ビアス短篇集 (岩波文庫 赤 312-3)

制作 : 大津 栄一郎 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003231234

作品紹介・あらすじ

『悪魔の辞典』のビアスはまた、芥川竜之介が「短編小説を組み立てさせれば彼ほど鋭い技巧家は少ない」と称賛した短篇小説の名手である。北軍の義勇兵として南北戦争の激戦地で戦い続けたビアスは、この戦争で人間の生死をつぶさに眺め、人間をみつめ、社会を知った。短篇集『いのちの半ばに』他から15篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • ビアスといえば『悪魔の辞典』が有名だけれど、小説も実に巧い。ポーの再来だとか、芥川の元ネタだとか、頷ける。気が利いている。

    とりあえず、どの話も、ことごとく人が死ぬ。だが、それをあくまで地面に足を付けたまま書いている。皮肉に唇を歪めて死を睨めつける作者の顔がページの裏に透けて見えるようだ。持ち前のシニカルな筆致で淡々と物語を語り、最後に鮮やかに落とす。短編小説の醍醐味が存分に味わえる。
    ビアスの描く死は、単なるおとぎばなしのスパイスではない。凝ったプロットに使うための小道具ではない。読者を感動させようと意図された悲劇ではまったくない。もっと確かなもの、乾いてざらざらしているもの。鼻歌歌いながら歩いていて、ふと振り返ったら暗い路地の隙間からこっちを見ているような、なんだかそんなふうな死のかたちだ。
    南北戦争での従軍経験。ビアスは戦場で何を見たのだろうか。

  • お手本のような短編小説には飽き飽きした方にオススメ。

    『悪魔の辞典』で知られるビアスの短編集。
    ビアスの短編の共通点は、「死」と「意外な結末」だ。
    ジャーナリスティックで硬質な文体で描かれる幻想的な死。
    そして、最後にズドンと来る結末。
    ただ、現在では模倣しつくされ、結末の意外さはそれほど感じられない。

    ビアス短編の中でも最高傑作が「アウル・クリーク鉄橋での出来事」。
    他の収録作品と比べて、この作品だけが突出している。
    後にも先にも存在しえない、模倣不可能な作品だ。
    これを読むためだけでも、本書を手に取る価値がある。

  • 文学

  • 芥川龍之介の「藪の中」のヒントになった作品があると聞いて読んでみた。
    その作品も面白かったが、圧巻なのは第二部の南北戦争を描いた作品群。
    感傷は最低限に、淡々と、軽妙にすら描かれることで、かえって背筋が寒くなる。
    一番好きなのは、第三部の「猫の船荷」。

  •  
    ── ビアス/大津 栄一郎・訳《ビアス短篇集 20000914 岩波文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003231236
     
    ── ビアス/西川 正身・編訳《新編・悪魔の辞典 19830516-19970116 岩波文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003231228
     
    ── ビアス/奥田 俊介・他《悪魔の辞典 197504‥-19880605-19890331 角川文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4042364012
     
    …… 私自身もまた、明日ここを去ればその先どこに向かうかはわから
    ない(19131226)。最後の消息“Bitter Bierce”
     
    (20140121)(20141018)
     

  • 芥川龍之介の最高傑作『藪の中』の元ネタとなった『月明かりの道』を読めて感動。
    評論家達に絶賛された『アウル・クリーク鉄橋での出来事』も期待を裏切らない作品。
    あとはビアスの歪んだ少年時代の恨みをぶちまけるような近親殺しネタのオンパレードw

  • 挫折…(-_-;)

  • この人、すごい。そして、こわい。
    いわゆるスプラッタとかの怖さじゃなくて、運命のいたずらの怖さ、人間という生き物の怖さで、背筋がゾっとした。
    どれもオチが凄い。

  • 今読んでる最中だか、とても皮肉てきでおもしろい。「アウルクリーク鉄橋での出来事」を原作とした映画もあるが映像は汚いらしい(´・_・`)

  • 南北戦争時代に風刺を交えた小説を書いたビアス。短編小説を組みたせさせたら彼はやはりすごい。現在まで彼の技巧が語り継がれているのも納得。

    いつか再読したいと思う。

  • 『悪魔の辞典』のアンブローズ・ビアス。
    日本では芥川によって初めて紹介された。

    風刺っぽい表現が多いけど
    「エドガー・ポーの再来」というのは頷ける。

    ドイルの『まだらの紐』とビアスの『男と蛇』
    内田百閒の『くだん』とビアスの『猫の船荷』を
    セットで読むと面白いかも。

  • かの芥川龍之介に多大な影響を与えたといわれるビアスの短篇集。
    ビアスといえば「悪魔の辞典」で有名だけど、この作品集もそれに負けず劣らず相当虚無的かつ厭世的。
    「この人、頭おかしいんじゃないか?」ってくらいの勢いでひねくれてる。
    とりあえず、どの作品も基本的に人が死ぬ(笑)。
    死っていうのは文学のテーマでも最重要事項だと思うんだけど(文学のみならず人生そのものかもしれないが)、これだけ多彩に死を書けるのは絶対に才能だよなーと。
    数ページの間にその死を凝縮できるってのはなかなかできないだろう。
    この辺の死生観は軍人だったからこそ養われたのだなと。
    あまり人に大っぴらに薦めれる本ではないけど、自分はこういう作風は好き。

  • 芥川龍之介が「藪の中」を書く際に参考にしたとされる”月明かりの窓”。読んでみると、なるほどと思います。

    これ以外の短編でも、どれも深い闇のような作品です。まだ暑い夏のうちに、ちょっとぞくっとしてみてはいかが?

  • 人間の生と死に対するクールさが印象的。
    短篇集ということもあり、一つ一つの作品はあっさりと、それでいて良くまとまっているので非常に読みやすい。いわゆる文学よりも、もっと世俗寄りだが、だからといって軽いわけでもない。良い本ですね。

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