アイルランド短篇選 (岩波文庫)

制作 : 橋本 槇矩 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 44
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003228715

作品紹介・あらすじ

アイルランド文学の本領は短篇小説にこそある。歴史・風土・宗教・口承の伝統など、アイルランドを様々な角度から浮き彫りにする傑作短篇一五篇を精選。イギリス文学とはひと味ちがう、独特の味わいに満ちた緑色のオムニバス(乗り合いバス)にあなたも乗ってみませんか。

感想・レビュー・書評

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  • 人物達の、望むように生きられない/望むような自分でいられない満たされなさが、多くの収録作に共通して沈澱していた印象。ただそれがすっかり常態になっているからか、彼らは殊更に苦しんだりのたうちまわったりはしない。静かにため息つきつつ粛々と生活している。
    そんな日々にあって時折よぎるほのかな夢想。作中では、それにこたえるほどの劇的なイベントが起こるわけではないけれど、ささやかな出来事が人物の心の襞に触れ、そこで生じる彼らの感情の機微などが繊細に描かれる。短篇ならではの簡潔な幕引きもあとぐされなくて美しい。
    個人的には「ミスター・シング」以降4作が特に好きだった。(とはいえ少しずつ読み進めていたので、単に時間の経過とともに序盤の作品の記憶が薄れてしまっただけかもしれない)

    中には歴史的事件を扱った作品もあり、背景がわからなかったり、突然の血生臭さにおののかされたりすることもあった。ただの素朴なヒューマンドラマの耕地で終わらない、独立戦争や内戦の苦しみを抱えたかの国の姿がこちらに印象付けられ、暗澹たる気持ちにさせられることもあった。

  • アイルランドを代表する作家たちによる15の短編が収められている。この土地から逃れられない人々の諦念と孤独が蔓延しており息苦しく切ない。歪な歴史と厳格な宗教に封じ込められてきた過去が土地にしみついている。家族にも縛られて身動きできない若者がいて、老人はその事実を嘆きながらも何もできない‥それはどちらにも悲しいこと。これら収録作の中で、ジョイスの「二人の色男」の軽妙洒脱な人間劇にほっと息をついた。

  • 「リメリック手袋」 マライア・エッジワース
    「ワイルドグース・ロッジ」ウィリアム・カールトン 
    「塑像」ジョージ・ムア 
    「山中の秋夜」ジョン・ミリントン・シング 
    「二人の色男」ジェイムズ・ジョイス
    「高地にて」ダニエル・コーカリー 
    「国外移住」リアム・オフラハティ ◯
    「妖精のガチョウ」リアム・オフラハティ 
    「不信心と瀕死」ショーン・オフェイロン
    「闘鶏」マイケル・マクラヴァティ
    「国賓」フランク・オコナー
    「ミスター・シング」 ブライアン・フリール ◎
    「アイルランドの酒宴」エドナ・オブライエン ◯
    「罪なこと」ジョン・モンタギュー
    「ロマンスのダンスホール」ウィリアム・トレヴァー ◎

    1799年から1971年までの170年間に書かれた15の短編小説を集めている。アンソロジーとしての統一性は薄いけれども良編ぞろい。特にトレヴァーの短篇は、相変わらず素晴らしい。

  • 「妖精のガチョウ」が好き。

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