白鯨 下 (岩波文庫 赤308-3)

  • 岩波書店 (2004年12月16日発売)
3.71
  • (55)
  • (54)
  • (89)
  • (11)
  • (2)
本棚登録 : 1261
感想 : 79
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (380ページ) / ISBN・EAN: 9784003230831

みんなの感想まとめ

この作品は、深いテーマと豊かな描写を通じて、人生や人間の業について考えさせる力を持っています。エイハブ船長や航海士たちの生き様は、死を恐れず情熱を持って突き進む姿勢を描き出し、読者に自らの命を何に捧げ...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 下巻
    そろそろモービィ・ディックを追いかけないと最終巻だよ!…などという読者の思いはどこへ吹く風、相変わらずの鯨語り(笑)。
    上中巻でさんざん鯨語りしたから下巻では物語が進むかと思ったら、まだまだ作者は語り足りなかったらしいく、もっと語るぞ!という決意表明?までしている。
    「わたしは鯨に関する研究に労を惜しまない人間だ。わたしは鯨のもっと深い所を読者にお目に掛けよう。ところでイシュメールよ、一介のボート漕ぎにすぎないお前がそんなことができるのかね?」などと自問自答しているし、「鯨の血液内の細胞さえ見逃さないぞ!」「壮大な本を書くためには壮大な主題を選ばねばならない、それが鯨だ!」「鯨を考古学化石学地学的に考えるんだ!その思想が及ぶあまりの広範囲無限性に気が遠くなりそうだ」などと目標が大きすぎるんだかやり過ぎなんだかよく分からなくなってきている(笑)


    多様される比喩隠喩などは後書の解説を頼りながら読み進める。この解説がかなり詳しい。本文でメルヴィルが鯨をあらゆる角度から鯨を調べて読者に語ろうとしているように、解説者は「白鯨」という作品自体を分析して読者に示そうとしている。
    この解説によると、「白鯨」はメルヴィルが書いては出版社に送り、すぐ印刷に掛け、売り出さらた、ということ。
    ということはあの鯨語りはほぼ推敲無しの書き下ろしか、すごいな。たまに辻褄が合わなかったり、結末がはっきりしないことがあるも、推敲無しならしょうがあるまい。

    ピークォド号は日本近海にも来たらしい。「閉ざされた国日本」となんだそうだ。このころ日本は鎖国中なんだからしょーがないじゃん。アメリカはこの後油を取るための捕鯨船の補給場所として日本に開国を迫るわけですね。
    なお、日本列島のことが「ニホン・マツマイ・シコケ」と記載されていた。解説だと「本州・北海道・四国」のことだそうだ。ということは「マツマイ」って松前藩か!そして九州は地図に無いのか?!

    ピークオッド号は相変わらず白鯨モービィ・ディックに執念を燃やすエイハブ船長とそれに従わざるを得ない船員達。
    第一航海士で良識派のスターバックはたまりかねてエイハブ船長殺害を目論んだりする。しかしスターバックは引き金を弾けない。
    スターバックにはエイハブに「私にではなく、あなた自身に気を付けなさい」などと警告を送る。
    エイハブはその言葉を噛み締め、自分には白鯨を追う以外の人生もあるのかと迷ったりもする。そんなエイハブをさらに人間の情で説得しようとするスターバック。
    しかしエイハブをエイハブたらしめているのはやはりモービィ・ディックへの執念であった。

    ピークオッド号と行き会う船として、他の船の話も出てくる。
    ユングフラフ号は、鯨が取れずに自船の灯油さえ全くなくなり、ピークオッド号に無心に来る。この船の船長は俗物として書かれている。
    サミュエル・エンダビー号の船長は、白鯨のせいで腕を失くし、鯨の骨で義手を作っている。義足のエイハブとは、義手と義足で握手を交わした。ただしエイハブ船長とは違い、白鯨モビー・ディック個体への復讐心は全くない。
    レイチェル号との出逢いは印象的。エイハブが「白鯨を見たか?」と問うと「見た。そちらは漂流中の捕鯨ボートを見たか?」と問い返してくる。モービィ・ディックを拿捕しようとして行方不明となったその救命ボートには船長の息子が乗っているという。協力を求めるレイチェル号に対してエイハブは冷たく言い放つ。「わたしはモービィ・ディックを追うことが目的だ。今こうしていることすら時間を無駄にしている」

