フォースター評論集 (岩波文庫)

制作 : 小野寺 健 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003228333

感想・レビュー・書評

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  • 「文化の価値」を読んでいると、あれ?これはいつ書かれたんだろ。と思うほど、現代にも当てはまることが多く書かれている。時代を感じさせないフォスターの評論集。

  • 20世紀前半の代表的なイギリスの小説家であるE・M・フォースターによる評論集で、解説によると、岩波から出ている本書は、みすず書房の著作集のうち『民主主義に万歳二唱』と『アビンジャー・ハーヴェスト』から抜き出して編まれている。全23篇。1903年初出の「マコルニアの買物」から始まって、1949年初出の「私の書斎で」で終わる。大体において年代順に並んでいる。最初と最後まで、書かれた時代がかなり隔たっているのだが、全体をつらぬく「信条」は基本的に同じだ。つまり、彼がイギリス(人)的特質として挙げた「生ぬるい理想主義や余裕のある穏健な考え方」(p.126)に、彼自身もどっぷりと浸かっている。言い換えると、政体として一番ましな民主主義を擁護し、他者や他国に対して寛容の精神を取るという態度を一貫して保持するということである。ここからナチスの政策を非難してイギリス的な自由の価値を重要視し、非西洋地域(オリエント)に対してもきわめて中立的な物の見方をする。――ひとことで言ってバランスの取れた人物という印象を受けた。まあ、エラスムスとモンテーニュを「私の立法者」と呼ぶ以上は、そうならざるを得ないわけだが。

    後半部では、プルーストやエリオットといった同時代の影響力のある作家を論じた文章が取り上げられているが、ここでも彼の「信条」が、時事的な話題とともに語られるケースがたびたび出てくる。芸術問題を社会と常に関係させる態度がいかにもまっとうで、好ましい知識人の姿として映る(オーウェルを論じるのもじゅうぶんな理由があるわけだ)。だが、「文化の価値」という面白い評論を読んでも分かるように、ダンテやシェイクスピアなどを愛する良心的な「貴族たち」に小声で語るような様子は明らかに芸術家のものだということも事実である。僕は、フォースターはやはり芸術の発展と継承が最重要の問題として映っていたのでないかと考える(人類の存続とかいった話は、問題というよりは前提だからここでは省略)。民主主義社会は市民に「最大の自由を許す」(p. 113)ことによって「創造的才能」の発揮を助けるし、寛容の精神を誰もが持つことで、ナチスのような排他的な暴力国家は亡くなり、文化的な水準は高く保たれえるというわけだ。ドイツ国家批判の箇所で、彼は国家の統制から芸術家が免れて、「堂々と自己を表現でき、大衆がそれを受け取ることを許されてこそ、文明全体の水準が上がるチャンスがある」(p. 129)と述べるが、今まで言ってきたことをまとめるとそんな風になる。要するに、フォースターは芸術家なのだという当たり前のことを言いたかった。ただ、彼の本当の仕事である小説を見たら、そこに普通以上にイギリス社会が背景として色濃く描かれているという点や、『インドへの道』のような政治的な方面からのアプローチを許す小説を彼が書いたという点もあることを見逃してはならないだろうけど。

  • 未読。

    アポロの杯/三島由紀夫から。三島由紀夫がストーリーとプロットの違いを説明するときに挙げていた小説家です。

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