アルハンブラ物語 上 (岩波文庫 赤 302-2)

  • 岩波書店 (1997年2月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (367ページ) / ISBN・EAN: 9784003230220

みんなの感想まとめ

旅の紀行文として、作者がスペイン滞在中に体験した幻想的な日々を美しい描写で綴っています。特にアルハンブラ宮殿に住むことになったことで、その歴史や言い伝えが生き生きと伝わり、まるで過去の光景が目の前に現...

感想・レビュー・書評

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  • 1800年代にアメリカ人外交官の作者がスペイン滞在時に体験した旅の紀行文。アルハンブラ宮殿に到着してからは、そこに住ませてもらえることになり(!)宮殿の歴史や言い伝え等について語られます。

    歴史的建造物を観光すると、誰しも何百年も過去の人々に思いを馳せたりするものですが、アーヴィングはその表現の仕方がとても美しい。まるで幻視のように過去の光景が立ち現れ、夢から醒めるようにふっと我に返る感じ、すごく伝わってきます。

    個人的にはスペインには数年前に旅行に行って、アルハンブラ宮殿も訪れその美しさに大感激したので、懐かしく思い出しながら読みつつ、行く前に読んでたらもっと現地で楽しめたかもとちょっと後悔。でもまあ逆に、行ったことがあるからこそリアルにイメージできる部分もあるので、それはそれでいいのかな。スペインではおもにガウディの建築物を見て回ったのですが、国自体のなりたちや歴史についてはほとんど勉強しておらず、そのへんもこの本を読んで初めて知ることがたくさんありました。

  • いろいろとロマンに満ち溢れております。素材だけでなく、描写も綺麗。妄想を刺激する要素もたくさんあるので、何度か読み返して拾い上げたいものです。

  • 『アルハンブラの思い出』を聴きながら、遠いスペインの地グラナダのアルハンブラ宮殿に想いを馳せる。著者がアルハンブラ宮殿を訪れ幸運なことから主となり宮殿の歴史や逸話を語る紀行&滞在記。宮殿内の建物や広場の描写やまた挿し絵が素晴らしく、宮殿内の住人のエピソードも楽しいし、著者が言うように幻想的で魔法のかかった宮殿を歩いているようだった。ネットで宮殿の詳細を調べたり、埃をかぶった世界遺産のDVDを引っ張り出して観て、もう虜になっている。一度は訪れたい、というか行くよ。絶対に!下巻も楽しみだ。

  • 367P

    スペインを知れるスペイン文学って少ないけど、この『ロルカ詩集』はスペインの空気を感じ取れてよかった。でも一番スペインについて知れたのは、アメリカ人のワシントン・アーヴィングが書いた『アルハンブラ物語』だった。こういうスペインとかインカ帝国みたいに自分で良さを語ることは出来ないけど、魅力的な国ってあるよね。

    7割がカトリックのスペインに、イスラム建築の最高傑作(アルハンブラ宮殿)があるのも凄いし、それを壊さずに国の誇りにしてるのがスペインという国を表してると思う。

    アルハンブラ物語はアメリカ人作家のワシントン・アーヴィングによるスペインの歴史文化スペインの人々を紹介した本なんだけど、これはネットでスペインって調べても得られないと思う。ゲーテのイタリア紀行と並ぶぐらい素晴らしい本だった。地域的には南スペインのアンダルシア地方の一部だけど、スペインという国とスペインの人々の気質が分かると思う。スペインの特に南部は北アフリカのイスラム文化が交錯する地域で、アンダルシア地方自体がキリスト教×イスラム教の文化が混じりあってる境界なんだと思う。トルコとかもそうだけど、異なる物が交錯した場所って魅力的だなと思う。アルハンブラ宮殿はイスラム建築の最高傑作って言われてて、その美しさを伝えたいという気持ちが伝わってきた。アルハンブラ宮殿はデザイン的にも、バルセロナのガウディの建築にも影響与えてると思う。多分だけど、スペインの芸術が素晴らしいのは2つの異なるものの境界にある事も影響してるのかなと思った。

    近代、荒廃していたアルハンブラ宮殿を蘇らせたのはアメリカの作家アーヴィングによる旅行記「アルハンブラ物語」。世界中でベストセラーとなり、観光客が訪れるように。スペイン政府の目にとまり、本格的に復興が行われた。

