    作中に出てくる本で読みたくなったものも数多くありました。

    ただ興味の湧かない事に関するエピソードに対して冗長に感じたりもしましたし、言われるほど自然描写に卓越した物があるように感じられないのは私に責任があるのかな。

  • 困難極めた人生を、思いがけず手に入れた大金によって、片田舎へ引っ越し、古典文学や自然に触れながら、充実した隠居生活を送る作家ヘンリ・ライクロフト。

    あまり幸福な人生とは言えなかった著者ギッシングの魂の叫びが、ヘンリ・ライクロフトという人物に託されている。

    南イングランド片田舎に広がる田園風景の描写が素晴らしく美しい。

  • リタイヤした文筆業者に仮託したエッセイ。隠棲文学の形を取るが当時ギッシングはまだ43歳だった。静かな晩年への憧憬があったのだろう、自然描写もかなり理想化されている。

平井正穂の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×