闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)

著者 :
制作 : 中野 好夫 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 564
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003224816

感想・レビュー・書評

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  • 難解だった・・・。そもそもおれの読解力が稚拙なんだけど、テーマが抽象的なうえ翻訳のむずかしさも手伝って、ぜんぜんわからんかったです。
    再読しなくちゃいけないとおもうけれど、とりあえず、今回の読書では「孤独」の重さを感じた。
    自然、自然であること(おのずからしかるべく)は、少なくとも現代社会をいきる人にとっては、とてつもなく「孤独なもの=不明なもの、闇」であって、その闇は未開の自然の象徴であるアフリカの奥地だけでなく、ひとのなかにもある。

    ホルクハイマー=アドルノらがいう「理性による同一化作用」と親和性がある気がしたんだが、そうすると、人は孤独=闇をもとめているということでもあるのかね。

    やっぱよく分からん。もう一回よむ!

  • コンラッドは、自身が船長として、現在のコンゴ民主共和国のキサンガニ(スタンリー・フォールズ)に遡行した時の経験を基に、この小説を書いたとあとがきにあります。

    主人公がアフリカの奥地で出会うクルツという人物の心の闇、そして19世紀当時のアフリカのジャングルの闇が不気味に描写されています。

    このあたり、映画の「地獄の黙示録」は、この小説の雰囲気を良く伝えています。実際、フランシス・コッポラはこの作品の映画化を真剣に検討していたようです。マーロン・ブランド演ずるカーツ大佐の名前が、クルツに似ているのは偶然ではないでしょう。

    異郷であれ、大都会であれ、そこに住む人間の寂寥を描く、というのは文学の一つ大きなテーマなのでしょうか。この小説が書かれた19世紀末、植民地の開拓への野心華やかりし時代にアフリカへと渡った人たちの懊悩が垣間見えた気がしました。

  • 和訳でしか読んでいないけれども、飾ったレトリックに若干抵抗があったものの、肥大化した人間の自我の恐ろしさを描いた本書のインパクトはすごい。しかもこれぞ文学だ、と思わされるところは、語り手マーロウは、なんやかんや言いながら、クルツを畏敬しているところ。友という言葉すら使う点。皮肉がききまくっている。
    ポーランドに生まれ英語で書いた、いわばマイノリティ感覚をいやでも意識している作家が書いた作品であることもかんがみるなら、本書はすさまじい批評意識に貫かれた本だ。
    マーロウが向かった叢林(ジャングル)は、コンラッドにとってのポーランドでもあったはずだと断言できる。
    けれども本作のもっとも驚くべき点は、まだ存在していない、未来のナチスドイツおよびヒトラーを、「クルツ」(ドイツ語で『短い』『短命』という意味だそうな)として「あらかじめ」(!)戯画化しているということだ。

  • 高校生のころ観たコッポラの『地獄の黙示録』は衝撃的だったが、下敷きになったこの小説をあらためて読んでみると、ただただ圧倒される大迫力の物語。わずか160ページ(第31印発行分)近い中編小説の中で、気が付けば私は、世界の端々から文明の心臓部に至るまでをマーロウと共に旅したのだ。本を閉じてしまうと、まのあたりにしたはずの印象的な断片の数々が、私とは関係のないどこか遠くの記憶に感じられるのが未だに信じられない。

  • F・コッポラの映画の原作として興味を持ち、オーソン・ウェルズも映画化を企画していたと知り手に取った。
    人物・言葉・風景、どれも霧がかかったように曖昧としており、読後には何とも言えないもやもやが残る。
    誰もが一目を置いた男クルツは未開の密林の奥に踏み込み、その闇にのまれた。
    彼の考えも、彼の言葉も、私にはいまいち読み切れなかった。ふと霧が晴れたようにクルツの輪郭が感じられる場面もあった。もう一度読み直せば更に鮮明になるかもしれないと思う一方で、闇の中ではっきり見える事はない。何度読んでも変わらない。そうも感じた。

  • かなり乱暴にまとめると「ある船乗りのアフリカ思い出話」になると思うのですが、読後には重苦しさと、言葉にできない感情が残りました。それを無理矢理文章にするとしたら、的外れかもしれませんが今のところ「人間とは本来、自然の一部であったのに、いつしか文明や経済という実体のない物に支配され不自然な存在となってしまった。かといって原始的な生活は、今の人類には恐怖や荒廃という闇でしかなく、狂気である。もう戻ることはできない」という文明批判と焦燥でしょうか。この作品は、時間を置いて再読する必要があると感じました。

  • 19世紀,諸西洋籍の船舶(作品ではフランス)が“未開の地”アフリカへ渡り起こった『象牙』に纏わる出来事たち.
    教科書に載った「事実」とは別の観点から眺めることで,当世の彼ら西洋人の高慢,貪婪,凶暴,盲目さが何より現実味を帯びて感じられる.