    未読の『アルハンブラ物語』、「これらの伝説に、したり顔の常識や分別を持ち込むことは無用である。皆さんは、現在、魔法のかかった宮殿の広間を歩まれているのであって、ここは一時が万事「幻影の息づく国」なのだと思っていただきたいのである…」、なんて言われたら続きを読まずにいられません。



    ワシントン・アーヴィング Washington Irving
    生年:1783年
    没年:1859年
    アメリカのロマン派を代表する作家。文壇デビュー作の『ニューヨーク史』(1809)においてユーモアや軽妙な諷刺で才気を発揮した後、1815年にイギリスに渡ってからは牧歌的でスケッチ風の物語や神話伝説の独自の世界を描いた短編集『スケッチ・ブック』(1819-20)で一世を風靡した。また、スペイン滞在中に着想を得、旺盛な創作意欲とイスラム文化への傾倒を遺憾なく示した本作『アルハンブラ物語』(1832)に代表される歴史文化の分野でも意欲的に文学活動を展開した。晩年は念願としていた畢生の作品『ジョージ・ワシントン伝』(1855-59)の著述に没頭してこれを完成した。

    「大抵の人はスペインと言えば、官能的な印象を放つ自由で華やかなイタリアを思い起こして、人を愉楽の園へと誘う長閑な風景が広がる魅力的な南の国だと思いがちであろう。ところが、実際はその真逆だ。なるほど、沿海地域では多少の例外はあるものの、だいたいはどこか重苦しさを感じさせる、メランコリックな風情を醸す国である。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著



