狐になった奥様 (岩波文庫 赤297-1)

  • 岩波書店 (2007年6月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784003229712

みんなの感想まとめ

愛と変化、そして受容の難しさを描いた物語が展開されます。ある日、最愛の妻が狐に変わってしまい、夫は彼女を愛し続けるものの、妻は人間の記憶を忘れ、野生の本能に従い始めます。夫はその変貌を受け入れられず、...

感想・レビュー・書評

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  • ある日、最愛の妻が狐になってしまった。夫は変わらず愛し続けようとするが、妻は人間の記憶を忘れ始めて狐になっていく…。

    最初はカフカの「変身」を家族側の視点から描いた作品かと思ったが、読み進めるうちに「これはストーカー小説かも」と考え始めた。

    ある日、妻が変貌する。夫は妻の変貌を受け入れられず、元に戻るよう努力する。しかし、妻は嗜好が変わってしまい現状に満足しているのだ。それでも昔の妻の姿を忘れられない夫は追い続ける。

    突然変わってしまったパートナーの姿を受け入れられず、昔に戻るよう強制する。何だかノンフィクションで読んだストーカーそのものに感じるのだが。変わった相手に対して変わらぬ愛を注ぎ続けるって、美しいようだが一方で支配的とも言える。
    愛は束縛とも言うが、現在を生きる人間にとって過去に縛り付けようとする存在は重いだけだ。

  •  ある日、なぜか、突然きつねになってしまったテブリック夫人。
     はじめは姿こそきつねであっても気品を失わなかった夫人は、やがて内面も獣に変わってゆく。テブリック氏はきつねに変わりゆく夫人をひたすら愛し続ける。はたして、テブリック氏は夫人を愛しているのか。きつねを愛しているのか・・・

     きつねになった夫人に対するもっとも分かりやすい見方は、人を愛するということのむずかしさ、自分と他人の断絶のたとえとして見ることだと思います。テブリック氏は妻を人間のルールに従わせたかっただろうし、きつねになった夫人はテブリック氏をきつねのルールに従わせたかった。

     そんなとき、テブリック氏のもとに夫人を育て上げた乳母が帰ってきますが、それがかえって夫人の変化に拍車をかけてしまいます。

     テブリック氏は変わりゆく夫人に絶望し、ときには八つ当たりしながらも愛し続ける。その結果、テブリック氏は、きつねのルールに理解を示すわけですが、人がきつねのように振る舞おうというのだから滑稽そのもの。けれどそれをあざ笑うことができないのは、愛のもつ盲目さ、悲しさ、美しさなどを見出すことができるからなのかもしれません。

     あるいは、乳母の登場が夫人の変化を進めたことから、女性として上品であるべきだという規範に対する反発が関係しているのではないかとか、夫人は自らきつねとして生きることを早々に決意したのではないかとか、いろいろ考えさせられるところがありました。

  • タイトルといい荒唐無稽なストーリーといい、ツッコミを入れたくなるかと思いきや、全くその余地がない。読み終え表紙を返して気付いた「一切の批判をよせつけない」とのウエルズの評。主人公が絶えず繰り返す自己批判がゆえかもしれない。唸る、とはこういうことか。

  • 最初から最後まで違和感があって、読後感もなんか良くない。
    テブリック?さんだっけ、奥さんのシルビアさんが狐になったのが、明確にテブリックさんの思い込みかと思ってた。奥さんがいなくなってから別の場所かなんかで狐を奥さんと思い込むみたいな。
    本の中では、一緒に散歩していて気づいたら狐になっていたことになっている。えっ、本当に狐になっちゃったの?ってなった。
    テブリックさん自身も狐の奥さんに執心しているの悩んでいるの痛ましい。その割にはほんのページ数少なかった。もっと苦悩してる分量多くても良かったのに。
    気になったのは、お風呂入ってなくて臭そうだったこと。この地域のこの時代の人がどの程度お風呂入ってたかわからないけどお風呂入れよって思った。一回お風呂入る記述があったので作者も気になっていた?
    あと、家が汚さそう。テブリックさん家事やってたと、記述あったけどちゃんと掃除してたのかな。
    仕事してなさそうなのに、ずっと生活できててお金がありそうなのも気になった。
    最後あっさり終わってたのもありがちなんだけどもやもやする…

