人間とは何か (岩波文庫)

制作 : Mark Twain  中野 好夫 
  • 岩波書店 (1973年6月18日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003231135

作品紹介・あらすじ

人生に幻滅している老人は、青年にむかって、人間の自由意志を否定し、「人間が全く環境に支配されながら自己中心の欲望で動く機械にすぎない」ことを論証する。人間社会の理想と、現実に存在する利己心とを対置させつつ、マーク・トウェイン(1835‐1910)はそのペシミスティックな人間観に読者をひきこんでゆく。当初匿名で発表された晩年の対話体評論。

人間とは何か (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 人間とは何かという仰々しいタイトルに反して対話形式でとても読み易く、それでいて人間の本質を突いている。
    老人の主張は一貫している。
    「人は自分の良心を安定させるためにのみ行動する」また「人の良心は、生来の気質と後天的な教育、訓練から得た知識や印象、感情の断片の集合体であり、人はこの主に従う出力機でしかない」というもの。
    これは僕自身も常々感じていたことだ。青年は終始それでは人間の価値が下がってしまう、救いがないということを言うが、全くナンセンスだ。価値が下がると感じるのは、ホモサピエンスという少しばかり賢い猿を実際より過大に評価していたにすぎない。著者はまた、偉大な人間、誇り高い人間は嘘の衣装を自慢しているだけだと貶める。つまり銅人間も炭素人間も金人間も、己の生得の原石を磨こうと理想をもち、訓練なり努力なりをしている限りにおいては、人はみな等価値である。そう主張しているのではないか。
    この老人は人間を貶める、冷たく、嫌な人間では決してない。長年の観察と検証から発見した事実を言っているのだ。その事実は、確かにある面では残酷で、批判的かもしれない。だがまたある面ではとても公平であり、人を勇気づける代物なのだ。
    本書は、少なくとも僕にとっては希望の書であり、ある種の救いとなった。
    ありがとうトウェイン。

  •  個人的に何度も読み直したいと思った本。


     例えばです。
     私の身の回りにはもう亡くなった人も含め、何人か認知症を患っていました。

     そのとき、「日常生活でできなくなってしまったこと」が数多くある中でさえ、人を選んで攻撃をする姿を幾人も目にしました。

     大体、人により、(八つ当たりなど)攻撃する対象は限られてるのですよね。弱者に向かう。もちろん当人が一番の弱者なわけですが、当人が元気だった頃の認識で弱者と思われる人間が攻撃対象になる。強い人間にはあまり向かわない。


     わたし、何となく見ていたり、その対象になったりして、
     「あぁ、自分に対する弱者強者を見分ける力って、結構人間の根源的な能力なんだなぁ。」なんて思っている。


     そこで、いかにうまく取り繕おうとして、勉強したり訓練したりしたところで、


     そんな努力なかったかのように身包みはがされる。


     それが、人間の性質なんであろうとすると、


     自分の性質は、決して素晴らしいものとは言えない。本当に。

     今までひたかくしにしているものが、いつしか決壊して漏れ出る可能性を考えると、

     自分の性質ってやつについてよく考える。

     まだよく見えていない部分も多いのだけど、

     せめて「そんなにひどくない」くらいだったらありがたいのですが…。

  • 厭世的な老人と青年による対話形式の小説。
    小説ではあるが多分に著者の思想が反映されているため、哲学書に近い。

    人間とは、
    ・自身の平安のためなら殺人も厭わない本質
    ・自由意思は存在しない
    ・外界からの作用による集合体

    ここまで醒めた目線で人間を捉えられるのかと驚いた。
    若者に読ませると斜に構えただけの人生になると思う。
    あとがきに、トウェインの妻や娘はこれを最初に読んだ時非常に驚いたとあるが、誰だって身内の人間がこんな本書いてたら驚く。

  • もっと難しいと思っていたけど
    わりと楽しく読めました。
    なんだか頑固なおじいさんに
    延々と話を聞かされた気分(´・ω・`)←
    おじいさんの理論は
    妙に説得力があって、
    あーなるほど……と思っちゃうんですが、なんか完全には納得できない…
    反論できるほどの
    頭がないので、言葉にできません(笑)

  • トム・ソーヤの冒険等でお馴染みの作者が、人間の自由意志を否定し人間とは外的要因によってのみ動く機械的なものだと説いたもの。老人(=マークトゥエイン)と青年の対話形式で話は進む。岩波文庫の赤かぁ・・・と敬遠することなかれ。そこまで分厚くないし、和訳ものにありがちな難しい言葉もないのですらすら読めると思われる。
    人間と動物も複雑さは違いこそすれ、もとのメカニズムとしては同じだと老人が説いた時の青年の怒りの反応には「?」と思った。しかしキリスト教では人間は他の動物より高等なものとして位置付けていると思えば、青年の反応はもっともかもしれない。キリスト教のその辺りがわからないと青年の怒りだとか老人の嘆きだとか、そもそもこの本が書かれた意義だとかがわからず終わるのかなとも思う。
    要は日本のように無宗教で生まれ育った人はふーん、とかへぇ、とか当然でしょ?とかの感想で済む(実際、概ね私が昔から考えていたとおりのことが書いてある)が、キリスト教の人が読むとこれは全世界を揺るがす大問題作ともなったのだろう。