    「荘厳なまでの単調さが織り成すスペインの景観には、人の心の中に崇高の念を惹起する何かが宿っているようだ。カスティーリャやラ・マンチャの見渡す限り続く一面の平原は、岩肌がむき出しになった広漠たる光景を呈し、何とも名状し難い風情に溢れている。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「山稜を走る険しい道を通っていると、やがてムーア風の胸壁と小高い丘の上に佇む古い崩れかかった見張り塔に囲まれた街や村落の全貌が見えてくる。これはさながらワシの巣であるかのように、断崖の間に築かれている。不意に私は、中世のスペインにおいてキリスト教徒とイスラム教徒が激しい権力闘争を繰り広げていた騎士道の時代、あるいはロマン溢れるグラナダの攻防戦の時代に舞い戻ったかのような不思議な感覚に見舞われた。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「いずれにしても、こうした特異な文化と向き合う姿勢と、その心構えさえあれば、旅人にとってスペインは何と素晴らしい国だろうか。だから、見方によっては、どんなにみすぼらしい感じのする宿であっても、一瞬にして魔法にかかった魅惑のお城に映るし、また、いかなる陳腐な食べ物であっても、極上の糧になるだろう。もっとも、通行料金を支払うような立派な道路もなく、高級なホテルもないとお嘆きの輩には、勝手に言わせておけばよろしい。なるほど、文化と文明が創出する手の込んだ娯楽性に欠け、何の変哲もない淡々とした空気が覆うスペインだが、私たちは荒れた険しい山道を当てどもなく彷徨い、また、その道中で気は荒いが、それでいて率直で優しい人たちとめぐり逢うなどして、共に愉快な語らいを楽しむ旅ができた。これこそが古き良き時代のロマンと風情が漂うスペインを旅する上での愉楽の極みである。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「彼は敢えてイスラム文化が色濃く残るコルドバのカリフ(首長)とも領有権をめぐって主権争いを展開したのだ。また、フェルナンド王とイサベル女王の治世には、ローハの老指揮官で、グラナダ王国の最後の君主ボアブディルの義理の父に当たるムーア人のアリ・アタル( 6)が、しばしばこの地を襲撃して恐れられていたこともあり、そうした悪行を重ねたという逸話に因んで、この一帯はアリ・アタルの庭とまで言われている。そして、スペインの盗賊綺譚の中にも登場するかの有名なホセ・マリアも、この一帯にお気に入りの隠れ家をいくつか所有していたらしい。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「一般のスペイン人は、いかなる時も絶対に気ぜわしく振る舞わないことが紳士たる者の心得であると思っているようだ。ところが、アンダルシア人となるとまた違った特性があって、悠然と構えているように見えて、小気味よい所作を旨とし、そこには卑しく怠惰な性質など微塵も見受けられない。こうした果敢な性質の根底にあるのは、急峻な山岳地帯からアンダルシアの沿岸地域にかけて、彷徨いの果てにたむろした密輸商人たち特有の豪胆な性格であろう。このことには疑いを入れない。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「スペイン人の性格や特徴について基本的な知識を纏めてみれば、概して、彼らはいかなる状況にあっても、またいかに教育が不十分であったとしても、知的でお互いが和気あいあいと会話を楽しめる才能を持ち合わせているのだ。それはいわゆる生来の知恵と才覚に優れている所以であろう。だからといって、彼らは決して卑屈ではない。神は彼らに慎ましくも気高い気質を授けたのだと思いたい。この善良なアントニアおばさんは、深い教養を身に付けている訳ではないが、芯が強くて賢く聡明な女性である。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「アルハンブラ宮殿はキリスト教文化の影響が濃い国土のど真ん中に聳え立つイスラム教の大建造物である。ヨーロッパのゴシック様式の粋を集めた建物の中に、静かに佇むオリエント風の趣を漂わせる宮殿である。一国への侵略に始まり、そこを統治し、繁栄の謳歌を経て滅亡したあの武勇で鳴らし、知性と優雅さを称えられた祖先たちの美しい形見なのである。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「このように懐古の情に浸っていると、私はオリエント風の要素を採り入れ、荘厳な雰囲気に圧倒されそうなこの記念碑的な建造物を後世に残して、今もなお宮殿の壁面にその名を留めるムーアの君主たちについて詳しく知りたくなった。その知的好奇心を満たすために、私はあらゆるものから想像を膨らませてしまう。従って、この空想と伝説の場所から離れて、グラナダ大学附属の古びたイエズス会図書館に足を運び、塵に塗れた膨大な蔵書の中に埋もれている有用な文献を紐解くことにした。かつてはスペイン全土に誇りうる「知の宝庫」として知られたこの図書館も、今ではすっかり衰微してしまった。何でも、フランス軍がグラナダに侵攻した際に、彼らは所蔵の生原稿や稀覯本などの貴重な文献の類を掠奪してしまったので、もはや華やかな昔日の面影を感じさせるものはないようだ。ただし、イエズス会神父たちに関する膨大な蔵書と興味深い幾つかのスペイン文学の小冊子は残されていた。それは諸般の事情を鑑みたフランス軍のそこはかとない配慮かもしれない。ところが、そればかりではないのだ。手書きで綴られた羊皮紙表装の貴重な古書や年代記がたくさん残っていたのには驚いた。それは私にとって、とりわけ意義深いことであった。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「 この古い図書館の中で、私は誰にも邪魔されることなく、書物を一人占めして楽しむことができた。親切にも図書館の戸口と書棚の鍵を託されたものだから、一人自由気ままに文献を読み漁ることができたのである。概して言えば、神聖なる学問の聖域に足を踏み入れるには、やはりそれなりの覚悟が必要であろう。いかに知に渇いた学徒であっても、目の前の知の泉になかなか近づけないという焦燥感を感じるものだ。  頻繁に図書館通いをしているうちに、私はアルハンブラ宮殿に関する歴史上の人物についていろんな情報を得ることができた。その中でも、読者の皆様にお気に召していただけそうなものを幾つかご披露させていただく所存である。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著


