人間とは何か (岩波文庫)

制作 : Mark Twain  中野 好夫 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 590
レビュー : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003231135

作品紹介・あらすじ

人生に幻滅している老人は、青年にむかって、人間の自由意志を否定し、「人間が全く環境に支配されながら自己中心の欲望で動く機械にすぎない」ことを論証する。人間社会の理想と、現実に存在する利己心とを対置させつつ、マーク・トウェイン(1835‐1910)はそのペシミスティックな人間観に読者をひきこんでゆく。当初匿名で発表された晩年の対話体評論。

感想・レビュー・書評

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  • 人間とは何かという仰々しいタイトルに反して対話形式でとても読み易く、それでいて人間の本質を突いている。
    老人の主張は一貫している。
    「人は自分の良心を安定させるためにのみ行動する」また「人の良心は、生来の気質と後天的な教育、訓練から得た知識や印象、感情の断片の集合体であり、人はこの主に従う出力機でしかない」というもの。
    これは僕自身も常々感じていたことだ。青年は終始それでは人間の価値が下がってしまう、救いがないということを言うが、全くナンセンスだ。価値が下がると感じるのは、ホモサピエンスという少しばかり賢い猿を実際より過大に評価していたにすぎない。著者はまた、偉大な人間、誇り高い人間は嘘の衣装を自慢しているだけだと貶める。つまり銅人間も炭素人間も金人間も、己の生得の原石を磨こうと理想をもち、訓練なり努力なりをしている限りにおいては、人はみな等価値である。そう主張しているのではないか。
    この老人は人間を貶める、冷たく、嫌な人間では決してない。長年の観察と検証から発見した事実を言っているのだ。その事実は、確かにある面では残酷で、批判的かもしれない。だがまたある面ではとても公平であり、人を勇気づける代物なのだ。
    本書は、少なくとも僕にとっては希望の書であり、ある種の救いとなった。
    ありがとうトウェイン。

  •  個人的に何度も読み直したいと思った本。


     例えばです。
     私の身の回りにはもう亡くなった人も含め、何人か認知症を患っていました。

     そのとき、「日常生活でできなくなってしまったこと」が数多くある中でさえ、人を選んで攻撃をする姿を幾人も目にしました。

     大体、人により、(八つ当たりなど)攻撃する対象は限られてるのですよね。弱者に向かう。もちろん当人が一番の弱者なわけですが、当人が元気だった頃の認識で弱者と思われる人間が攻撃対象になる。強い人間にはあまり向かわない。


     わたし、何となく見ていたり、その対象になったりして、
     「あぁ、自分に対する弱者強者を見分ける力って、結構人間の根源的な能力なんだなぁ。」なんて思っている。


     そこで、いかにうまく取り繕おうとして、勉強したり訓練したりしたところで、


     そんな努力なかったかのように身包みはがされる。


     それが、人間の性質なんであろうとすると、


     自分の性質は、決して素晴らしいものとは言えない。本当に。

     今までひたかくしにしているものが、いつしか決壊して漏れ出る可能性を考えると、

     自分の性質ってやつについてよく考える。

     まだよく見えていない部分も多いのだけど、

     せめて「そんなにひどくない」くらいだったらありがたいのですが…。

  • 難しい。難しいけど面白かった。最近なぜか古典を読みたくなって前から名言などでよく名前を見かけて気になっていたマークトウェインの本を読んだ。全般に渡ってペシミズム(悲観主義)で全面的に賛同するというわけではないが、完全に否定することは出来ないなという感じ。確かに自分も何も考えようとしなくても勝手に何か考えついていつのまにかその考えが頭を支配している。ただでも100%そうかと言われると…ンンンとなってしまう。この辺りはまた時間を置いて改めて読んでみたときの為にとっておきたい。とにかく今は読み終えて面白かった。というのとマークトウェインってどんな顔してるんやろということとハックルベリーフィンの冒険も読んでみようということ。100年前に書かれたとは思えないほど現代的な文章、訳し方によるのかもやけど。

  • 厭世的な老人と青年による対話形式の小説。
    小説ではあるが多分に著者の思想が反映されているため、哲学書に近い。

    人間とは、
    ・自身の平安のためなら殺人も厭わない本質
    ・自由意思は存在しない
    ・外界からの作用による集合体

    ここまで醒めた目線で人間を捉えられるのかと驚いた。
    若者に読ませると斜に構えただけの人生になると思う。
    あとがきに、トウェインの妻や娘はこれを最初に読んだ時非常に驚いたとあるが、誰だって身内の人間がこんな本書いてたら驚く。

  • もっと難しいと思っていたけど
    わりと楽しく読めました。
    なんだか頑固なおじいさんに
    延々と話を聞かされた気分(´・ω・`)←
    おじいさんの理論は
    妙に説得力があって、
    あーなるほど……と思っちゃうんですが、なんか完全には納得できない…
    反論できるほどの
    頭がないので、言葉にできません(笑)

