- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003225455
作品紹介・あらすじ
「結局のところ、作家が読者にあたえ得るものと言っては、自分自身をおいてほかにない」とモームは言う。(下)では『ボヴァリー夫人』『モウビー・ディック』『嵐が丘』『カラマーゾフの兄弟』『戦争と平和』の五篇について語った後、作家十人がそろって出席する想像上のパーティが開かれる
感想・レビュー・書評
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実に楽しい「物語」と「その作者」の本。
モームの時に皮肉っぽい、それでいて率直な物言いが大変面白かった。それでいて、読むことに対する楽しみと愛情を感じる。
モームは本文中で何度も言う。読書とはその楽しみのために読むもので、楽しんで読めなかったならば、その本は読者にとってなんの価値もない、と。また、そんな無理をして物語を読む義務などどこにもないのだ、と。
読んだことのない著者が半数ほどだったが、読んだことのある作家の章は「なるほど、なるほど」と思い、読んだことのない作家の章は「へぇ~、そうなのか」と興味を掻き立てられる。
作家の性格・生涯・そして創作スタイルは、なるほど如実にその作品に表れているのだな、と思う。正確にはそのままというわけではないようだが、それでもその作家のもっとも本質的な部分……不思議なことに、その作家がもっとも欲していた部分……が、作品として表現として物語となっている様子が伝わってくる。
断定的な見方に頼らず、しかし偏見は偏見として小気味よく語り、また著者の人間性に対してピリリと批評を加えるモームの筆は、読者としてとても信頼できる。
読みながら時にニヤリとしてしまう、とても楽しい世界文学読本でした!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第7章「フローベールと『ボヴァリー夫人』」。
『嵐が丘』の章に比べて、小説よりフローベールの伝記要素が多い。フローベールの書き方がどう新しかったのかとか彼のこだわりがどのようなものであったのかは解説されているのだけれど、あまり気合が入っている感じではなかった。モーム先生もしかして『ボヴァリー夫人』あんまりおもしろくなかった...? 伝記部分はゴシップ的におもしろく書いてあるので、モーム先生的には小説より小説家の方が興味深かったのかもしれない。事前にバルガス=リョサとナボコフの『ボヴァリー夫人』論を読んでしまっていたのでちょっと食い足りなかったけれど、あまりノリがよくないモームですらフローベールの書簡集は読んでいた。作家としては、凄い先人の創作の秘密は知りたいものなのだろう。
第9章「エミリー・ブロンテと『嵐が丘』」。
モームおじさんが好き勝手語っちゃったよという趣だけれど(論の根拠が薄い箇所が多い)、なにせ何を書いても面白いモーム先生なので楽しんで読んだ。ブロンテ家のカラフルな話題は廣野先生の本などから受けた印象と違う箇所もあり、後の研究で覆された部分もありそう。ただモームのいう「ヒースクリフ=エミリー」説はなかなか説得力を感じた。これまで読んだ本からエミリーの頑固さは把握していたけれど、頑固を超えた怖いような激しさを伝える伝聞の選び方がうまいのだ。モームと二人読書会をしたような気持ちになったので、本書で取り上げられているほかの小説についても、読んだ後は本書に戻ってこようと思う。
上巻
フィールディング:トム・ジョーンズ
オースティン:高慢と偏見
スタンダール:赤と黒
バルザック:ゴリオ爺さん
ディケンズ:デイヴィッド・コパーフィールド
下巻
メルヴィル:白鯨
ドストエフスキー:カラマーゾフの兄弟
トルストイ:戦争と平和 -
図書館で借りた。
イギリスの小説家W.S.モームが選んだ10の小説を、作者がどんな人生を歩んだかのバックグラウンドを語りつつ、作品を評していくもの。それぞれの小説に興味をそそるつくりとなっている。
タイトルは十大小説であるが、モームが選んだ「小説ベスト10」という意味ではないことに注意だ。原題は「Ten Novels and Their Authors」であくまで10作品とその作者を語った、というテイストだ。
下巻は『ボヴァリー夫人』『モウビー・ディック』『嵐が丘』『カラマーゾフの兄弟』『戦争と平和』が収録されている。 -
今巻はドストエフスキーやトルストイなどロシアの文豪も登場し、読み応えがあった。最後の10人がパーティーで一堂に会したらというくだりがとても面白く、改めて自分の小説観を振り返る機会にもなった。
「小説を読むならば、知識のためにでも教訓のためにでもなく、もっぱら知的な楽しみのために読むのが本当であって、読んでみても知的な楽しみが得られないようだったら、小説などぜんぜん読まないほうがはるかに賢明であると、私はいくら繰り返し言っても多きに失することはないように思う。」 -
三葛館一般 901.3||MA||2
和医大図書館ではココ→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=52047 -
結び
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下巻で取り上げられているのは、フローベール、メルヴィル、E・ブロンテ、ドストエフスキー、そしてトルストイ。
各作品の紹介だけでなく、『Ⅻ 結び』で例えられたパーティの様子が面白い。描写がいちいちそれっぽいので、作家としてのモームの特徴も出ているのでは?
以下は上下巻纏めて。
人物描写に定評があるモームらしく、作品の魅力を伝える要約部分より、作家本人を紹介している部分の方が面白い。紹介された作家の中には、お世辞にも人格者とは言えない人物も当然いるのだが、そういった、『人間としてはちょっとアレなところ』が、モームの筆にかかると『何故か憎めない人物』に見えてくるのが不思議。
小説案内というよりは、文豪の手による作家紹介という色彩が濃いと思った。 -
仮想パーティが面白い。