- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003227725
作品紹介・あらすじ
第二次大戦中、物語の語り手ライダーの連隊はブライズヘッドという広大な邸宅の敷地に駐屯する。「ここは前に来たことがある」。この侯爵邸の次男で大学時代の友セバスチアンをめぐる、華麗で、しかし精神的苦悩に満ちた青春の回想のドラマが始まる。
感想・レビュー・書評
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ドラマ版(1981年グラナダテレビ)を見始めたので再読。大戦下のイングランド、将校チャールズ・ライダーはある貴族の領地に駐屯する。ブライズヘッドという名を聞き、彼はこの地で過ごした若かりし日々と古い友セバスチアンの思い出を蘇らせていく。
失われた美しき時代への熱く痛ましい賛辞そのもの。上巻はセバスチアンとチャールズの気楽なオクスフォード生活と、あまりにも輝かしいブライズヘッドとヴェネツィアでの夏季休暇の後、セバスチアンの前途に暗い影が差し始めるところで終わる。無垢・純真・繊細な子供時代を具現化したようなセバスチアンは、実際には幼年期を家族の崩壊と信仰の重圧で決定的に痛めつけられ、その苦悩は長じるにつれ深まるばかり。チャールズに助けを求めるセバスチアンの声なき声が行間にこだまして、読んでいて苦しくてしかたがない。
贅を尽くしたブライズヘッドの城館と、ワインと苺に彩られた二人の眩しく気怠い夏の日々は、衒いのない澄み切った美しい文章で描き出される。研ぎ澄まされた美的感覚が、貴族趣味や過去への郷愁を感傷に傾き過ぎる寸前のところで保っている。だからこそこの作品は古き佳き英国に憧憬を抱く人の聖典ともなったのだろう。
翼をもがれ地上に落とされた天使のようなセバスチアンは物語を象徴する人物でもある。セバスチアンがチャールズにもたらした青春の日々を余すところなく語る上巻は甘美の一言。初読時も上巻では大いに感動したけれど、下巻に入ると少し期待と違う方向に話が進むので結局お気に入りの一作にはならずじまいだった。今回はさてどうなるか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
悩みよく理解できず
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3.9/160
内容(「BOOK」データベースより)
「第二次大戦中、物語の語り手ライダーの連隊はブライズヘッドという広大な邸宅の敷地に駐屯する。「ここは前に来たことがある」。この侯爵邸の次男で大学時代の友セバスチアンをめぐる、華麗で、しかし精神的苦悩に満ちた青春の回想のドラマが始まる。」
原書名:『Brideshead Revisited』
著者:イーヴリン・ウォー (Evelyn Waugh)
訳者:小野寺 健
出版社 : 岩波書店
文庫 : 303ページ(上巻)
メモ:
・20世紀の小説ベスト100(Modern Library )「100 Best Novels - Modern Library」 -
級友セバスチャンの苦悩。作者の育った家庭がこのようだったのだろうか。労働者階級の感情や欲望が「より忠実なありさま」と違い、何よりも礼節を重んじられ、感受性の強い若者は息苦しく感じる。また違うが私も家の中では「だるまさんが転んだ」をしてるような緊張を強いられていたので共感はする。セバスチャンは酒に逃げるようになるが、友人や世の中からは「全く問題はないし、自分は全然気にしてない」と偽装しなければ自分が保てない。そんなことでストレス溜めてるなら、わろてしまえ。(まだ前巻しか読んでません)
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2012-12-22
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感想は下巻にまとめて.
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セバスチアンは繊細なレース編みみたいだ。美しい模様に内面の苦悩が透けている。こういった儚さやもろさ、倦怠感といったものに引きつけられる気持ちも分からなくもない。逃避したい現実は自分にもある。しかしその弱さを克服しようとするかしないかで人生は全く変わるのだろうから、セバスチアンはもったいなかったと思う。周囲が変わらないのなら、自分が変わるしかない。相手に合わせるというのではなく、相手と向き合うという意味で。逃避は現実を変えないのだ。
押し付けられて得たものはもはや信仰ではない。それは洗脳と呼ぶと思う。教育も似たようなものだ。よく言われる「夢を持て」というのも一種の信仰だと私は思う。セバスチアンの苦悩を背負っている若者は現代日本にもたくさんいるだろう。ただ、彼らが大人になり回想するのは屋敷を含む美しい風景ではなく殺風景でせせこましい都会であろうことを思うと心が寒々しくなる。自然に生きることが、どうしてこんなにも難しいのだろう。
セバスチアンとチャールズのような友情って、ドイツ文学には出てきそうだけど今時はあまりなさそう。クラブの女の子に「あいつらホモよ」って言われてるのちょっと面白かったけど、仲良きことは美しきかな。セバスチアンがアルコールに溺れていくのを止められず、結局は道を別ってしまうのが切ない。 -
イーヴリン・ウォー、私とは縁のない作家だと思っていた。図書館の英米文学文庫の棚、あまり借りられた形跡もない上下巻。何故か気になって読み出した。
セバスチアンが言った「僕は、自分が幸福な気持になった所にはみんな金の壺みたいなものをを埋めておいて、いまに年とって醜いみじめな老人になったら、もどってきてそれを掘り出して、思い出にふけりたいと思うんだ」
この言葉だけでも、この小説を読んだ甲斐があったというものだ。
青春小説かと思わせて、後半は恋愛小説となり、最後には信仰と人生との関わりに広がっていき、失望(絶望ではない)の中に微かな未来への光を感じさせて私は本を閉じブライズヘッドを去る。
いまのところ今年のベスト本候補。 -
オックスフォードの学生の自伝を記した小説である。ドイツの大学町の回想、仙台の回想、本郷の回想という中での一群の小説として考えればいいと思う。
著者プロフィール
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