  • 人間に対する深い不信感。
    『不思議な少年』と併せて読んだ。

  • ここまで人間を悪しざまに書かれちゃあ、逆にすっきりしますね。

  • 人間が何かってことは、すべてそのつくりと、遺伝性、生息地、交際関係など、その上にもたらされる外敵力の結果。みずから創り出すものなんでなんにもない。
    心を支配する力は人間にはない。
    義務はなにも義務だからやるってものではない。それを怠ることが、その人間を不安にさせるからやるに過ぎない。人間の行動は唯一最大の動機、まず自分自身の安心感、心の慰めを求めるという以外にはない。善人も悪人もつまるところ心の満足を得るために必死になっているにすぎない。
    人間は自発的にやることはできない。その生息地、人間関係を変えればいい。
    気質(生まれながらにもっている性質)はいくら教育しても抹殺できない。ただ元々の気質が少しでも関心を持っている事柄は長年の外力によって影響を受け、さらには行動を変えてしまう。行動はそれが起きた瞬間の外力の結果ではなく、長年積み重なった外力の結果。
    本能は石化した思考。習慣によって固形化し、かつては思考していたものがいつのまにか無意識になったもの。

  • トム・ソーヤの冒険等でお馴染みの作者が、人間の自由意志を否定し人間とは外的要因によってのみ動く機械的なものだと説いたもの。老人(=マークトゥエイン)と青年の対話形式で話は進む。岩波文庫の赤かぁ・・・と敬遠することなかれ。そこまで分厚くないし、和訳ものにありがちな難しい言葉もないのですらすら読めると思われる。
    人間と動物も複雑さは違いこそすれ、もとのメカニズムとしては同じだと老人が説いた時の青年の怒りの反応には「?」と思った。しかしキリスト教では人間は他の動物より高等なものとして位置付けていると思えば、青年の反応はもっともかもしれない。キリスト教のその辺りがわからないと青年の怒りだとか老人の嘆きだとか、そもそもこの本が書かれた意義だとかがわからず終わるのかなとも思う。
    要は日本のように無宗教で生まれ育った人はふーん、とかへぇ、とか当然でしょ?とかの感想で済む(実際、概ね私が昔から考えていたとおりのことが書いてある)が、キリスト教の人が読むとこれは全世界を揺るがす大問題作ともなったのだろう。

  • 『トム・ソーヤーの冒険』などの作品で知られるアメリカの作家、マーク・トウェイン。
    少年時代にこの方の小説世界に触れて、ミシシッピー川という川の名前を知った、という記憶があります。

    そのマーク・トウェインが、『人間とは何か』という題名で、人間の本質について書いた文章を残していると知り、書店で探して読んでみることにしました。

    老人と青年が対話する形で、書かれています。
    その老人が教え諭す話というのが、人間とはどのような存在なのか、ということ。

    自分なりの理解を、以下に要約します。
    ・人間は自分自身の安心感を求めて行動する
    ・人間の考え、行動は、それまでに得た情報、経験により左右される
    ・上記のような理由で、人間は他の動物たちと比べて大きな差はない

    そのような老人の主張に対して若者が反論しますが、老人によりことごとく論破されてしまう、という内容になっています。

    訳者による”あとがき”によると、本書はマーク・トウェインが60歳前後に書いた、作品のようです。
    人生の終盤をむかえ悲しい出来事が続いたことにより、悲観的な人生観を持つようになった、という背景があるとのこと。

    ただこの作品で書かれていることは、人間の本質を理解する上で、重要な視点だなあと、感じました。
    このような考え方があると知っていることによって、逆に、他人の行動、振る舞いに対する怒りを抑えられるかもしれないなと、感じました。

    著者のイメージが変わるという意味で刺激は強い作品ですが、人間とは何か、自分はどのような行動原理で生きているか、考えさせてもらえた一冊でした。
     .

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著者プロフィール

Mark Twain, 1835―1910
アメリカ合衆国の小説家。ミズーリ州フロリダ生まれ、同州ハンニバルで育つ。本名サミュエル・ラングホーン・クレメンズ(Samuel Langhorne Clemens)。西部・南部・中西部の庶民が使う口語を駆使した作品によってその後のアメリカ文学に大きな影響を与えた。『トム・ソーヤーの冒険』(1876年)のほか数多くの小説や随筆を発表、世界各地で講演も行ない、当時最大の著名人の一人となる。無学の少年ハックルベリー・フィン自身の言葉で語られる『ハックルベリー・フィンの冒けん』(イギリス版1884年、アメリカ版1885年)はなかでも傑作とされ、アーネスト・ヘミングウェイは『アフリカの緑の丘』で「今日のアメリカ文学はすべてマーク・トウェインのハックルベリー・フィンという一冊の本から出ている」と評した。

「2017年 『ハックルベリー・フィンの冒けん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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