  • まず言いたいのは、お前は金持ちだからこんなことができるんだってことで、金がなければ狐になって即終了である。あんな生き物飼ったらどれだけの維持費になるというのか。
    とは言え金に困らんチートを前提にするなら、後はキツネってけっこう可愛いんだけど、スゲー臭いっていうのが!エゲレス人が体臭を云々するくらいだからかなり臭いんだろうなぁ。残念。
    てかキツネになった奥様と酒飲んで乱痴気騒ぎして翌日に神様に誤ってたけど、あれはやってたんじゃないか。子キツネも君の子じゃないんか。というくらい、キツネには優しいけど、犬とかバシバシ撃ち殺す暴れん坊っぷりでやっぱエゲレス人は怖いわ。

  • 昔からある変身もの。これは奥様がどんどんキツネ化していき最後は本当にキツネに……面白かった。

  • 額面通りであれば狐に変身した妻と亭主の話だが、肉体的な意味合いでなく精神的な変化と受け取り、1人で戦慄した。

    若妻を以前と同じ人間とは思えなくなった。
    自分の洋服を着ることを嫌がり、自由奔放に振る舞うようになり、ついには出奔し他の男の子供を産み、嬉しげに私に見せ、なつかせようとする。私はこの家族の面倒をみる。。。

    自分を裏切り蔑ろにした「あの女狐めが」人間である訳がない。あいつはある時に狐に変わったのだ、という主人公の病んだ心の叫びを勝手に感じて勝手にホラー化して読んでしまいました。

  • シュール。妻がある日突然狐になり、日に日に人間性を失い動物に近づいていく。夫は、完全に狐になり意思の疎通ができなくなった妻を愛することがやめられず、苦悩する。愛に関する性(さが)。人間を人間たらしめているものは何か。

  • よく出来ている構成
    狐になってしまった妻への愛情と小狐への愛情が感動的だった。
    ラストは感動的なシーンで終わった。

  • 意外な結末だった

  • 人間が狐になるわけない、から、狐になった奥様を描こうと思ったら、それは作者の空想になる。
    この狐が、全く奥様でありながら、狐でもある、というさじ加減が絶妙。
    最終的には奥様ではなく、狐を愛してしまうというオチが痛快。

  • メタファー?
    寓話?
    とにかく、1922年の資料としてだけ

  • ある日突然妻が狐になってしまった夫の話。
    最初は妻も嘆き出来るだけ人間としての気品を保とうとして、夫もそれを手伝う。
    しかし徐々に妻は狐の精神に侵され、服を嫌がり、生肉を欲し、庭から外に出ようとする。
    ある時夫も耐えきれず妻を森に逃してやり、しばらく後に小狐を産んだ妻と再会する。
    そして。

    狐になったことの理由などは一切無く、状況が与えられてはいどうぞ、という感じ。
    読みどころは変化と葛藤、そして夫の変わらぬ愛、ではなく変わる愛の描写だろう。

  • とても切ないファンタジーでした。いや、これは童話に近いかも。現代のファンタジーやラノベ的なものならばもっともっと書き込み読者の想像力の自由さを支配しようとするが、古い時代の作品らしくアッサリサッパリと書かれてい、そのため想像力が嫌でも掻き立てられ主人公の心情に吸い寄せられてしまう。小説もアニメも絵画もそうだが、受け手に想像する余白を残してくれている作品の方が好きだ。