  • 『トム・ソーヤーの冒険』などの作品で知られるアメリカの作家、マーク・トウェイン。
    少年時代にこの方の小説世界に触れて、ミシシッピー川という川の名前を知った、という記憶があります。
    そのマーク・トウェインが、『人間とは何か』という題名で、人間の本質について書いた文章を残していると知り、書店で探して読んでみることにしました。
    老人と青年が対話する形で、書かれています。
    その老人が教え諭す話というのが、人間とはどのような存在なのか、ということ。
    自分なりの理解を、以下に要約します。
    ・人間は自分自身の安心感を求めて行動する
    ・人間の考え、行動は、それまでに得た情報、経験により左右される
    ・上記のような理由で、人間は他の動物たちと比べて大きな差はない
    そのような老人の主張に対して若者が反論しますが、老人によりことごとく論破されてしまう、という内容になっています。
    訳者による”あとがき”によると、本書はマーク・トウェインが60歳前後に書かれたようです。
    人生の終盤をむかえ悲しい出来事が続いたことにより、悲観的な人生観を持つようになった、という背景があるとのこと。
    ただこの作品で書かれていることは、人間の本質を理解する上で、重要な視点だなあと、感じました。
    このような考え方があると知っていることによって、逆に、他人の行動、振る舞いに対する怒りを抑えられるかもしれないなと、感じました。
    著者のイメージが変わるという意味で刺激は強い作品ですが、人間とは何か、自分はどのような行動原理で生きているか、考えさせてもらえた一冊でした。

  • 利他主義論者は、これを克服できるか。
    個人的に、人間観は「老人」!=「トウェイン」という気がするのも興味深い

  •  一見ようわからぬ問答集かと思いきや、深淵なる人間機械論のダイジェスト版とも取れる、哲学書であった。老人のような境地に至れば、ある意味楽になるだろう。一方で青年のような青臭い思考も維持したい。結局ようわからんというところで。渋い訳もまた妙なるものがあった。

  • マークトウェインが考える人間の本質をストレートに表現したこの作品。
    衝撃的な内容!ではなくなったのは時代のせいでだろうか。最近ではこの手の本はよく見かけるし、”嫌われる勇気”もシンプルに本質的なことをストレートに伝え、それを青年と老人が議論していくという表現の仕方は非常に似ていたな(いわゆるソクラテス式問答)と読みながら思った。

    とても理解しやすかったし、思い当たる反論もないので、素直に受け入れるべき内容なのかなと思ってしまった。
    特に人間の欲=精神欲を満たすために行動しているという点で、今の時代、これまでの物質面重視から精神面重視に移り変わろうとしているけど、結局は精神欲を満たそうとしているだけなんだなと。

    人間の欲を満たすため、精神面に重きを置いてそれを楽しむ人生もあり、またお金や物への物質的欲を満たしながら精神欲を満たす人生もあり。決してどちらがどうこうという問題ではない。その点は理解しておいたほうがよさそうだ。社会の中では、欲の満たし方が違うグループ同士は、お互いにあまり尊敬はしてなさそうだけど、やっていることは一緒という点。この理解はみんな持っておくべきかなと思う。

    また人間の本質はシンプルかもしれないが、人間それ自身や、人間が住む社会はもう少し複雑だ。シンプルな本質を理解したからといって、シンプルに行動するのは大変危険。こういったシンプルな考えが人間の行動の根幹にある(可能性がある)というは知識として持っておき、その上で複雑な社会の中で自分らしく生きていくことが大切なんだろうと思う。

    あとは、その上で”せっせと自らの理想を向上するように努める”だけかなと。

  • 【人間は自分をまず第一に考えてる】
    人間の他人に対する善意な行為も含め、すべては自分を満たすために行われている。つまり、人間は誰もが自分中心で生きているのだと、かなりペシミスティックに「人間」というものを捉えているのがマーク・トウェインという人物である。

    しかし、この考え方には私は大いに賛成であり、そうだと思う。

    「まず君の理想をより高く、さらにより高くするように務めることだな。そしてその行き着くところは、みずからを満足させると同時に、隣人たちや、ひろく社会にも善をなすといった行為、そうした行為の中に君自身まず最大の喜びを見出すという境地を志すことさ。」

    という彼の言葉は、「自分中心でいいじゃないか。自分を満たしたら次は隣人や社会を幸せにすれば」という突き抜けているというか、開き直った考え方である。

    偽善だなんだとたまに世間で話題になることあるけれど、彼の考え方を皆が認めれば、一件落着ではないかと思う。

    ただ、本の最後に「あなたの考え方は有害ですよ」ということを青年が述べるところみると、マーク・トウェイン自身も自分の考え方が極端であり、他人から非難を浴びることは承知の上だったのだろう。

    最後に彼の人間性というか、「でもみんな受け入れてくれないんだろ」っていう拗ねている感じが出て、私は少し笑った。

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