タイム・マシン: 他九篇 (岩波文庫 赤 276-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003227619

感想・レビュー・書評

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  • SFって夏になると読みたくなる

    夏休みという文字をよく見聞きするけれども
    自分にとってはそれが遥かな過去に思えるから
    夏はタイムマシンがやってくる季節なのかも?

    などと思ったので短絡的にこちらを。

    大好きな古典SF小説☆

    #タイムマシン
    #ハーバート・ジョージ・ウエルズ
    #不朽の名作 #読書 #岩波文庫 #SF小説 #SF #古典 #空想科学小説 #人類は退化する #明らかに #だんだん馬鹿になっていく #ウエルズ #ウェルズ #SF好き #SFファン #指がつった

    https://www.instagram.com/p/CgqLXvGPoi6/

  • 「タイム・マシン」★★★
    「水晶の卵」★★★
    「新加速剤」★★★
    「奇蹟を起こした男」★★★★
    「マジック・ショップ」★★★
    「ザ・スター」★★★
    「奇妙な蘭」★★★
    「塀についた扉」★★
    「盗まれた身体」★★
    「盲人国」★

  • 「乱視読者〜」からの流れで再読。10年振りくらい。蘭の話は怖かったなーと記憶にあったけど、他はうろ覚えだったな。「タイム・マシン」や「水晶の卵」を読むと、そのイメージの豊かさに圧倒される。前はあまり印象に残らなかったんだけど「盲人国」がけっこう面白い。文化人類学的な要素の入った作品というのだろうか…。

  • 『四畳半タイムマシンブルース』と「タイムマシン」つながりで読んでみた。

    やはり古典。楽しめるのは間違いない。でも実際に読んでみないと本当の面白さはわからない。

    すばらしき妄想力!というべき個性的な短篇の集まり。時間飛行以外にも、超能力を発揮したり、幻想を見たり、幽体離脱したりと奇抜な着想が展開される。

    特に表題作は、自分が生きている間の未来しか想像しない現代人は必読。

    科学が進歩した先の世界は、果たして理想郷なのか?社会問題にも光を当てた元祖SF小説。

    p43
    背後について来ていた六人の未来人全員が、同じ服装、温和な髥のない互いに似た顔だち、少女のようにふっくらした身体つきをしているではないか。

    服装だけでなく、男女を区別する身体つきや物ごしまで彼らの場合は似たりよったりなのだ。

    しかし、未来人の安穏とした生活を見ていると、結局、男女の区別など不必要なものだという気がした。

    人口のバランスがとれた未来社会において、たくさんの子供を産むことは国家にとって慶賀すべきことでなく害悪になる。暴力がなく、子孫の生命ぎ保障されている社会では、家族制度の必要性もなく、したがって育児の必要から生じる両性の区別も消滅しているのだろう。

    p45
    まるで地球全体が庭園になってしまったような印象をうけた。

    なぜなら人間の力は困窮から生まれるのだが、社会の安定は
    脆弱を生む。人類は社会改革と生活安定のための努力を続け、ついに最高の地点に到達した。人間は次から次へと自然を征服していった。現在は夢にすぎないことが、実現された。しかし、いく世代にもわたる人間の努力の結果たるや、ぼかの目撃した衰退なのである!

    p46
    やがて世界は教養と知性と協調性のある人間が支配し、自然は人間の下僕として完全に隷属させられることになるだろう。最後にわれわれは、けんめいにかつ注意深く、自分の要求に合わせて、自然界のバランスを変えてしまうだろう。

    八十万年後の世界では、空中に蚊もいず、地上には雑草も茸もない。いたるところに果物が実り、甘美な花が咲き誇り、色鮮やかな蝶があちこち舞っている。理想的予防薬が発明され、病気は根絶されてしまった。未来世界で、ぼくは伝染病にお目にかからなかった。

    p47
    社会生活も完全に改善され、理想的な住居、素晴らしい服装、労働からの解放は当然のこととされている。社会的闘争も経済的闘争もない。現在のわれわれの生活(成り立たせている商店、広告、交通、その他の経済的流通制度は消滅してしまった。人口抑制も成功し、人口は増加しない。この未来世界はいったい天国なのだろうか、夕陽をみつめて、ぼくは考えた。

    未来人たちの肉体の貧弱さ、頭脳の悪さ、それにおびただしい廃墟の数は文明が行きつくところまで行ってしまったことを示している。

    p48
    飽和状態に達したエネルギーは活動を止める。それは最初は、芸術もエロティシズムにおもむき、やがて無気力と退廃に終わる宿命なのだ。
    芸術的想像力さえ最後には消滅する。事実ぼくが見た未来社会において芸術活動はほとんど見られなかった。

