- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003231166
作品紹介・あらすじ
ハックとジムは自由州への上陸に失敗。おまけにペテン師の王様と公爵まで背負いこんでしまった。筏の旅はなおも続く。-ヘミングウェイをして「現代アメリカ文学の源泉」とまで言わせたこの傑作を、練達の訳文に初版本の楽しい挿絵を豊富にちりばめて贈る。
感想・レビュー・書評
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【ハックルベリー・フィンの冒険 上・下】
マーク・トウェイン作、西田実訳、岩波文庫、1977年
面白かった。
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公ホールデンが「20世紀のハックルベリー・フィン」と呼ばれると知って、初めてちゃんと読んでみたが、面白かった。
作者マーク・トウェインは1835年生まれで、日本で言えば「幕末明治の時代」に生きた人。
日本で若い志士たちが「黒船襲来」「尊皇攘夷」と立ちまわっていた時代のアメリカで、トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンといった少年たちが見る社会と自然を余すことなく描いた作家。
本書は浮浪児で自然を愛する主人公ハックフィンは暴力的で怠惰な父親から逃げ、逃亡黒人奴隷のジムと共にミシシッピ川を筏で冒険をする、という話。
刊行は1855年。6年後に奴隷制度の是非をめぐりのアメリカでは南北戦争が起きる。
アーネスト・ヘミングウェイが以下のように書いている。
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あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する。……すべてのアメリカの作家が、この作品に由来する。この作品以前に、アメリカ文学とアメリカの作家は存在しなかった。この作品以降に、これに匹敵する作品は存在しない。
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読み終えたときに、子どもの時にみた映画「スタンド・バイ・ミー」を思い出したのも、そんなに外れていない気がする。(死体が鍵だったり)
そして、「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」で柴田元幸が、「ハックはまだ下半身が目覚めていない。ホールデンは目覚めかけていてそれをすごく怖がっている。そこの違いは大きいですね。」と語っているのも1776年に独立したアメリカをなにか象徴する気がした。
2017年の今年は、
Change! を唱えた初の黒人大統領に代わり
Make America Great Again! をスローガンにする70歳の実業家が国民により大統領に選ばれた。
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この本を通して、黒人差別などの歴史などについても知ることができるため、おすすめである。
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訳:西田実、原書名:ADVENTURES OF HUCKLEBERRY FINN(Twain,Mark)
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新書文庫
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2015.9.6ヘミングウェイをして、現代アメリカ文学の源泉と言わしめた傑作、ハックルベリーフィンの冒険、下巻である。ペテン二人組と共にの旅と、その後ジムが捕まった後、トムソーヤとの逃亡劇とが下巻の主な内容である。読みきってしまうと、最初トムソーヤの冒険と比べどこか明るさというか快活さに欠けているような気がしたが、そうではなく、トムソーヤにはトムソーヤなりのストレートな魅力がある一方、ハックルベリーフィンにはより複雑でわかりにくく、しかし故にじんわりと染みるように感じる魅力があるように思った。トムとハック、2人の少年は、性格も違う、生まれも育ちも違うが、この2人の性格の特徴が、もろに小説に反映されていて、一口に冒険といっても全く色合いの違うものになっているように思う。後書きに書かれていることが私も同じように感じたところだった。後書きに「トムの冒険が現実を離れた空想の世界の冒険であるのに対して、ハックの冒険は常に現実の世界の中で起こる…トムの冒険は絵空事でありあそびであるが、ハックの冒険は真剣勝負である」とあるように、この冒険はロマンチストのトムのではなくリアリストのハックの冒険であり、ハックの宗教や道徳など大人の世界の色眼鏡のない目で、しかし故の純粋な良心を以って、世界の汚さを肌で感じ、世界の不条理を心から葛藤している。トムからは社会に擦れてしまう前の子どもらしさが溢れているのに対し、ハックからは同じく社会に擦れてしまう前の、人間らしさと言えるものが溢れている気がする。どちらも、少年の特徴を捉えながらも捉え方は違っている。上巻を読み終えた時はなんか違うな、、、と思っていたが、非常に味わい深い作品だったように思う。トムの冒険がまさにお菓子のような、甘くて美味いものなら、ハックのそれは乾物みたいなもんである。真剣勝負のハラハラな冒険劇もさることながら、少年の純粋な良心、純粋な目から問われる、社会や人間の汚さ、その世界に翻弄され、葛藤し、逃げながら、戦う主人公ハックと、友達になりたいと思わざるを得ないような、歴史的な少年文学の傑作である。
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というわけでこれが「海外の長篇ベスト100」の第20位でした。
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ユーモアのなかに哀愁も感じる。