アスパンの恋文 (岩波文庫)

制作 : 行方 昭夫 
  • 岩波書店 (1998年5月18日発売)
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  • レビュー :8
  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003231388

アスパンの恋文 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 大変に分かりやすく面白かった。冒頭数ページを読んだらさいご、ページを捲る指をとめられず、一気に結末までたどり着いてしまう、駆け足で読んだような作品だった。ところで、私はこの小説で、面白い小説は、もれなく冒頭から結末まで読者を飽きさせず、何ら滞りなく進行していくものだという確信を深めた。なので、この小説の前に読んだ2冊の本、プーシキンの『スペードの女王』を最後まで読んだことに半ば得心し、ジャン・パウルの『陽気なヴィッツ先生』を冒頭数ページの段階で放棄したことを全うな判断だったと割りきることができた。なぜなら、「読者は、面白いか否かという判断を冒頭の数ページで、すでに予感し、判断しなければならない」という教条を、この作品から手渡されたために。

  • 内容。
     アスパンは百年ほど前に死んだアメリカの詩人。彼を研究している主人公は、アスパンの恋文を持っているというかつての恋人がヴェニスで存命なことを知り、その恋文を手に入れようと画策する。

     百五十歳でもボケてなければ、ちゃんと喋れる、車椅子生活を送っている、年齢にしてみたら異様に元気な妖怪ばあちゃん、ミス・ボルドロー。お金儲けに執着する。でも、百五十歳。中年の姪と暮らしている。姪も「ミス」だ。この家、もう絶えるな。
     アスパンを研究している人が、彼の詩の中で歌われたミス・ボルドローが生きていることに気づかなかったのは無理もありません。
     ……普通、生きられませんって、百五十歳。
     しかも、彼女の死因は激昂したことによる心臓麻痺っぽいです。主人公が彼女を怒らせなかったなら、彼女はいったいいつまで生きたんでしょうか(気になるところです)
     視点主は「私」、男なのですが、主役は彼でもアスパンでもなく、ミス・ボルドローに決まりです。なにせ、百五十歳! ですから。
     主人公は彼女のこと知ったとき「普通の寿命を並外れて超えているほどでもなかった」と考えますが。
     いや、すっごく並外れてます。理論上、人間の最高寿命は百二十五歳だそうですから。それをとうにとっこしているのに会話もできて、ぼけてなくて、姪に命令できて、金儲けを考えられるんですよ。

     ほかの内容?
     ……ミス・ボルドローの奇蹟以外に、言うべきことは無夜にはありませんって(笑)

  • 一見主人公である「わたし」が、ミス・ボルドローやティータに翻弄されているように見える。が、振り回されているのは「わたし」ではなく、「わたし」の視点からしか物語に入り込めない私たちなのだ。
    軽い目眩を覚えるような、それでいてクセになるような、愉快な一冊。

  • ヘンリー・ジェイムズという作家、実は初読ですが、相性が悪い模様。どこを評価すればいいか分からない小説だった。しかし決して稚拙な作品ではなく、評価する人が多いのも理解できる。あまりに毒気が無い。

  • ヘンリージェイムズらしい、心理描写に凝った小説。主人公の視点が緻密で複雑。騙された様な感覚になります。比較的初期の作品なので、まだ物語に動きがあって読みやすかったです。

  • 岩波文庫の行方先生翻訳の「ねじの回転 デイジー・ミラー」
    がとても面白かった!
    とたんにヘンリー・ジェイムズに夢中になり、
    今回は「アスパンの恋文」を読んでみた。

    ストーリーはアメリカの大詩人アスパンを
    研究している「わたし」

    かつてアスパンと恋人であった女性がまだ存命で
    ヴェニスに住んでおり、
    アスパンが彼女に宛てて送った手紙を
    どうやら大事に持っているらしい、と言う噂を聞きつけた。

    それを手に入れるために身分を偽りその屋敷の
    下宿人となるが…

    アスパンの恋人だった、ミス・ボルドローと「わたし」との、
    お互い信用せず、相手を利用しようとし、
    相手がどの程度自分の事を知っているのか、
    探り合いながらの会話が面白い。

    ミス・ボルドローの姪、ミス・ティータは
    伯母の言いなりで、伯母の世話をすること以外
    ほとんど何もない生活を送っていた。

    そこにあらわれた「わたし」を…

    この、ミス・ティータと言う人、容貌も平凡で若くも無く、
    おどおどしていてなんだか哀れな人なのだけど、

    「わたし」に対してある駆け引きを持ち出すところ、
    滑稽なまでにむき出しで必死だけど、健気でもあり。

    また、それが自分の受け取り違いで、
    叶わないとなるとさっぱりと
    ある意味復讐にも近い行動に出る。

    「わたし」の目を通してみえる景色や人物の様子が
    その時々の心の状態でいかようにも見える、
    と言う表現がまさにお見事。

    それぞれおかしな人ばかり登場して滑稽な場面が多数、
    (最初に登場するプレスト夫人や、召使いたちも)

    また「手紙」が今どこに?
    結局手に入れられるの?とサスペンス的な趣もあり、
    しみじみと楽しめる傑作であった。

    新潮文庫の「ねじの回転」を読んで
    ぽかーんとなって「つまらない」とヘンリー・ジェイムズごと
    投げ出さないで、本当に良かった!

    あと、この岩波文庫では、もちろん行方先生の
    親切なあとがき付きで、
    こちらのおかげで本作がまた何倍も楽しめる。

  • 小林大吾の日記より。
    「うまく説明できないけど、ただひたすらおもしろい小説」
    クライマックス(確かに或る)では思わず電車の中で噴き出してしまいそうになり、その後寒気がしました。

  • 面白いというより、うまいなあと感じさせる短編。

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