    ついにピークオッド号は白鯨モービィ・ディックに追いつき、3日間に渡る死闘が行われる。
    エイハブ船長は、最後まで自分を説得しようとするスターバックの心の気高さを認めて「自分と心中することはない」とピークオッド号に残し、自分はボートに乗りこむ。エイハブが持つのは、3人の異国人銛打ち達の血を浸したという特別作りの銛。
    年老いて人間たちに銛を打たれ続けてさすがに衰えを見せるモービィ・ディックは、鯨でありながらもピークオッド号に攻撃の意思をもって迫ってくる。
    引き裂かれるボート、折られる船の柱、打ち破られる船首。
    銛に付けられた紐がエイハブ船長を海へと引きずり込み、スターバックたちの乗るピークオッド号本船も…
    …原作はあんがいあっさりしている。昔見たグレゴリー・ペックの映画では、白鯨から船員たちを死に向かい手招きするエイハブ船長の姿、主要人物の最期の描写などかなり劇的だったんだけどな。

    劇は終わりぬ。では何故にここに登場する者がいるのか?-ただひとり難を逃れて生還せし者がいたが故なり。

    ピークオッド号と白鯨モービィ・ディックの闘いの一部始終を見て、それが終わった後にこうして語っているイシュメールが助かったのは、かつて熱病を発した”心の友、高貴なる野蛮人”クイークエグが死期を悟って作らせた棺桶をボート代わりにして海を漂い、二日後に漂流者として助けられたからであった。

  • 2ヶ月かかった。この本に出会わなければ、私が鯨や捕鯨船に興味をもつことはまずなかっただろう。メルヴィルの描写の力強さ。白鯨を追ったエイハブ船長、スターバック、スタッブといった航海士、クイークェグの生き方から、私は何を感じるべきなのか。今はまだ圧倒されるばかりで。死をも恐れずに突き進み、生ききった男エイハブ。こんな肯定的な見方をすべきではないのだろうけど、それも1つの生き方だ。私は何にこの命を捧げよう。何に対してなら、豪雨にも消せない燃え上がる情熱を生み出すことができるだろう。
    白鯨には、聖書の引用や世界中の名称が数多く登場する。私はまだまだ世界を知らなすぎる。自分の目で、耳で、肌で感じたい。そしてもう一度この物語を読んでみたい。

  • 上巻中巻と読んできて、作者の熱い思いは十分伝わってきていたが、104章でそれを自白していて面白かった。「よそ目にはごく平凡にしか見えない主題でも、それが自分の主題となると精神が高揚して熱っぽくなる物書きがいるものである。それでは、このレヴィヤタンについて書いているわたしのごときはどうなるか?無意識のうちにわたしの書く字はプラカードの大文字なみに大きくなる。われにコンドルの羽ペンをあたえよ!インクスタンドとしてヴェスヴィアス火山の噴火口をあたえよ!」ところどころでテンションが振り切れて暑苦しさを隠せないメルヴィル。人間味があります。
    そして満を持して白鯨の登場。フェダラーは最後まで不可解な存在だった。まるで死神のような。こいつがピークオッド号に乗り込んだ時から、船の運命は決まっていたのかな。エイハブがスターバックを想って本船に残すのに、最後には本船も沈められてしまうのが悲しい…。
    これはフィクションだけれども、古今東西海には小説顔負けの様々なドラマがあったことだろう。昔の人は保障なんて何もないのに海へ出たんだから、人間の冒険心や探求心ってすごいなぁ。

  • 自らの教養の無さ・理解力の欠如に起因するこの豊饒な作品への理解不足によって★を一つ下げただけで、この作品には★を幾つ付けても足りない。
    単にストーリーを語って読ませる今時の小説ではなく、ヨーロッパ文化が多面的に発現した学術書として真摯に対峙すべきだと思う。
    物語を紡いでいる気は作者自身も毛頭ないだろうことは、唐突かつ延々と続く「鯨学」の披露でも明らか。
    鯨を人間の業の象徴と見立てた様々な角度からの「文明」考察と見るのが正解だろう。
    しかしこの作品がヨーロッパではないヨーロッパ系の国アメリカから生み出されたことは奇跡なんだろうな。

  • ここまで来てあっという間に終わるなあと思った

  • ここまでついてきた読者へのご褒美のような面白さ。恐怖も興奮も無常感も全部載せ。そして相も変わらず怒涛のボリュームでお送りされる鯨の知識知識!読者がエピローグを読み終える度に新たな鯨博士が誕生するのだ。夏休みにおすすめ!爽やかさとは程遠い閉塞感のある海の旅を楽しめる。「閉塞感」と表現してしまったが、『87章、無敵艦隊』のような心温まる章もあるよ!!

