若い芸術家の肖像 (岩波文庫)

著者 :
制作 : James Joyce  大澤 正佳 
  • 岩波書店
3.41
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本棚登録 : 76
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003225523

作品紹介・あらすじ

若さゆえの道化ぶりを随所で演じてみせる主人公。ジョイスは一人の若者の成長過程を、幼年期から青年期にいたる感情と意識の移ろいに合わせ、巧みに文体をあやつって描いた。閉塞状況からの脱却と芸術家としての出発-この作品には時として音楽が流れ、『ユリシーズ』等につながる喜劇的精神が息づいている。新訳。

感想・レビュー・書評

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  • 『ユリシーズ』や『フェネガンズ・ウェイク』が強烈な印象を持つジョイスだが、本作はスティーブンの成長過程を描いた19世紀的教養小説としての体裁を成している。ピカソもそうであったが、伝統を更新する者はまず伝統的技法を完成させてしまうものだ。その上で文体の変化によって成長過程を表したり、主観客観を交差させる手法は次の時代の萌芽を感じさせる。スコラ哲学を踏まえた情熱的な芸術談義は圧巻だが、これを喜劇とするならそれはアイルランドの歴史に対する痛烈なアイロニーと化し、ジョイスの故郷に対する愛憎一体の感情を表現する。

  • 古書店にて。『ダブリナーズ』『フィネガンズ・ウェイク』に続きジョイスを読むのは3作目なのだが、プルーストのあれと並び称せられる20世紀文学の頂点たる『ユリシーズ』を最後に残してしまったのはどうしたものか。『ダブリナーズ』において早くも示された透徹したリアリズムは、自伝的エッセイを改訂する過程に持ち込まれ、1人の青年の幼年期から芸術家を志し故郷を後にする前日までを時にはあざといほど滑稽に、時には息詰まるほど真摯に描き出していく。宗教談話の暑苦しさや芸術論の青臭さも、後の傑作群を産み出す布石としては悪くない。

  • ビルドゥングスロマン。

    いつの時代も若い芸術家は自国に対し苛立ち言葉を尽くしてこれを罵倒する。本作のスティーヴンもまたしかり。「アイルランドは生み落とした仔をむさぼり食らう年老いた雌豚だ」「神に見捨てられたこの惨めな島国」云々。そういう尖った言葉、個人的には読む分にけっこう楽しい。

  • 散文的というか,主語がはっきりしない。そこがすごいのかもしれないが。
    ユリシーズ読んだ後に読むべきだったのかな。

  • スティーブン・ディーダラス学生ver. の、失意以前の物語。
    ジョイスの書く人物って駄目男であっても天才肌であっても、皮肉屋、酔っぱらい、娼婦、死人、エトセトラ、とにかく誰でも好感が持ててしまう。
    肖像でのスティーブンは青い。でユリシーズで失意しててもやっぱりちょっと青い。みんながそれぞれに青くって、魅力がある。
    ユリシーズの後、スティーブンはどうなったのか。翼を発明して島から出られたのか、それともやはり?

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