    「グラナダのムーア人たちは、このアルハンブラ宮殿を「奇跡の芸術宮殿」と見なしている。だから、この宮殿を築いた君主たちは魔法使いか、さもなければ少なくとも錬金術師の類に相違ないと思っているのだ。要するに、アルハンブラ宮殿の築城に費やされた膨大な資金の捻出は紛れもなく、そうした君主たちの秘術の業に他ならないと語り継がれている。しかし、時の君主が統治する国家形態を一瞥すれば明らかな通り、その潤沢な財源の裏には、それなりの知られざる秘密が隠されているのに気づく。アルハンブラ宮殿の築城者は、マホメット・イブン・アル・アフマールという名でアラブ系の歴史書の中にも登場する人物である。しかし、一般的には単にアルハマールの通称で記載されている。何でも、この君主はいつも赤ら顔であったことから、アルハマールなる名称はそれに由来しているというのだ( 27)。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「彼は絹糸の生産性を高めたこともあり、グラナダの織物には繊細な美しさが息づいているという評判が巷に流布するなど、遂には名産地のシリアを凌駕するまでになった。いやそればかりではない。アルハマール王は領土の高峻な山岳地帯での金や銀などの貴金属の採掘を積極的に推進し、素材にそうした貴金属を使用した領国貨幣の製造とその品質向上に多大な功績を残したのである。そして、グラナダの国王の名が刻印された最初の硬貨が発行されるに至った。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「彼は余暇の大半を庭園で過ごした。特に、国王自身が採集した希少な観葉植物や芳しい香りを放つ花々で彩られたアルハンブラ宮殿内の花壇で穏やかな時を過ごすことがお気に入りだったようだ。ここで、彼は嬉々として歴史書に没頭したり、あるいはまた、近侍との語らいを楽しんだりした。しばしば暇を見つけては、高い教養と学識を備えた教師に預けていた三人の公子たちに自ら英才教育の手ほどきをすることもあったらしい。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「宰相ユースフ・アベン・セラーズも、アベンセラーヘ家の騎士四十名を引き連れて、夜の間にグラナダを去り、カスティーリャ国王のファン二世のもとに向かった。この若き徳の高い国王は、彼らの陳訴に心を動かされ、早速チュニスの国王に書簡を認め、その恩顧にかけて僭王の処罰と亡命した前王の復位の実現に力を貸してくれるよう頼んだ。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「スペイン人はどんなに愛国心が強くプライドが高いと言われようとも、それをもって日常生活や社会生活に何らかの支障をきたして窮屈さを感じさせるようなことはない。信頼と愛情によって緊密に結ばれた血縁という見えない絆によって、主従関係に抗うかのように、そこには傲慢と卑屈という属性からかけ離れた特異の世界がある。このような例は他には見られない。こうした側面を顧みれば、スペイン人の生活の中に息づく質素を旨とする庶民的な感覚は誇れるものであり、とりわけ田舎にはこうした称揚すべき昔ながらの慎ましい生活形態がまだ多く残っているのだ。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「この一族の中で、私の目に映った最も関心を惹く人物は、老伯爵の愛くるしい一人娘であるカルメンであった。彼女は十六歳くらいで、家族みんなから愛されるアイドル的な存在であるが、まだ少女のあどけなさが残っていた。周囲には一般的に通称「ラ・ニーニャ」と呼ばれてもてはやされていた。この可愛いお嬢さんは、まだ成熟した大人の魅力を放つ域にまでは達していないが、すでにアンダルシア特有の優美でしなやかな均整の取れた肢体を兼ね備えていた。だが、その印象的な青い瞳、美しい顔立ち、金色に輝く髪の毛、いずれをとってもアンダルシア地方では珍しく整ったタイプの女の子である。押しなべてスペインの女性と言えば、普通、燃えるような情熱的で官能的な美女をイメージするが、彼女はそれとは異なり、繊細で優しさに溢れた可憐な女性だった。まだあどけなさが残り、人懐っこさを感じさせる陽気な佇まいと調和しているように思えた。それと同時に、アンダルシアの女性特有と言ってよいだろうが、彼女も人心の機微に聡く、多彩な才能の一端を見せる時があった。何か要望があれば、即興で何でも容易に出来てしまうのだから驚きだ。彼女は人前で楽しく歌を口ずさみ、軽やかにギターも奏でるし、その他の楽器類であっても優雅に演奏できるのだ。しかも、絵のように美しいスペイン舞踏のフラメンコの切れ味は実に感動的ですらある。だが、それは周りから称賛されたいという欲求からではなかった。とにかく、何でもそうだが、陽気に騒いで楽しめばよい。