  • 変身譚というものは昔からあり、好きな作品が多いので、チェックしていたつもりだったが、これは見落としていた。岩波文庫だけど、読みやすく、非常に面白い。変身譚で素晴らしいものは色んな読み方ができるものだ。ヨーロッパは、人間が動物になるパターンが多く、これもそうだが、人間に戻らないのは、昔話とは違い、近代以降の人間の有り様を描こうとする作家ならでは。カフカの「変身」と似ているが、これは変身した人間の心情の直接描写はなく、妻がいきなり狐に変わってしまった夫の心情を描いている。
    男と女の理解しあえない様子、解き放たれた女の生き生きとした、かつ得体の知れない姿、不貞を受け入れる心情を描いて、尚且つ純愛小説になっている。
    結婚する前に男性は読むといいかも。
    夫婦の幸せとは何か、考えさせられる。
    女が自由に生きる難しさも。

  • 河合隼雄推薦の書。突然妻が狐に変身。夫は、徐々に野性化するのを苦悩する。2015.7.7

  • 【本の内容】
    テブリック氏の夫人シルヴィアはまだ23歳、立ち居ふるまいは上品で人並みすぐれた美形。
    いつものように二人は散歩にでかけるが、突然、夫人が狐に変身してしまう。
    次第に内面も野性化してゆく妻をあくまでも愛しぬこうとする夫…。
    「一切の批判をよせつけない佳篇」とウエルズに絶賛された、イギリスの作家ガーネットの代表作。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 奥様の好きだった朗読をしてあげたテブリック氏、でも気づくと狐になった奥様は鳥籠の鳩を凝視。でも、これはギャグじゃないよ。最後まで気も狂わんばかりに奥様を愛そうとする物語。
    ああ、獣。獣とのじゃれあい。
    正月休みに実家の猫との距離感を1ミリも縮められなかったわたしは、この獣のしぐさや愛嬌に、少し慰められたのでした。

  • 「狐」は何かの比喩なのかな。
    アルツハイマーや精神病、もしかしたら浮気症の女性かもしれない。
    どれにしても切ないね。
    テブリック氏は妻が自分のことを忘れても愛し続ける、たとえ相手を束縛することになっても。
    こういうのは男性と女性の差なのかな。
    相手の心に自分がいないことが分かったら、私ならさっさと諦めて相手を解放すると思う。
    男は愛に生き、女は恋に生きる。
    そういうことなのかな。

  •  いやあ、すごい。
     人間だった頃の奥さんじゃなくて、その狐そのものを愛するようになったって、ものすごいなあ。
     四つ足で歩いたり、狐に嫉妬したりしているテブリックさんは、いたって真剣だ。他人の目から見たら、狂気の沙汰としか思えないんだけど。

     ふと、だいぶ前に読んだ「彼の名はヤン」を思い出した。
     その作中では、殺人とか差別とか、戦争で起こる様々な非人道的行為を「セ・ラ・ゲール」(戦争だからさ)という一言で、片付けていた。それに似ていると思った。
     愛と戦争は、いかなる行為の理由にでも使えるってところが。

     いや、戦争は理由じゃなくて、言い訳かな。

     そんな事を考えたのでした。

    原題:LADY INTO FOX

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著者プロフィール

広島大学名誉教授・文学博士(名古屋大学)。1973 年ロンドン大学留学。1976年市河賞、2006年英語語法文法学会賞、2008 年瑞宝中綬章。Who’s Who in the World(1993-)、Men of Achievement(1995-)記録。主な編著書:A Descriptive Syntax of Christopher Marlowe’s Language(University of Tokyo Press)、『英語教師の文法研究』(正・続)(大修館書店)、『生成文法用語辞典』(共著、大修館書店)、『英語学の歴史』(共著、英潮社)、『新クラウン英語熟語辞典』(第3 版)(共編、三省堂)、『新英和大辞典』(第5、6 版)(共編、研究社)、『言語学・英語学小辞典』(共編、北星堂書店)、『現代英米語用法事典』(共編、研究社)、『英語学の視点』、『英語学入門』(共著)、『英語史入門』、『現代英文法講義』、『英語の文型』、『英語の前置詞』(以上、開拓社)、『英語イディオム・句動詞大辞典』(編、三省堂)、など。そのほか訳書多数。

「2021年 『新装版 基礎と完成 新英文法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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