  • やっと読了。
    とにかく長くて、解説によると連載ではなく一気に書き上げたようなので、それだけですごい体力だと思うので☆5です。(笑)

    もういっその事、白鯨にいつまでも出会わないで永遠に探し求めていてくれてもいいと思った。血なまぐさい捕鯨または人の命が海で失われるシーンに耐えられない危惧もあって。
    予想に反してあっけなくエイハブも拝火教徒もスターバックも忽然といなくなってしまった。そんな風に海上での最後は無情のなのかもしれない。

    立体的に船の様子や漁のシーンなど私の脳の働きが悪くよくわからないで読んでいた部分もあるが、鯨学も含め、この作家はとてもユーモアのセンスにあふれ、そして戦闘的で怖いもの知らずな文章を書いていたのだなと感心し、同性愛的な描写など、果敢に表現していて、それなのにイシュメール以外は誰一人助からないのにお涙頂戴のシーンもなく、案外、すごすぎる惨事の前にはそんな風にしかならないのかもなぁ。
    これはやはり芸術だと思う。

    棺桶の下りなどそこかしこに日本的?に言うなら縁起の悪い象徴が出現し、解説を読んでいて思い出したけれど、「たいていの手紙は目的の人物にとどくことはない」というのがその後に書かれた「バートルビー」を思わせ、さらに加え、この船の乗組員の多様性に当時のアメリカ白人でプロテスタントにはない、どこか日本人がクリスマスも祝い、神前で結婚し、最後は仏式で送られるような感覚を持っていると感じさせられた。だからこそ当時のアメリカではあまり売れなかったのだろう。
    ちょっとレビューとは言えないけれど、こんな長い小説を読んだなんて自分をほめたい。

  • 【白鯨】
    後学のためになんとなく読んでしまう、教養読書シリーズ。
    エイハブ船長が私怨を晴らすため、モービィ・ディックを捕らえるための航海に出る。捕鯨船乗組員たちは興味ないが、だんだんと船長の狂気に巻き込まれていくことに。
    古い本て行動や心情の変化を(現代の視点で見ると?)無駄に細かく描写するとこあると思ってて、この本も例に漏れず同じ書き方。しかも捕鯨や鯨に関するミニ知識の章がかなりの頻度で現れては、物語の加速感をブッツリ。断ち切るんだけど、物語よりそちらの方が面白かったりして何読んでるか分かんなくなる読書だった。
    #読書 #小説 #世界の十大小説 #岩波文庫

  • 中巻に続いて大丈夫かってくらいありとあらゆる捕鯨について語りまくられる下巻、ですがやはりモービィ・ディックを発見してからのクライマックスはものすごい迫力です。追う側も、それに対抗する白鯨も迫真迫る息つけない勝負…。狂信的に白鯨を追うエイハブ船長の印象がもちろん強いですが、それに唯一反論を試みる冷静沈着な一等航海士スターバックが涙を流しエイハブの鯨との心中の予感を悲しむところなど、彼の今までの行動(エイハブを一瞬船のために殺そうと思ったこと)などを思い、男達の物語に胸が熱くなりました。劇的な幕切れでそこはベラベラ語り続けることなく口をさっと噤むあたりも文がうますぎる。古典的エンタテインメント。面白かった。

  • ラストシーンで思い出したのはジョジョの一部のラスト、あのシーンも棺桶で生かされるというメタファーがとても印象に残っていたのですが、この白鯨もそのような暗喩がありました。
    しかもその棺桶は主人公の親友のクイークェグのもの。
    分厚い三冊の上中下の冒険の物語は、終盤突然白鯨とぶつかり、あっさりと終わってしまいました。
    粗削りな男が書いた男の物語なんだけど、どこかねちっこい感じが離れないなあ、と思っていたのですが、解説でイギリスではエピローグがない白鯨が発売されたと書いてあり、あの二ページのエピローグがなかった場合の事を考えた。
    エイハブの怨念、鯨学、不吉な予兆、水夫たちのやりとり、重みを感じる長いページの末に船が沈没したところで終えるのも男らしくていいのかもしれない。滲み出る女々しさを払しょくしてくれる潔さがあるように思える。

    三冊読み終えて、あの鯨の雑学やページ数を考えると、とてもすらすらと読めたように思えます。
    偏に目標がしっかりと定まっていたからだと思います。
    エイハブの怨念、そして白鯨への憎悪。これがこの物語の全てと言ってもいいと思うくらい。

    エピローグ。棺桶で漂流したイシュメールはレイチェル号の息子への女々しい希望によって助けられた。
    男らしい物語だと今まで思っていたのですが、実際は違うのかなと読み終えて感じました。

  • 見よ、神々がすべて善で、人間がすべて悪だと信ずる者たちよ。おお、見るがよい、全能の神々が悩める人間を忘却しているというのに、人間は、白痴なりとはいえ、またなすべきことを知らぬとはいえ、なおほのぼのとした慈愛と感謝の気持にみちあふれているのだ。わしは皇帝の手をとったこともあるが、おぬしの黒い手をとって引いてゆくことのほうがはるかに誇らしく思うぞ!