    語り部のマーロウの口上は情緒に溢れ,一人の人間の感情と自意識が鮮やかに伝わってくる.彼の言動,苦悩は――私たちにはまず経験しえない,世にも哀しい侵略に向かう船上での物語だとしても――純然たる現実として,感情の深淵に強く訴えかけてくる.その愚かな高慢さまでも,我々に共感を呼ぶ不思議.

    つまり私たちは誰でもマーロウになりうる.アフリカという原始の闇の世界,そして,人心の奥底に潜む闇は,21世紀の我々に対しても強い共感と教訓を投げかけてやまない.

    どう見ても誤訳な瞬間も見受けられるが,訳者あとがきの腰の低さには噴く.

  • 映画「地獄の黙示録」に影響がうんぬん。で、読んでみたけど、正直ピンと来なかった。

  •  映画「*地獄の黙示録」の原作だと思っていたので、てっきり、ヴェトナム戦争がテーマだと思っていたが、読み続けるうちに「アレ?これアフリカの話なん??」。
     が、なんせ昭和33年の訳なので、ヴェトコンやナパームの替りに、今ではお目にかかれない黒人に対する差別用語がいたるところで炸裂していた。

     主人公、マーロウがアフリカの広大な河を奥へ奥へと遡上していく。
     いけどもいけども、あるのは鬱蒼とした森林、それに疲れ果てた白人と、酷使される奴隷に近い黒人労働者のみ。
     話は、元船乗りだったコンラッドの今後体験をもとにしている。

    <あらすじ:映画の見方がわかる本から>  
     話は船乗りマーロウの回想録として語られる。彼は象牙取引会社にやとわれて、ジャングルの奥地の駐在員クルツに会うため、外輪船で川を遡る。クルツは優秀で知的で、カリスマに溢れた優秀な象牙商人だったが、原住民を率いて見境なく近隣の村を襲って象牙を強奪しているという。マーロウは昼なお暗いジャングルを原住民に襲われんあがら通過し、やっとクルツに会う。インテリだったクルツは、原住民に対して王のように振る舞ううちに、首狩り族となってしまったのだ。狂気の果てにクルツは倒れ、「The Horror!The Horror!(恐怖だ!(こっちでは『地獄だ!』))」と呟いて息を引き取る。

     私にとっては、主人公がジャングルの奥地にいって帰ってくるむしろ素朴な冒険譚だったが、もちろん、もう一人の主人公はクルツである。
     ヨーロッパ人・キリスト教圏が誇り錦の御旗にしてきた「理性」の体現者だったようなクルツが、「闇の奥」で狂気に蝕まれ最後は倒れる。
     『啓蒙』の名のもとに、植民地を拡大していった帝国主義の白人社会にとっては「文明とは何か?野蛮なのは征服民、被征服民どっちのほうだ?」と疾しさの裏返しの鋭い疑問となって刺さっており、それが『地獄の〜』、『プラトーン』のヴェトナム戦争映画となったのかもしれない。

    <span style="color:#0000ff;"> <i>

    P100
     私の象牙、といった彼のあの言葉を、諸君に聞かせたかった。そうだ、僕は聞いた、「私の婚約者、私の象牙、私の出張所、私の河、私の…」、一切が彼のものだった。(略)だが、実はそんなことは何でもないのだ。問題は、その彼の魂をしっかりつかんでいたものであり、いかにおびただしい闇の力が彼の魂を占めていたかということだった。

    P53.
     泥臭い、太古の泥の匂いがプンと鼻を突き、原始林の静寂が高々と目の前に聳えていた。(略)万象の上に、月光がその薄い白銀の膜を投げかけていた。人は悪戯に彼自身にかまけ、たわごとを繰り返しているのに対して、これはまた期待に満ちた、大いなる沈黙だった。我々二人を眺めているこの大自然を包む沈黙、果たしてそれは、我々に何ものかを訴えているのであろうか、それとも威嚇しているのであろうか、この奥地に迷い込んできた俺たちとは、そも何者だ?この沈黙を師はいるすのが俺たちか?それとも逆に、沈黙に操られているのが俺たちか?このものいわない沈黙、そしておそらくは耳も聞こえない沈黙の巨大さ、呆れるばかりの巨大さを、僕はしみじみと思った。</i></span>

  • 訳:中野好夫、原題:Heart of Darkness(Conrad, Joseph)

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