- Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003230718
感想・レビュー・書評
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昨年末、少し足を伸ばして、念願だった松江のartosbookstoreさんを訪問してきました!
いやー、いい本屋さんだった。
正味1時間弱滞在し、じっくり本を選んで、手元にやってきたのが、こちらの『森の生活』(上)です。
著者のヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1817-1862)は、アメリカの「詩人博物学者」(本の著者紹介より)。
本書は彼が、マサチューセッツ州ウォールデン湖のほとりに小屋を自力で建て、1人で暮らした2年あまりの日々の記録です。
文章の合間にはソローが撮影したウォールデン湖や森、近くの村の写真が数多く収録されていて、その写真の静謐な佇まいと、岩波文庫のキリッとした装丁がとても美しいんですよね。
はい、つまりはジャケ買いだったわけです。
はりきって買った割には、古典特有の文章に苦戦しつつ、なんとかまず上巻を読み終えたのが正直なところなのですが、そうした中でも目に飛び込んできたのが次の2つの文章。
「われわれは家を美しいもので飾る前に、まず壁をはがし、生活をはがし、美しい家屋管理と美しい生活とを土台として築くべきである。」
「……私の暮らし方には少なくともひとつの強みがあった。つまり、自分の暮らしそのものが楽しみであり、いつも新鮮さを失わなかったことだ。」
私自身は少しもアウトドア志向ではなく、むしろ「時短○○」といったものが大好きな人間なのですが。
でも、「時短」して生み出した時間を何に使っているか、とか、「時短」している最中がそもそも時間の使い方として美しいのかどうか、ということも大事だよなあ。
そんなことを教えてもらった気がします。
素敵な本なので、あえて少し時間をおいて、ゆっくりまた下巻にも向き合ってみたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
丁寧な暮らしインスタグラマーの投稿を読んでるようだった。
こだわりを持ってミニマルに暮らすのは本人の自由だけれど、そうしていない人をバカにするのは違うと思うんだ。
あと、実はソローの母親が暮らしの世話をしていたらしいと聞いたことがあって、そうなると、かなり見る目が変わる。 -
心にオアシスを持つための助けになる本.
ほとんどの現代人は社会生活を営んでいるが,実は人間に最低限必要なものはほとんどない.食料や寝床があれば十分なはず.というアイデアを,そのまま実践してみた近代の哲学者のウィットに富んだ自然と人間の観察録.
この本を読むたび,だいたいの悩みはどうでもよくなってくる.どうでも良いことは忘れて,自分にとって大事なことだけに集中すれば良い.「何がどうでもよく,何はどうでもよくないのか」を見極めるため,今なら森に篭もらなくても,この本を読めば助けになる. -
名著です。何か、『隠遁生活のススメ』みたいな捉え方をされている向きもありますが、ソロー自身が
『僕が森に行ったのは、思慮深く生き、人生で最も大事なことだけに向き合い、人生が僕に教えようとするものを僕が学びとれるかどうか、また死に臨んだときに、自分が本当に生きたと言えるのかどうかを、確かめるためだった。』
と、本書で述べており、決して厭世思想ではありません。積極的に生きるための哲学として読まれることをおすすめします。 -
何より19世紀の人々も現代の我々より一層仕事や土地や様々なものに縛られ汲々と生きていた事に驚きます。 200年で進歩は無いのか?
自分で森の奥に家を建てて2年間暮らしながら思索を巡らすソロー。「訪問者」に出てくる樵が印象的。ミニマルな生活でいつも思うのは、1人で生活している人が実践する話だということ。家族、特に幼い子供や老人などと一緒の人達があえてこういう生活に挑んだという話は無いのか?子供や老人も余計なものというわけでも無いだろうに。でも、自由に生きられたらとも思う。自分の場合は引き換えに犠牲にしなければならないのは何だろう。 -
森の生活。理想の生活。就活生には痛いであろう一冊(苦笑)。
彼の言うとおり“いまいる場所だけが世界ではないのだ”。
忘れてないようで忘れがちな真実を、ウォールデン湖とそこに住んだ詩人が思い出させてくれた。
さぁ、今から何をしようか。 -
私にとっては文章が難しくて比喩も多く、こういう本に慣れていないので十分には理解できていないと思う…。
ところどころクスッと笑ってしまうようなところも。
しばらくしたら、ゆっくり再読したいです。
下巻も頑張って読んでみます。 -
仕事に打ち込むこと、自分のペースを保つことなど、今に通じるものを感じます。
さすが古典の名著というところでしょうか。
自然に対する細かな描写などは、著者の自然への愛情を感じることができました。
しかし大変なボリュームや膨大な脚注など、やっと読み終えたというのが正直なところで、己の不勉強さを嘆きます。 -
<28歳となった年、私は森に入った・・・2年2ヶ月2日の間の、自給自足による森での生活。>
ヘンリー・デイビット・ソロー
大きな物事が起こると価値観ががらりと変わることは良くあります。
ひどく個人的な話なのだけれど、私にとって(私たちにとって?)3・11の東日本大震災はそういう“大きな物事”の一つに数えることができます。
あの日、私たちの豊かで便利な生活は、非常に大きなリスクのもとに成り立っていることがわかりました。
もともと頭では理解されていたものかもしれません。
しかしそれが実際に起こった、肌で感じるものとなった。
そして月日が経つにつれ、さまざまな考えが頭に浮かびます。
「私たちは間違っていたのだろうか?」
「利便を求めすぎていたのではないか?」
「違った道があるのではないか?」
その答えの一例をソローはこの本にあげています。
美しいウォールデン湖のほとり、森での自給自足の生活を通じ、
本当の豊かさ、人生をどういきるべきかを彼は述べています。
神々しいまでの含蓄にあふれた言葉の数々・・・
美しい森の中の風景、朝日、氷の張った湖・・・
今読んでよかったし、これからも読み続けるでしょう。
人生において必読の一冊。 -
一家に一冊をお勧めします。
「人間の第一目的はなにか、生活のほんとうの必要物や手段はなにかといった問題について考えてみるとひとびとはありふれた暮らし方がなによりも気に入ったからこそそれを意図的に選んだかのようにみえる。ところが彼らはそれよりほかに選択の余地がないと思い込んでいるのだ。しかし、注意深くて健康な人間ならば太陽は昇ってすべてをくまなく照らしていたことを忘れはしない。偏見を捨て去るのに遅すぎるということはないのだ。」
私も今からでも遅すぎるということはないと信じて小菅村で生活をはじめました。