四つの四重奏 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003225837

作品紹介・あらすじ

『荒地』を発表した後、1927年にエリオットはアングロ・カトリックに改宗し、次第に宗教色を前面に出し始めるようになった。それはモダニズムからの"後退"だったのか、それとも"円熟"だったのか。「空ろな人間たち」から『灰の水曜日』、そして『四つの四重奏』へと至る後期の詩作の歩みを、詳細な訳注とともにたどる。

感想・レビュー・書評

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  • 表題作「 四つの四重奏」と「 灰色の水曜日 」そして「 空ろな人間たち 」の3作を収める。

    学生の頃から「うつろな人々」の一節だけはよく知っていた。
    We are the hollow men
    We are the stuffed men

    上の部分で、冒頭の一節だ。
    何故かというと 映画「Apocalypse Now」の終盤、カーツ大佐が朗読する場面があるのである。
    なので、サントラのレコードでも繰り返し聞いて耳に馴染んでいた。
    なのだが、“うつろな人々”の全篇を通読したことが無かったことに思い至り、今回本書岩波文庫版を手にした。

    ちなみに上の一節は、本書岩波文庫版では下記のように日本語訳されている。

    われらは空な人間
    われらは案山子人間 

    おそらく悪くない訳だと思うのだが、原文の方がスッと耳に馴染む。
    “うつろな人々”は短い詩でもあるし、英文で読んでみようと思う。

    ところで、驚いたことに、この詩は冒頭の扉のエピグラフにコンラッド「 闇の奥」が引用されている。
    思えば、エリオットはコンラッドの後世の作家なのだから不思議は無いのだが。

    訳註によれば「 四つの四重奏」には、リルケの「 ドゥイノの悲歌」に“反響”したモチーフがあるという。また「荒地」にはフレーザー「 金枝篇 」からの引用が多い。「 金枝篇」は同じくカーツ大佐が劇中で座右の書にしていたもの。
    こういう引用や影響の連なりが興味深い。特に、以前に読んだ「闇の奥」やつい最近読了した「 ドゥイノの悲歌 」が連なっていることに出会うのは楽しく、嬉しいものである。

    さらに、因みに、であるが 
    “うつろな人々”の最後の一節は 

    こんなふうに世界は終わる
    This is the way the world ends

    という言葉が繰り返される。
    Doorsの this is end という詩が重なって来る。

    *****
    余談だが、詩の本篇の表現でなく訳註の一節なのだが、以下の一節が気に入った。

    ・『闇の奥』のクルツのような人たちは、人間の魂をもち、〈地獄〉に堕ちる。
     魂をもたぬ「 空ろな 」案山子人間は〈地獄〉に堕ちる資格もない。

    なんともしびれる解説/訳註である。

    うつろな人々は地獄に堕ちる資格もない。

  • T. S. エリオット『荒地』(1922)は、衝撃と感動を読者にもたらすモダニズム詩の大傑作だったが、これはそれ以降の詩作品を集めたもの。
    「灰の水曜日」でエリオットはturn(振り返る)、turnと連呼しつつ、キリスト教への改宗を果たすのだが、「四つの四重奏」はさらに内省的な、静かな世界へと向かっている。
    詩人がどのようにおのれを展開させようと、それは人の勝手であって誰にも文句を言われる筋合いはないだろう。
    やはり「荒地」の衝撃力はここにはないが、味わいは深い。
    そのうち余裕があったら、エリオットの作品を英語で読んでみたいなあ。語学力上、無理かもしれないけれども。

  • 訳:岩崎宗治、原書名:Four Quartets(Eliot,T.S.)
    詩集(1909-1925年)より◆灰の水曜日◆四つの四重奏

  • 解説が豊富。倍音など、英語詩独特の形式、きまりごとがわかれば更に豊かになるだろうが、とりあえずは日本語でも充分。エリオットは直感的なよろこびだけではなく、ダンテやコンラッドの作品、そして聖書などと結びついていて、奥行きがある。感覚的なものを求める読み手には多少難あり。難解さでクラクラする。

  • 【手軽に持ち運べる文庫本】
     イギリスの詩人エリオットの後期作品集である。有名な一文「わが初めこそわが終わり」の意味をよくかみしめたい。長い人生において、自分の求めていたものが、遠くではなく近くにあった例は珍しくない。

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著者プロフィール

1888年ー1965年 アメリカ・セントルイスに生まれ、1928年、イギリスに帰化。『荒地』を発表、詩人としてゆるぎない名声を確立。1948年、ノーベル賞受賞。

「2015年 『キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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