荒地 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003225820

作品紹介・あらすじ

「四月は最も残酷な月…」と鮮烈な言葉で始まる『荒地』は、20世紀モダニズム詩の金字塔である。本書には、『プルーフロックその他の観察』から『荒地』までのエリオット(1888‐1965)の主要な詩を収録し、前期の詩作の歩みをたどれるようにした。引用と引喩を駆使し重層性を持った詩を味読できるよう詳細な訳注を付す。

感想・レビュー・書評

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  • T.S.エリオット「荒地」を読む | 英詩と英文学 English Poetry and Literature
    https://poetry.hix05.com/Eliot/eliot.index.html

    荒地 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b247395.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      実は読んだコトがなかった、、、
      エリオットより、苦手なケインズに興味が(いつも財布が空なのが判って頂けましたでしょうか?)

      『荒地』のイン...
      実は読んだコトがなかった、、、
      エリオットより、苦手なケインズに興味が(いつも財布が空なのが判って頂けましたでしょうか?)

      『荒地』のインフルエンザ………赤木昭夫
      図書 2021年6月号
      https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b584058.html
      2021/06/05
  • 初読ではまだよくわからない…というのが正直なところ。出来れば英語原文で読むのがベターと思う。

    「あれち」と読む。The Waste Land が原題。The Waste Land の方がかっこいい。

    聖書や神話、史実などからかの引用と暗喩が無数に織り込まれている。尚且つ、20世紀初頭の都市の(下層)生活者のわびしい生活風景も挿入される。
    という按配なので、初読では意味が捉えにくい。

    だが本書には膨大な「訳註」が付されていて、これが引用や暗喩を知る、読むことの助けになる。

    例えば 
    ・「 われわれは鼠の路地にいる 」…
     鼠の路地とは、西部線線の塹壕のこと。
     ( 「 荒地 」II チェス遊び より )
    ・「 ただ赤い不機嫌な顔だけが 」…
      赤い顔は アジア系(チベット人 だという。
     ( 「 荒地 」V 雷の言ったこと )

    ちなみに、フェニキア人の水葬のイメージ(水、死と再生)など、キリスト教以前の原初的な自然崇拝のモチーフが繰り返し登場する。

    一方で、ロンドンの生活者のモチーフで、労働者や娼婦らしき人々の下世話な会話が、そのまま挿入されている箇所もある。こうしたゴツゴツした感じを、ジャズのようだ、とする評論もあるという。
    そうか、モダンジャズのように感じて読むなら、少し楽になるかもしれない。

    今回は図書館から借りて読了したが、この文庫を見つけて買って座右に置き、繰り返し読んで味わいたい。そう思わせる奥深さ、魅力を感じる。

  • 正直言って内容を十分理解できたとは言い難い。引喩引用に満たされ、それを踏まえずして判読しようとしても雲を掴むように言葉がすり抜けていく。
    文明の終焉、宗教道徳の荒廃、神話と現代の情景が交錯し、意識と記憶は溶解して物質に浸透してあるイメージを生む。
    産業革命によって加速する物質主義の狭間で疎外される人々の意識を受けて生まれたシュールレアリズムやダダイズムと手を携え、型や枠にはめこもうとする外界を打ち破ろうとする人間の内なる悲鳴を言葉で表現した“抵抗の芸術”という印象を受けた。

  • 岩波文庫赤

    TSエリオット 「 荒地 」 岩崎宗治 訳

    モダニズムは 難解というより謎々に近い。謎は 訳注を見れば すぐ解決する。充実した訳注と解説。言葉の多義性が 詩の構造を重層的にしていて 慣れてくると 面白い。


    表題「荒地」が一番いいが、他の詩も「荒地」につながる構成


    詩集全体のテーマは 文明や都市の荒廃と宗教的救済


    「自分の力で世界を荒廃から救うことは出来ないが、せめて 自分の死を思い、自分の土地だけでも」


    Jアルフレッドブルーフロックの恋歌
    *手術台の上の麻酔患者=生きてるとも死んでるともつかない無気力な人間→詩の憂鬱性
    *まだ時間はあると言って 決断を伸ばす
    *きみとぼく=ブルーフロックの分裂した自我
    *嘆きの歌→信仰を失った近代人の不安に対する警告(文明批評)

