パリ・ロンドン放浪記 (岩波文庫)

制作 : George Orwell  小野寺 健 
  • 岩波書店
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レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003226223

感想・レビュー・書評

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  • 「1984年」で知られるイギリスの作家である著者の、有名になる前の経験を下敷きにした作品。
    名門校を出て公務員になったのに、安定した人生を捨ててパリとロンドンの貧民街で暮らす人生に。結構悲惨な暮らしなのですが、その中でも彩り豊かな登場人物や著者の余裕のある語り口が読みやすい作品にしています。
    例えば、「いたるところで、買い手のない山のような食べ物がわたしを侮辱する」という表現、困窮している割に何ともユーモラスです。

    時代感をあまり意識せずに読み始めたら、暮らしぶりの酷さに「産業革命後かな?」とも思ってしまったのですが、メトロもタクシーも走ってるし、1927年からの世界恐慌前夜だったんですね。
    GEが電気冷蔵庫を作り始めていた時代にも、着る物も満足になく、寒さに凍えながら寝る人々が多くいたというのは、きっといつの時代でも多かれ少なかれこういう要素は残っているもので、もちろん今でも同じことで、忘れてはいけないことなのだと思います。

    ちなみに、表紙のあらすじには「自らに窮乏生活を課す」って書いてあるのですが、読んでいて受けた印象としては、どうにもやむにやまれずに貧民街に腰を落ち着けて、そのうち抜き差しならなくなったようにも見えます。。
    しかし、47歳の若さで結核で亡くなられた著者。どうにもこの生活が影をさしていたのではないかと…。

  • あまりに飄々としていてユーモラスなんで、
    フィクションかと思えてくるんですけどルポタージュなんですよね。
    いや、それくらい楽しい本ではあるんです。

    フランスでの変人に囲まれた貧乏暮らしにしても、
    ロンドンでの浮浪者暮らしにしても、
    20世紀のヨーロッパの裏側が見える感じがいいですね。
    それにしたって陰鬱な雰囲気ではなく、
    どこか異世界の物語を読んでいるように感じられます。

    軽妙なタッチで書かれているので読んでるときは気づきませんでしたが、
    これが実体験だというのは、なかなか凄いことだと思いますよ。
    こういう人になりたいもんだと思います。

  • 2018年2月読了。

  • 恥ずかしげなく言うと、自分が読書を始めたきっかけになった作家がジョージオーウェルと太宰だった。もうすぐようやく百冊読了するにあたって、原点回帰じゃないけどまたオーウェルを読みたくなってきた。

    図書館で探すも、岩波文庫版『パリ・ロンドン放浪記』が置いてない!なのでリクエストして入れてもらった。
    が、後で気づいたけど他社の全集は置いててそれに入ってたので、早とちりして税金の無駄使いしちゃったなあ……と、思ってたら、新入荷本コーナーにこの本置いてると、けっこうみんな借りてくんですよね。じゃあお前らリクエスト出せや!w

    オーウェルの真髄は『動物農場』や『1984』よりもルポルタージュ作品やエッセイにあり、とよく言われてるけど、僕自身これらよりも『カタロニア讃歌』の方が好きだったりする。
    今回、『パリ・ロンドン放浪記』と『オーウェル評論集』を読んだけど、まさしくそうだと思う。

    内容は、今で言うと松っちゃん設楽小池栄子の『クレイジージャーニー』みたいなもん。貧乏生活の潜入ルポ。
    ブクログだとパリ編の方が人気あるみたいだけど、僕はロンドンの浮浪者編も好きです。オーウェルにとって、祖国の問題を考えることはとても大事だったはずだし、イギリスの階級社会が彼の文学的原点になってると思う。
    ロンドン編に出てくるボゾがね、すごく良いんですよ。

    構成は、パリのホテルX編、パリのレストラン編、ロンドンの浮浪者編とだいたい3部に分かれてる。
    そして、それぞれの最後にまとめを書いてる。(第14章、第22章、第36章)
    フランス編では、ホテルの厨房の不潔さと表ヅラのよさを暴き立てているところが最高。パリなんて19世紀まで不潔極まりない都市だしね。
    また、低賃金労働者の現実、ロンドン編だと浮浪者や貧困層を救うための現実的な手だてをまとめにしっかり書いている。
    さすが、ジャーナリスト、ルポライターのオーウェルだなって感じ。