これが彼女の生まれ持った精神的な財産だ。そんな資質に後押しされて、彼女はあるがままに陽気に歌い、踊るのである。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「どうやら優雅に詩歌を嗜む人になっていたようだ。賢者イブン・ボナーブンは、少しばかり不安を覚えた。どうにも王子の行動は軽々しく、気分が浮ついているように思えたからである。そこで、彼は難解な代数学の課題を押し付けて、王子の気持ちを一新すべく鋭意励んだ。しかし、その努力が報われることはなかった。王子は嫌悪感を抱いてそれを拒んだのだ。「代数学なんてまっぴら御免だし、大嫌いだ。小難しい代数学なんかよりも、もっと心が揺さぶられるようなものはないのか」と、王子は言った。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「時間の経過に従って、王子の奔放な情熱は、心情を持たない物へとひたすら注がれ始めた。王子には好きな花があって、その花を慈しみながら優しく育てた。それからさらに、彼の情熱はいろんな種類の木々に向けられた。その中でも特にお気に入りの一本の木があった。それは優美な姿を呈して、物思わしげにうなだれた群葉で飾られた樹木である。彼はその木に惜しみなく深い情愛を注いだ。その樹皮の上に自分の名前を刻むだけではなく、枝には花冠を添えて、その木を賛美する美しい二行連句を作るとリュートを奏でながら歌のパフォーマンスを披露したのだ。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「時間の経過に従って、王子の奔放な情熱は、心情を持たない物へとひたすら注がれ始めた。王子には好きな花があって、その花を慈しみながら優しく育てた。それからさらに、彼の情熱はいろんな種類の木々に向けられた。その中でも特にお気に入りの一本の木があった。それは優美な姿を呈して、物思わしげにうなだれた群葉で飾られた樹木である。彼はその木に惜しみなく深い情愛を注いだ。その樹皮の上に自分の名前を刻むだけではなく、枝には花冠を添えて、その木を賛美する美しい二行連句を作るとリュートを奏でながら歌のパフォーマンスを披露したのだ。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「王子が次に言葉を交わしたのはフクロウである。その佇まいから賢い存在だと思われているフクロウだが、彼は頭が大きく目玉をぎょろぎょろと小刻みに動かしていた。昼間はずっと壁の巣穴で目を眩しそうにパチクリさせながら居座っているが、夜になると、ぶらっとどこかへ飛び出していくのだ。フクロウは、さも知恵があるように振る舞う気取った態度で、占星術や月の動静の諸々について語る。また、面倒くさそうな秘教の哲理を仄めかしたり、ひどく形而上学的な知識をひけらかすのである。王子は師匠格の賢者イブン・ボナーブンの型苦しい難解な話にもまして煩わしさを感じた。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「その次に登場したのは、一羽のコウモリである。彼は終日、丸天井の隅の裏にひっそりとぶら下がり、夕暮れ近くになると、そこを飛び出して相変わらず無粋な格好で薄暗い闇の中を飛び回るのだ。コウモリは万事うろ覚えで浅はかな知識しか持ち合わせていないので、それらをもっぱら茶化して軽妙に喋る。まあ、楽しみと言えば、せいぜいその程度で、日々の充実感を得るような喜びなど微塵も窺えない。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「「おやすい御用でございます、王子様。恋とは……そうですね、あえて申し上げれば、一人になると不安が押し寄せて来て悶々とするものです。二人でいれば、愛を交わし合う至福の時間を楽しむことができます。三人だと厄介なことに嫉妬の種となり、人間関係のいざこざが生まれます。恋に秘められた特性があるとすれば、およそそのようなことではないでしょうか。いつか運命の人と邂逅し、お互いに相手を愛おしく思うようになるでしょう。やがて、お互いを思いやる温かい心が育ち、今まで知らなかった熱い感情が芽生えるはずです。一緒に過ごすことでいつも癒されて幸せを感じます。しかし、大好きになった人と離れ離れになってしまえば、辛い恋の地獄を見ることになりますが。王子様にもきっと優しい愛の絆で結ばれたお方がいらっしゃることでしょう」」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    「王子はオウムの場所柄をわきまえない道化のような振る舞いに不快感を露わにした。「恋とは、いわば自然と人間の営みが織り成す大きな神秘の一つであり、生命現象の裏に潜む法則、あるいは人の心と心を結ぶ普遍的な絆とでもいいましょうか」と、王子。」