    ある婦人の肖像
    *男と女の感情的不調和
    *罪意識に怯えるピュリタンの心情

    前奏曲集
    *世界が〜老婆のように醜く、どこに行き着くことなく無意味

    風の夜の狂想曲
    *ナイフの最後のひとひねり=惨めで侘しい生活の苦悩が ナイフの一刺しように 心をさす

    ゲロンチョン
    *借家で冷たくなる=現世は仮の宿。人は借家で死ぬ
    *雪=死→人は死んで原子となって宇宙をめぐる

    ベデガーを携えたバーバンク
    *時の廃墟=ヴェネツィアの過去の偉大さを讃え今の衰退を嘆く

    直立したスウィーニー
    *スウィーニー=オランウータン→人間の退化をテーマとした詩

    料理用卵
    *卵=時が経つと悪くなる=人は大人になると青春の夢を失い、社会は家族的な暖炉の部屋から 大衆食堂へ俗悪化する

    荒地 死者の埋葬
    *われわ生の最中にありて死の中にあり
    *四月は最も残酷な月=記憶と欲望をないまぜにする月→過去と未来の相互浸透

    荒地 チェス遊び
    *生と死のリズムを逸脱した性愛のエピソード→ゲームは一方的

    荒地 火の説教
    *情念(色欲、怒りなど)の離脱
    *テイレシアス=男と女の二つの性を生きた、未来を予知できた→預言者であり 「荒地」の語り手

    荒地 水死
    *水=生命の原理、水死=再生儀礼

    荒地 雷の言ったこと=荒地の結論
    *生きていたわれわれは今死にかけている=真の意味で 生きていると言えない現代人
    *自分の力で世界を荒廃から救うことは出来ないが、せめて 自分の死を思い、自分の土地だけでも

  • 有名な翻訳がほかにあるようだが、私はこの翻訳で初めて読んだし、この翻訳がとても気に入っている。「四月は最も残酷な月。」ではじまる『荒地』は詩でありながら物語が進行し、『火の説教』で見られるような現代に通ずる描写をもちながら、どこか古典的である。表現は詩的で美しい。古代詩や戯作を継ぎ合わせた言葉のコラージュは斬新である。もちろん『荒地』以外の作品もどれもが秀逸である。カバーがよれるまで読んだ。

  • 『荒地』。T.S.エリオットの詩集です。新しい訳が出たのでさっそく購読しました。

    5部からなる長編の詩ですが、最初の「I. 埋葬」はこんな風に始まります。

    四月は最も残酷な月、リラの花を
    凍土の中から目覚めさせ、記憶と
    欲望をないまぜにし、春の雨で
    生気のない根をふるい立たせる。

    「あれ」、って思いました。僕が慣れ親しんできた「荒地」とはだいぶニュアンスが違います。

    僕が覚えているのはこうです。

    四月は残酷極まる月だ
    リラの花を死んだ土から生み出し
    追憶に欲情をかきまぜたり
    春の雨で鈍重な草根をふるい起こすのだ。

    だいぶ違うでしょう?

    はじめに紹介したのは岩波文庫から8月に出たばかりの岩崎宗治さんの訳です。あとの方は、僕が学生の頃に読んだ西脇順三郎の訳です。

    西脇といえば、僕らが若い頃は「泣く子も黙る」くらい偉い人で(笑)、なんとなく手が届かない感じの人でしたけどね。英文学者である以上に西脇自身が詩人でしたが。

    訳ですから、翻訳者によっていろいろあっていいですけど。僕は、慣れもあるのでしょうが、西脇のシャープなところが好きですね。「残酷極まる月だ」なんて素敵ですよ。

  • 日本戦後詩に多大な影響をエリオットが与えたことは知っていたのだが、この本を読み進めていくうちに戦後詩の「荒地派」は何か決定的な勘違いをしているのではないか、と思った。
    この本は全体の約1/3が詩本編で、残りが訳注・解説などに費やされており、さながら訳者によるエリオット論の体裁になっている。
    その訳者による訳注を読む限り、エリオットの詩は巧妙に仕掛けが施されている難解かつ宗教的な意味合いを持ち、自分が知る範囲での荒地派とは異なるタイプの詩人であると感じたのだ。
    最後まで読み切るとその疑問もしっかり解けた。
    彼ら「荒地派」は荒地の第1部しか読んでいなかった、という何とも切ないオチだった・・・。
    正直このエリオットに関しては、自分の乏しい詩情ではあまり感受することができなかった。
    上述したように詩集としては歪な構成となっており、詩全体の流れよりも訳注ばかりに追われてしまったという部分が大きいと思う(その訳注も途中から読むのが苦痛になってしまった・・・)。
    おそらく何度も読みこみ、また西洋文化への理解を深めないと楽しめないのだろう。
    いや、読みこむほどに分からなくなるかもしれない。
    もっと成熟してから詩本編だけを読むことにしようと思う。

  • 3.68/344
    『「四月は最も残酷な月……」と鮮烈な言葉で始まる『荒地』は,20世紀モダニズム詩の金字塔である.本書には,『プルーフロックその他の観察』から『荒地』までのT.S.エリオット(1888-1965)の主要な詩を収録し,その前期の詩作の歩みをたどれるようにした.難解な詩を味読できるよう詳細な訳注を付した文庫決定版.』(「岩波書店」サイトより▽)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b247395.html

    原書名:『The Waste Land』
    著者:T.S.エリオット (Eliot)
    訳者:岩崎 宗治
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎240ページ

  • 4月は残酷な月であるという詩句で有名なT.S.エリオットの詩集。

    難解なことでも有名らしく、さすがに原文で読む勇気はないので、翻訳で読んでみたけれども、ちっともわからなかった。

  • 2019年6月29日に紹介されました!

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著者プロフィール

1888年ー1965年 アメリカ・セントルイスに生まれ、1928年、イギリスに帰化。『荒地』を発表、詩人としてゆるぎない名声を確立。1948年、ノーベル賞受賞。

「2015年 『キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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