ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)

制作 : Mark Twain  西田 実 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 504
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003231159

作品紹介・あらすじ

洋々たるミシシッピーの流れに乗って筏の旅を続ける陽気な浮浪児ハックと逃亡奴隷ジム。辺境時代のアメリカの雄大な自然と活力溢れる社会をバックに、何ものにもとらわれずに生きようとする少年と、必死に自由の境涯を求める黒人の姿をユーモラスに描く。

感想・レビュー・書評

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  • Adventures of Huckleberry Finn(1885年、米)。
    どこまでも陽気で陰影のない「トム・ソーヤーの冒険」に比べると、こちらは結構ビターな印象。黒人奴隷の人権問題が絡んできたり、大人の犯罪や紛争に巻き込まれたり…。トムの冒険はファンタジーだが、ハックの冒険は命懸けのサバイバル。一歩間違えば、皮肉めいた重い話になってしまいかねない内容だ。

    しかし、児童文学として耐え得る軽やかさは、かろうじて失われていない。その理由は、ハックの逞しさ、ジムの善良さ、人種を超えた彼等の友情、そして何より、雄大なミシシッピ川の美しい描写のためだろう。ハック達が自由を求めてミシシッピを下る過程は、自由を求めて新天地へ降り立ったアメリカ人にとって象徴的であり、心の原風景なのではないだろうか。ヘミングウェイが本書を「アメリカ文学の源泉」と称したらしいが、さもあらんと頷ける。

    個人的には、ジムを救出する穴を掘る場面での、トムとハックの掛け合いがツボ。ロマンティストで意固地なトムと、リアリストで合理的なハック。その対比が面白くて、何度読んでも笑ってしまう。

  • 『トムソーヤ~』とともに有名な作品。
    だが、この2作品で絶対的に違うのは、主人公の立ち位置。
    トムはいたずら好きだが“子供の範疇”から決して越えず、また、あれこれ文句をいったりもするが当時のアメリカ南部での一般的な考え方(黒人≒奴隷とか)からも外れずに、あくまでも世間という手のひらの上で行動している。
    ハックは設定も浮浪者…自由人というべきか…で、考え方もまた、世間一般のしがらみのない考え方だ。
    逃亡奴隷を通報するべきか、ハックは必死に考える。当時の常識ならば、悩むところではないのだ。言わなきゃいけない。ハックが躊躇しているのは、言えばジムは逃亡奴隷として処罰されるが、そんなことを幇助するのは人間としてどうなのか、という、
    常識>倫理の図式に迎合できず、悩む。

    このテーマの深さがハックルベリフィンの魅力の一つだと思う。

  •  子どもの頃に読んだという方ももう一度読んでみてほしい名作です。十九世紀末当時に流布していたピューリタニズムの偽善、奴隷制度、自然と文明の対立などいろんなテーマが詰まっているのです。最後にハックが地獄に堕ちてやると決心したシーンは感動もの。

  • 【ハックルベリー・フィンの冒険 上・下】
    マーク・トウェイン作、西田実訳、岩波文庫、1977年

    面白かった。

    「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公ホールデンが「20世紀のハックルベリー・フィン」と呼ばれると知って、初めてちゃんと読んでみたが、面白かった。

    作者マーク・トウェインは1835年生まれで、日本で言えば「幕末明治の時代」に生きた人。

    日本で若い志士たちが「黒船襲来」「尊皇攘夷」と立ちまわっていた時代のアメリカで、トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンといった少年たちが見る社会と自然を余すことなく描いた作家。

    本書は浮浪児で自然を愛する主人公ハックフィンは暴力的で怠惰な父親から逃げ、逃亡黒人奴隷のジムと共にミシシッピ川を筏で冒険をする、という話。

    刊行は1855年。6年後に奴隷制度の是非をめぐりのアメリカでは南北戦争が起きる。

    アーネスト・ヘミングウェイが以下のように書いている。
    ーー
    あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する。……すべてのアメリカの作家が、この作品に由来する。この作品以前に、アメリカ文学とアメリカの作家は存在しなかった。この作品以降に、これに匹敵する作品は存在しない。
    ーー

    読み終えたときに、子どもの時にみた映画「スタンド・バイ・ミー」を思い出したのも、そんなに外れていない気がする。(死体が鍵だったり)

    そして、「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」で柴田元幸が、「ハックはまだ下半身が目覚めていない。ホールデンは目覚めかけていてそれをすごく怖がっている。そこの違いは大きいですね。」と語っているのも1776年に独立したアメリカをなにか象徴する気がした。

    2017年の今年は、
    Change! を唱えた初の黒人大統領に代わり
    Make America Great Again! をスローガンにする70歳の実業家が国民により大統領に選ばれた。

    #優読書

  • 訳:西田実、原書名:ADVENTURES OF HUCKLEBERRY FINN(Twain,Mark)