    彼の、文章でもって社会問題と闘っているところがすごく好きなんです。
    あと、ヨーロッパを放浪する点は、先日読んだ檀一雄の『火宅の人』ともつながってます。

  • オーウェルが体験した窮乏生活を描くルポ。
    パリでは一日十七時間の激務なのに食べていくのが精一杯の奴隷的な生活、そして、ロンドンでは救貧院や安宿を転々としてパンと紅茶の施しを求める浮浪生活…。

    浮浪者をたんに"働かざる者"とする社会の偏見を反駁し、その存在理由を明らかにする考察には後に優れた評論を残す著者らしさが発揮されています。

    貧しさが人の精神を荒廃させ、それはいかに社会全体の責であるのか、考えさせられます。現代の日本にも多く当てはまるのは言わずもがなです。

    自分の恵まれた環境を顧みて、恥入らずにはいられないショッキングな内容でした。ちょっと残業が続いたくらいで泣言を並べる自分が恥ずかしい(笑)。自分が今後どうなろうと、"金があろうがなかろうが同じ生き方ができる"と言う大道絵師ボソのように矜持をもって生きたいです。

  • 1984年の著者で有名なジョージ・オーウェル。

    若い時に、あえて貧乏生活を自分に課して
    どんぞこの生活をする。
    3日に1日のパン。寝る暇もない労働。浮浪者となりイギリスを彷徨う。。

    自分が見ている世界とまったく違う世界。
    それが目の前にあるように感じられるように書いている。
    純粋に面白い。

    これを読んだ後にいまの自分の生活を省みるとどんだけ恵まれてるんだと思う。

  • 富士見台ブックセンター、¥756.

  • 自らに貧乏生活を課し、パリとロンドンで浮浪者となった作者の生活と、出会った人々達とのエピソード集。

    文体から彼の誠実な人柄が伝わってきて面白い。パリ編はコミカルだが、ロンドンでは浮浪者に対する扱いの差が起因しているのか、重々しい。

    一人一人の浮浪者達が生き生きと描かれていた。浮浪者も、金持ちも、同じ人間であると作者は伝えている。

  • 大した家柄の筆者が身をやつして、戦間期のパリとロンドンで最下層の生活をレポートする。戦勝国にもロクでもない生活があったという当たり前の事実に気付かされるとともに、ロクでもない生活を最大限に楽しむ心意気を感じられる。
    この筆者はなぜここまでやるのだろうという興味がムクムクと湧く。筆者がこの後にスペイン内戦に身を投じるのは当然の流れなのか。なんにしても密かにあこがれのルポライターである。

  • シュール。とか言っちゃいかんのかな。いやなんかでも馬鹿馬鹿しさが湧いてくるっていうか漂っているっていうか。なんだろね。

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プロフィール

George Orwell【1903-1950】 邦訳書に、『オーウェル小説コレクション 4 葉蘭をそよがせよ』(高山誠太郎訳、晶文社、1984年)、『1984年 ハヤカワ文庫NV8 』(新庄哲夫訳、早川書房、1972年)、『カタロニア讃歌 ちくま学芸文庫』(橋口稔訳、筑摩書房、2002年)、『ビルマの日々 新装版』(大石健太郎訳、彩流社、1997年)、『気の向くままに』(オーウェル会訳、彩流社、1997年)、『ウィガン波止場への道 ちくま学芸文庫』(土屋宏之・上野勇 訳、筑摩書房、1996年)、『オーウェル評論集 1~4平凡社ライブラリ』(井上摩耶子他訳、川端康雄編、平凡社、1995年)、『空気をもとめて』(大石健太郎訳、彩流社、1995年)、『動物農場 角川文庫』(高畠文夫訳、角川書店、1995年)、『オーウェル小説コレクション 1 パリ・ロンドンどん底生活』(小林歳雄訳、晶文社、1984年)、『オーウェル小説コレクション 5 空気を求めて』(小林歳雄訳、晶文社、1984年)、『オーウェル小説コレクション 2 ビルマの日々』(宮本靖介・土井一宏訳、晶文社、1984年)、『オーウェル小説コレクション 3 牧師の娘』(三澤佳子訳、晶文社、1984年)ほかがある。

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