    —『アルハンブラ物語 (光文社古典新訳文庫)』W・アーヴィング著

    安藤百福の言葉
    人生に遅すぎることはない。50歳でも、60歳からでも新しい出発はある。

  • ▶図書館にあり。びっくり。
    ●2025年4月28日(月)、またYahooフリマのクーポン出た。Yahooフリマから過去にいいねした「ダーク・タワー 2 運命の三人(新潮文庫)/スティーヴン・キング」の上下セットが値下げされた通知がきて(2冊で420円)、その方のほかの出品も見てたら、これの初版が上下セットで800円で売られてた。評価が高いのでチェック!

  • 久しぶりにとても面白い本に出会った。
    アルハンブラの魅力もさることながら、訳者の見事さよ!

  • 長い
    庭園の描写や絵が美しい

  • レヴュは下巻にて。

  • 2/5 読了。

  • タイムマシンが欲しくなった。

  • 2014/4/23
    ようやく読み終わった。グラナダ周辺の歴史が多い上巻に較べると下巻はおとぎ話てきな伝承中心なので読みやすい。
    この本、多分文学的価値はそれほどでもないんだろうけど、全編に著者のアルハンブラ愛が流れてて今すぐスペインに行きたくなります。危険w行く予定のない人は読まない方がいいかも。ああでも柘榴や天人花の生い茂る緑に囲まれたイスラムの香り高い宮殿で、うっとり午睡してる気分には浸れるので現実逃避には良いかもです。

  • アメリカ公使館書記官であるアーヴィングは1820年代にグラナダを訪れ、荒れ果てたアルハンブラ宮殿に滞在した。その日々を幻想的な伝承を織りまぜながら語った本。上巻は歴史や建物、グラナダでの暮らしにまつわるが多い。
    アルハンブラ宮殿を築城した王アルハマールは、戦争で持ちこたえられないと判断した後、カスティーリャの君主であるフェルナンド聖王に帰服し主従関係を結んだ。つまりイスラム教の領主がキリスト教の領主に仕えた。意外なのは、キリスト教とイスラム教の領主が同盟や主従関係を結び十字旗と新月旗を並べて、共通の敵である他の領主と戦争するのは別に珍しくなかったということ。最初から延々と宗教間での争いをしていたと思っていたが、そうではないらしい。分かりやすい二元論は後からの解釈だった。

  • 19世紀、アメリカ公使館書記官としてスペインに赴任したアーヴィングが、少年時代から憧れていたアルハンブラ宮殿に住まわせてもらって書いた本。19世紀当時のスペインの庶民の暮らし、彼らから聞き取った伝承、アルハンブラ宮殿を建造し歴史から消えていったモーロの王侯たちのエピソードなどが、ゆったりとしたリズムで語られる。

    アルハンブラ宮殿は「イスラム教の天国ってこんなところだろうか」と思うような夢のような建物なのだけれど、あの場所にぴったりの、夢のようなふわふわとした語り口が気持ち良い。アーヴィングのような人がアルハンブラ宮殿に憧れ、そこでたっぷりとした時間を過ごせたことを、歴史に感謝したくなるような本。下巻はさらにゆるふわらしい。楽しみ。

  • アルハンブラ宮殿に行くので読んでみた。
    スペインの荒涼とした雰囲気がよく伝わってくる。

    宮殿に関するたくさんの逸話が登場するのだが、彼が歴史に魅了されたオタクだっていうのがよくわかる。

    フランス軍よくやった!!っていうのが一番の感想ですね。

    アルハンブラ宮殿の挿絵が入っていて、実際この本を宮殿に持っていたので、「あぁ、ここがライオンの間かぁ」とか非常に旅のお供として活躍してくれました。

    ただアルハンブラ宮殿を訪れても、その歴史を知っていないときっと面白さ半減どころではないだろうと思いました。

    もし宮殿を見物に行くならこれを読んでみるのもいいでしょう。

  • 久しぶりに岩波買った〜。憧れのアルハンブラ宮殿!という思いで手にとったけど、アルハンブラに行くまでの旅の様子だけでも非日常に心踊ります。鉄道でも車でも飛行機でもない移動は、それだけでかなりのあじわいがあるよね。

  • グラナダ・アルハンブラ宮殿に行く前に是非読みましょう。印象が全く変わると思います。

  • 目次

    アルハンブラ宮殿
    歴史的交渉―筆者、ボアブディルの王位を継ぐ
    アルハンブラの住人たち
    大使の間
    イエズス会図書館
    アルハンブラの築城者、アルハマール
    アルハンブラ宮殿の完成者、ユースフ・アブール・ハジーグ
    神秘の部屋
    コマレスの塔からの眺め〔ほか〕

  • アルハンブラ宮殿行ってみたいなぁ。。滞在記と色々な物語。

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