  • 三部作と長かった割にはあっさり終わってしまったなあ、と。肝心の白鯨の戦いは下巻になってから、しかも下巻後半からというね。とはいえ予想通り白鯨との闘いは面白かった。
    エイハブに巻き込まれた乗組員たちには同情してしまうし、白鯨に取り憑かれたエイハブは哀れだと思う。

    名作と呼ばれるのも理解できるし、読んだ意味もあったとは思う。ただ私の知識不足と理解力の問題でこの作品の面白さを十分に享受できなかったとも思う。また機会があれば再読したいと思えるぐらいには面白く思えたことだけが救い。

  • 読了。残り70頁でようやく白鯨と対決することになる。エイハブは乗組員の生命に対する船長としての責任感を打ち捨てて自分の狂気と傲慢によって船ごと自滅していったようなものだ。そこには、映画『アバター』シリーズに至るまでの自然と文明との対立と文明の敗北というテーマが表れていると思う。しかし、この物語を追うメルヴィルの筆致も、白鯨を追うエイハブと軌を一にするかのごとくに、それは狂気なのか、才気なのかを判別しがたいほどに上下左右に大きく揺れて航行してきた。メルヴィルもエイハブとともに海の底に沈んだのだろうか。

  • 有名な古典なので展開は分かっていましたが、人物紹介で滅茶苦茶ネタバレしてるのは驚きました。しかし、途中で捕鯨や鯨に関する解説が高頻度で入るので(なんならそっちの方が分量多いのではないかと思うほどです)、むしろ先の展開を知っていたほうがストレスなく読める作品だとは思います。

  • 面白かった。
    船に乗るまでは語り部として明確にこちらに物語を伝えていたイシュメールの存在(自我というべきか)がいつのまにか消えほとんど三人称の小説のようになっているのに時折思い出したように「わたし」が戻ってくるところなどそれこそまさに浮き上がっては沈む鯨のようで、おそらくはそのような広い意味でも鯨が主人公の小説なのだろうな、と感じた。
    序盤の陸上での物語の中のイシュメールとクィークェグの友情(というには描写が濃すぎないかと思ったが、実際同性愛関係として見られている向きもあるらしい)、エイハブの己の狂気を自覚してなお止まらぬ狂気的な復讐心、そしてそれらを全て押し流すように、いとも簡単に何もかもを海に沈めてしまう圧倒的な白い鯨。
    いかんせん有名な古典なので事前にオチだけは知ってしまっていた状態で読んだのだが、知っている分余計にそこに向かって行かざるを得なくなるエイハブの恐ろしさやある種強さ、まっすぐさとも言える何かに圧倒されてぞっとしたし、途中の脱線もとい鯨についての数多の考察も含めて最初から決まっている終わりに向かうものとして見ても楽しかった。
    とにかく、読む前にこの小説に求めていたものである「圧倒的な力になす術のない人間、その無常感」は得られたので大変満足しています。
    最初に求めた以上の様々な発見や楽しみがある、これだから本を買い漁るのがやめられないんだな……自分は……

    あとめちゃくちゃ注釈が多くて最初はちょっと引いたのですが、キリスト教や当時の時代背景への知識が薄い人間なので全体への理解にかなり助かりました。挿絵も含め、岩波文庫版、オススメです。

    頻出するト書きや大仰な長台詞が個人的にとても良かったので、今の時代に演劇として観られる機会が来るといいな。

  • 解説を読んでから、また読み直したくなった。
    モービィ・ディックとは何だったのか、それは白人の魂そのものである。普段は大きな姿で悠々と泳ぐ鯨が、一度攻撃されると狡猾で凄まじい反撃に出る…
    物語のキーアイテムが実は輪廻の輪の中で繋がっていて、第一章に戻るというのも面白い。思わずポイントの文章を見返してしまう…アクロイド殺し以来の動きをしてしまった。

    この小説の良さが分かりきらなかったのか、
    モームの『世界十大小説』でも読んで再勉強してこようと思う

  • 2.3

  • 最高傑作。読みやすいし、あまりにドキドキハラハラで鯨の説明も面白い。すぐ読める!

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=41352

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA68281506

全60件中 1 - 20件を表示

八木敏雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×