  • 行き帰りの新幹線の中で読んだ。今ごろかよという心の声は無視することにして、アメリカ文学の金字塔と言われるだけのことはあるというのが正直な感想。詳細は後日。

    「嘘の祈りだから叶わないのだ」。

  • 2015.9.4古典的少年文学の傑作であり、トムソーヤの冒険の著者であるマークトウェインの描いた冒険少年の上巻。トムソーヤの冒険の続きから始まり、主人公がハックルベリーになってる。ダグラスおばさんに引き取られたが豊かな生活は窮屈で、その後腐れ親父に拉致られた後は自由だが理不尽に暴力を受ける日々、鋳型にはめられるような裕福からも、暴力とともに得られる自由からも逃げるため、殺されたと見せかけ脱出を図る。おばさんのところから売り飛ばされるのを恐れて逃亡した黒人奴隷のジムと島で出くわし、二人で川を下っていく。実にいろんな人々に出会い、実にいろんなイベントが起こり、まさに冒険物語である。ハックとジムが主な登場人物なのだが、ジムは優れた人格を持つ男性であり、ハックの相棒、信頼できる味方であると同時に、黒人であり奴隷であるという、この独特の立ち位置、ハックとの関係性は、興味深いものがあった。昔の人の人種差別観はこんな感じだったのだろうか(今も人種差別はあると思うが)。トムソーヤの冒険は、言わば木刀とバケツの帽子があればロビンフッドになれるような、そういう冒険だった。少年特有の空想が、日常を冒険に変えていた。しかしハックのは、言葉のままの冒険である。冒険とは非日常であるが、その非日常をそのまま描いているという点で、トムの冒険と比べハックの冒険は"普通の冒険"という風に感じられるのかもしれない。でもトムとはまた違ったキャラクターの魅力もあり、全体的に真面目さというか、トムの快活で弾けるような活躍の代わりに、知恵を使って状況を切り開いていくようなクールな活躍を感じる。またハックにしてもジムにしても、身を引き裂かれるような心の葛藤も描かれており、上巻最後のジムの告白は胸に迫るものがあった。トムの冒険が小学生のそれなら、ハックのは中学生のそれを感じる。しかしまぁあまりグダグダ考えても仕方がない。「この物語に主題を見出さんとする者は告訴さるべし。そこに教訓を見出さんとする者は追放さるべし。そこに筋書きを見出さんとする者は射殺さるべし。」である。そうは言ってもいろいろ理屈をつけたくなっちゃうのは、俺の芸術を楽しむ上での一つの欠点なんだろうなー。下巻も読み進めようと思う。

  • 虐待親から逃げ出すためのハックの「完全犯罪」にびっくり。冒険もたくさん、死体もたくさん。

  •  面白い、なんてものではない。マークトウェインすげー!であります。

     30年ぐらい前に父が読み聞かせしてくれた本の一つ。内容は忘れたけれどトム・ソーヤよりも面白かったという記憶ははっきり持っています。今回子供たちへの読み聞かせに取り寄せてみたら、分厚くて字が小さくてびっくりしました。先に再読したトム・ソーヤの冒険ではトムが利発でハックのそういうところは目立たないこともあり、こちらはもっと牧歌的だったかと少し勘違いしていましたが、とんでもない!アウトドア的なサバイバルに社会的なサバイバルの要素も加わりぎりぎりの物語です。
     物語の構造としてはロードムービーです(。まだ下巻末まで読んでませんので、少なくとも下巻始めまでは)。ハックと逃亡奴隷のジムが筏でミッシシッピー川を下りながら様々な人や事件に遭遇します。たぶんどのエピソードも完全な創作というより、似たようなことがマークトウェインの身辺で実際にあったんだろうと思いながら読みました。家が流れてきて中に死体がころがっていたとか、うまいこと言って金を集めるペテン師とか、殺し合いをしてる二つの家系とかきっとこの頃にはあったんだろうなと思います。子供たちにとっては、いや僕にとっても人種差別や奴隷制度やリンチやペテンが驚きでした。現代はもはやオバマ大統領の時代ですからね。(世界にまだ人種差別が残っていることは子供に伝えておきました。)
     文体はハックの語りなので崩れた口語だし、ユーモアや冒険が物語を牽引するので、読んでみるととても読みやすいです。子供たちも難なくついてこられます。しかし、マークトウェインは「トム・ソーヤの冒険」よりも真面目に書いてるという印象を僕は持ちました。トム・ソーヤではごてごてしたレトリックが利いていました。こちらはハックの語りで、基本的に必死で生き延びてるところがあるのでそんな贅沢なおふざけの余裕も趣味もありません。ハックには本人が大真面目だからこそのユーモアがあります。
     本書の何がすごいかと言うと、1885年に初版が出たという超古典なのに、訳だって40年前なのに、古すぎてわからないとか楽しめないという部分がほとんどないということです。シェイクスピアと聖書の引用だけぴんと来ませんでしたが、それだって古いからというより僕に教養があれば楽しめるはずのところですからね。訳も古すぎたり不自然ということはありません。よその古い名作の中にはこれは訳し直した方がよいのでは、というものもありますが、本書は全然大丈夫です。


    PERSONS attempting to find a motive in this narrative will be prosecuted; persons attempting to find a moral in it will be banished; persons attempting to find a plot in it will be shot.
    この物語に主題を見出さんとする者は告訴さるべし。そこに教訓を見出さんとする者は追放さるべし。そこに筋書を見出さんとする者は射殺さるべし

    と前書きにあります。本書の良いところは、主題や教訓や筋書を意図して作られた作り物ではないというところにあるんでしょうか。

  • 当時のアメリカ社会がわかる。

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著者プロフィール

マーク・トウェイン 1835年ミズーリ州フロリダに生まれる。4歳のとき、ミシシッピ川沿いの村に移り住み、自然に恵まれた少年時代を過ごす。12歳で父親を亡くし、生活のために印刷工、蒸気船の水先案内人、新聞記者など様々な職業についたが、やがて『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』『王子と乞食』など多くのすぐれた作品を世に送り出し、アメリカの国民的作家となった。

「2019年 『さらわれたオレオマーガリン王子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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