パリ・ロンドン放浪記 (岩波文庫)

制作 : George Orwell  小野寺 健 
  • 岩波書店
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レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003226223

感想・レビュー・書評

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  • 「1984年」で知られるイギリスの作家である著者の、有名になる前の経験を下敷きにした作品。
    名門校を出て公務員になったのに、安定した人生を捨ててパリとロンドンの貧民街で暮らす人生に。結構悲惨な暮らしなのですが、その中でも彩り豊かな登場人物や著者の余裕のある語り口が読みやすい作品にしています。
    例えば、「いたるところで、買い手のない山のような食べ物がわたしを侮辱する」という表現、困窮している割に何ともユーモラスです。

    時代感をあまり意識せずに読み始めたら、暮らしぶりの酷さに「産業革命後かな?」とも思ってしまったのですが、メトロもタクシーも走ってるし、1927年からの世界恐慌前夜だったんですね。
    GEが電気冷蔵庫を作り始めていた時代にも、着る物も満足になく、寒さに凍えながら寝る人々が多くいたというのは、きっといつの時代でも多かれ少なかれこういう要素は残っているもので、もちろん今でも同じことで、忘れてはいけないことなのだと思います。

    ちなみに、表紙のあらすじには「自らに窮乏生活を課す」って書いてあるのですが、読んでいて受けた印象としては、どうにもやむにやまれずに貧民街に腰を落ち着けて、そのうち抜き差しならなくなったようにも見えます。。
    しかし、47歳の若さで結核で亡くなられた著者。どうにもこの生活が影をさしていたのではないかと…。

  • あまりに飄々としていてユーモラスなんで、
    フィクションかと思えてくるんですけどルポタージュなんですよね。
    いや、それくらい楽しい本ではあるんです。

    フランスでの変人に囲まれた貧乏暮らしにしても、
    ロンドンでの浮浪者暮らしにしても、
    20世紀のヨーロッパの裏側が見える感じがいいですね。
    それにしたって陰鬱な雰囲気ではなく、
    どこか異世界の物語を読んでいるように感じられます。

    軽妙なタッチで書かれているので読んでるときは気づきませんでしたが、
    これが実体験だというのは、なかなか凄いことだと思いますよ。
    こういう人になりたいもんだと思います。

  • ジョージオーウェルと言えば動物農場...と思いきやこんなルポ的な旅日記のような、そんな本も書いていたんですね。
    しかも1933年と、かなり若い時の執筆です。

    パリとロンドンでの底辺暮らしの経験をみずみずしい感性で綴ったエネルギーを感じる一冊です。

    個人的には前半のパリの話の方が好きです。

  • BRUTUSの危険な読書特集で気になった一冊。
    「放浪記」なので、多少は「旅行記」的な内容も期待してはいたんですが、まったくそんなことはなく、1920年代当時のパリとロンドンの底辺での生活を、文字通り放浪しながら綴ったルポタージュ。
    ジョージ・オーウェルって「1984」で名前を聞いたことがあったけど、これが原点なんですね。
    とりあえず、南京虫が気になった。

  • 貧乏体験記がつまらない筈がない。
    愉快なパリにシニカルなロンドン。
    奴隷や浮浪者の分析、考察が興味深い。
    胸にしっかり留めておこう。
    気が付けばもう.....

  • 前半のパリ編が秀逸。
    20代の1年半をパリで過ごしたからこそ描写できた街の一面。南京虫と悪臭漂う底辺の暮らしを、ヨーロッパ中から集まってくる様々な人の人生との出会いを通して、生き生きとどろどろと描きだしている。
    20世紀前半のこの時から、パリの根本部分は変わっていないと思う。

  • オーウェルの突撃ルポ、デビュー作。1927年から3年間、パリ貧民街とロンドンのホームレス界にどっぷり浸かって取材。やはり性来の裕福さがポジティブな行動と考え方を生んでいる感はあり、よくある王子さまが身分を隠して庶民の中で生活をして学んだり、社長の息子が平社員として素性を隠して研修するという、ベタな物語を実際に行ったルポルタージュ。面白がってはあかんのかもしれませんが、単純に面白いです。だいたいにしてオーウェルがええとこの子なだけに、目が曇ってなくて、好奇心と探究心があるというか、面白がっているところが文章にも現れていて、読んでいるほうもワクワクします。

  • 2018年2月読了。

  • 恥ずかしげなく言うと、自分が読書を始めたきっかけになった作家がジョージオーウェルと太宰だった。もうすぐようやく百冊読了するにあたって、原点回帰じゃないけどまたオーウェルを読みたくなってきた。

    図書館で探すも、岩波文庫版『パリ・ロンドン放浪記』が置いてない!なのでリクエストして入れてもらった。
    が、後で気づいたけど他社の全集は置いててそれに入ってたので、早とちりして税金の無駄使いしちゃったなあ……と、思ってたら、新入荷本コーナーにこの本置いてると、けっこうみんな借りてくんですよね。じゃあお前らリクエスト出せや!w

    オーウェルの真髄は『動物農場』や『1984』よりもルポルタージュ作品やエッセイにあり、とよく言われてるけど、僕自身これらよりも『カタロニア讃歌』の方が好きだったりする。
    今回、『パリ・ロンドン放浪記』と『オーウェル評論集』を読んだけど、まさしくそうだと思う。

    内容は、今で言うと松っちゃん設楽小池栄子の『クレイジージャーニー』みたいなもん。貧乏生活の潜入ルポ。
    ブクログだとパリ編の方が人気あるみたいだけど、僕はロンドンの浮浪者編も好きです。オーウェルにとって、祖国の問題を考えることはとても大事だったはずだし、イギリスの階級社会が彼の文学的原点になってると思う。
    ロンドン編に出てくるボゾがね、すごく良いんですよ。

    構成は、パリのホテルX編、パリのレストラン編、ロンドンの浮浪者編とだいたい3部に分かれてる。
    そして、それぞれの最後にまとめを書いてる。(第14章、第22章、第36章)
    フランス編では、ホテルの厨房の不潔さと表ヅラのよさを暴き立てているところが最高。パリなんて19世紀まで不潔極まりない都市だしね。
    また、低賃金労働者の現実、ロンドン編だと浮浪者や貧困層を救うための現実的な手だてをまとめにしっかり書いている。
    さすが、ジャーナリスト、ルポライターのオーウェルだなって感じ。

    彼の、文章でもって社会問題と闘っているところがすごく好きなんです。
    あと、ヨーロッパを放浪する点は、先日読んだ檀一雄の『火宅の人』ともつながってます。

  • オーウェルが体験した窮乏生活を描くルポ。
    パリでは一日十七時間の激務なのに食べていくのが精一杯の奴隷的な生活、そして、ロンドンでは救貧院や安宿を転々としてパンと紅茶の施しを求める浮浪生活…。

    浮浪者をたんに"働かざる者"とする社会の偏見を反駁し、その存在理由を明らかにする考察には後に優れた評論を残す著者らしさが発揮されています。

    貧しさが人の精神を荒廃させ、それはいかに社会全体の責であるのか、考えさせられます。現代の日本にも多く当てはまるのは言わずもがなです。

    自分の恵まれた環境を顧みて、恥入らずにはいられないショッキングな内容でした。ちょっと残業が続いたくらいで泣言を並べる自分が恥ずかしい(笑)。自分が今後どうなろうと、"金があろうがなかろうが同じ生き方ができる"と言う大道絵師ボソのように矜持をもって生きたいです。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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