    p67
    資本家たちの排他的生活を見てみたまえ。高等教育を受けて洗練され、彼らと貧乏人との差が拡大した結果、保身のために土地の大部分を囲い込んでいる。たとえばロンドンでは、よい土地の半分以上が私有地として囲われてしまっている。高等教育の拡大と延長、富める者たちの生活の便利と贅沢に起因する階級間のみぞが拡がっている。そのために英国では階級間の交流が阻害され、階級分裂を食いとめていると思われる。異なる階級間の結婚もみられなくなってしまった。こんな状態が続けば地上では富める者だけが快楽と安寧と美の生活を送るいっぽう、貧しい労働者は地下に追いやられて、そこで労働だけに従事するということになるだろう。彼らは換気料というもの、それもかなりの高額の金を払わなければならなくなるだろう。支払いを拒否すれば飢え死にするか窒息するしかない。みじめな生活に反抗する者は死ぬしかないとすれば、そのうち地下世界に適応した人間たちが生き残り、それなりに幸福な生活を送るようになるだろう。地上に残った富める者は、繊細で美しい人間に、地下の労働者たちは青白い肌の人間に変化してゆくのは当然だ。
    ぼくの夢みていた人類の偉大な勝利は現実とは違っていた。それは道徳教育と協調の勝利ではなかった。ぼくが未来世界に見たものは一種の貴族制度であった。彼らの科学で防備された社会は、現代の産業社会の当然の帰結である。人類は自然を克服しただけではない。同時に仲間の人間を隷属化したのだ。

    p104
    人間の知性がたどったはかない末路を思うと、ぼくは悲しくなった。知性は自殺をしたのだ。知性は快適さと安楽、そして安定と恒久性を標語に、バランスのとれた社会を目指してきた。そしてその目標に到達した後にこんなことになってしまったのだ。進歩の続いているある時代に、人間生活は完全に満ち足りた安定に達したにちがいない。そのとき富める者たちは彼らの財産と快楽、労働者は生活と仕事の充分な保証があった。雇用問題もすべて解決し、社会問題はなかった。その後には安定期がずっと続いたのであろう。
    多面的な知性というまのは、変化、危険、困難と引きかえに、人類が得たものだという自然法則をぼくらは見のがして
    いる。環境と完全に調和した動物は完全な機械だ。習性た本能が役に立たなくなったときに、はじめて知性が必要になる。変化も、変化の必要もないところに知性は生まれない。さまざまの変化と必要性に、適応しなければならない生物だけが知性を持つのである。
    そういうわけで、恵まれた地上人だったエロイたちは脆弱な美しさをそなえるようになり、地下のモーロックたちはただ機械的に働くだけの人間に退化した。しかしそんな状態もいつまでも続くものではない。時が経つにつれ、地下への食物の供給がうまく行かなくなったらしい。何千年ものあいだ身を隠していた必要の母というやつが、ふたたび生き返ったのだ。モーロックたちは機械を管理していた。ということはいくらかの頭脳を働かせる必要があったということである。したがって必然的にエロイたちよりは進取の気象を保ってきたのだ。そして他の食肉がなくなったときに、それまでの習性によって禁じてきたことをやる気になったのだ。これはぼくが、紀元八十万二千七百一年の世界で目撃したことである。

    p146
    要するに、ケイブが水晶を覗くたびに、実は火星とそこの住人たちを眺めているのだという結論は、無理なこじつけではないようだ。そうだとすれば、水晶の中の空にひときわ明るく輝いている宵の明星は地球だということになる。

  • 表題作だけでなく、他9篇もすべてまさにウェルズの世界。これらの作品が1890年代から1910年代にかけて書かれていたことにまずは驚き。特に『タイム・マシン』はSF映画を観ているようで、すっかり引き込まれた。紀元80万2701年後の未来、そして3000万年後の未来ははたしてどのようなものであったのか。たしかに今の世界の動きがこのまま進めば、ウェルズの書くような世界にそれぞれ至るのではないか、そのように思わされた。それだけのリアリティがあった。『タイム・マシン』以外では、特に『ザ・スター』が壮大でお気に入り。

  • タイム・マシン、水晶の卵、新加速剤、奇蹟を起こした男、マジック・ショップ、ザ・スター、奇妙な蘭、塀についた扉、盗まれた体、盲人国が集録。

    盲人国が一番怖い。話が通じないことの恐怖。相手の常識でこちらが狂人だと判断されることの恐怖。

  • *

  • 著者ハーバート・ジョージ・ウエルズは、19世紀後半から20世紀前半に、文学だけでなく政治の分野においても業績を残した人物だという。文学も、SF作家、ジャーナリスト、歴史家、科学者など多様な分野で活躍したらしい。

    1895年に描かれたタイムマシンの素材は、ニッケルと象牙、無色の水晶。美しいものを集めた感じだが、時間を超えるための動力というものが考慮されていない。最近のタイムマシンでは、核融合や原子力というようなものがつきものだが、そのような概念が無かったか、あまり有力視されていなかった時代だとすると、そんな中でこれだけの時間旅行物語を描いたことはすごいと思う。

    タイム・マシンほか、10の短編が収められている。新加速剤など、ある程度の科学的考察が加えられていて、単なる空想物語に終わっていないところが、また面白さをアップさせている。

  • 表題作は初期の時間移動物として『クリスマスキャロル』と並べて語られることの多い作品である。『クリスマスキャロル』は強制的に過去の自分の姿を眺めさせられる話だが、こちらはデロリアンなどに近く、自分の意思で時間移動を可能としている。
    1900年頃の作品なのに、全く古びておらず、既に一つの完成形であるから、時間旅行を描きたいと思った後のSF作家にとっては高いハードルであろう。
    少年ジャンプにおける『スラムダンク』のようである。

    他の作品もしっかり面白かった。
    『盲人国』が好き。

  • よくSFで描かれる未来のさらにずっと先の時代を描いた作品。探検小説っぽくて読みやすかったです。

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